さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成29年10月17日裁決で、下記のように3月に送ったものと基本的に同様ですが、商品売買におけるポイントの付与とかかる費用の損金計上時期を如何なるものとして捉えるべきであるのかという点が問題となった事例です。
具体的には、本件は商品売買に関する事業を営む法人が請求人となり、商品を販売した折に、顧客に対して付与したポイントに関する費用につき、顧客が商品を購入し、規約に基づき、ポイントを付与したタイミングをもって損金計上をなした申告を行ったところ、課税庁は、この付与時点は、未だ債務が確定されておらず、もって損金として計上はできないとして損金計上を否認している事例である。基本的には、下記のように、前回送付した事例と大きな相違はなく、課税庁の主張及び判断においてもポイントの付与段階ではなく、実際に顧客がポイントを使用した段階まで、損金計上を否定している点では共通している。若干、規約やポイントの性質、仕様等は異なるものであるが、法人税法における損金計上を如何なるタイミング(この点に関しては、法人税法における古典的な論点であるが)と商品売買におけるポイントとを関連させるべきであるのかという点においては、本件及び前回事例を対比が参考となるものであるのではないかと捉えられる。下記のようにポイントが付与される取引は、非常に多様化しており、本件及び前回の事例が一般化されるべきであるのかという点はより検討が必要であろうが、債務の確定との関連、及びこの債務の確定を具体的に判断する上で、参考となるべき事例であるように捉えられる。また、商品券や未払費用等ポイントを租税法規において如何なるものとして捉えるのかという点も実務上は参考となるのではないだろうか。
「法人税法第22条第3項第2号は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当「該事業年度の損金の額に算入すべき金額について別段の定めがあるものを除き「当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額」と規定しており、基本通達2-2-12は、当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、当該事業年度終了の日までに、①当該費用に係る債務が成立していること、②当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること、③その金額を合理的に算定することができるものであることの三要件の全てに該当することを要するものとしている。法人税法第22条第3項第2号にいう債務の確定の判定基準として、当該通達の内容は、課税の公平を図り、所得計算は可能な限り客観的に覚知し得る事実関係に基づいて行われるべきであるという観点から見て合理的で妥当なものというべきであり、当審判所においても相当と認められる。」
以上のように、本件は、いわゆる購入特典としてポイントが付与される取引に対して如何なるタイミングをもって損金計上を認められるべきであるのか、という点が問題になっているものである。上記のように本件判断では、当該ポイント費用が債務確定を要する費用であることは特段争いがないものであり、実質的には、通達の内容に適合しているのかという点が中心的な争点となっている。この点は下記のように前回配布の事案と基本的に同様の判断枠組みであり、ポイント付与するとした規約に基づき、事実関係が争いが行われているものである。すなわち債務の確定とは如何なる段階をもって充足しているものと判断されるのか、債務確定を如何に解するのかという点が起点となっているものである。両事案とも裁決であり、当然ながら基本的には基本通達の内容を判断の素材としている。この解釈が妥当であるのか否か、その根拠が如何なる所以をもっているのかという点が、あるいは債務の確定をどのような趣旨を有するものであるのか、という点が問としては検討される必要があろう。公平性を基礎としているようでもあるが、客観性を担保することで、その事実関係が確定してことで安定した、予測可能性を担保することが租税法規の基本的な要請に合致しているという判断の根拠であるのであろうか。私見としてはかかるような判断が一定の合理性があるように捉えられる。そもそも債務の確定とはいかなる状況を指すべきであるのかということは必ずしも個別の案件においては自ずと定まるものではないのではないだろうか。
より具体的には、納税者が主張するポイントの付与時をもってその計上のタイミングとすべきであるのか、あるいは、ポイントを利用する(商品購入に充当する)タイミングをもって認定されるべきであるのかという点が課題となっており、債務確定主義との基本的ルールとの対比においていずれかより合理的であるのかという点が評価されていることなるだろう。詳細においては、
債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生という通達における判断が各タイミングにおいてどちらが充足しているのかという点が本件では課題とされている。ポイントは商品購入への充当以外にも、一定の累積により商品とも交換できるような状況(最終的には時の経過により消滅するもの)であり、この給付関係が不安定であるとの判断が本件の基礎として、実際に顧客が選択できる状況を通過し、交換が確定した段階をもって上記のような確定した段階にあるものと評価されているのであろう。納税者からの利用の申出がない限り、売上の減少やコストの発生のような効果は生じていないものということが判断の根拠になっていることは留意されるべきであろう。租税法規は、このような選択の余地があることを忌避することは、よく観察される状況であろうが、規約・契約によって顧客と法人はその将来的な負担が確定しており、請求により何らかの費用の発生することが保証されている状況をもって債務が確定していることは評価することは困難なものであるのだろうか。契約によって負担の存在が明確であるとも評価しうるとの見解もあり得よう。この点は債務の確定という法文の解釈において、如何なるものが要請されているのかという点を鑑みることが重要であるように考えられる。
なお、請求人の主張では、収益との対応関係をより対応を取るべきとの主張を行っているが、かかる点は会計原則の要請であり、法人税法においても適正な期間計算の要請は強く働いているものでもあろうが、かかる点はおそらく公正処理基準を通じて検討されるのであろうが、法文は損金において明文をもって債務の確定を要請しており、かかる判断の枠組みにおいて判断が行われていることは両事案とも相違がないことは強調されるべきであろう。
以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。
参考:3月分
さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成29年3月1日裁決で、請求人が商品購入に伴い付与したポイント付与が損金計上が認められるべきか否か、その具体的なタイミングはいかなるように判断されるべきであるのかという点が問題になった事例です。
具体的には、ポイントを商品の購入者に対して付与している請求人が期末現在のポイント額増加額を、売上のマイナスとして処理している点において、当該マイナス処理を行うため必要な、損金としての要件、すなわち債務が確定していないとして、損金計上を認めないとした事例である。最終的には、課税庁の主張が認められ、期末時点では未だ損金として認められない、ポイントとしての債務の確定が行われていないとして請求人の売上からのマイナス処理を否認している事例である。本件では、請求人の処理のように、未払金処理としての、ポイント費用の計上(売上控除)が認められるのではないか(金品引換券の交付と同視)という国税庁の税務大学校の論叢での記述に基づいている点も、粗税法規における信義則の適用において、かかる論文が信義則の適用の要件を認めているのかという点も争点となっている。本件は近年利用が急増している商取引におけるポイントの付与が如何なる基準によって確定し、もって損金として確定するものであるのかという点を争点としたものであり、多用なポイントの付与が見受けられる状況下において、最近は時の経過やアプリの利用、はてはて健康状況、万歩計的なものまでもポイント付与の対象となっている状況であり、シェリングエコノミーなどの発達により個人間での取引の増加やポイントと決済手段との間での相違など(最近流行りのなんとかペイなどはどのような位置づけで租税法規において捉えるべきであろうか)、多様なポイントの性格、付与条件、利用条件(私見ながら期間限定など忘れがちなものがあります)、において一律と捉えるべきではなく、本件判断が先行事例として、ポイント付与における債務確定を判断する上で参考となるのかという点は更に検討が必要な状況であろうが、債務の確定が中心的な争点となっており、法人税法における基礎概念としてどのように解されるべきであるのかという点においても参考となるだろう。
法人税法は、下記のように、22条3項において、損金としての算入すべき金額を定めている。本件で問題となっているものは2号におけるいわゆる一般経費であり、債務の確定を要請されていることが、問題の起点となっている。すなわち、法人税法における算入基準としては、この債務の確定が要件として中心的な昨日を果たしていることが明文をもって担保されている。5項における公正処理基準や別段の定めも存在しているが、一般的な規定としてかかる債務の確定が重要視されるものと解される。
3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
この債務確定とはどのようなものであるのかという点に関しては、以下のように法人税法基本通達において、指針が示されている。
(債務の確定の判定)
2-2-12 法第22条第3項第2号《損金の額に算入される販売費等》の償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、別に定めるものを除き、次に掲げる要件の全てに該当するものとする。(昭55年直法2-8「七」、平23年課法2-17「五」により改正)
(1) 当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
(2) 当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
(3) 当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。
本件判断も上記を基礎として、以下のように法令解釈を示している(裁決である以上当然でもあるが)。この法令解釈がどのような点を根拠としているのかという点は必ずしも明らかではなく、判断でも課税の公平性や客観的に認識できることを要請していることが、見て取れるのみであり、金額の合理的算定など、給付原因事実の発生など、必ずしもその具体的な意義が明らかとは評価し難いとの評価もありうるところである。債務確定が如何なる趣旨を有しており、合理的な金額の算定等をもって、適用範囲の減少等が図られるものであるのか、あるいは、債務確定の意義を広義に解釈して柔軟性を持たせることが可能であるのかという点も検討されるべき点であろう。3要件すべてを満たすことが法的な枠組みとして強く主張されている点は債務確定の意義を考える上では、参考となるべきものと考える。
法人税法第22条第3項第2号は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計 算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額について別段の定めがあるものを除き「当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額」と規定しており、基本通達2-2-12は、当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、当該事業年度終了の日までに、①当該費用に係る債務が成立していること、②当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること、③その金額を合理的に算定することができるものであることの三要件の全てに該当することを要するものとしている。法人税法第22条第3項第2号にいう債務の確定の判定基準として、当該通達の内容は、課税の公平を図り、所得計算は可能な限り客観的に覚知し得る事実関係に基づいて行われるべきであるという観点から見て合理的で妥当なものというべきであり、当審判所においても相当と認められる。
最終的に本件判断は、以下のように本件の事実関係を当てはめ、具体的な給付原因の事実関係が未だ充当等の行われた段階まで保留されていると判断し、債務確定の成立を否定している。
本件ポイントを付与された顧客は、本件ポイントを商品等購入金額に充当すること、又は一定のポイント数に応じた景品等と交換することができるとしても、充当又は景品等との交換が行えるのは、次回以降の会計時となる。したがって、本件ポイントの使用に要する費用については、顧客の本件ポイントの使用時である商品 等購入金額への充当又は景品等を交換した時に初めて具体的な債務が確定するというべきであり、本件ポイントの付与時において具体的な給付 原因となる事実が発生しているということはできない。
いわば、給付原因の発生をもって、その成立を検討しているものであり(金額の合理的算定や債務の成立は問題となされていない)、債務確定の上記法令解釈を前提とするならば、ポイントの付与は多様は形式を取りうるものであるが、本件の判断は、ポイント付与と給付事実関係の判断、契約関係から、裏付けられるものとして、判断を行っている点は参考となるべきものと捉えられる。
以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。
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