2019年1月12日土曜日

判例裁決紹介(静岡地判平成27年12月4日、調査における合意と納税義務の消滅)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、調査において一定額納税を行えば、滞納国税が免除される旨の合意があったものとして、差押えを受けたことを不服として国賠訴訟を起こしているものです

具体的には、本件は、差押えを受けた原告が当該差押え対象となる滞納国税も含め、調査においてすでに一定額の納付をもって消滅する旨の合意があったとして、当該合意に反する差押えが行われることは、当該合意に反するものとして国家賠償請求を行ったものである。

そもそも調査担当職員において、このような一定額の納付を持って課税関係を終了する、納税義務を消滅させる権限が付与されていることは基本的にないものであり、かかるような合意がいかなるものであるのかという点が、起点となっている事例であろう。本件自身は、そもそも原告が主張する調査段階における合意は、対象となった滞納国税(原告が滞納租税債務を有する対象を合併)が現出する以前の問題であり、かかるような事実関係が行われる可能性は、ありえないものとして、原告の主張が排斥されている。しかるにこのような事実関係では特段、かかるような合意の存在が立証されうるものであるのかという点は問題とならないものとも言えようが、実際、かかるような調査段階においては、シャウプ勧告の時代においても納税額の合意(交渉)等が行われていることで、調査団の驚きを招いたような事例があったこともあるが、古くから、このような調査段階でのやり取りが問題とされるような状況は少なく、納税義務の消滅において、調査段階でのやり取りが如何なる権限を持つものであるのかという点を検討する上で、参考となる事例ではないだろうか。本件では事実関係において合意の事実関係そのものが存在が否定される得るものであり、調査段階におけるやり取りが問題とはならないものであるのかもしれないが、かかるように調査段階におけるやり取りをどのような性格を持つものであるのかという点は租税法規の性格からも興味深い点ではないだろうか。

判示においては、納税義務の消滅対象となるべき、免除に該当するような行為があったのかという点を問題としているが、実質的にはこのような行為は、旧法における慫慂に該当するような行為であり、修正申告をもってその課税関係が終了することが通常であるように考えられる。旧法化においては、慫慂は法定されているものではなく、その位置づけは、議論としても如何なる性格を有しているのかという点は課題とされる事例は少なかった。本件もそのような背景にあるものであるが、かかるような形で訴訟としてその、効力を争ったものとして評価することができるのではないだろうか。 合意という行為は課税処分に関しては存在しておらず、実質的には担当者からの説明により何らかの修正申告を行うことを当該合意として理解しているように捉えられる。

いずれにしても現行法においては、調査段階における調査官からの課税事実に関しては、勧奨が法定され、その行為の意義にいついては今後の研究課題であるように考えられる。現段階ではその法的な性格は必ずしも明らかではなく、勧奨において行われた内容に基づく、修正申告や信義則の適用など、慫慂との対比においてその性格を議論することもまた、一つのアプローチであろう。かかるように考えれるならば、調査段階において、調査対象において免除や合意としてその性格を検討する本件は一定の参考となるだろう。調査の実態において、かかるような合意、説明、慫慂を、免除として取り扱うことは基本的に困難であるようにも考えられるが本件においては明示的に判断は行われていない。調査官の権限として免除の権限は付与されておらず、納税義務の消滅を基礎づける行為として、位置づけがたいものとして評価されるものではないだろうか。信義則の適用対象となるべきものとして公の見解になるのかという点も興味深い。

調査終了の際の説明や当該義務における説明の程度を如何なる程度であるべきであるのかという点はなど関連する論点は含まれるものであり、今後の検討課題として、本件は参考となる資料として位置づけられるべきである。

以上、
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

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