2019年1月19日土曜日

判例裁決紹介(平成30年3月27日裁決、減価償却資産として否定された資産に対する償却超過額が翌期において損金経理が否認された事例)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年3月27日裁決で、減価償却資産として否定された資産に対する償却超過額が翌期において減価償却費用として損金計上が否認された事例です。

具体的には、本件は太陽光発電を営む請求人が当初の申告において、未だ事業のように供していないとして償却費を損金計上したしていたものを、修正申告により償却超過額として処理した場合において、かかる修正申告を前提として、翌事業年度において、事業に共用したとして当該超過額を償却費として認容されるべきであるのか、という点が問題となった事例である。最終的な判断としてその損金としての計上を否認した判断が肯定されている事例として留意されるべき点を示しているものと捉えられる。償却超過額の存在とその後処理を巡る事例であり、事例としては特段、珍しいものであるようにも考えられるが、費用収益の対応、法人税法上における損金経理の要請の趣旨目的との対比など、関連する論点は多岐にわたるものといえよう。そもそもとして企業会計における減価償却としての費用配賦と法人税法が律する償却費計算における差異が反映されている事例だろう。単に費用項目として減価償却を捉えていると、本件のようなリスクが発生しうる点は、特にその背景となるべき、事業の用に供している点を如何に判断しているのかがかかるような問題も引き起こすことは留意されるべきであろう。

本件はその初期において、償却超過額として処理した点、そもそもこれは減価償却資産として判断した捉えたこと自体が問題の起点となったものであり、実質的には、償却費として本来ならばタイミングのズレがなければ、通常と同様に、償却費として計上可能なものである。かかるような原則的には費用計上が可能なものが、否定される結果となっている点が特徴的な事例であり、かかる点が如何なる解釈をもって正当化されるものであるのかという点が、あるいはかかる処理を回避することができるのかが注目されるべきであろう。このような償却費の計上においても事業の用に供するという点が判断のタイミングとして影響を及ぼすことは租税の専門家として留意すべき点を示唆していると評価されるのではないだろうか。・・・それにしても最近の裁決は、太陽光発電に関する事例が多い印象。何か理由があるのであろうか、投資資金が流れ込みの運用として租税負担が問題となることが増加しているのであろうか。

二十三 減価償却資産 建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう。
(減価償却資産の範囲)
第十三条 法第二条第二十三号(減価償却資産の意義)に規定する政令で定める資産は、棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする。

以上のように本件の中心的な争点は減価償却費用として損金計上しながらも、かかる償却費の基礎となる資産が事業のように供していないとしてその損金計上を否定され、発生した額を修正申告において償却超過額として処理した場合において、当該超過額が翌期において(当該資産が減価償却資産として認められ)、通常の償却超過額と同様に損金として、経理したものとして認容されるべきものであるのか否かという点が問題となっているものである。通常、事業の用に供しているような資産であれば、減価償却資産として認められ(そもそもこの事業のように供しているとは如何なる意義を有しているものと解されるのか、何をもって判断されるべきであるのかという点は、更には法人税法上において事業とは如何なるものとして判断されるべきものであるのかという点は必ずしも明らかではなく、かかる判断に苦慮する場合があることは数多くの事例が示していることであろう。かかる判断、事実関係への当てはめが本件の起点となっているものと評価されよう。)、係る資産に関するものとして、償却超過額として下記の法人税法31条4項に従って、損金経理したものとして認められることは、法文上明らかである。本件では、そもそも償却超過額として処理したものが当初段階においては、事業の用に供する段階になく、もって減価償却資産に関する償却費として損金経理したものとみなすことができないことで、下記の適用がないものとして理解する判断プロセスが採用されている。 

減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)
第三十一条 内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその償却費として第二十二条第三項(各事業年度の損金の額に算入する金額)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、その取得をした日及びその種類の区分に応じ、償却費が毎年同一となる償却の方法、償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法その他の政令で定める償却の方法の中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を選定しなかつた場合には、償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額(次項において「償却限度額」という。)に達するまでの金額とする。

4 損金経理額には、第一項の減価償却資産につき同項の内国法人が償却費として損金経理をした事業年度(以下この項において「償却事業年度」という。)前の各事業年度における当該減価償却資産に係る損金経理額(当該減価償却資産が適格合併又は適格現物分配(残余財産の全部の分配に限る。)により被合併法人又は現物分配法人(以下この項において「被合併法人等」という。)から移転を受けたものである場合にあつては当該被合併法人等の当該適格合併の日の前日又は当該残余財産の確定の日の属する事業年度以前の各事業年度の損金経理額のうち当該各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されなかつた金額を、当該減価償却資産が適格分割等により分割法人、現物出資法人又は現物分配法人(以下この項において「分割法人等」という。)から移転を受けたものである場合にあつては当該分割法人等の分割等事業年度の期中損金経理額として帳簿に記載した金額及び分割等事業年度前の各事業年度の損金経理額のうち分割等事業年度以前の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されなかつた金額を含む。以下この項において同じ。)のうち当該償却事業年度前の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されなかつた金額を含むものとし、期中損金経理額には、第二項の内国法人の分割等事業年度前の各事業年度における同項の減価償却資産に係る損金経理額のうち当該各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されなかつた金額を含むものとする。

一般的な会計基準によれば、本件のような減価償却費としての計上は、費用収益の対応の観点から、否定されるべきものではなく、22条4項における公正処理基準の関係から法人税法の観点からも許容され、投下資本の分散計上として適正な利益・所得額の算定において、考慮されるべきものと評価されることになるだろう。かかるような点からその形状を認めるべきと言う納税者の主張は、同意できる点も含まれている点は否めない。しかしながら、かかるような租税負担の基礎となるべき適正な妥当な金額の追求(会計基準における利益情報等の適正な算定と同旨)に関しては、そもそもとして減価償却自身が一種のフィクションであり、法人税法においては損金経理や法定耐用年数等の法定化されている点を十分に考慮していない。そもそも法人税法は、一定の便宜を考慮して、公正処理基準として会計基準を考慮しており、無制限にその計上を認めているものではないことは留意されるべきであろう(別段の定めをおいてコントロールしている)。かかる点において、適正・妥当な金額の追求という点は、法定されている趣旨との対比において劣位に置かざるを得ないものと考えられる(これを逆基準として批判する意見もあろう)。かかる典型が本件における償却費の計上であり(減価償却費ではなく)、内部的な取引の性質に鑑みその計上を制限しているものと理解されるべきであろう。請求人の主張のように、公正処理基準や太陽光発電に対する政策意図(そもそも主張される点が存在しているのかは定かではないが)をもって実質的な償却費としての性格からその計上を図ることも租税法規が実質を考慮することをその背景としていることから、一定の合理性を有しているが、明文をもって規定している法人税法の償却費の計上を覆し、拡張的にその計上において解することは私見ながら困難であると考えられる。法が想定しているみなしとしての損金経理は前提として償却資産としての存在を基礎としているものであり、かかる点から、上記の法文を本件において適用は困難であるという判断は、衡平に適うものであろう。実質的には本件は過年度の損益の変更により対応すべきものであろうが、あるいは事業の適格な開始判断によるべきであるが、上記により、かかる点は必ずしも容易ではない(特に太陽光発電などのように、比較的新しい類型の事業構造においては、判断に苦慮することになろう)。本件はいわば、恣意税の排除と適正な所得計算のバランスを如何に捉えているのかという点が背景にあるものといえようが、租税法律主義の基本的な要請からは、明文をもって規定している点を超えて、判断を行うことは困難と評価せざるを得ない(かかる点において会計基準を基礎とする主張は劣位とならざるを得ないものと考えられる)。


以上です。毎度のことながら論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。


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