2017年11月21日火曜日

判例裁決紹介(平成28年12月12日裁決、保証債務に履行に伴う資産譲渡における譲渡所得の特例の適用要件)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、
平成28年12月12日裁決で、保証債務に伴う所有財産の譲渡に伴う譲渡所得の特例に関する適用要件が争われた事例です。

具体的には、本件はかつて法人の代表取締役であった請求人が主たる債務者たる法人に対して連帯保証契約を締約していたことに対して、当該保証債務に対して主たる債務者の履行が不能となり、請求人の所有する財産を譲渡した事により連帯保証人としての対応を行った場合において、当該履行に伴う資産譲渡につき、下記所得税法64条2項にさだめある保証債務履行のための所得計算の特例の適用対象となるものであるのかという点が争いになったものであり、特例適用を求めた更正の請求の主張に対して、その適用がないとした通知処分に対して不服として提起したものである。すなわち、請求人の求める当該適用の要件たる求償権の行使不能の状況が発生したとしての更正の請求が認められるか否か、つまり、求償権の行使が全部若しくは一部が不能となっているのかという状況が、主張のタイミングにおいて達成されているのかという事実関係に該当すると事実認定が可能であるのかという点が中心的な争点となっているものである。請求人としては当該連帯保証契約の履行の目的となる資産の譲渡に伴う所得は、求償権の行使不能が確定した段階で所得に対する権利が確定したものとして所得を認定し、本特例の適用によって所得がなかったものとみなされると主張したのに対して、課税庁としては、資産の譲渡として所有権の移転、登記に基づく事実関係によって権利確定主義による判断になるものとして主張が争われている。結果、最終的には判断として、かかる点の解釈の範囲拡大、事前段階での保証契約の有効性等も争点とされているが、求償権の行使可能性が否定されるべきとした対照が主たる債務者のみならず、他の連帯保証人に対する求償権も含むという解釈ににおいて、本件の事実関係のもとでは、行使可能性が否定的に捉えられる状況にはないということで請求を棄却する判断が行われている。実務上、本件のように連帯保証契約の目的のため資産を譲渡し、かかる部分に該当する所得の発生をなかったものとする規定を適用するケースは多用されるものであるのかという点は興味深いものであるが、かかる点以外にも債権回収・貸倒れ、保証債務における求償権の行使可能性の租税法規における判断を行う上での留意、特に単なる履行のための譲渡であるのみでは足りないという点を留意点として把握するべきことなどを認識する上では、実務上も有益性を有するものではないだろうか。また、今後の民法改正による保証契約、特に連帯保証契約の変更は主要なトピックの一つであり、かかる点においても租税法規における保証債務の履行における取扱を検討する上で有益の一つであるのはないだろうか。

所得税法における所得のタイミングとしては権利の確定をもって行うとする権利確定主義は、ほぼ我が国の所得税法としては確立した原則であり、本件のような特殊な要因に基づく譲渡において例外的に適用が可能であるのか否か、当該特例の適用も考慮され、求償権の行使不能が確定したタイミングまで、譲渡による所得を留保し、もって特例の適用が可能であるのかということで争いがあるものとも本件は評価できようが基本的にかかる時点まで拡張的に解することが可能であるとする理由付けが明示的ではない。確かに下記法文上は、資産の譲渡と保証債務の履行若しくは求償権の行使不能が明らかになったタイミングは、特段の関連性を必要としていないものと解することは困難ではない。しかしながら本件特例は、包括的に所得を構成し、幅広くその所得を認識する所得税法の基本原則の例外規定として存在しており、社会通年に基づき、実質的な所得対象となる金員等が譲渡人の支配関係にない状況から形式的に所得の発生を反映させるべきではないとの判断に基づくものであり、譲渡の場合に限定して、所得をなかったものとみなす規定であり、資産の譲渡と関連性が要求されているものと解することが妥当であろう。確かに実務上は特に、連帯保証契約において催告の順位付けにおいて特段の要請をなし得ない状況にある以上、求償権の行使可能性が否定されるべき状況であることが判断されるタイミングは必ずしも譲渡と同時期であるようなことは必ずしも限定されているものではない事例が多数存在することは想定されうるものである。かかる点において、この譲渡のタイミングと所得の発生を限定的に捉え、かかる部分の所得の納付を留保するような処理は、立法論としては考慮には値するものともいえよう。

(資産の譲渡代金が回収不能となつた場合等の所得計算の特例)
第六十四条 その年分の各種所得の金額(事業所得の金額を除く。以下この項において同じ。)の計算の基礎となる収入金額若しくは総収入金額(不動産所得又は山林所得を生ずべき事業から生じたものを除く。以下この項において同じ。)の全部若しくは一部を回収することができないこととなつた場合又は政令で定める事由により当該収入金額若しくは総収入金額の全部若しくは一部を返還すべきこととなつた場合には、政令で定めるところにより、当該各種所得の金額の合計額のうち、その回収することができないこととなつた金額又は返還すべきこととなつた金額に対応する部分の金額は、当該各種所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。
2 保証債務を履行するため資産(第三十三条第二項第一号(譲渡所得に含まれない所得)の規定に該当するものを除く。)の譲渡(同条第一項に規定する政令で定める行為を含む。)があつた場合において、その履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこととなつたときはその行使することができないこととなつた金額(不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を除く。)を前項に規定する回収することができないこととなつた金額とみなして、同項の規定を適用する。
3 前項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に同項の規定の適用を受ける旨の記載があり、かつ、同項の譲渡をした資産の種類その他財務省令で定める事項を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。

また、本件特例の適用にあたっては、保証債務の履行のための資産の譲渡であることと(そもそもこの目的を如何にして認定評価していくことは目的が主観的な要因であることからも議論は余地がある、譲渡においてはその旨を明らかにする事が必要であるだろう)並び、上記のように履行に伴う求償権の行使可能性がその具体的な要件になっている。かかる点につき、本件は特例の適用要件を以下のように、具体的に判断している。

所得税法第64条第2項は、保証債務の履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったときは、その行使することができないこととなった金額を、同条第1項と同様に、譲渡所得の金額の計算上、なかったものとみなすこととしている。本件特例を適用するためには、納税者が、①債権者に対して債務者の債務を保証したこと、②この保証債務を履行するために資産を譲渡し、保証債務を履行したこと及び③この保証債務の履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができなくなったことが必要であるが、「求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったとき」とは、求償権を行使すべき相手方の資産状況及び支払能力などから客観的にみて、債権回収の見込みのないことが明らかになった場合をいうと解される。
主たる債務者に資力がないため求償権の行使がそもそも不可能であることを知りながらあえて保証をした場合には、最初から主たる債務者に対する求償権を前提としていないものであり、むしろ保証人において主たる債務者の債務を引き受けたか、又は主たる債務者に対し贈与をした場合と実質的に同視できるのであるから、同条第2項にいう「求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったとき」との要件を欠くものと解するのが相当である。

本件における主要な論点もこの点にあり、上記のような資産の譲渡との関連、タイミングの問題のみならず、行使可能性が判断されるべき対象が如何なるものを含むものであり、また、如何にしてその行使可能性が否定されるべき状況にあるのかという点を明らかにすることができるのかという点が、本件特例の適用要件として重要な点となるものである。上記のように本件はこの対象範囲において主たる債務者への求償権のみならず、他の連帯保証人の存在も含む、求償権の行使可能性が、法令の意図するところであり、かかる点において、行使可能性が未だ否定されるべき状況にないタイミングでの所得の発生を否定する状況としている請求原因を排している。かかる点につき、以下のように、そもそも履行対象となる保証契約の範囲を民事法の規定に基づき、通達において捉えていることからも、租税法規の基本的な要請として民事法との整合性は原則的な判断であり、法において明示的な判断を行う旨の規定が存在せず、趣旨目的からもかかる点は否定されるものと考えられ、かかる点においては合理性を有するものといえよう。

保証債務の履行の範囲)

64-4 法第64条第2項に規定する保証債務の履行があった場合とは、民法第446条《保証人の責任等》に規定する保証人の債務又は第454条《連帯保証の場合の特則》に規定する連帯保証人の債務の履行があった場合のほか、次に掲げる場合も、その債務の履行等に伴う求償権を生ずることとなるときは、これに該当するものとする。(昭56直資3-2、直所3-3、平17課資3-7、課個2-25、課審6-13改正)
  1. (1) 不可分債務の債務者の債務の履行があった場合
  2. (2) 連帯債務者の債務の履行があった場合
  3. (3) 合名会社又は合資会社の無限責任社員による会社の債務の履行があった場合
  4. (4) 身元保証人の債務の履行があった場合
  5. (5) 他人の債務を担保するため質権若しくは抵当権を設定した者がその債務を弁済し又は質権若しくは抵当権を実行された場合
  6. (6) 法律の規定により連帯して損害賠償の責任がある場合において、その損害賠償金の支払があったとき。

しかしながら、上記判断の後半部分に関しては、議論の余地がある。すなわち、上記のように求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったとき」の解釈として、保証契約の締約段階から既にその行使可能性が否定されることを知りながら保証契約を行った場合も実質的な贈与であるとして、その適用対象と捉えることを行うべきではないとの解釈を行っている。かかる判断の根拠が如何なるものであるのかという点は定かではなく、実質的な贈与に該当するものであるとの点にその根拠を求めているものと推察される。この点につき最終的な判断としては、かかる点において、確かに契約段階では赤字であり資産状況は債務超過の段階であったものの代表取締役として改善の可能性を考慮したものであり、その該当性を否定しており、実質的には本件の判断においては影響がないものと捉えられるところではある。しかしながら、実質的な譲渡として経済的な効果を持つことは否認されるものではないものの、かかるような経済的な供与は贈与税等の法文において議論されるべきものであろう。また所得の発生を否定するものとして特例として本件特例は理解されるが、あくまでも明示的に求償権の行使可能性が喪失したことを要請しているものであって、契約の段階から事後的な状況に応じて適用を判断する構成となっていることは明らかである。本件特例において保証により譲渡による所得発生の実質的な代替を回避すべきとする趣旨を含むものと解し、上記のように求償権の行使可能性によるものを契約の事前段階の状況まで含むものと解することが可能とすることも指摘としてはありえようが(軽減措置であり、厳格な解釈を要求するべき法規定であるとの認識が背景にあるものとも考えられる)、求償権と明示的に規定し、保証契約の事後的な状況をもって適用要件としている法文であり、また、上記のように資産譲渡時における状況を反映させる規定ぶりに依拠するならば、かかるように事前の実質的な贈与と認定し、適用範囲を実質的に限定するような解釈は、民事法における契約の評価はともかくも、租税法律主義を大原則とする租税法規の基本的な要請に反するものではないだろうか。以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

2017年11月18日土曜日

判例裁決紹介(平成29年3月3日裁決、使用貸借と不動産所得)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成をしました。今回は平成2933日裁決で、不動産所得として非常に低廉な金員を受け取っていたことに対して不動産所得として該当するか否かということが争われたものです。

具体的には、不動産貸付を行う請求人が息子が経営する法人【法的な所有関係がないものであり、親族関係による一定の関係性が通常の第三者との関係とは異なる状況にあり、同族会社の行為計算否認の法理は適用できないものと想定される】、との間で隣接地の一般貸し付けとは異なる賃料で不動産を貸付ける契約を締約し、当該不動産の固定資産税相当額の2割程度の金員を受領していた事実関係において、当該金員を不動産所得であるとして確定申告を行ったことに対して当該金員は非常に低額であり、関連会社への正確には、その経営する息子に対しての経営支援の目的をもった貸付けとして使用貸借であって当該貸付けは不動産所得を生ずべき事業ではないとして更正処分を行った事例であり、申告により必要経費を計上し超過した損失を損益通算を行ったことを否定したことが中心的な争点となっているものである。より具体的には本件の事実関係における使用貸借、経営支援目的の貸付が不動産所得を生ずべき貸付けに該当するのか否かという点が課題となっており、かかる判断の前提として、所得税法26条に定める不動産所得の貸付に該当するものであるのか、如何なる意義を有するものであるのかという点が本件の起因となっているものである。

本件における貸付は特殊な関係性を前提としたものであり、試験としては租税負担の回避のような目的意識を有しているものと判断するよりも経営支援の目的に基盤がおかれるものであるとの判断が行われるようにとらえられるが、そもそも不動産所得に関してはかかるような特殊な関係性を前提とせずとも不動産所得としての該当性が事業的規模を要するものであるものとして議論される。その代表例は下記の様に事業的規模を争う事例としても代表される。そもそも私見としては、課税要件として如何なる要素をもって事業的規模を導いているのか、如何にして事業をとらえ、その判断基準を解するべきであるのかという点が課題であり、租税法規の基本的な要請たるものから考えて妥当であるのかという点が課題であると考えられる。本件も使用貸借という特殊な事実関係の認定が争われている事例ではあるが、如何なるものが不動産所得であるのかという点が租税法規の解釈上議論されるべきものであり、本件もこの類型に属するものとして有益性を有するものと考えられる。

(不動産所得)
第二十六条 不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機(以下この項において「不動産等」という。)の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
2 不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。

(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)

269 建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。

1 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。

2 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

(使用貸借)
第五九三条 使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

上記のように本件の中止的な争点は、本件不動産の貸借における金銭の受領が事業としての不動産所得に該当するのか否かという点について上記民法による使用貸借に該当するのか否かという観点から議論されているものと考えられる。下記のように判断では解釈として不動産所得は事業として貸付けであることを求めており、その意義としては対価を得る、目的としているものであるとして、不動産所得としての貸付に対して使用貸借は該当しないとの判断を導いている。かかるような事業としての要件、方向性を求めるものである、対価を目的とする点は従前の判断と整合的であるように考えられる。そもそも対価とは如何なるものであるのかという点は疑問を持つところではあるが、本件は固定資産税額との対比ににおいて非常に僅少であり、実際の金額としては500万円を超過するものであるが、合理性に欠けるものであるとして特殊な関係を前提とした経営支援などを目的とする使用貸借であるとして判断していることが問題となっている。そもそも僅少ながら対価を受け取っている本件を使用貸借として判断することの是非、民事法の関係性が無償を基礎とする使用貸借として、単なる必要経費を負担しているに過ぎないとして否定的にとらえることに違和感を覚えるが、不動産所得としての貸付の意義として使用収益が含まれえないものであるという点はそもそも不動産所得が事業的、営利性、対価を求めるものであるという点を基礎とする以上、その合理性は否定しようがないものといえよう。

「所得税法第26条は、不動産所得とは、不動産等の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいうと定めている。したがって、不動産等の賃料が不動産所得の総収入金額に算入されるためには、当該賃料が不動産等の貸付けによる所得に該当することが必要である。そして、不動産等の貸付けによる所得とは、当事者の一方が相手方に不動産等を使用収益させて、その対価を得ることを目的とする行為から生ずる所得をいうものと解されるから、不動産等の賃貸借から生ずる賃料はこれに該当するが、対価を伴わない使用貸借については、借主から貸主に対して金員の交付等があっても、それは当該不動産等の経費の一部の支払にすぎず、不動産等の貸付けによる所得には該当しないと解すべきである。」
 

しかしながら、上記判断の後半である部分に関しては議論の余地がある。金額的には僅少であるものの対価を当事者間において移転しており、通常の用法としては対価を得ているものとして捉えることは必ずしも否定できない。本件では経費の一部負担に過ぎず、使用貸借としての該当性を否認するものではないとしている。かかる点は如何なる法令上の根拠に基づくものであろうか。使用貸借という点において多少の金員の支払いに関して(通常の経費負担)までも含むものであるとの解釈が民事法において成立しているものであるとの点に基づいているのか、それとも不動産所得の解釈としてその基本的な性格から営利性等を要請するものであり、対価において通常の取引における金銭の支払いを想定しているものであるのかという点は判断が分かれよう。

上記のように対価という用語の解釈に依拠するものであるのかもしれないが、租税法規において契約上の支払いの効力を否定する以上、何らかの根拠を要請するものと解することが必要であろう。対価を目的としている不動産所得としての法令解釈としては対価以外の目的の存在を否定するものではなく、何らかの事業目的の存在を排除しているものではないものと考えられる。本件においては経営支援という一定の対応、目的を達成していくためにかかるような対価関係の契約が選定されているものであると捉えられるが、最終的な判断は請求人の主張立証がその意図について主観的であるがゆえに変化はないものともいえるが(かかる点で本件の最終的な判断の結果は変わりないものといえるが)、法人税法における役員給与の相当性を否認する規定の存在のように、如何なる基準においてその租税法規における根拠を否定する以上明示的な対応が必要であるように考えらえる。民事法において使用貸借において一定の対価関係においても成立し得ることは否定しようがないのかもしれないが、租税法規において無償であるものと異なり、一定の対価関係の支払い関係が想定される以上、使用貸借であり貸付けに該当しないといって不動産所得としての該当性を否認することは飛躍があるのではないだろうか。そもそも事業における如何なる目的を有するものであるのかという点は、たとえ低廉であっても広告効果などの一定の目的意識との対応において合理性を有するようなケースは想定されるものであり、単にたとえ、金額的なものとして無償、低廉であるからといって営利性を有していない、対価を得ていないとして判断することは妥当ではない。単に営利性を金銭的な判断のみをもって判断することは困難である。勿論客観性を重視する租税法規の基本的な要請からはかかる判断を許容することは困難であるとも指摘できる。しかしながら本件の経営支援目的の存在等の他の存在をもって営利性や対価性を否定することは困難であり、かかるような判断を行うことは租税法がその租税法規における効果否認をもって民事法における影響を及ぼし、民事上の契約にまで踏み込むことが懸念され、事業目的の実質的な審査、判断の検討を行うことになり、結果として事業主の判断や経営上の判断に介入することになるのではないだろうか。租税の基本的な原則として中立性に反するものとも考えられれる。対価を如何に考えるべきであるのかという点でもあるが、法人税法とは異なり、法文にない対価を営利性を目的としていることをもって正常な対価によるべきであると対価関係を引き直す規定であると判断することは困難でもあろう。

かかる点は不動産所得にに限らず、如何なる目的意識をもって所得を得るのかあるいは如何なる目的をもって経費支出を行うのかという点は、事業自身が多様であり多様な行為が想定される。この点につき、如何なる状況が租税法規において許容されるのかという点につき単に金銭的な状況【あるいは短期的な損益状況】が営利性の源泉であるとの判断は、一面的な検討であるようにも考えられる。客観性を如何に担保すべきであるのかという点も課題ではあろうが、そもそも租税法規一般において如何にして営利性をとらえているのかという点はより具体的に検討すべきではないだろうか。

以上です。毎度の如く論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2017年11月10日金曜日

判例裁決紹介(平成28年12月5日裁決、無申告加算税の正当な理由)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成28年12月5日裁決であり、期限後申告に伴う無申告加算税の賦課決定処分に対して、請求人の事業や妻の介護等を理由として、当該処分に対して不服を申し立てた事例です。

具体的に本件は、請求人がなした贈与税の期限後申告につき無申告加算税が付加されたことが妥当であるのか否かが争点となったものであり、無申告加算税の賦課に対して宥恕する正当な理由が存在しているのか否か、すなわち、請求人が主張する妻の介護や持病等の事情が国税通則法に定める無申告加算税の宥恕対象となりうるものであるのか、正当性を有するものであるのか否かという点が中心的な争点となっているものである。

附帯税における主たる論点としては、特に無申告加算税においては、下記の条文にあるようにその賦課を行わない、要件としての正当な理由の有無、また、調査による予知があったか否かという点が従来議論対象となっているが、本件もその類型に属するものであり、正当な理由が如何なる意義を有し、その具体的な対象となる事情は如何なるものであるのかという点を明らかとする上で、有益な事例であるように考えられる。無申告加算税が加算される事例は、専門家が関与する事例においては、限定的であるように考えられるが、現状において未だ租税法規や租税制度、納税義務につき、その理解が必ずしも十分でない状況においては、かかる賦課及びその宥恕は重要であり、具体的な範囲を確定させる上で実務上も重要なものであろう。法令解釈としては、本件が採用してる判断は、最判や学説とも一致しており、新たな法令解釈として新規性を持つような特徴的な事例ではないものの、かかる解釈の淵源やその具体的な当てはめを検討する上では参考となるものと捉えられる。


(無申告加算税)
第六十六条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該納税者に対し、当該各号に規定する申告、更正又は決定に基づき第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に百分の十五の割合(期限後申告書又は第二号の修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、百分の十の割合)を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する。ただし、期限内申告書の提出がなかつたことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。

以上のように本件の中心的な争点は無申告加算税に関する判断である。しかしながら、附帯税一般において同様の文言が採用され、正当な理由による賦課の宥恕が行われている。かかる意義の一般性が如何なるものであるのかという点は、課題ではあり、私見としては、無申告加算税と他の附帯税は、その賦課が納税者間の公平負担を基礎とするものとしていることは共通しているものの、その衡平を図る上での基礎的な要件、具体的な趣旨目的が相違する部分も存在しており、正当な理由として同様の文言を採用しているものの、必ずしも同様の意義を有し、事実関係の当てはめにおいても同一のものとして評価することは要請されていないものと考えられる。従って、本件もあくまでも無申告加算税における判断であり、より広く附帯税一般において共通するものとして捉えることは、避けるべきであろう。

本件判断では、最終的に代理人等の利用や郵送による申告が可能であること等から納税者の責任を認定し、正当な理由としての該当性を否定している。感情論として、介護等の事情は本件のような事実関係において無申告加算税を課すことは、酷であるとの点から正当な理由該当性を肯定しうるものであるとの主張もあり得ようが、下記のように無申告加算税の性格やさらに前提となっている申告納税制度を基礎として考えるならば、極めて限定的に正当な理由を解釈することが一般的となっており、本件もその判断によっている。立法論としては上記のような主張は存在しうるものであるともいえようが、まずは現行制度の法令解釈がその前提とされるべきものであり係る基準となる意義に対して事実関係が当てはまるものであるのか否かという点から判断されるべきものとであることはいうまでもなく、本件判断は従前と整合的であると評価されよう。上記のような酷であるとの主張は立法の範囲に属するものであるといえよう。その必要性があるのか否かという点は、必ずしもサポートされているものとは言えないが、政策論としては検討する価値はあるかもしれない。最終的に本件は請求人による、介護等の事実関係の主張のみが行われたものであり、如何なる理由で正当性を持つものであるのかという点について根拠を指し示すことができなかった請求人の姿勢が原因となって最終的に棄却との判断を導いているが、正当な理由としてはの該当性は、単なる事実関係の主張のみでは不充分であり、正当性を如何に有しているのかという点を明らかにする立証責任が納税者に課せられていることが理解されるべきものともいえよう。

以上のように本件の中心的な争点は請求人が主張する妻の介護や自身の持病等の事情が上記国税通則法66条の正当な理由に該当するのか否かという点である。その具体的な正当な理由としては以下のように判断している。従前の判例等と整合的である。

 通則法第66条に規定する無申告加算税は、申告納税方式による国税に関して、申告納税制度の秩序を維持し適正な申告の実現を確保することを目的として、適正に法定申告期限までに申告した者とこれを怠った者との間に生じる不公平を是正するとともに、納税申告書を提出しないことによる申告義務違反の発生を防止する行政上の措置であり、法定申告期限までに申告しなかったという客観的事実があれば、期限内申告書の提出がなかったことについて「正当な理由」があると認められる場合を除いて一律に課されるものである。
 そして、通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由」があると認められる場合とは、災害、交通・通信の途絶など、期限内に申告ができなかったことについて、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、無申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に無申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である。

上記のように、その意義としては納税者の責めに帰すことができない事情及び無申告加算税の趣旨との対比という二要件をもって判断している。すなわち納税者に対する無申告への帰責性の有無と趣旨の観点から不当性を認定しうるか否かという点が判断の起点となるものであり、信義則等と同様に極めて限定的な状況を想定しているものとしている。つまり、かかる判断は行為自身への因果・責任と当該事情が適正な申告を行ったものと間での公平性を犠牲にしてもなお、賦課を行わないことに対して合理性を有するの否かという事実関係への評価によるものとしていると考えられる。
かかる限定的な判断は、租税法の基本的な要請としての租税法律主義の厳格な適用を旨とする現行法制度においては、合理的であり、その起点として納税者自身の計算による自主的な申告納税制度を採用していることに起因しているものと考えられ、私見としても限定的な解釈の合理性はゆるぎ難いものと考えられる。より一般的には憲法が定める納税義務は、国民としての義務を定めるものであり、単に納税するのみならず、適正な申告等の義務を追っているものとして理解されるべきものといえよう。

また第一に納税者への帰責性の有無に関しては、そもそもどの程度の物を指すものであるのかという点は、必ずしも定かではない。本件においては、代替手段との関係性の主張が不存在であることを問題視しており、かかる点が主張として必要とされる点は、帰責性の有無の具体的な判断においては重要となるものと考えられる。私見としてはかかるよう厳格な判断は上記信義則等と同様に租税法規に基本的な要請としての租税法律主義から容易に適用が認められるべきものとは考え難い点に依拠しており、厳格に係る要件の充足が客観的に確保されることをもって正当な理由としての該当性を認めるべきであり、事実上客観性の確保も要請されていることも加味すると(主観的な事由を該当すると認めることは結果として要件を緩和するものとなりうるところであり、かえって趣旨を埋没する可能性や裁量的な措置を伴うものとなることであろう。)正当な理由としての判断としては3要件を課しているものとも考えられる。帰責性そのものの意義としては、法的な意義での責任の有無が問題になるのかという点(無過失、重過失等の認定を伴うものであるのか)は定かとはなっていない。無申告に関しては納税義務への無知等、多様な因果関係が、法的にも事実上もありうるところであり、代替手段の可能性など納税者の怠惰等ではない、事情を示す程度で良いのかという点は立証責任が上記のように納税者にあるとされる場合においては、如何なる主張を求められるかという点を明らかにする上で、重要な検討課題となるものといえよう。そもそも過去と異なり、国税庁HPでの広報の充実や郵送手段、税理士代理、e-Taxの整備等代替手段は整備充実されてきている現状にあることは明らかであり、かかる点においては納税者の帰責性の有無を立証するハードルは上がっているものとも捉えられるが。私見としては租税法規が法的な関係として、租税法律関係の存立を前提としている以上は、原則的に法的な責任の有無が帰責性の判断を行う基礎となるものと理解されるべきものといえると考えられるが、第二要件としての趣旨との対応に関しても必ずしも明示的なものとはいえず、適正な申告を行ったものとの公平性及び申告義務の履行を促すものとして無申告加算税は存立しているが、かかる判断との対比においても広範囲においての責任を要請しているものと考えるべきであり、その根拠として申告納税制度を前提としているものと理解されるべきである。つまり、納税者自身による申告をその背景としている申告納税制度を基盤とする以上、無申告を許容することは極めて困難であり、かかる判断を覆すことは非常に厳しいと判断せざるを得ないものというべきであると考えられる。

以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

2017年11月7日火曜日

判例裁決紹介(平成28年7月4日裁決、減価償却資産の取得)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、
平成28年7月4日裁決で法人が減価償却資産の取得により減価償却費を計上することができるか否かという点が問題となった事例であり、資産の取得日が如何なるものであるのかという点が争われた事例です。

具体的には、本件は請求人が主張する減価償却費の計上に当たって、当該減価償却資産の計上を申告年度において計上が可能であるのかという点が問題となった事例であり、年度末までにおいて取得済みであるとして減価償却費を計上した法人税の確定申告を、当該資産の引渡しが終了していないとして更正処分を行い、2月末には設置済みであるとして不服として提起した事例である。すなわち、3月末の決算期末において2月末に設置された請負契約に基づく当該減価償却資産が、検収が終了し、取得したもとして年度末において引渡しが終了しているものであるのか否か中心的な争点となっており、これにより法人税の減価償却費の計上、中小企業者向けの特別控除、消費税における仕入税額控除の適用が行われるものであるのかという点が課題となっている。本件は当該資産の取得に関わる状況が完成品の納品を旨とする請負契約による資産の取得が課題となっており、かかる契約がそもそも年度をまたぐものであり、この取得が認められるか否かにより減価償却費の計上が左右されることとなり、わずか「取得」、「有する」という用語の解釈によってその取扱が異なるものと考えられるものである。しかるにこの文言の解釈が法人が有する、取得した段階に至ったものであるものと考えられるものであるのかという点が、すなわち、具体的な意義を有しているのか、そして、事実関係においていかにして判断されうるものであるのかという点が中心的な命題となるものである。

本件は減価償却資産の取得が如何なるタイミングであるのかという、特に請負による機械装置の設置、取得、引渡しという、ごくありふれた取引ではあるが、取得、引渡し、有するという法人税法、消費税法上の概念が如何なるものであり、所有権の保有、移転を基礎とする民事法の概念をベースとしつつ、実質的な所有関係に基づく課税関係を構築するべく、より広義の意義により取得等を理解する租税法規の基本的な考え方が現れた事例でもあり、かかる点においても実務上も資産取得のタイミングを如何に判断するのか、留意点を理解する上でも有益な事例であるものと考えられる。特に減価償却資産のタイミングの判定においては定義規定より事業のように供するタイミングを如何に捉えるべきであるのかという点が従前議論対象となっているものであるが合わせて理解すべきものであろう。

以上のように本件の基本的な争点は資産取得が如何なるタイミングをもって引渡しを完了し、取得した、あるいは有する状態になったものであるのかという点が中心的な争点となっている。多様な資産に関する制度適用が問題になったものであり、以下のような条文の適用、解釈が問題となったものであると考えられる。一定の不具合の存在は前提としつつも年度末前の段階で設置が完了し、事業のように供していたことは事実関係としては問題とされておらず、当該設置請負契約による検収(不具合の修正も含む)が年度をまたがったものであったことを根拠として当該資産の取得等は事業年度酋長の時点で完了していないとする課税庁と、実質的に稼働状況にある資産の状態を前提とし生産量の増大等の収益稼得への貢献をしているという事実関係を基礎に減価償却資産の取得が完了して計上を行うべきとする納税者の主張が対立していることが本件の起因となっているものである。



第三十一条 内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその償却費として第二十二条第三項(各事業年度の損金の額に算入する金額)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、その取得をした日及びその種類の区分に応じ、償却費が毎年同一となる償却の方法、償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法その他の政令で定める償却の方法の中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を選定しなかつた場合には、償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額(次項において「償却限度額」という。)に達するまでの金額とする。

第四二条の六 第四十二条の四第二項に規定する中小企業者又は農業協同組合等で、青色申告書を提出するもの(以下この条において「中小企業者等」という。)が、平成十年六月一日から平成二十九年三月三十一日までの期間(次項及び第七項において「指定期間」という。)内に、次に掲げる減価償却資産(第一号又は第二号に掲げる減価償却資産にあつては、政令で定める規模のものに限る。以下この条において「特定機械装置等」という。)でその製作の後事業の用に供されたことのないものを取得し、又は特定機械装置等を製作して、これを国内にある当該中小企業者等の営む製造業、建設業その他政令で定める事業の用(第四号に規定する事業を営む法人で政令で定めるもの以外の法人の貸付けの用を除く。以下この条において「指定事業の用」という。)に供した場合には、その指定事業の用に供した日を含む事業年度(解散(合併による解散を除く。)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度を除く。以下この条において「供用年度」という。)の当該特定機械装置等の償却限度額は、法人税法第三十一条第一項又は第二項の規定にかかわらず、当該特定機械装置等の普通償却限度額と特別償却限度額(当該特定機械装置等の取得価額(第四号に掲げる減価償却資産にあつては、当該取得価額に政令で定める割合を乗じて計算した金額。第七項において「基準取得価額」という。)の百分の三十に相当する金額をいう。)との合計額とする。

仕入れに係る消費税額の控除)
第三〇条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、国内において行う課税仕入れ又は保税地域から引き取る課税貨物については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課税期間の第四十五条第一項第二号に掲げる課税標準額に対する消費税額(以下この章において「課税標準額に対する消費税額」という。)から、当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る支払対価の額に百八分の六.三を乗じて算出した金額をいう。以下この章において同じ。)及び当該課税期間における保税地域からの引取りに係る課税貨物(他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この章において同じ。)につき課された又は課されるべき消費税額(附帯税の額に相当する額を除く。次項において同じ。)の合計額を控除する。
一 国内において課税仕入れを行つた場合 当該課税仕入れを行つた日

確かに、法人税法が22条4項において公正処理基準を採用し、もって、収益との一定の因果関係を前提として、益金との関連において、損金計上のタイミングを決定するべきとしていることが法人税法の基本原則としているものと解される。かかる点において一般論としては多様な経費支出に配慮して、法人税法が具体的な状況を反映させ、収益との関連から損金としての計上を認める処理を肯定していると解されることは異存はない。しかしながら、減価償却費に関しては、その内部取引としての性格から、当該原則的な処理は法的に修正を受けている。すなわち、資産の取得、引渡しをもって、その資産の有する状況となって、もって、収益を稼得する事業の用に供していることがその前提とされていることはまずは理解されるべきであろう。従って、内部的な取引として恣意的な減価償却費の計上を排することを目的とした処置であり、かかる要請は、租税法規の基本的な要請に基づくものであると考えられる。この取得、引渡しが完了し、もって当該資産を有する状況と至った場合に於いて減価償却の要件として機能しているものであり、かかる状況の発生が重要と認識されるべきである。しかるに、かかる意義が如何なるものであるのかという点が重要な点である。

かかる点につき裁決は、以下のように解している。特段の根拠なく、法人税法、租税特別措置法及び消費税法における概念を引渡しをもって完了した資産の移転を指すものとして理解している。

法人税法第31条第1項に規定する「内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産」の「有する」という要件は、完成された物を引き渡すことを内容とする請負契約によって減価償却資産を取得する場合においては、注文者が請負人から完成した当該減価償却資産の引渡しを受けることによって満たされ、措置法第42条の6第1項に規定する「取得し」という要件についてもこれと異なるところはないと解するのが相当である

かかる判断の意義が如何なる所以に基づくものであるのか、という点は定かではないものの、契約書の文言である検収をもって引渡しを完了させている点において客観性がより事業への貢献等に比して確保されているという特徴があるものといえよう。私見としては引渡し、特に消費税法における仕入税額控除の要件と同様の解釈をもって当てている点は違和感を覚えるところであるが、、取得と引渡しは契約当事者における双方の主体からの判断であり、さらに契約等の行為に依拠する用語であると捉えられるが、対して、有するとは、所有権を基礎としていることは法的な要件としては揺るぐものではないものともいえるが、前記のように実質的な判断も租税法規においては必要となるべき判断要素であり、これらを同列な要件として整理することが妥当であるのかという点は疑問を覚えるものといえる。いずれにしても減価償却にかかる資産の計上に関しては、法人税法が一般的な原則とは対照的に修正を付与したものであり、事業の用に供するという文言の意義内容、と同様に、その解釈は、課税要件の判断としてはより明示的な基準が検討されるべきものではないだろうか。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。