具体的に本件は医師である請求人が配偶者から診療所を引き継ぐに
あくまでも本件は医師という専門資格が前提となる専門職における
第六条 法第二条第一項第十九号(減価償却資産の意義) に規定する政令で定める資産は、棚卸資産、 有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの( 時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする。
八 次に掲げる無形固定資産
イ 鉱業権( 租鉱権及び採石権その他土石を採掘し又は採取する権利を含む。)
ロ 漁業権(入漁権を含む。)
ハ ダム使用権
ニ 水利権
ホ 特許権
ヘ 実用新案権
ト 意匠権
チ 商標権
リ ソフトウェア
ヌ 育成者権
ル 営業権
以上のように本件の中心的な争点は当該対価額が営業権として評価
基本的に従前と異なるものではなく、
課税庁は基本通達においても、下記のように営業権の評価として、
基本通達
(営業権の評価)
165 営業権の価額は、 次の算式によって計算した金額によって評価する。( 平11課評2-12外・平16課評2-7外・平20課評2- 5外改正)
平均利益金額×0.5-標準企業者報酬額-総資産価額 × 0.05 =超過利益金額

(注) 医師、弁護士等のようにその者の技術、 手腕又は才能等を主とする事業に係る営業権で、 その事業者の死亡と共に消滅するものは、評価しない。
「医師は、一般に、その有する専門的知識、経験、医学的・ 経験的技能等を駆使して診療等の業務を行うものであるところ、 医師が業務を行うに当たって執るべき診療方法等は、 その職務の性質上、一律に定まるものではなく、 個々の医師の専門的知識等により左右されるものである。また、 医師の行う業務は、個々の医師の人格識見をはじめ、 その有する専門的知識等に対する患者の信頼を前提に、 守秘義務の下での患者からの心身の状況等についての率直な事実の 開示や患者の承諾を得て承認された方法で行われる診療等に基づい て確立される個人的信頼関 係を基礎として行われるものである」
本件判断も上記のようにこの取扱を基本的に踏襲しており、 医師としての業務に関わるものとして本件の診療所に関する対価は 営業権としての性格を持ち得ないとして判断している。 このような医師としての業務に基礎をおいた判断は、 すなわち一身専属的な営業活動によるものとしての判断は、 医師としての超過稼得価値を検討するものであり、 より拡張的な判断に及び得るものとして他の専門職においても波及 するものとして捉えられるものであり、 かかる点からは法令上の根拠を如何にして検討すべきであるのかと いう点はより検討すべきでものではないだろうか。 このような判断は事実上、 専門職において営業権の成立を否定するような状況であり、 実質的に営業権の範囲を限定的に捉えるものとしているとも指摘さ れ、 法が減価償却資産として営業権を対象としている点と矛盾するもの とも評価されうるものという指摘もありえよう。
しかしながら営業権は無形固定資産として捉えられるものであり、 かつ法的には他の特許権等とは異なり法的な保護を受けるべきもの ではない。 しかるに安易な認定は上記のような所得税法56条による家族間の 所得分散を潜脱、あるいは国際租税における所得分散(利用料等) にもつながるものであり、 いわゆる租税回避に繋がる可能性が危惧される。 事実関係の認定において租税回避を防止することはそもそも租税法 律主義としての租税法規の基本的な要請において合致するものであ るのかという点は議論の余地があろうが、 主観的な要因に裏打ちされている段階ではその認定を否定する点は 、 租税法規の適用として租税負担の公平性を確保する点で客観的な状 況を基礎とすべきという観点からは、 合理的なものであるとも考えられる。 このような判断プロセスにおいて如何にして客観的な状況として認 定されうるべきものであるのか、 あるいは本件のような専門職において営業権の成立をそもそも否定 するものであるのかという点は、興味深い点ではあるが、 客観性をいかにして確保して超過稼得能力を証明することになるの かという点は、その立証において非常に困難が生じる( そもそも評判やブランドなどは主観的な要因に起点をおいているも のであろう、 例えば私から見ればブランド品なんてただの高いカバンだし・・・ 専門職に限らずこのような主観的な要因に基づくものである以上そ の具体的な認定は非常に困難であり、ここから頭の体操としては、 口コミサイトの評判・ 評価を如何にして本件のような状況においてどのように取扱われる べきであろうか)点は留意されるべきであろう。 おそらく時の経過( しかるに本件はこの点からも営業権の存在を認定し難い) が客観的なメルクマールとしては一般的かもしれないが、 そもそも専門職においてこのような時の経過は必ずしも合理的であ るのかという点は、必ずしも定かではなく、 この点のみをもって営業権の裏打ちは困難でもあろう。
また上記のように、本件の中心的な争点とはなっていないが、 下記のように本件のような配偶者間の所得の分散、 対価の支払が必要経費として該当しうるものであるのか、 すなわち56条の適用があるものであるのかという点が課題となる 。 本件はこの潜脱にも関わる点もまた理解されるべきではないだろう か。従前よりこの56条の適用は弁護士夫婦事件( あまりこのような言い方は、 裁判例を固有名詞とするもので好みではないのですが、) を契機に専門職を基礎とする家族間における費用支払までも適用対 象とするものであるのかという点で多様な観点から法令解釈、 立法論が存在しているところではあるが、 本件のようにこのような対価の支払もこの対象となりうるものであ るのかという点は興味深い。 請求人が主張するように事業に従事したことその他の事由によりと いう部分を以下に解釈するのかという点がその適用対象を左右する ものとして判断されることになろうが、 このその他に関してその前の部分の事業に従事したとの関係をどの 程度反映させるべきものであるのかという点からアプローチを行っ ている点が珍しいものではないだろうか。その他、 その他のという法令用語としての一般的な法令解釈の有名な課題で もあるが、 そもそもその堆肥対象たる事業の意義が租税法規において必ずしも 明らかとは言えない点もまた留意されるべきものである。 56条の存在意義は非常に議論が多い分野でもあるが、 近年の働き方改革や、 ICTの発達による給与所得者も含めた個人事業主の拡大は、 このような所得分散の可能性を改めて議論すべき段階に来ているも のともいえ、 この法規の意義や限定適用等の議論が改めて必要となるものといえ るのかもしれない。
(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)- 第56条
- 居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不
動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことそ の他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、 その対価に相当する金額は、 その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、 事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、 必要経費に算入しないものとし、かつ、 その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入 されるべき金額は、 その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、 事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、 必要経費に算入する。この場合において、 その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各 種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種 所得の金額の計算上ないものとみなす。
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