さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京地判平成29年12月6日で、資本剰余金と利益剰余金を原資とする配当におけるみなし配当計算方法が問題となった事例です。
具体的には、内国法人である原告が、子会社である外国法人より受領した配当につき、利益剰余金と資本剰余金を原資とするものであるとして、それぞれ個別に課税上の対応【益金不算入、みなし配当の計算】を行っていた場合において、かかる配当は同一日に行われたものであり、一体のものであるとして、すなわち双方を原資とした配当であり、経済的価値の流入であり、全額がみなし配当の計算の対象となるものであって、益金不算入の過大計上であるとして(もって連結での所得金額の減少、繰越欠損金の減少)、更正処分が行われた事例である。外国子会社からの配当であり、かかる点においては特殊なケースであるようにも考えられるが、問題となっているみなし配当の計算の対象を如何に解するべきであるのかという点が起点となっているものであり、かかる解釈を示した事例としては先例的価値を有するものと考えられる。法人税法における資本部分に関する取扱が問題となっているものであり、非常にテクニカルな事例ともいえようが、判示においては、最終的に課税庁が主張するようにみなし配当の対象として資本剰余金と利益剰余金双方を原資とする場合も含まれうるものであるとした解釈を支持しているものの、最終的には、その委任を受けた施行令における計算規定が、二重課税を排除をすることを趣旨とする本文規定との間で委任を逸脱している部分があるとして、原告の請求を一部認容している。このように、租税法の基本的な要請として政令への委任の限界を検討する上でも参考となるべき事例と捉えられよう。高裁でもこの判断が維持されるか不明であるが、法人税法における資本部分に関する租税上の取扱を律する貴重な事例であり、特に近年は、受取配当金に対する益金不算入規定が改正されたこともあり、実務上も重要な事例となるものと考えられる(より深く検討したい)。
(受取配当等の益金不算入)
第二十三条 内国法人が次に掲げる金額(第一号に掲げる金額にあつては、外国法人若しくは公益法人等又は人格のない社団等から受けるもの及び適格現物分配に係るものを除く。以下この条において「配当等の額」という。)を受けるときは、その配当等の額(完全子法人株式等、関連法人株式等及び非支配目的株式等のいずれにも該当しない株式等(株式又は出資をいう。以下この条において同じ。)に係る配当等の額にあつては当該配当等の額の百分の五十に相当する金額とし、非支配目的株式等に係る配当等の額にあつては当該配当等の額の百分の二十に相当する金額とする。)は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。
一 剰余金の配当(株式等に係るものに限るものとし、資本剰余金の額の減少に伴うもの並びに分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)若しくは利益の配当(分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)又は剰余金の分配(出資に係るものに限る。)の額
(外国子会社から受ける配当等の益金不算入)
第二十三条の二 内国法人が外国子会社(当該内国法人が保有しているその株式又は出資の数又は金額がその発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の二十五以上に相当する数又は金額となつていることその他の政令で定める要件を備えている外国法人をいう。以下この条において同じ。)から受ける前条第一項第一号に掲げる金額(以下この条において「剰余金の配当等の額」という。)がある場合には、当該剰余金の配当等の額から当該剰余金の配当等の額に係る費用の額に相当するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。
配当等の額とみなす金額)
第二十四条 法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。以下この条において同じ。)の株主等である内国法人が当該法人の次に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあつては、当該法人のその交付の直前の当該資産の帳簿価額に相当する金額)の合計額が当該法人の資本金等の額又は連結個別資本金等の額のうちその交付の基因となつた当該法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは、この法律の規定の適用については、その超える部分の金額は、第二十三条第一項第一号又は第二号(受取配当等の益金不算入)に掲げる金額とみなす。
四 資本の払戻し(剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち分割型分割によるもの及び株式分配以外のもの並びに出資等減少分配をいう。)又は解散による残余財産の分配
五 自己の株式又は出資の取得(金融商品取引法第二条第十六項(定義)に規定する金融商品取引所の開設する市場における購入による取得その他の政令で定める取得及び第六十一条の二第十四項第一号から第三号まで(有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入)に掲げる株式又は出資の同項に規定する場合に該当する場合における取得を除く。)
六 出資の消却(取得した出資について行うものを除く。)、出資の払戻し、社員その他法人の出資者の退社又は脱退による持分の払戻しその他株式又は出資をその発行した法人が取得することなく消滅させること。
「法人税法23条1項1号の
「剰余金の配当(‥資本剰余金の額の減少に伴うもの‥ を除く。)」との規定が、
その文理上、資本剰余金を原資とせず、益剰余金のみを原資とする剰余金の配当を意味するものであることは明らかであるから、同号にいう「剰余金の配当(‥資本剰余金の配当の額の減少に伴うもの‥を除く。)」とは、利益剰余金のみを原資とする剰余金の配当を指すものと解するのが相当である。そして、
法人税法24条1項3号の「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)」との規定は、同法23条1項1号の「剰余金の配当(‥資本剰余金の額の減少に伴うもの‥を除く。)」との規定と対になった規定であり、このうち同法23条1項1号の規定が上記のとおり利益剰余金のみを原資とする剰余金の配当を意味するものであることからすれば、その
文理の論理的帰結として、同法24条1項3号の規定は、利益剰余金のみを原資とする剰余金の配当を除いた剰余金の配当、すなわち、資本剰余金のみを原資とする剰余金の配当及び資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当を意味するものと解するのが自然である。また、同法24条1項柱書きの「株式又は出資に対応する部分の金額」の計算の方法は、同法の委任を受けて政令で定めることとされているところ(同条3項)、政令の定めの内容いかんによっては、資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当が行われた場合に、資本剰余金を原資とする部分の剰余金の配当と利益剰余金を原資とする部分の剰余金の配当のいずれが先に行われたとみるかによって、上記の「株式又は出資に対応する部分の金額」及びみなし配当の金額が異なる結果となり、そこに恣意性が介在して課税の公平性を損なうこととなる事態も想定され得ることから、資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当を同法24条1項の適用を受ける剰余金の配当と整理することによりこの問題の解決を図ったものであるとする被告の主張には合理性が認められ、同法23条1項1号及び24条1項3号の規定が「資本剰余金を原資とするもの」という端的な規定振りではなく、「資本剰余金の額の減少に伴うもの」という含みを持たせた規定振りとなっているのも、上記のような趣旨によるものと解することができる。したがって、同法24条1項3号にいう「剰余金の配当資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)」とは、資本剰余金のみを原資とする利益余金の配当及び資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当を指すものと解するのが相当である。
」
以上のように、本件は原告がなした配当に対する原資のいかんによってその取扱を決定する上で、以下にみなし配当の計算対象を解すべきであるのかという点が課題となった事例である。複合的な理由によるものであるが、判示は課税庁の主張を認め、みなし配当の対象として、
資本剰余金の額の減少に伴うもの‥
という文言において、これを資本剰余金に限定されるべきものであるのか、あるいは、資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とするものを含むものと捉えるのか見解が別れた点に対して、双方を含むものとして判断した。そもそも、配当の原資は、その原資を如何に行うかは、経営判断に属するものであり、資本政策によるものであって、実際の資金源泉は法人内部の余剰資金を当てることに差異はなく、裁量の余地が大きいものである。ここに課税上その原資によって取扱を変化させることは、恣意の介在する余地を生むことになり、法人税法が一般規定によって資本等取引と損益取引を区分していることとバランスを取る必要があるものであると考えられる。本件判示はかかる点において、恣意の余地が生まれることなどを回避すべきものとして、資本剰余金の額の減少を伴うものという、いささか不安定な、不明瞭な文言をを解しているものと評価される。確かに法人税法は22条5項において資本等取引と損益取引を区分しているが、かかる点において資本と利益を区分することを大原則としているという理解を行うことも可能であろうが、すなわち、借用概念として資本剰余金を限定しているものと理解することも一定の合理性を有している。しかしながら当該区分はあくまでも所得計算における規定(すなわち適正な所得を算定する目的)であり、かかる点を強調して法人税法一般に適用可能であると考えることは早計であろう。上記のように、二重課税を調整することを目的とする(もちろんこの部分も資本と利益の区分と関連しているといえようが)みなし配当における恣意の抑制等も法人税法が要請する重要な原則であると理解すべきであろう。
また、本件では、資本剰余金と利益剰余金を原資とすることについて、本件配当を行った外国子会社の設立地における法概念の検討を行っていない。いわば、Capitalのリターンとdivendの相違であるようにも考えられるが、所与の前提のように外国法に基づく設立法人の配当に関する行為を日本法の概念(特に資本剰余金と利益剰余金)に当てはめているように捉えられる(設立地における法規定の性格を検討していない)。近年は外国法人としての権利帰属義務の主体となった存在にLPSが該当するものであるのか否かという点が争点となる事例が裁判例において多数未うけら得るようになってきたが、本質的にこの国際化が進展した現代において、諸外国における法概念を如何にして租税法規の適用において反映させるべきであるのかという点は重要な論点ではないだろうか。そもそも、この場合において比準対象となる利益剰余金や資本剰余金の概念自体が民事法において明確であるのかという点も更に検討が必要であろう。
法人税法施行令
四 法第二十四条第一項第四号に掲げる資本の払戻し又は解散による残余財産の分配(次号に掲げるものを除く。以下この号において「払戻し等」という。) 当該払戻し等を行つた法人(以下この号において「払戻法人」という。)の当該払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等(当該直前の資本金等の額又は連結個別資本金等の額(以下この号において「直前資本金額等」という。)にイに掲げる金額のうちにロに掲げる金額の占める割合(直前資本金額等が零以下である場合には零と、直前資本金額等が零を超え、かつ、イに掲げる金額が零以下である場合又は直前資本金額等が零を超え、かつ、残余財産の全部の分配を行う場合には一とし、当該割合に小数点以下三位未満の端数があるときはこれを切り上げる。)を乗じて計算した金額をいう。)を当該払戻法人の当該払戻し等に係る株式の総数で除し、これに同項に規定する内国法人が当該直前に有していた当該払戻法人の当該払戻し等に係る株式の数を乗じて計算した金額
イ 当該払戻し等を第二号イの分割型分割とみなした場合における同号イに掲げる金額
ロ 当該資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額又は当該解散による残余財産の分配により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあつては、その交付の直前の帳簿価額)の合計額(当該減少した資本剰余金の額又は当該合計額がイに掲げる金額を超える場合には、イに掲げる金額)
イ 分割型分割の日の属する事業年度の前事業年度(当該分割型分割の日以前六月以内に法第七十二条第一項(仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等)又は第八十一条の二十第一項(仮決算をした場合の連結中間申告書の記載事項等)に規定する期間についてこれらの規定に掲げる事項を記載した中間申告書又は連結中間申告書を提出し、かつ、その提出の日から当該分割型分割の日までの間に確定申告書又は連結確定申告書を提出していなかつた場合には、当該中間申告書又は連結中間申告書に係るこれらの規定に規定する期間)終了の時の資産の帳簿価額から負債(新株予約権に係る義務を含む。)の帳簿価額を減算した金額(当該終了の時から当該分割型分割の直前の時までの間に資本金等の額若しくは連結個別資本金等の額又は利益積立金額若しくは連結個別利益積立金額(第九条第一項第一号若しくは第六号(利益積立金額)又は第九条の二第一項第一号若しくは第四号(連結利益積立金額)に掲げる金額を除く。)が増加し、又は減少した場合には、その増加した金額を加算し、又はその減少した金額を減算した金額)
以上のように原則的な判断として、本件では、みなし配当の計算における配当の原資の対象として資本剰余金に限定されるものとは解さず、資本剰余金と利益剰余金双方を原資としている。しかしながら最終的な判示では、原告の請求を一部認めている。その理由としては、上記規定が基本的に二重課税の排除(利益に対するもの、国際的な)を基本目的としたものであり、かかる点からはテクニカルな規定であるが、その具体的な上記政令に委任された計算規定がその趣旨と比して委任から一部逸脱していると場合がありうるとして、本件はその場合に該当するとしているものである。すなわち、双方を原資とすることで、上記事例における減少した資本剰余金の額の計算額が実際の資本剰余金の減少額よりも多額となり、もって利益剰余金による配当部分を侵食し、実質的に二重課税を引き起こす可能性を指摘して、かかる部分は委任の範囲外であるとして適用を否定しているものである。具体的に判示では、以下のように、
「法人税法23条1項の規定が、支払法人の段階で課税済みの利益の配当について、これを受ける法人に重複して法人税を課すことを避けるために、また、同法23条の2第1項の規定が、源泉地国で課税済みの所得の配当に対して我が国が重ねて課税するという国際的な二重課税を排除するために、さらに、同法24条1項の規定が、法人の資本の払戻しの中に含まれる経済的にみて利益の配当と同一と考えられる部分について、上記各規定と同様の取扱いとするために、当該各配当の額及びみなし配当の金額(外国子会社から受けるものについては費用の額に相当する金額を控除した金額)を益金不算入としていることに鑑みると、同法は、利益剰余金を原資とする部分の剰余金の配当の額が、同法24条1項柱書きの「株式又は出資に対応する部分の金額」に含まれて同法61条の2第1項1号にいう有価証券の譲渡に係る対価の額として認識され、法人税の課税を受けることとなる事態を想定していないものと解される。したがって、同法の委任を受けて政令で定める上記「株式又は出資に対応する部分の金額」の計算の方法に従って計算した結果、利益剰余金を原資とする部分の剰余金の配当の額が上記「株式又は出資に対応する部分の金額」に含まれることとなる場合には、当該政令の定めは、そのような計算結果となる限りにおいて同法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であると解するのが相当である。
これを法人税法施行令23条1項3号の規定についてみるに、同号の定める計算の方法に従って「株式又は出資に対応する部分の金額」を計算すると、払戻法人の簿価純資産価額が当該剰余金の配当直前の資本金等の額を下回る場合(被告主張の別表2-1によれば、本件はこの場合に当たる。)、すなわち、当該剰余金の配当直前の利益積立金額が0未満(マイナス)である場合には、減少した資本剰余金の額を超える「払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等」が算出されることとなるから(別紙の最下段の算式参照)、当該剰余金の配当が資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とするものであった場合には、利益剰余金を原資とする部分の剰余金の配当の額が上記「払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等」に含まれることとなり、ひいては「株式又は出資に対応する部分の金額」に含まれることとなる。」
「 被告主張の別表2-1によれば、本件の払戻法人である■■■■の本件配当直前の資本金等の額(同表①欄)は2億1105万7771.56ドルであるのに対し、簿価純資産価額(同表⑤欄)は9768万4743.50ドルであり、後者が前者を下回るため、法人税法施行令23条1項3号の定めのとおりに計算すると、「払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等」(同表⑧欄)及び「株式又は出資に対応する部分の金額」(同表⑨欄)が共に上記直前の資本金等の額と同額の2億1105万7771.56ドルとなって、本件配当により減少した資本剰余金の額(同表⑥欄)である1億ドルを超えることとなるから、上記「払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等」(同表⑧欄)及び「株式又は出資に対応する部分の金額」(同表⑨欄)はいずれも上記減少した資本剰余金の額(同表⑥欄)と同額の1億ドルに修正されるべきこととなる。そうすると、本件配当の額のうちのみなし配当の金額(同表⑪欄)も5億4400万ドルに修正されるべきこととなり、本件利益配当の額と同額となる。」
述べ、二重課税の状況を排することを基本的な趣旨とする本件規定において、政令の計算規定はその趣旨に反する状況を生み出す可能性を備えていることを指摘している。利益剰余金の原資としての蓄積が少ない中において、双方を原資とする配当が行いうるものであるのか(そもそも、配当の源泉たる資金に色はついていないので可能ではあるのであろう)、という点は検討の余地があろうが、本文規定の趣旨と政令における計算規定の不整合を課題として認識しているものである。
この二重課税の排除という趣旨が如何なるものであるのか、どの程度の二重課税を排除すべきものであるのか、完全な排除を示唆するものであるのか、若干の部分は残しても差し支えないものであるのか等、あるいは国際的な二重課税とすでに課税された存在との二重課税を同列に扱っていよいのかというような検討は行われておらず、単にsンプルな二重課税を排除することをその趣旨としているという理解が判断の基礎になっているように評価される。かかる詳細な検討がかけている場合において、上記のように本文の委任の範囲から逸脱しているとの評価は如何なるものと考えるべきであろうか。正式には趣旨に反する状況が発生しうるという点が問題になっているものであって、委任の範囲に関する問題であるのかという点も問題となろうが、また、二重課税の排除も一律ではなく、幅がありうるものであり、かかる点に対して一定の裁量の幅があることも必ずしも否定されるべきものではなく、委任の範囲とその逸脱に関しては、租税法規の基本的な要請として白紙委任を禁じていることは明らかであろうが、その他、どの程度の委任の範囲を問題とすべきものであるのかという点は、租税法の重要な課題であり、かかる点からも貴重な事例であるように本件は捉えられる。
また本件では、問題となった配当は、双方を原資とするものとして、すなわち一つの配当であるかのように、という点を前提にして判断している。確かに法令解釈上は、双方を原資とする場合も含むことは租税法規の解釈として一定の合理性を有していることは否定し難いが、原告が主張するようにこれは別途の、個々の配当であり、これを一体として捉えることの是非がまずは問題であるようにも考えられよう。この点については判示では特に触れられていないが、また上記の外国法の概念とも関連することであるが、みなし配当の計算において、その対象となる配当を如何なる単位をもって捉えるべきであるのかという点は、検討されるべきであろう。法文上、かかる点に関しては、剰余金の配当とあるだけで、その単位を具体的に判断する手段は法定されていない。多様な配当政策が今日では想定されるところであり、この部分を明示することは困難であるとの判断とも考えられるが、私法上、その配当が許容されている場合において、租税法規において、かかる個々のような配当をひとまとめとして捉え直して、課税対象を決定することは法的安定性など保護を基本的な要請とすることで納税者の信頼を保護することを基本的な要請としていることから鑑みるならば、法的な性格、形式を離れた諸理を行うためには法的な根拠を必要とすると理解すべきであろう。剰余金の配当という文言は、特段の条件が付与されているものではなく、会社法の借用として、法的な個々の配当を原則として捉えるべきではないだろうか。確かに本件配当は同一日に行われた経済的価値の流入である。しかしながらこのような一定のタイミングとしての経済的価値の流入として配当を捉えていることは、いわば固有概念として、理解しているようにも考えられ、租税法規の原則的な解釈指針とは相容れないものである。まずはこの計算の対象となる剰余金の配当が如何なるものであり、かかる点からその原資が個々に特定され、計算されるべきものであろう。
以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。