2019年1月26日土曜日

判例裁決紹介(平成27年11月17日裁決、請求人に対する事前通知の不備と課税処分の取消事由該当性)

また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成27年11月17日裁決で、請求人が受けた調査において、特に事前通知等の不備があった場合に、係る調査に基づく、更正処分が取り消しうるものであるのか否かという点が問題となったものです。

具体的には、請求人(本件裁決においては具体的な課税処分の金額の適否に関しては争っていない)が、受けた調査において行われた調査の違法性が主たる争点となっているものであり、本件では特に事前通知と調査終了の手続の不備が違法と評価されうるものであるのかという点が具体的に問題となっている。特に事前通知のおいては税務代理人への通知は適法に行われており、請求人本人への通知が一部にとどまっており(事実認定においては、電話において請求人が税理士に委せていますとの旨をのべて中途としたようにもみえる)、下記のように法定された通知内容が一部未了の状態にあったことが、手続違反に該当するのかという点が問題となっているものである。事前通知制度が導入され、その他国税通則法の改正が行われてから、いくばくかの期間が流れたが、最近学会のテーマになるなど、手続の充足に関する議論は盛り上がってきているように捉えられる。本件も同様であるが、その制度の性質や特性、不備における対応等は、改正前の議論、判示を基礎としているものであり、現行法において同様の判断が行われるべきであるのかという点は、まだ定まっていないものと考えられるが、今後の検討を深める上で、特に本件は税務代理人への通知の対比においてその適否が問題となっており、調査の違法を構成をするものであるのかという点評価する上で、参考となるべきものと言えよう。特に本件では課税庁が請求人本人への通知が未了であることを認めており(しかるに不備があることの事実関係の争いはない)、かかる点においても特徴的なものであり、かかる上でも、その不備があった場合において、課税処分の取消事由として該当するのか否かという点が中心的な問題となろう。

(納税義務者に対する調査の事前通知等)
第七十四条の九 税務署長等(国税庁長官、国税局長若しくは税務署長又は税関長をいう。以下第七十四条の十一(調査の終了の際の手続)までにおいて同じ。)は、国税庁等又は税関の当該職員(以下同条までにおいて「当該職員」という。)に納税義務者に対し実地の調査(税関の当該職員が行う調査にあつては、消費税等の課税物件の保税地域からの引取り後に行うものに限る。以下同条までにおいて同じ。)において第七十四条の二から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求(以下「質問検査等」という。)を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者(当該納税義務者について税務代理人がある場合には、当該税務代理人を含む。)に対し、その旨及び次に掲げる事項を通知するものとする。
一 質問検査等を行う実地の調査(以下この条において単に「調査」という。)を開始する日時
二 調査を行う場所
三 調査の目的
四 調査の対象となる税目
五 調査の対象となる期間
六 調査の対象となる帳簿書類その他の物件
七 その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項

以上のように、本件の中心的な争点の1つは、請求人が受けた調査の事前通知が上記に定める通知事項を未了(不備)であった場合において、手続上の違法を構成するものであるのか否かという点である。事前通知は、平成23年改正(国税通則法)により、新たに設けられた調査手続においても目玉となるべき重要なものであり、本件判断が示すように、あるいは基礎としているように(下記)、

税務調査の手続は、租税の公平かつ確実な賦課徴収のために課税庁が課税要件の内容を構成する具体的事実の存否を調査する手段として認められた手続であって、その調査により課税標準の存在が認められる限り、課税庁としては課税処分をしなければならないのであり、また、更正処分の取消しを求める審査請求や訴訟においては客観的な課税標準の有無が争われ、これについて実体的な審査がされるのであるから、税務調査の手続の瑕疵は、原則として更正処分の効力に影響を及ぼすものではなく、例外的に、税務調査の手続が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたる等重大な違法を帯び、何らの調査なしに更正処分をしたに等しいものとの評価を受ける場合に限り、更正処分の取消事由となるものと解するのが相当

調査の不備がいたずらに課税処分の有効性を損なうものであるのか、原則としては不備においては課税処分の取消事由としては該当しないと考えることは、その対象範囲として適当であるのかという点は議論の余地がある(古くて新しい問題、私見としては、上記のような判断は、根本たる質問検査の趣旨目的において相違がない現況においては、かかる点においても変更はないものと考えるが)。上記判断は、その前提として、改正前の最判等をベースとしたものであり、本件の問題とする事前通知は対象とされたものではないが、調査手続も改正によって多様な手続が法定されおり、上記のように一律に対応することの是非は、たとえ一般論としては成立し得たとしても、個々の手続の趣旨目的を精査し、濫用等の重大な違反を如何なるものとして捉えるのか検討するべきである(一律に評価することは無理がある)。更に進めて刑罰法規の適用のあるような局面に限定するような議論もあり得ようが、かえって手続の整備の趣旨を損なうものとも評価されるものであり、慎重な検討が必要である。

本件は、請求人の通知が未了であり、代理人への通知は適法に行われている現況にあることが前提となった事実関係にある。かかるような状況であれば、判断のように、その処分を否定するまでの重大な違法性を帯びているとの評価は困難であるように、代理者において適法に処理されており、評価されることが多かろう。事前通知の趣旨、及び調査における税務代理の性格をどのように捉えるべきであるのかという点も検討の必要があるように考えられるが、法的な代理という性格(より詳細な民事法との対比が必要でもあろうが)を鑑みるに、代理人への通知をもってすれば、当該通知が適正であれば、調査の違法を構成しているように捉えることは困難であろう。税制改正においても同意を条件としているが(そもそもこの同意をどのように把握するのかという点も課題であるが)、税務代理人への通知のみで足りる旨の改正が明確にされている(本規定は創設規定として解するべきであろうが)。

5 納税義務者について税務代理人がある場合において、当該納税義務者の同意がある場合として財務省令で定める場合に該当するときは、当該納税義務者への第一項の規定による通知は、当該税務代理人に対してすれば足りる。

本件から鑑みるに、この両者への通知はどのような性格を有することになるのであろうか。事案は異なるが、両者への通知が異なるような場合も想定されよう。形式的なものはともかく、調査の必要性などの項目の相違は如何にして評価されるべきであろうか。このような場合においてはどのように考えるべきであるのか等より事例の集積を待つ必要があろう。そもそも事前通知の形態を電話でも可能としている点もまた、このような齟齬をきたす遠因であり、現状において、適正な手続を保護する観点からは、より整備があるとの見解もあり得るかもしれない(執行との衡量が必要でもあるが)。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2019年1月19日土曜日

判例裁決紹介(平成30年3月27日裁決、減価償却資産として否定された資産に対する償却超過額が翌期において損金経理が否認された事例)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年3月27日裁決で、減価償却資産として否定された資産に対する償却超過額が翌期において減価償却費用として損金計上が否認された事例です。

具体的には、本件は太陽光発電を営む請求人が当初の申告において、未だ事業のように供していないとして償却費を損金計上したしていたものを、修正申告により償却超過額として処理した場合において、かかる修正申告を前提として、翌事業年度において、事業に共用したとして当該超過額を償却費として認容されるべきであるのか、という点が問題となった事例である。最終的な判断としてその損金としての計上を否認した判断が肯定されている事例として留意されるべき点を示しているものと捉えられる。償却超過額の存在とその後処理を巡る事例であり、事例としては特段、珍しいものであるようにも考えられるが、費用収益の対応、法人税法上における損金経理の要請の趣旨目的との対比など、関連する論点は多岐にわたるものといえよう。そもそもとして企業会計における減価償却としての費用配賦と法人税法が律する償却費計算における差異が反映されている事例だろう。単に費用項目として減価償却を捉えていると、本件のようなリスクが発生しうる点は、特にその背景となるべき、事業の用に供している点を如何に判断しているのかがかかるような問題も引き起こすことは留意されるべきであろう。

本件はその初期において、償却超過額として処理した点、そもそもこれは減価償却資産として判断した捉えたこと自体が問題の起点となったものであり、実質的には、償却費として本来ならばタイミングのズレがなければ、通常と同様に、償却費として計上可能なものである。かかるような原則的には費用計上が可能なものが、否定される結果となっている点が特徴的な事例であり、かかる点が如何なる解釈をもって正当化されるものであるのかという点が、あるいはかかる処理を回避することができるのかが注目されるべきであろう。このような償却費の計上においても事業の用に供するという点が判断のタイミングとして影響を及ぼすことは租税の専門家として留意すべき点を示唆していると評価されるのではないだろうか。・・・それにしても最近の裁決は、太陽光発電に関する事例が多い印象。何か理由があるのであろうか、投資資金が流れ込みの運用として租税負担が問題となることが増加しているのであろうか。

二十三 減価償却資産 建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう。
(減価償却資産の範囲)
第十三条 法第二条第二十三号(減価償却資産の意義)に規定する政令で定める資産は、棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする。

以上のように本件の中心的な争点は減価償却費用として損金計上しながらも、かかる償却費の基礎となる資産が事業のように供していないとしてその損金計上を否定され、発生した額を修正申告において償却超過額として処理した場合において、当該超過額が翌期において(当該資産が減価償却資産として認められ)、通常の償却超過額と同様に損金として、経理したものとして認容されるべきものであるのか否かという点が問題となっているものである。通常、事業の用に供しているような資産であれば、減価償却資産として認められ(そもそもこの事業のように供しているとは如何なる意義を有しているものと解されるのか、何をもって判断されるべきであるのかという点は、更には法人税法上において事業とは如何なるものとして判断されるべきものであるのかという点は必ずしも明らかではなく、かかる判断に苦慮する場合があることは数多くの事例が示していることであろう。かかる判断、事実関係への当てはめが本件の起点となっているものと評価されよう。)、係る資産に関するものとして、償却超過額として下記の法人税法31条4項に従って、損金経理したものとして認められることは、法文上明らかである。本件では、そもそも償却超過額として処理したものが当初段階においては、事業の用に供する段階になく、もって減価償却資産に関する償却費として損金経理したものとみなすことができないことで、下記の適用がないものとして理解する判断プロセスが採用されている。 

減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)
第三十一条 内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその償却費として第二十二条第三項(各事業年度の損金の額に算入する金額)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、その取得をした日及びその種類の区分に応じ、償却費が毎年同一となる償却の方法、償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法その他の政令で定める償却の方法の中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を選定しなかつた場合には、償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額(次項において「償却限度額」という。)に達するまでの金額とする。

4 損金経理額には、第一項の減価償却資産につき同項の内国法人が償却費として損金経理をした事業年度(以下この項において「償却事業年度」という。)前の各事業年度における当該減価償却資産に係る損金経理額(当該減価償却資産が適格合併又は適格現物分配(残余財産の全部の分配に限る。)により被合併法人又は現物分配法人(以下この項において「被合併法人等」という。)から移転を受けたものである場合にあつては当該被合併法人等の当該適格合併の日の前日又は当該残余財産の確定の日の属する事業年度以前の各事業年度の損金経理額のうち当該各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されなかつた金額を、当該減価償却資産が適格分割等により分割法人、現物出資法人又は現物分配法人(以下この項において「分割法人等」という。)から移転を受けたものである場合にあつては当該分割法人等の分割等事業年度の期中損金経理額として帳簿に記載した金額及び分割等事業年度前の各事業年度の損金経理額のうち分割等事業年度以前の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されなかつた金額を含む。以下この項において同じ。)のうち当該償却事業年度前の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されなかつた金額を含むものとし、期中損金経理額には、第二項の内国法人の分割等事業年度前の各事業年度における同項の減価償却資産に係る損金経理額のうち当該各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されなかつた金額を含むものとする。

一般的な会計基準によれば、本件のような減価償却費としての計上は、費用収益の対応の観点から、否定されるべきものではなく、22条4項における公正処理基準の関係から法人税法の観点からも許容され、投下資本の分散計上として適正な利益・所得額の算定において、考慮されるべきものと評価されることになるだろう。かかるような点からその形状を認めるべきと言う納税者の主張は、同意できる点も含まれている点は否めない。しかしながら、かかるような租税負担の基礎となるべき適正な妥当な金額の追求(会計基準における利益情報等の適正な算定と同旨)に関しては、そもそもとして減価償却自身が一種のフィクションであり、法人税法においては損金経理や法定耐用年数等の法定化されている点を十分に考慮していない。そもそも法人税法は、一定の便宜を考慮して、公正処理基準として会計基準を考慮しており、無制限にその計上を認めているものではないことは留意されるべきであろう(別段の定めをおいてコントロールしている)。かかる点において、適正・妥当な金額の追求という点は、法定されている趣旨との対比において劣位に置かざるを得ないものと考えられる(これを逆基準として批判する意見もあろう)。かかる典型が本件における償却費の計上であり(減価償却費ではなく)、内部的な取引の性質に鑑みその計上を制限しているものと理解されるべきであろう。請求人の主張のように、公正処理基準や太陽光発電に対する政策意図(そもそも主張される点が存在しているのかは定かではないが)をもって実質的な償却費としての性格からその計上を図ることも租税法規が実質を考慮することをその背景としていることから、一定の合理性を有しているが、明文をもって規定している法人税法の償却費の計上を覆し、拡張的にその計上において解することは私見ながら困難であると考えられる。法が想定しているみなしとしての損金経理は前提として償却資産としての存在を基礎としているものであり、かかる点から、上記の法文を本件において適用は困難であるという判断は、衡平に適うものであろう。実質的には本件は過年度の損益の変更により対応すべきものであろうが、あるいは事業の適格な開始判断によるべきであるが、上記により、かかる点は必ずしも容易ではない(特に太陽光発電などのように、比較的新しい類型の事業構造においては、判断に苦慮することになろう)。本件はいわば、恣意税の排除と適正な所得計算のバランスを如何に捉えているのかという点が背景にあるものといえようが、租税法律主義の基本的な要請からは、明文をもって規定している点を超えて、判断を行うことは困難と評価せざるを得ない(かかる点において会計基準を基礎とする主張は劣位とならざるを得ないものと考えられる)。


以上です。毎度のことながら論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。


2019年1月12日土曜日

判例裁決紹介(静岡地判平成27年12月4日、調査における合意と納税義務の消滅)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、調査において一定額納税を行えば、滞納国税が免除される旨の合意があったものとして、差押えを受けたことを不服として国賠訴訟を起こしているものです

具体的には、本件は、差押えを受けた原告が当該差押え対象となる滞納国税も含め、調査においてすでに一定額の納付をもって消滅する旨の合意があったとして、当該合意に反する差押えが行われることは、当該合意に反するものとして国家賠償請求を行ったものである。

そもそも調査担当職員において、このような一定額の納付を持って課税関係を終了する、納税義務を消滅させる権限が付与されていることは基本的にないものであり、かかるような合意がいかなるものであるのかという点が、起点となっている事例であろう。本件自身は、そもそも原告が主張する調査段階における合意は、対象となった滞納国税(原告が滞納租税債務を有する対象を合併)が現出する以前の問題であり、かかるような事実関係が行われる可能性は、ありえないものとして、原告の主張が排斥されている。しかるにこのような事実関係では特段、かかるような合意の存在が立証されうるものであるのかという点は問題とならないものとも言えようが、実際、かかるような調査段階においては、シャウプ勧告の時代においても納税額の合意(交渉)等が行われていることで、調査団の驚きを招いたような事例があったこともあるが、古くから、このような調査段階でのやり取りが問題とされるような状況は少なく、納税義務の消滅において、調査段階でのやり取りが如何なる権限を持つものであるのかという点を検討する上で、参考となる事例ではないだろうか。本件では事実関係において合意の事実関係そのものが存在が否定される得るものであり、調査段階におけるやり取りが問題とはならないものであるのかもしれないが、かかるように調査段階におけるやり取りをどのような性格を持つものであるのかという点は租税法規の性格からも興味深い点ではないだろうか。

判示においては、納税義務の消滅対象となるべき、免除に該当するような行為があったのかという点を問題としているが、実質的にはこのような行為は、旧法における慫慂に該当するような行為であり、修正申告をもってその課税関係が終了することが通常であるように考えられる。旧法化においては、慫慂は法定されているものではなく、その位置づけは、議論としても如何なる性格を有しているのかという点は課題とされる事例は少なかった。本件もそのような背景にあるものであるが、かかるような形で訴訟としてその、効力を争ったものとして評価することができるのではないだろうか。 合意という行為は課税処分に関しては存在しておらず、実質的には担当者からの説明により何らかの修正申告を行うことを当該合意として理解しているように捉えられる。

いずれにしても現行法においては、調査段階における調査官からの課税事実に関しては、勧奨が法定され、その行為の意義にいついては今後の研究課題であるように考えられる。現段階ではその法的な性格は必ずしも明らかではなく、勧奨において行われた内容に基づく、修正申告や信義則の適用など、慫慂との対比においてその性格を議論することもまた、一つのアプローチであろう。かかるように考えれるならば、調査段階において、調査対象において免除や合意としてその性格を検討する本件は一定の参考となるだろう。調査の実態において、かかるような合意、説明、慫慂を、免除として取り扱うことは基本的に困難であるようにも考えられるが本件においては明示的に判断は行われていない。調査官の権限として免除の権限は付与されておらず、納税義務の消滅を基礎づける行為として、位置づけがたいものとして評価されるものではないだろうか。信義則の適用対象となるべきものとして公の見解になるのかという点も興味深い。

調査終了の際の説明や当該義務における説明の程度を如何なる程度であるべきであるのかという点はなど関連する論点は含まれるものであり、今後の検討課題として、本件は参考となる資料として位置づけられるべきである。

以上、
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

2019年1月5日土曜日

判例裁決紹介(平成29年8月24日裁決、国外のスポーツ賭博の払戻金の所得区分、事前通知の例外事由)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成29年8月24日裁決で、国外のスポーツ賭博へのベット(取引)による払戻金が如何なる所得として取り扱われるべきであるのかという点が問題となっている事例です。

具体的には、請求人が国外のブックメーカーが提供するスポーツ賭博に対してインターネットを通じて取引(ベット)を行っていた場合において、当該取引における払戻金の受領が如何なる所得分類に該当し、課税対象となるのか否か、そして、当該調査における事前通知を行わなわなかった(調査日に直接自宅を訪ね、連絡をとって面会調査を行っている)ことが、調査手続における違法に該当し、もって課税処分が取消対象となりうるものであるのかが争点となっているものである。近年は、特にこの裁決の調査段階では、ソフトウェアを活用した競馬に関する所得の所得分類が、いかなるものに該当するのか(一時か雑か)という点が争われた事例(当該所得における経費控除の対象がどのようなものであるのかという点も含む)が、専門家業界のみならず、一般にも話題となったものであり、本件もその同様の類型に属する事例であり、賭博に類する行為(そもそも国外でのスポーツに関する賭け事であり、賭博罪が成立するのかも含め議論の余地はあるであろうが、あくまでもその違法性は問題とならず所得課税の問題として)による所得が如何なる所得分類に該当し、課税を行うべきであるのかという点、また、その経費をどの程度対象として所得計算に反映させるべきものであるのかという点もが中心的な問題となっており、同様の類型に属するものであるとして、捉えられよう。かかる上で近年のインターネットを介した取引における所得を如何に捉えるべきであるのかという点を検討する上で参考となるべきものと考えられる。また、本件は、当該調査に関して事前通知を行っておらず、調査における不備(違法と評価するのかどうかも含め)が課税処分においてどのような影響を及ぼすものであるのか、あるいは、事前通知を要しない、例外的な場合を検討する上でも参考となるべきものと考えられる。


以上のように、本件の中心的な争点は、平成23年度に導入された調査(質問検査)における事前通知が実施されているものであるのか否か、という点が手続上の不備に該当し、もって当該調査の取消しを求めている点である。判断では下記のように、調査段階での不備が必ずしも違法性を有しており、もって処分の取消事由となるべきものではないという一般的な判断を行った上で、当該事前通知等に関する納税者の主張を退けている。かかる一般的な解釈の例外として、これも下記のように、重大な違法を有している場合において、すなわち刑罰法規に触れるような場合において、当該調査における取消事由を構成するものとして判断を示している。かかるような解釈は、平成23年の改正前における判示が基礎となっているものであり、質問検査権の行使につき多様な手続を定めた改正後も当該解釈が成立しているのかという点は未だ結論が出ていない点である。すなわち現行法においても同様に解釈できるものであるのかという点は、より検討が必要であろう(かかる点は定かではないと考えざるを得ない)。少なくとも刑罰法規への抵触に限定して、調査手続の不備と処分取消を関連付けることが妥当であるのかという点は議論があろう。私見としては、調査手続の基本的な趣旨は、租税負担の公平性を担保すべきことを基礎としているものであり、かかる点は平成23年改正においてもその変更はないものと捉えられ、従って、かかる点を基礎とする以上、取消事由を手続の不備一般に拡張して考えることは合理性を有していいないものと考える。ただし、その例外として不備があった場合において、刑罰法規への抵触を基礎としているのかという点はより、例外となるべき事象は異なる可能性もあることは、否定しがたいものとも考えられる。仮に重大な違法い限定すると解すると、改正の趣旨が損なわれることにもなりかねない(そもそも改正の趣旨が説明責任の強化という曖昧な概念であるが)。特に従前と異なり、質問検査の行使においては事前段階、終了、勧奨等、様々な段階における調査手続の整備が図られたものであり、従来の身分証や理由附記程度ではなく、かかる点を鑑み、より詳細な例外対象を検討すべきものであろう。たとえ重大な違法に限定すると解するとしても、そもそもいかなる場合に重大な違法と評価するのかという点は、各手続の趣旨目的に依拠することになるだろう。

通則法は、第7章の2において、国税の調査の際に必要とされる手続を規定しているが、同章の規定に反する手続が課税処分の取消事由となる旨を定めた規定はなく、また、調査手続に瑕疵があるというだけで納税者が本来支払うべき国税の支払義務を免れることは、租税公平主義の観点からも問題がある考えられるから、調査手続に単なる違法があるだけでは課税処分の取消事由とはならないものと解される。
 もっとも、通則法は、第24条《更正》の規定による更正処分、第25条《定》の規定による決定処分、第26条《再更正》の規定による再更正処分等について、いずれも「調査により」行う旨規定しているから、課税処分が何らの調査なしに行われたような場合には、課税処分の取消事由となるものと解される。そして、これには、調査を全く欠く場合のみならず、証拠収集手続に重大な違法があり調査を全く欠くのに等しいとの評価を受ける場合も含まれるものと解され、ここにいう重大な違法とは、証拠収集手続が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたるなどの場合をいうものと解するのが相当である

より具体的には判断は、下記のように、事前通知の要否に関して処分行政庁の主張を全面的に受け入れている。その不備違法を主張する請求人の主張を排している。市kしながら上記のように一般的な不備に関する取消事由との関連を述べるにとどまっており、例外としての該当性を否定している。さらに、下記のように事前通知を要しない場合における法定された要件の充足を明示していない。請求人が関連する資料を破棄するなどという課税庁の主張を客観性があるものとして所与のものとして受け入れているのみであって、下記 違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合とは」
とはいかなる場合を指すものであるのか、その解釈を示していない。どの部分が該当しているのか、、当該部分の解釈を示しておらず判断のプロセスが明確ではない。法が定める例外事由に該当することをもってその違法性を排している以上、より詳細な検討が含まれるべきものではないだろうか。例えば、違法または不当な行為とは如何なるものを意味しているのか(同族会社の行為計算否認の事例も含め不当とは如何なる意義を有するのかという点は多様な論点が存在する)、又は把握を困難にするおそれとは如何なる程度を指し示し、また誰がその判断を行うのか(質問検査の必要性と同様に課税庁にその判断が委ねられているのであろうか)等、連年の無申告や国外との取引がなぜ、この法廷の例外に該当するものと判断されるのかという点はより詳細に検討が必要であるように評価される。かかる例外事由を定めた規定は、解釈いかんによっては、事前通知の対象を限定するものとなりうるものであり、もって事前通知の法定を図った趣旨を損なう可能性もあり得よう。調査を実効的に果たすためには例外的な事由を必要とすることは、至極当然のことであろうが、かかる点においてその具体的な範囲を解釈論としてより検討すべきものであるのではないだろうか。

(事前通知を要しない場合)
第七十四条の十 前条第一項の規定にかかわらず、税務署長等が調査の相手方である同条第三項第一号に掲げる納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場には、同条第一項の規定による通知を要しない。

しかしながら、請求人は、具体的な取引形態は不明であるものの、国外の事業者(■■■■■)がインターネットを通じて行う送金サービス等を利用し、国外取引により何らかの資金を稼得していることがうかがえる上、連年無申告であったというのであるから、このような場合、事 前通知をすることにより、請求人が関連資料を破棄するなど、通則法第74条の10に規定する「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があると認められる。
一時所得)
第三十四条 一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。
2 一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする。
3 前項に規定する一時所得の特別控除額は、五十万円(同項に規定する残額が五十万円に満たない場合には、当該残額)とする。

また、以上のように本件判断は、ベット取引における払戻金を競馬に関する最高裁事例に当てはめ検討している。基本的には事実認定の問題である。しかしながら、具体的な事実の認定においては、多数かつ多額の取引を行っていると認識していないがらも、個々の取引における払戻金の受領を目的としており(トータルとしての損益はともかく)、その納税者の意図から、一時所得に該当する旨の判断を行っている。このように多数回の取引の実施など(ソフトウェアを使用していないが、この点は上記最判の後の判断で必ずしも重要な要件とはされていない、このソフトウェアの利用も例示にとどまるものと捉えるべきものであろう)、の客観的な条件は満たしながらも、納税者の主観的要因を判断の基礎においている。この点は最判でも必ずしも明示的にされていない点であり、特徴的な判断であろう(是非はより検討が必要であろうが)。また営利性を有するかどうかについては、トータルの利益を基礎として(トータルでは損失が発生している)、営利性が欠如しているとして事後的な情報を活用して、更には課税としては一時所得として個々の取引を基礎としているのにもかかわらず、かかるような判断は、整合性がかけるものと判断される余地もあるのではないだろうか。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。