さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年3月19日裁決で、事前通知直後に提出された修正申告書に対する過少申告加算税の適用が争点となった事例です。
具体的には、法人である請求人がなした確定申告に対して実地の調査委に入る旨の事前通知が行われたところ(この実施に関しては要件を充足しており、違法性はない)、その直後に修正申告書を納税者が提出した状況下において、事前に準備していたことを考慮して、過少申告加算税の賦課決定処分対して意義を唱える事例である。修正申告の提出と過少申告加算税の賦課に関しては、古くより宥恕、過少申告加算税の軽減、免除が議論されてきており、調査の実施前段階であれば、一定の考慮が図られる事例も多く、一定のリスクのある申告においてこのような状況を活用を図るような状況も見られてきたものである。本件もそのような過少申告加算税に対して事前通知が行われた直後に修正を図り、軽減を企図したものであるが、かかる点が思惑と異なる点になっていることが、本件の起点となっているものであろう。旧来はこのような状況においては、更正の予知があるのか否かという点が主たる論点とされていたものであるが、平成23年の事前通知の法定化に伴い状況は変動している点が、留意されるべきであろう。かかる点において本件のような過少申告加算税に対する宥恕と修正申告の関係を検討する、特に現行制度における関係を議論する上では、本件は有益な事例であろう。
(過少申告加算税)
第六十五条 期限内申告書(還付請求申告書を含む。第三項において同じ。)が提出された場合(期限後申告書が提出された場合において、次条第一項ただし書又は第七項の規定の適用があるときを含む。)において、修正申告書の提出又は更正があつたときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に百分の十の割合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、百分の五の割合)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。
5 第一項の規定は、修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査に係る第七十四条の九第一項第四号及び第五号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に掲げる事項その他政令で定める事項の通知(次条第六項において「調査通知」という。)がある前に行われたものであるときは、適用しない。
以上のように本件は、事前通知が法定化された現況下において、事前通知後に提出された修正申告に対する過少申告加算税の宥恕の可否を争点としているものである。この過少申告加算税のそもそもの趣旨としては、下記のように判断では行っており、若干省略的ではあるが、これに基づきその宥恕に関しては国税通則法は65条において上記のように、調査による更正の予知があったことがあるのかという点が法文の要件とされてきたものであり、この点は従前と相違がない。しかるに予知とはどのような段階にあることを意味するものであるのかという点を中心に議論が行われ、事例が蓄積されている。しかるに本件の状況は5項の追加による事前通知が行われる前であることをその基本的な条件として追加している。しかるに従前と実質的には宥恕の適用に関しては、状況が異なっており、事前通知が行われた段階で過少申告加算税の賦課は回避することが困難な状況になっているものと解する他ない。この点は重要な変化であり、事前通知の有無と言う形式的な部分が重要な判定要因になってきていることは現況として理解されるべきであろう。かかる点において予知の状況にあるか否かという点は、相対的にその役割を低下しており、今後の問題の局面は、事前通知段階ではなく、その前の段階、例えば、税務署からのお尋ね、文書問い合わせなどのような状況(そもそもこの法的な位置づけはまだ定まっていないものとも考えられるが)における更正に対する納税者の認知状況に争点が移りつつあるように考えられる。
「期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出があったとき
は、通則法第65条第1項の規定により、その修正申告により納付すべき税
額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税
を賦課するのが原則である。もっとも、納税者の自発的な修正申告を奨励す
る一方で、法令の定めに従った正確な内容の期限内申告書の提出を促す趣旨
から」
は、通則法第65条第1項の規定により、その修正申告により納付すべき税
額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税
を賦課するのが原則である。もっとも、納税者の自発的な修正申告を奨励す
る一方で、法令の定めに従った正確な内容の期限内申告書の提出を促す趣旨
から」
また、本件ではあまり争点になっていないが、事前通知の直後の提出というものはどのように評価されるべきであろうか。事前に準備していたことを改悛の現れと見るのか、そもそも事前に準備していたことが、予知という状況を裏付けるものであるのか、評価は分かれるように思う。私見としては、直後の提出は事前にその申告におけるリスクを認識していたことが容易に疑えるものであり、予知していたことに対する高い蓋然性を有しているようにも考えるのであるのだか。この点は実務ではどのように問題のある、申告などに対してアプローチしているのか、という点は聞いてみたいところです。
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