具体的に本件は、経営コンサルタントを営む請求人が業務委託費を損金計上し、確定申告を行ったところ業務委託費の事実関係を否定し、役務提供の時事は存在せず、その損金性を否定する更正処分(実質的な経営者に対する出会い系サイトの運営目的のための貸付金であるとして評価して)を行ったことに対して、当該処分は調査によるものではなく、犯則調査により入手された資料に基づくものであり、法の定める要件に合致しないとして当該処分の無効を求めたものである(他の論点として当該貸付の否定も主張している)。
争点としては下記のように更正処分の前提として調査によることを求めていることにつき、当該調査が行われているのか否かという点が課題となったものであり、すなわち、とうがい「調査」が如何なる意義を有しているのか、そしてのその対象に犯則調査による資料収集が該当するのかという点が課題となったものであろう。他の論点として実質的な貸付金、損失の発生を評価しうるものであるのかという点も主張されているものであるが、かかる点は単に主張がされている程度のものであり、実質的には請求人の立証不足によりその判断が否定されている(原則として立証責任を課税庁に求める傾向から逸脱し、事実上立証責任を納税者に転嫁しているという点には興味深い点であるが)。いずれにしても犯則調査による事案であり、裁決に現れていないような状況も想定しうるものであるが、手続面及び実質的な双方から争われた事例であり、実際の課税処分における事実においてこのような事案の発生も現実には発生しているということを理解する点で興味深い事案である。また、調査の意義が前提となっている事案でもあり、平成23年の国税通則法改正によって調査等に関する大規模な法令改正が行われた段階を経ていることからも、その具体的な意義を検討することは重要なものとも捉えられる。
(更正)
第二十四条 税務署長は、納税申告書の提出があつた場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する。
以上のように、本件の主たる争点は、犯則調査による資料収集が法が処分の要件としている調査として該当するのか否かという手続面から争われているものである、「調査」とは社会的な理解としては(おそらく課税庁経験者でもなければ租税専門家であっても)、いわゆる税務調査として理解される用語としての課税の事実関係を確認する納税者の拠点等への臨場による直接的なものを調査として捉えることが一般的であろう。本件における請求人の主張もこのような前提と基礎として構成されているものと理解されるところである。しかしながら、このような調査がいわゆる調査であることは否定しがたいものの、法規においては質問検査に基づく、「実地の調査」として理解され概念整理されているものである。かかる概念は上記のように、平成23年の税制改正において国税通則法が納税者への説明責任の強化のため(観念的には理解できるが、当該責任が如何なるものを指すものと解されるのかという点は明示的ではない)、事前通知や調査終了の際の手続が定められたことが起点となって制定されたものであり、従前は特段法令上は明示的に区分されていたものではなく、事前通知等の対象を明らかにする目的で精緻化されたものであると考えられる。しかるに上記法定の調査は実地の調査の言い換えであると捉え、調査の範囲を限定的に捉える見解を取るべきものであるのか、あるいは、調査の概念は多義的であり、複数の調査概念が混在している、あるいは多様な行為を含むものと解するべきであるのかという点が対立があるものといえる。改正前後において調査の意義がどのように理解されるのかその変遷を考える上で重要な論点であろう。
判断では、以下のように、
同条の調査の手続については何らの定めがないことによれば、その範囲、程度及び手段等は、税務署長及び国税庁等の当該職員の決するところに委ねられており、同条にいう「調査」には課税庁内部における調査も含まれているものと解すべきである。
として、定めがないことを根拠としてその具体的な判断を調査官等の職員の裁量に委ねられていると解している。課税庁は通達においても以下のように多義的に多様な行為を調査として捉えており実地の調査とは明示的に区分を行っているものと考えられる。上記もそのような解釈と整合的であるものである。
「調査」の意義)
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(1) 法第7章の2において、「調査」とは、国税(法第74条の2から法第74条の6までに掲げる税目に限る。)に関する法律の規定に基づき、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的で当該職員が行う一連の行為(証拠資料の収集、要件事実の認定、法令の解釈適用など)をいう。
(注) 法第74条の3に規定する相続税・贈与税の徴収のために行う一連の行為は含まれない。
そこで犯則調査による資料収集が調査としての該当性が損なわれたものと評価しうるのかという点が課題となる。従来任意調査による資料が課税処分以外の行為の基礎となってはならないとする見解は、すなわち犯則調査に用いられるべきではないとのことは、憲法上の要請からも、判例、学説ともに整合的な点である。しかしながら、いわばその逆の点に関しては、特段の共通的な理解は存在しない。かかる点につき、判断では、以下のように、
犯則被疑事件において適法な犯則調査が行われた場合に、課税庁が犯則調査又はその過程で収集された資料を引き継ぎ、参考人その他の関係者に対する課税処分を行うために利用することは許されると解すべきである。
としてのその判断を肯定している。
しかしながらその理由は調査官の裁量による広範囲の調査概念を基礎としつつ明示的な否定根拠がないことを理由として、以下のような理由からその該当性を認めている。
犯則調査により収集された資料の引継ぎを受けてこれを課税処分を行うために利用することが許されないと解すべき根拠は見当たらず、これが許されないとすれば、改めて課税庁において同様の資料を収集することが必要となって、課税庁ばかりでなく資料の保有者等にも無用の負担を掛けることになること
上記のような判断はいわば実質的な理由付けによるものであり、かかる点からその調査において該当することを根拠付けることは。法令解釈の範囲を超えているとも評価しうる。
いかなる理由をもってその該当性を判断すべきであるのかという点はさらに検討が必要であろう。
以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。
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