具体的には本件は、
なお、この問題となった当該建物等の固定資産課税台帳の価格は、
本件は、登録免許税の課税標準が争われた珍しいケースではあるが、事実上以後の時点において課税台帳の価格が修正されており、通常の時価に関する争いとは異なり時価自信の評価額算定とは異なる争点をもっている。すなわち基本的には課税台帳の修正と登録免許税の課税のタイミングのズレが問題の原因とも考えられる。この点において実務上も固定資産税評価における影響を考慮する際の参考となるだろう。
登録免許税の課税標準は下記のような法規定において律されている。
登録免許税法(不動産登記に係る不動産価額の特例)
第七条
新法別表第一の第一号に掲げる不動産の登記の場合における新法第 十条第一項の課税標準たる不動産の価額は、当分の間、 当該登記の申請の日の属する年の前年十二月三十一日現在又は当該 申請の日の属する年の一月一日現在において地方税法( 昭和二十五年法律第二百二十六号)第三百四十一条第九号( 固定資産税に関する用語の意義) に掲げる固定資産課税台帳に登録された当該不動産の価格を基礎と して政令で定める価額によることができる。
登録免許税法施行令
4 法別表第一の第一号に掲げる登記で不動産の価額を課税標準とする
第十条
別表第一第一号、第二号、第四号又は第四号の二に掲げる不動産、 船舶、 ダム使用権又は公共施設等運営権の登記又は登録の場合における課 税標準たる不動産、船舶、ダム使用権又は公共施設等運営権( 以下この項において「不動産等」という。)の価額は、 当該登記又は登録の時における不動産等の価額による。 この場合において、 当該不動産等の上に所有権以外の権利その他処分の制限が存すると きは、 当該権利その他処分の制限がないものとした場合の価額による。
すなわち、客体たる登記時点における不動産等の価額がその課税標準であることを原則としながら、本則規定ではなく附則規定によって、固定資産税の課税台帳に登録された価格を基礎として算定することを認め、できる規定として記述し、特別な事情の有無をもってその台帳価格に基づく価格の修正を認める法規定になっている。
地方税である、固定資産税に対して国税である登録免許税において共通した課税標準を用いていることは、両税が共に不動産等の価額をその対象としており、実務上、課税の執行面を考えれば、固定資産税と共通した台帳価格を利用することは合理的であり現実的な判断であるだろう。加えて、登記官の裁量によって課税標準となる不動産等の価額が異なることは納税者によって不合理であり、かかる意味でも統一的な台帳価格をベースとした価額判定の枠組みは重要な意義を有するものと考えられる。
しかしながら、固定資産税と登録免許税が不動産取得税も含め、土地等をその客体とする租税であることは共通しているが、その課税根拠や趣旨目的、課税形式等は相違がある。特に流通税である登録免許税と財産税である固定資産税はその形式を異にするものであり、かかる法規、課税根拠の相違等を考慮せず、一律に固定資産税台帳価格に依拠することは問題であり、上記規定もそのようなタイミングのズレ等を考慮した結果であるだろう。このように考えれば、この例外的な評価を許容する理由とは如何なるものであるのかという点を、法解釈により明らかにすべきものであるといえよう。
従ってまずは、登録免許税の原則的な課税標準である不動産等の価額が如何なるものであるのかという点が問題となる。この基本的な理解があって初めて、例外的な許容されうるべき価額が求められるべきものと考えられる。法規によれば、不動産自身の価額と登記の時点というタイミングが問題となっており、その具体的な二要件の充足が過大。特に流通税として登録免許税が財産の移転登記の時点を事実として捉え、担税力を見出していることからも一定の時点に於ける価額の算定が問題となり、この点で固定資産税台帳価格とのズレを想起するべきものである。従って、法が記載するように、一定の財産評価上のマイナス項目を捉え、修正を行うべきものと解されるところである。このように考えると、当該マイナス項目が如何なるものであるのかという点ももちろんではあるが、その発生の時期がいかなる時点で発生しているのかという点も重要と考えるべきである。
本件では、過去の災害の損失がこの特別な事情に該当しないとしているものの、いかなる理由でその該当性を否定したのかが必ずしも定かではないものの、例示にある事例から特別な事情を質的量的な形状の変化がある場合であると解しており、この妥当性が問われるべきものである。登録免許税が大量に行われる不動産関係の登記関係の変動を捉え課税対象としている以上、早期の課税関係の安定のためにも、客観的な・かつ明白な形状の変更が価格修正の事由であると判断すべきであり、かかる点からは過去の災害の損失はその該当性が否定されうるべきものであるのであろうか。
また、前記のように、係る事由の発生がいかなるタイミングであるのかという点も問題となる。本件では、火災の損失は、登記が、若しくは所有権移転登記を行った時点や問題となる台帳価格が付せられた時点以後の事案ではない。特別な事情と捉えるべきものがいかなるタイミングで発生したのかということを問題とする場合において、本件のように台帳価格の付与と移転登記のタイミングの間で限定的に捉えるべきものであるのか、という点は、検討すべきであろう。私見としては、法文上、登記目的の対象となる不動産等に対する減額修正要因の発生が登記の時点で発生しているのか否かが問題であり、台帳価格の付与との間でタイミングを限定的に捉えるべきものではないと解される。修正を登記官の最量に委ねている以上、客観的な事実関係の発生と価格の因果関係が問題視すべきものであり、台帳価格の付与時点との間で発生した特別な事情を限定的に解釈することは、妥当ではないのではないだろうか。
但し、登録免許税の趣旨が必ずしも明らかであるとはいえず、他の税目と客体における二重課税、さらには担税力という概念自体が必ずしも明確ではなくという点も留意されるべきものといえる。
本件で問題となった評価においては、上記に定める特別の事情に過去に発生した災害の損失は該当しないとして判断しつつも、最終的には、請求人の主張を一部認め、そもそも災害の損失を反映していないということで、不動産等の価額に該当しない部分があるとしている。すなわち事実上、登録免許税の課税標準を台帳価格によるべきものと解したものの、施行令が定める法が求める台帳価格からの例外的な評価に該当しない場合があるものとして判断している。この点は法が要請する、例外的事情である特別な事情の枠外で判断しており、法的な根拠が問われるべきものではないだろうか。例外的規定の他にさらに他の裁量的な判断の余地を認める判断は予測可能性や法的安定性の観点から許容されるべきものと考えることは違和感が拭えないところではあるが、かかる判断が是認されうるとした場合においては、統一的な視点から台帳価格によるべき合理性を重視し、固定資産税における台帳価格の重要性が際立つものであるだろう。
この点は法が、原則として、不動産等の価額として登記時点の時価をその基礎としつつも、附則によって当分の間、できる規定として、台帳価格によることを認めている法令の基本的な関係が事実上、の評価の減速を修正しており、実務上、台帳価格を原則的な取扱としている点からも理解される。私見としては、課税標準たる重要な課税要件が、できる規定として不安定な状況に置かれている事自体が、(そもそも、当分の間とはいかなる意義だろう。)問題の原因なのではないだろうか。
以上、毎度のごとく論文Stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。