2020年1月28日火曜日

判例裁決紹介(平成30年2月26日裁決、特例適用に関する税務相談会での誤りと過少申告加算税の正当な理由)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成30年2月26日裁決で、特例適用に関する過少申告加算税の賦課に関する宥恕として税務署での税務相談での署員の誤りを見逃したことが該当するのかという点が争われた事例です。

具体的には、本件は居住用財産譲渡に関する特別控除(3000万円)の適用に関する誤り(適用できない譲渡に対して適用を申請して確定申告)に端を発する修正申告に対して、過少申告加算税の賦課決定処分を受けた請求人が、そもそも当該申告の誤りは、税務署が開催する申告相談会での提出(確定申告)の際に署員のチェック漏れによるものであり、正当な理由があるとして当該処分の取消しを求めたものである。最終的な判断としては、請求人の主張を認めず、正当な理由の成立を認めていない。宥恕規定としての正当な理由に該当するのかという点が争点となる事例は多数存在するものであるが、納税者の直接的な行為ではなく、申告相談会での税務署職員の行動(本件の場合は、単純な受理業務におけるチェックであるが)が正当な理由に対して如何なる影響を及ぼすものであるのかという点が争われた事例としては特徴的なものであろう。本件はかかる点において、正当な理由の法解釈、事実認定を判断する上で、参考となる事例であるだろう。まれに、課税庁職員のミスが課題とされる事例はあるが(殆どの場合は賠償は認められない。)、申告相談会という納税者向けのサービスが法令上どのように位置づけられるのかという点も課題となっているものと言えよう。

国税通則法
過少申告加算税)
第六十五条 期限内申告書(還付請求申告書を含む。第三項において同じ。)が提出された場合(期限後申告書が提出された場合において、次条第一項ただし書又は第七項の規定の適用があるときを含む。)において、修正申告書の提出又は更正があつたときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に百分の十の割合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、百分の五の割合)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。

4 次の各号に掲げる場合には、第一項又は第二項に規定する納付すべき税額から当該各号に定める税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。
一 第一項又は第二項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となつた事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかつたことについて正当な理由があると認められるものがある場合 その正当な理由があると認められる事実に基づく税額

以上のように本件は、国税通則法に定める過少申告加算税の正当な理由が課題となっているものである。

「通則法第65条第1項に規定する過少申告加算税は、過少申告による納税
義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対して課されるものであ
り、これによって、当初から適正に申告し納税した納税者との間の客観的不
公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を
防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行
政上の措置である。このような過少申告加算税の趣旨に照らせば、通則法第
65条第4項第1号に規定する「正当な理由があると認められる」場合と
は、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記の
ような過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦
課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最
高裁平成18年10月24日第三小法廷判決・民集60巻8号3128頁参
照)。」

本件の判断は、上記のように、最高裁判例を引用して、正当な理由が納税者への帰責性が中心的な概念として判断されているものである。これに対して事実関係の当てはめとして、本件判断は、申告納税制度の基本的な趣旨と、以下のように税務署が行う納税相談を判断してその帰責性を指摘して、もって納税者の主張を退けている。

「税務署における納税相談は、税務署側で具体的な調査を行
うことはなく、納税者の申立ての範囲内で行政サービスとして納税申告をす
る際の参考とするための指導又は助言を行うものにすぎない」

このように、税務相談は、一種のサービスであって、指導助言を行う場であるからという点を強調している。本件は、納税者の特例適用において必要な書類(登記事項証明書)の添付がなかったことも、影響しているのかもしれないが(特例適用の正当性を判断する材料がなかったという点で)、一般的にこのような前提にたつものであれば、税務相談はにおける課税庁の対応は、正当な理由としての適用においては否定的に捉えられることになろう。納税者の帰責性を判断する枠組みが基礎となるものではあるが、このような課税庁職員の行動が事実上対象外となることは、妥当であるのかという点は課題となるだろう。現実的に税務署という専門機関における判断・行為が税務相談という位置づけであっても枠外に置かれうるものとして一般の納税者に対して理解が得られるものであろうか。確かに調査等の対応がなされているものではないが、課税庁職員によるチェックが行われている段階において、納税者が誤りのチェックをしているものという信頼や期待を申告納税制度という前提があるからといって否定的に捉え、一律に税務署での相談会での行為を納税者の帰責性を判断する上で否定的に捉えることが理解されうるものであるのかという点は困難であろう。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2020年1月21日火曜日

判例裁決紹介(平成30年3月1日裁決、葬式費用と検認費用の債務控除該当性)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年3月1日裁決で、国外居住者に対する葬儀への出席費用や債務引継ぎに関する検認関連費用の債務控除該当性が争われた事例です。

具体的には、相続人たる請求人が米国に居住していた被相続人の財産を相続により取得した際に支出した費用として、葬儀のための渡米費用及び、米国における財産の引継ぎに必要な検認費用(プロペイト、100万以上)が債務控除として相続財産として控除することが可能であるのか否かという点が争われた事例である。本件のように、米国における相続の発生は、租税条約はあるものの1980年代で止まっており、幾分と時間が空いている。現在とは相続の状況が整合的であるのかという疑問は発生しよう。ましてや米国以外の状況までも相続の発生において鑑みられるような状況であると(課税庁は情報交換で口座情報は入手しているし)、本件のように検認手続費用などが発生した場合、どのように取り扱いを受けることになるのかという点は疑問に覚えることも増加するだろう。現在は、国外に財産を保有していることは珍しいものではなく(したがって国外財産の評価の不整合が問題とされるような状況も発生するわけだが)、評価やその引継ぎなど多様な問題が通常の国内の相続以上に想定される。このような状況は、国内法を基礎とする相続税法においては、いさささか想定外と捉えられるものであり(近年は民法改正により相続法の改正によって現代的な対応が図られているが、もしかすると本件のような課題も民事法の問題として処理されるべきであるのかもしれないが)、本件のような国外財産の関する費用の取り扱いは、今後の課題として検討されるべきであろう。かかる点において本件は参考となるべき事例であろう。本件はいずれも現行法の債務控除の判断から、その相続財産からの控除を否定している。上記のような国外財産の取り扱いは基本的には立法の範囲に属する問題として理解されよう。しかしながら相続税は他の租税に比して滞納、課税漏れが多いものであり、国外財産の把握(調書もこの流れからであろう)は、執行面の課題として所得税よりも課題が多いものと考えられる。


(債務控除)
第十三条 相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第一条の三第一項第一号又は第二号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 被相続人に係る葬式費用

以上のように、本件は相続税法にいう、債務控除の対象として、以下のように判断され、その該当性を否定されている。現に存するものとして認められないことは明らかということで否定されている。

渡米費用が葬式費用に該当しないことは、被相続人にかかるものとして限定している法令の規定からは明らかであろう。葬式費用そのものは、多様なものを含みうるものであるが、限定的に理解されているものであろう。近年は葬儀も多様化しつつあり(宇宙葬まであるとか)、現状はこの解釈は儀礼的なものを中心に理解されているが、今後はどのようなものとして取り扱うべきであろうか。そもそもなぜ葬式費用が認められるのか、相続税における趣旨からみてどのように位置づけられるのか、より検討されるべきであろう。

「請求人が■■■■■■■■で執り行われた本件被相続人の葬儀へ出席するに際して支出した交通費等の費用であり、また、それ以外の本件費用は、本件被相続人の死亡後に発生した同人の遺産に係る検認手続(プロベイト)、本件遺言に基づく遺贈手続及び本件信託証書の定めに基づく信託財産の分配手続に係る諸費用であり、いずれの費用も、本件被相続人の債務で相続開始の際現に存するものに該当せず、また、本件被相続人に係る葬式費用にも該当しないことは明らかである。」

諸手続費用に関しては、相続のための必要経費であると認められるが、この点は立法の属するものであり、債務控除の対象として、法令が現に存する債務に限定していることは留意されるべきであろう。債務控除が相続時の純資産、特に客観的な形での把握に力点をおいており、このような必要経費の存在は認められていない。法令解釈上、債務の意義に関しては法令として解釈上の課題は少ないものであろうが、現に存するか否かという点が中心的な課題になる。債務控除は必要経費を考慮するものであるのかという点は基本的な趣旨として否定的に理解されるべきであろう。

以上、毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2020年1月7日火曜日

判例裁決紹介(平成30年4月23日裁決、趣味と事業の区分)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成30年4月23日裁決で、趣味的な行為による所得が事業として認められるのか否かが課題となった事例です。

具体的には本件は、請求人(代表取締役として給与所得あり)が、個人として営んだ行為(レコード、オートバイ、ラジコン等のレンタルを行った結果、生じた損失を事業所得における損失として、給与所得との損益通算を企図した申告を行ったところ、当該行為は事業としては認められず、趣味的な行為に伴う損失であって、雑損失として計算されるべきとして損益通算を否定した課税庁による課税処分を不服として提起された事例である。本件では請求人は多様な行為を行っており、一部車両のレンタルに関しては、第三者である運輸局の免許も保持している(車両賃貸に関する)ような状況であり、同好の士にとっては貴重なレコード、オートバイ、ラジコン等のレンタルを行っているものである。このような状況を踏まえ、本件では、詳細な事実認定を行い、事業としての該当性を否定している事例である。本件は事業として認められるものであるのか、規模や社会的な地位を認められるものであるのかという点を中心に、事業と雑所得の区分を如何にして区分されるべきであるのかという点が争われた、典型的な事例であり、その基準を巡ってはよく議論されているものである。本件もその累計に属するものであるとも言えようが、本件のように、趣味的な行為が起点となって発生した所得を如何に取り扱うのかという点は、珍しい。本件ではあまり問題となっていないが、近年は、ICTの発達によって趣味的な行為であっても一定の所得を稼ぎ出す、市場性、利益獲得の意図が成立しうるような市場の発生が想定される状況になりつつあり、また副業の活発化など、趣味的な行為による所得の発生に関して、事業として如何に評価されうるものであるのか、再検討すべき状況にあるのではないかとの問題も考えられる状況とも考えられ、本件は、特段法令解釈としては、特徴的なものではないが、現行法の枠組みに置いてどのような点を重視し、事業と雑の区分を行う基準となっているのかという点を考える上では、ティーチングケース、環境変化と事業の認定における参考事例として有益なものであろう。


(事業所得)
第二十七条 事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
2 事業所得の金額は、その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。

(事業の範囲)
第六十三条 第二十七条第一項(事業所得)に規定する政令で定める事業は、次に掲げる事業(不動産の貸付業又は船舶若しくは航空機の貸付業に該当するものを除く。)とする。
一 農業
二 林業及び狩猟業
三 漁業及び水産養殖業
四 鉱業(土石採取業を含む。)
五 建設業
六 製造業
七 卸売業及び小売業(飲食店業及び料理店業を含む。)
八 金融業及び保険業
九 不動産業
十 運輸通信業(倉庫業を含む。)
十一 医療保健業、著述業その他のサービス業
十二 前各号に掲げるもののほか、対価を得て継続的に行なう事業

「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反覆継続して業務を遂行する
意思と社会的地位とが客観的に認められる業務であると解される。」

以上のように本件は、所得税、施行令における事業とはいかなるものであるのかという点を基礎としている。従来はこの事業と雑の区分に関しては、社会的な地位が認められるのかという点が中心的な争点として争われるケースが中心であった。本件も上記のように法令解釈を基礎として、事業の環境、社会的な認知の状況を基礎として、事実認定をベースに、事業としての該当性を否定している。本件では特に請求人の行為が趣味的な行為の延長であって事業としての外形的な状況に至っていないという点を基礎として判断を行っている。上記のように近年はネット環境の変化もあり、趣味的な要因を持つものであっても市場性を確保できるような状況が顕現しつつある。このように考えれば、事業と趣味を明確に二律背反のようなものとして捉えることは現状の前提として妥当なものと言えるだろうか。私見ではこのような趣味的な要因であっても事業としての営利性や遂行の意図が本来ならば問題とされるものであり、趣味的行為として認められるものであっても事業としての該当性を直接的に否定されるべきものではないという時代的な背景にあるように捉えている。もちろん、個人が行う行為は多様であり、趣味的な行為も非常に多岐にわたるものであろう。ただし市場へのアクセスは従前とは明らかに変化しており、収益化、営利性を備えるような場合は想定され得よう。結果としての損失の発生は、趣味的な行為故に事業としての該当性を否定される要因ともなりえる状況もあり得ようが、損益通算の意図としての存在、租税回避的な行為としての否定を事業としての認定に依拠するのではなく、どのように行うべきであるのかも課題とはなろう。条文はあくまでも対価性と継続性を基礎として判断することを求めており、文理解釈、予測可能性の観点からは趣味的な要因の排除による不安定な要因はできる限り排除されるべきではないだろうか。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

判例裁決紹介(平成30年3月19日裁決、所得の事後的転換)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年3月19日裁決で、雑所得として申告した所得が事後的に転換し、元本の返済であったとして更正の請求を行ったところその立証不足をもとに、主張が退けられた事例です。

具体的には、本件は、請求人が4億の投資を行い、毎月1000万円の配当を受ける契約にて、振り込みを行ったところ、約5千万円に関しては配当が実施されたものの、それ以後は配当が実施されなかった場合において、かかる配当としての5千万円を雑所得として申告していたところ、かかる所得は元本の返済であるとして、所得そのものの発生を否定し更正の請求を行ったもので、その請求を否定した課税庁の処分につき不服を申し立てているものである。当該投資案件は詐欺的な案件であろうが、詐欺としての刑事処分が行われることは困難、立件は困難であるとの、担当弁護士からの報告書が提出されているものであり雑損控除の適用が困難な状況にあり、本件のような争い方がなされているものと考えられる。判断としては、上記のような担当弁護士からの報告書があることをもってその詐欺的な行為に近いものとして、所得の発生を否定するものであり、申告時点において、その所得が不存在、あるいは更正の請求の条件たる納税額等が過大であったとの主張が十分になされていないものとして、請求人の判断を否定している事例である。

そもそも本件は事後的には、4億の投資に対して毎月1000万円の配当という一種の詐欺的な契約、投資詐欺に類似する行為によるものであると捉えられる。このような特殊な事案、事実関係が起点となっているものと考えられるが、これらの状況から、所得が事後的に転換され、あるいは所得がその存在を抹消されるような状況(配当として入ってきた金額が所得として捉えられるのか、あるいは元本の一部弁済として捉えられるのか)が発生したことが本件の問題のスタートとなっている。いささか特殊な事実関係を基礎とするものであり、暦年ごとの課税年度が終了するたびに確定する所得税の申告において、確定申告後において、投資の結果や、時系列により、かかる所得の評価が変化したものと評価されよう。このような事後的な状況の反映は、一定の年度を区切って課税所得を計算する所得税法においては、発生しうるものであり(おそらくスポットでの課税取引を中心とする相続税や譲渡所得税においてより顕著でもあるかもしれないが)、このような対応において、租税法規がどのような救済を図るべきであるのかという点を検討する上で、あるいは契約、事実の評価を行う上では本件は有益な参考事例となるものと考えられる。

以上、本件では、まずは納税者の主張立証責任の充足が課題となって判断の基礎が形成されている。更正の請求の枠組みにある以上(なぜ本件のようなケースで更正の請求を採用したのかは定かではない、事後的な性質変換に関する救済措置としては更正の請求は、法令上、申告の誤りや過大を争うものであって相性が悪いと認識されるのであるが)、納税者に主張の立証責任があるとの判断であるのかもしれないが、近年は訴訟段階ではなく、裁決段階でも本件のように主張の立証責任が求められるケースが傾向として見られるようになっており(是非はともかく)、かかる点は本件に限らず、租税の実務家としても認識されていくべきであろう。かかる点からは単に租税の計算の基礎としての理解から租税法規の理解の方向性が重要となるように思われる。

また本件では、当初の段階では、約上の則り所得として認識をしていたことが問題となる(事後的には詐欺的なものであり、これに引っかかったことを問題視するのかもしれないが)。所得計算の誤り、あるいは過大であったことを請求の基礎とする枠組みが揺るがない以上、当初段階での所得としての認識を崩すことがない限り、更正の請求の対象としては、困難となるだろう。本件のように事後的な転換、変化へは相性が悪いものと考えざるを得ない。単に納税額の返還を求める手続きではないことは留意されるべきであろう。
このように本件はいわば申告後、事後的な変化、状況の変動に対して(なお、本件以外の翌年分の配当に関しては所得としての処理を行わず、修正申告を行っている)、所得の性質が変化したことを、契約による投資が損失に切り替わったことから裏付けられるのかという点が問題の基礎となっており、事実上民事関係の評価の問題とも捉えられるが、かかるような状況において所得の計算上救済を求めるものである。上記のように本件の事実関係からは、事後的な変化を反映させることは、制度の枠組みからはは困難と解さざるを得ない。ゆえなくして支払った租税負担であるとの認識から不当利得返還請求による救済の方法もあるのかもしれないが(裁決である以上、課税処分を争うものであって対象としては困難だが)、そもそも不当利得の成立の立証はハードルが高く同じく立証責任が納税者に求められることになろう。本件のような事後的な状況変化を如何にして救済すべきかという点は課題であるのかもしれないが、雑損控除の枠組みまで至らない段階のもの、いうなれば扱いが明確ではないグレーなもの(法的には不安定な、不明確な存在)を如何にして租税法規において対応を考えるのかという点は、立法に属する課題であるが、現実的には様々な事後的な状況が考えられ、具体的な対象を検討することは困難だろう。

以上、毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。