2017年1月25日水曜日

判例裁決紹介(平成28年6月8日、登録免許税の価格算定と火災損失)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、
平成28年6月8日裁決で、登録免許税の課税標準となる価格算定が問題になった事案です。


具体的には本件は、請求人が訴外会社より取得した土地建物につき、その所有権移転登記を行い、登録免許税の納付を行ったところ、この取得した建物等の一部に、取得前(数年単位で)に発生した火災による損失が存在しており、しかも修繕等は行われておらず、この登録免許税の課税標準を構成する価格を固定資産税の課税台帳価格(平成26年基準価格)に基づいており、かかる台帳価格には当該火災損失は反映されておらず、従って、当該価格は過大であり、納付した金額の還付を求めたところ、請求人の申請を認めなかった課税庁の処分を不服として争われた事案となる。
なお、この問題となった当該建物等の固定資産課税台帳の価格は、平成27年度において変更修正されており、火災損失を反映させた価格となっている。すなわち事実関係として固定資産税の課税を決定する台帳価格において不備が見受けら本件は、登録免許税の課税標準が争われた珍しいケースではあるが、事実上以後の時点において課税台帳の価格が修正されており、通常の時価に関する争いとは異なり時価自信の評価額算定とは異なる争点をもっている。基本的には課税台帳の修正と登録免許税の課税のタイミングのズレが問題の原因とも考えられる。れたことが本件の起因であり、当該建物の実質的な価格は、この火災損失を反映させた価格であることが争いのない前提となる。
本件は、登録免許税の課税標準が争われた珍しいケースではあるが、事実上以後の時点において課税台帳の価格が修正されており、通常の時価に関する争いとは異なり時価自信の評価額算定とは異なる争点をもっている。すなわち基本的には課税台帳の修正と登録免許税の課税のタイミングのズレが問題の原因とも考えられる。この点において実務上も固定資産税評価における影響を考慮する際の参考となるだろう。

登録免許税の課税標準は下記のような法規定において律されている。

登録免許税法(不動産登記に係る不動産価額の特例)
第七条  新法別表第一の第一号に掲げる不動産の登記の場合における新法第十条第一項の課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該登記の申請の日の属する年の前年十二月三十一日現在又は当該申請の日の属する年の一月一日現在において地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第三百四十一条第九号(固定資産税に関する用語の意義)に掲げる固定資産課税台帳に登録された当該不動産の価格を基礎として政令で定める価額によることができる。

登録免許税法施行令
 法別表第一の第一号に掲げる登記で不動産の価額を課税標準とするものについて登録免許税を課税する場合において、登記官が当該登記の目的となる不動産について増築、改築、損壊、地目の変換その他これらに類する特別の事情があるため前項の規定により計算した金額に相当する価額を課税標準の額とすることを適当でないと認めるときは、同項の規定にかかわらず、法附則第七条に規定する政令で定める価額は、同項の規定により計算した金額を基礎とし当該事情を考慮して当該登記官が認定した価額とする。

第十条  別表第一第一号、第二号、第四号又は第四号の二に掲げる不動産、船舶、ダム使用権又は公共施設等運営権の登記又は登録の場合における課税標準たる不動産、船舶、ダム使用権又は公共施設等運営権(以下この項において「不動産等」という。)の価額は、当該登記又は登録の時における不動産等の価額による。この場合において、当該不動産等の上に所有権以外の権利その他処分の制限が存するときは、当該権利その他処分の制限がないものとした場合の価額による。

すなわち、客体たる登記時点における不動産等の価額がその課税標準であることを原則としながら、本則規定ではなく附則規定によって、固定資産税の課税台帳に登録された価格を基礎として算定することを認め、できる規定として記述し、特別な事情の有無をもってその台帳価格に基づく価格の修正を認める法規定になっている。

地方税である、固定資産税に対して国税である登録免許税において共通した課税標準を用いていることは、両税が共に不動産等の価額をその対象としており、実務上、課税の執行面を考えれば、固定資産税と共通した台帳価格を利用することは合理的であり現実的な判断であるだろう。加えて、登記官の裁量によって課税標準となる不動産等の価額が異なることは納税者によって不合理であり、かかる意味でも統一的な台帳価格をベースとした価額判定の枠組みは重要な意義を有するものと考えられる。

しかしながら、固定資産税と登録免許税が不動産取得税も含め、土地等をその客体とする租税であることは共通しているが、その課税根拠や趣旨目的、課税形式等は相違がある。特に流通税である登録免許税と財産税である固定資産税はその形式を異にするものであり、かかる法規、課税根拠の相違等を考慮せず、一律に固定資産税台帳価格に依拠することは問題であり、上記規定もそのようなタイミングのズレ等を考慮した結果であるだろう。このように考えれば、この例外的な評価を許容する理由とは如何なるものであるのかという点を、法解釈により明らかにすべきものであるといえよう。

従ってまずは、登録免許税の原則的な課税標準である不動産等の価額が如何なるものであるのかという点が問題となる。この基本的な理解があって初めて、例外的な許容されうるべき価額が求められるべきものと考えられる。法規によれば、不動産自身の価額と登記の時点というタイミングが問題となっており、その具体的な二要件の充足が過大。特に流通税として登録免許税が財産の移転登記の時点を事実として捉え、担税力を見出していることからも一定の時点に於ける価額の算定が問題となり、この点で固定資産税台帳価格とのズレを想起するべきものである。従って、法が記載するように、一定の財産評価上のマイナス項目を捉え、修正を行うべきものと解されるところである。このように考えると、当該マイナス項目が如何なるものであるのかという点ももちろんではあるが、その発生の時期がいかなる時点で発生しているのかという点も重要と考えるべきである。
本件では、過去の災害の損失がこの特別な事情に該当しないとしているものの、いかなる理由でその該当性を否定したのかが必ずしも定かではないものの、例示にある事例から特別な事情を質的量的な形状の変化がある場合であると解しており、この妥当性が問われるべきものである。登録免許税が大量に行われる不動産関係の登記関係の変動を捉え課税対象としている以上、早期の課税関係の安定のためにも、客観的な・かつ明白な形状の変更が価格修正の事由であると判断すべきであり、かかる点からは過去の災害の損失はその該当性が否定されうるべきものであるのであろうか。
また、前記のように、係る事由の発生がいかなるタイミングであるのかという点も問題となる。本件では、火災の損失は、登記が、若しくは所有権移転登記を行った時点や問題となる台帳価格が付せられた時点以後の事案ではない。特別な事情と捉えるべきものがいかなるタイミングで発生したのかということを問題とする場合において、本件のように台帳価格の付与と移転登記のタイミングの間で限定的に捉えるべきものであるのか、という点は、検討すべきであろう。私見としては、法文上、登記目的の対象となる不動産等に対する減額修正要因の発生が登記の時点で発生しているのか否かが問題であり、台帳価格の付与との間でタイミングを限定的に捉えるべきものではないと解される。修正を登記官の最量に委ねている以上、客観的な事実関係の発生と価格の因果関係が問題視すべきものであり、台帳価格の付与時点との間で発生した特別な事情を限定的に解釈することは、妥当ではないのではないだろうか。

但し、登録免許税の趣旨が必ずしも明らかであるとはいえず、他の税目と客体における二重課税、さらには担税力という概念自体が必ずしも明確ではなくという点も留意されるべきものといえる。

本件で問題となった評価においては、上記に定める特別の事情に過去に発生した災害の損失は該当しないとして判断しつつも、最終的には、請求人の主張を一部認め、そもそも災害の損失を反映していないということで、不動産等の価額に該当しない部分があるとしている。すなわち事実上、登録免許税の課税標準を台帳価格によるべきものと解したものの、施行令が定める法が求める台帳価格からの例外的な評価に該当しない場合があるものとして判断している。この点は法が要請する、例外的事情である特別な事情の枠外で判断しており、法的な根拠が問われるべきものではないだろうか。例外的規定の他にさらに他の裁量的な判断の余地を認める判断は予測可能性や法的安定性の観点から許容されるべきものと考えることは違和感が拭えないところではあるが、かかる判断が是認されうるとした場合においては、統一的な視点から台帳価格によるべき合理性を重視し、固定資産税における台帳価格の重要性が際立つものであるだろう。

この点は法が、原則として、不動産等の価額として登記時点の時価をその基礎としつつも、附則によって当分の間、できる規定として、台帳価格によることを認めている法令の基本的な関係が事実上、の評価の減速を修正しており、実務上、台帳価格を原則的な取扱としている点からも理解される。私見としては、課税標準たる重要な課税要件が、できる規定として不安定な状況に置かれている事自体が、(そもそも、当分の間とはいかなる意義だろう。)問題の原因なのではないだろうか。

以上、毎度のごとく論文Stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

2017年1月16日月曜日

判例裁決紹介(平成28年1月27日裁決、第三者換価による相続税の延納許可取消)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は平成28年1月27日裁決で、第三者換価による相続税の延納許可が取り消された事案です。

事案としては具体的には相続人たる請求人が相続税の申告につき相続税法上の延納許可申請を行っていたところ、かかる延納許可につき、提供していた担保物である土地に対して、かかる相続税申告に関して第三者である固定資産税等の地方税当局が財産の差押、強制換価手続を実施した事実関係において、下記相続税法40条2項に基づき課税庁が延納許可の取消処分を行ったところ、これを不服として提起された。

 税務署長は、延納の許可を受けた者が延納税額(当該延納税額に係る利子税又は延滞税に相当する額を含む。)の滞納その他延納の条件に違反したとき、その者が当該延納税額に係る担保につき国税通則法第五十一条第一項(担保の変更等)の規定による命令に応じなかったとき、当該延納税額に係る担保物につき国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)第二条第十二号(定義)に規定する強制換価手続が開始されたとき又は当該延納の許可を受けた者が死亡し、その相続人が限定承認をしたときは、その許可を取り消すことができる。この場合においては、当該強制換価手続が開始されたとき及び限定承認をしたときを除き、あらかじめその者の弁明を聴かなければならない。

本件で争点とされた法令解釈としてはまず、第三者である地方自治体の強制換価手続の実施が、上記規定に定める強制換価手続に該当するか否かが問題となったが、

十二 強制換価手続 滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)、強制執行、担保権の実行としての競売、企業担保権の実行手続及び破産手続をいう

上記のように国税徴収法が規定しており、誰が主体であるか必ずしも明確ではないと評価できるところではあるものの、本件取消の趣旨が延納制度による納税者の保護と、租税徴収の実効性の確保のバランスから設けられていることから鑑みれば、本件の判断のように課税庁以外の第三者による強制換価手続の実施であっても対象と解するべきであると考えられる。

また、上記規定ができる規定である以上、具体的な取消の実行に当たっては課税庁にその裁量があるものと解され、上記本取消制度の趣旨目的から行っても事実関係を考慮して延納税額とのバランスなどへの配慮がおこなわれているものと考えるべきである。但し合法性の原則や租税負担の公平性の観点からはいかなる場合において、その裁量を発揮されるべきであるのかという点は解釈による検討が必要な項目といえよう。

かかる点からは、本件のように当該取消に対する違法性の判断においては、当該取消において裁量権の逸脱があったことが、濫用と評価されるべき状態にあることが必要であると考えられ、本件の問題の中心的な部分を構成しているものと評価される。従っていかなる場合において、その裁量の濫用を判断すべきであるのかという点が問題であり、かかる判断基準をいかに考えるべきであるのかという点が検討対象といえよう。本件においては、単に延納税額の金額部分のみがその判断基準としていかなる程度の金額割合が残存しているのか、という点から判断を行い、結果としてかかる取消の合理性を判断しているが、かかる判断過程が妥当と言えるのか、私見としては本制度の、上記のように取消の制度趣旨や目的を基本的に評価した上でその濫用性を判断すべきものであり、かかる金額の判断のみでは必ずしも妥当と捉えるべきものといえないのではないかと捉えている。

さらに、この強制換価手続に対しては民事法における財産差し押さえの効果との関係も比較検討すべき可能性もありうる。

また、本件では直接の争点とはなっていないが、かかる処分の前提として上記規定は、弁明を聞くべきか否かという点も問題となる。立法論と捉えるべきかもしれないが、上記規定は、明確に強制換価手続の開始はその弁明の機会を設けることを要件とはしていない。あまり研究のある分野ではないが、租税法制度における弁明制度の意義とはいかなるものと捉えるべきであろうか。いかなる趣旨に基づくものであり、いかなる要件を満たすことが弁明の実を達成することになるのかという処分の前提となる制度的な性格、位置づけなど、検討すべき課題ともいえるだろう。他には法規にあるようにあらかじめとあるがいかなる時期等であるべきかなども解釈上の問題となるだろう。

いずれにしても本件は、延納許可の取り消しに関する事案であり、非常に珍しい事案。基本的に問題となった処分自身は法の規定の枠内であり私見として本件判断は妥当であり問題となるべきものであるとは捉えがたいが、一般的に納税者の救済・保護をその趣旨、背景とする延納制度であると考えるならば、納税者以外の第三者の財産差し押さえの効果が国税に影響するという本制度は、納税者の救済を求める法的な期待に合致するものではないとも評価しうるところではある。
しかしながら、延納制度が担保物の提供を明確にその要件としており、納税者の便宜や救済と徴税の実効性を高めることをバランスさせた制度が延納制度の趣旨であると捉えるならば、本件のように第三者による行為であっても、本件のように延納制度の取消処分の対象となるべきことは、徴税への配慮を考慮して一定の合理性を有しているものといえるのではないだろうか。かかる取消は、いずれにしても納税者の財産状態に非常に大きな影響を与えることは明らかであり、また、実効性を担保するためにも一定の裁量権を課税庁に付与していることからも、かかる取消の要件は明確にすべきものと考えるべきである。立法論としては、たとえ客観的な第三者による換価手続の開始であっても、弁明制度の対象して一定の機会を与えることも、適正な手続きを要請する観点からも制度的には合理性を有している可能性も否定できないのではないかとも考えられるところであるが、法令解釈としては明文の規定からも、弁明の機会の保障はないものと考えるべきものといえよう。

以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。
裁決

2017年1月7日土曜日

判例裁決紹介(後発的事由、平成28年1月12日)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成28年1月12日裁決で固定資産評価に伴う誤りを市区町村より通知された納税者が、これに基づく相続税評価額が過大となったとして課税庁に更正の請求を申し出たところ否認されたため、これを不服として行われた裁決事案です。

具体的には、請求人たる被相続人が相続により土地を取得した際に平成16年の固定資産評価額に基づき、相続税評価額を算出し、相続税確定申告をなしたところ、平成26年になってこの固定資産税評価額が過大であったことが判明し、これを理由として更正の請求をなしたところ、当然に通常の更正の請求を機嫌は超過しており、下記の、後発的事由に基づく、特に判決等が確定したことに基づき更正の請求をなしたところ、これが認められなかったため、提起された事案です。判断としても課税庁の判断を合理的と判断しています。
本件に関する本申告がなされたのは平成10年台であり、明らかに旧国税通則法のタイミングでの事案ではありますが、国税通則法の改正により、期限の延長は行われたとしても、基本的にこの後発的事由の解釈に関しては、準用されていると考えられるので、現時点でも意義も有するものであろうかと考えられます。特に今回は固定資産税の評価誤りが原因であり、相続後、その固定資産評価が誤っていることは3年に一回の評価替えのタイミングでしか基本的に認識され得ないものと考えられるので、今後の更正の請求における後発的事由の該当性においては、参考になるものであろうかと考えています。

国税通則法施行令23条
その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき その確定した日の翌日から起算して2月以内(第1号)

上記のように本件の解釈上の問題としては、判決及び判決と同一の効力を有する和解その他の行為、特に後者において固定資産評価誤りに対する通知が該当するのか否かが問題になったものである。
本件は改正前の事案に関するものですが、基本的に国税通則法において、この後発的事由に関しては、継続しているものと考えられるため(異論もありえます)、これを前提として考える。

そもそも、更正の請求において期限制限が求められていることと、この後発的事由に基づく請求の例外措置を認めている趣旨は、納税者の保護の観点から、一定の事実関係の変更に伴い、課税の基礎事実の変更に納税者の帰責性ないものとして、これらを保護する趣旨で、更正の請求に対する期間制限による課税関係の早期安定と執行の便宜のバランスで解釈されるべきものと考えられます。この点が特に更正の請求において期限の延長が認められた現状において、バランスの変化が認められうる可能性があるところではありますが、単に納税者の保護を求めているものではなく、一定の制限が図られていることに代わりはないものと考えられます。私見としては、申告納税制度を前提とする限りにおいて、このような期間制限とのバランスの観点から趣旨を理解することは合理的であると考えていますが、納税者に対して帰責性の有無まで求めるかどうかは法的な根拠がいかなるものであるのかという点からも議論の余地があるように考えられる。このような理解からは、まずはその文言の解釈において租税法の基本原則に則り拡張的な解釈は排除されるべきものと捉えられるかもしれません。この点では

具体的な解釈としては、判決という文言の意義に関しては、明らかであり、民事上の判決という司法判断、裁判所に基づく判決であることは、いうまでもないことであろうかと考えます。問題となるのは判決と同一の効力を有する和解その他の行為というmんごんです。かつて裁判例においても、この部分につき青色申告の取消処分等が対象となったこともあり、いかなる解釈が成り立つのかという点が問題です。判決の効力との同一性も問題である。

課税庁としては、課税要件に関する事実関係は非常に多様な性格を帯びており、この多様性から、単に事実関係の変更を考慮するのではなく、判決の文言を受けて司法判断、裁判所の介在を一つの要件として解釈して、本件の通知が判決等に含まれないものと判断して、更正の請求を退けているなぜ、裁判所の介在を要するべきかという点は、納税者の保護とのバランスから、あるいは合法性の原則から鑑みて妥当な判断とも言えますが、明示的に司法の関与、介在を本文から明らかということは困難とも評価できます。上記のように裁判例において緩やかにこれを介して、課税庁による処分もその対象に含んでいるような事案も存在し、この範囲が法解釈上問題と言える。

私見としてはその対象は、判決から考えて、その同一の効力を有するか否かという観点から判断されるべきであり、判決その他の効力をいかに捉え、その同一性を評価しているのかという点でこの判断は疑問を持ちます。また、法令においては、この判決等に対して課税標準等の基礎となった事実として一定の限界を付していることも着目されるべきでしょう。この基礎となる事実がいかなるものであるのかという点は、あまり問題とならないですが、必ずしもその範囲がいかなるものであるのかという点は定かではなく、議論されるべきものと考えるべき。

このように、法規の趣旨目的と規定ぶりから考えるに、判決等の意義は、その対象行為がいかなる性格を有するのか、その効力がいかなるものであるのかという点からから評価されるべきものであり、馴れ合い判決等の存在も考慮するならば、必ずしも裁判所の介入、介在のような形式的な判断過程ではなく、もちろん裁判所の介在が結果として法が求める効力の同一性を担保することになる可能性も高く、具体的な判断基準の一つとしては理解されうるが、まずはその対象がいかなる効力を有するのかという評価、行政法上の評価から判断されるべきものであるだろう。法令解釈によって判決との同一性をいかに求めるのかという基準が明らかにされるべきものといえよう。

この点が本件でも議論されるべきである。固定資産評価の見直しは、第三者である市町村長という一定の客観性が確保された行政機関による行為であり、国税に関する課税庁の判断ではないが、確定判決と同一の効力を有するものと評価することは必ずしも不合理であるとは言えない。立法論として対象としても問題は少ないのではないだろうか。少なくとも納税者にとって、国税地方税の区分、国と地方自治体の相違は大きな関心ではなく、納税者の予測可能性を考慮するならば、固定資産評価における訴訟レベルまで要求することは困難ではないか(少なくともこのような減額の通知が出た以上は訴訟において争うことは不可能である)。

現在のような更正の請求に関する期限の延長は図られた現在において、あえて、解釈上、従前よりも後発的事由を拡張して解釈する意義は乏しいとも考えられるが、相当期間の経過を伴うような立証は困難を伴うものであり、やむを得ない納税者に対する帰責性をもとに裁判所の介在や課税庁の判断に限定的に解するべきではなく、対象の効力を捉え、その判決との同一性を評価した上で、検討されるべきものであり、解釈の拡張性から問題が生じるのであれば、地方自治体の判断を限定的に列挙する立法措置があっても合理的ではないだろうか。

また、上記のように課税要件の基礎たる事実が多様なものである以上、限定的な列挙はかえって納税者の保護という趣旨を埋没する可能性も秘めている。この点からも解釈による範囲の確定が重要であり、私見としては、申告納税制度を前提とした納税者における帰責性の有無や担税力の減少に対する客観性の確保、対象判断の有する拘束性等の性格等から判断されるべきものだろう。


以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、参考までに。裁決

2017年1月5日木曜日

判例裁決紹介(小規模宅地の適用要件、東京地判平成28年7月22日)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京地判平成28年7月22日で、小規模宅地の特例に対する適用要件、書類添付の状況が不備であったとしてその適用が否認された事案です。
相続税法において最も適用が行われる特例の一つがこの小規模宅地等の特例に関する評価減の規定であり、その適用を巡る要件を議論することは法解釈上もまた、実務上も有益であるように考えられます。特に本件では、特例の適用に当たって、同意を確認する相続人の意思の確認が困難であるような状況であり、相続において争いがあった場合などにおいて留意すべき点を示唆しているように評価されます。

具体的には、医師である原告がその母親と同居して、その保有する土地において診療所を経営していた場合において、その母親の死亡により、財産を相続し、措置法69条に定める事業のように供された土地の小規模宅地の特例による評価減措置の適用をもって、相続税申告をなしたところ、下記要件に定める書類の添付が不備であるとして、否認されたことを不服として提起されたものです。

 69条の4第1項の適用を受けようとする者の当該相続又は遺贈に係る相続税法27条又は29条の規定による申告書(これらの申告書に係る国税通則法18条2項に規定する期限後申告書及びこれらの申告書に係る同法19条3項に規定する修正申告書を含む。)に69条の4第1項の規定の適用を受けようとする旨を記載し、同項の規定による計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。

相続税法は上記のように、法規によって小規模宅地の特例を適用を受けようとする場合には、上記書類の添付があることを明文をもって規定しています。この添付書類については、下記のように、書類の要件が定められており、本件はこの内、3号にある相続人すべてによる同意書の添付が行われず、原告の同意書のみが添付されていた形になります。

40条の2第3項
     措置法69条の4第1項に規定する個人が相続又は遺贈(贈与をした者の死亡
    により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により取得した特例対象宅地等の
    うち、同項の規定の適用を受けるものの選択は、次に掲げる書類の全てを同条6
    項に規定する相続税の申告書(以下、単に「相続税の申告書」という。)に添付
    してするものとする。ただし、当該相続若しくは遺贈又は贈与〔当該相続に係る
    被相続人からの贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。)で
    あって当該贈与により取得した財産につき相続税法21条の9第3項の規定の適
    用を受けるものに係る贈与に限る。〕により特例対象宅地等並びに措置法69条
    の5第2項4号に規定する特定計画山林のうち同号イに掲げるもの(以下「特例
    対象山林」という。)及び当該特定計画山林のうち同号ロに掲げるもの(以下「
    特例対象受贈山林」という。)の全てを取得した個人が1人である場合には、1
    号及び2号に掲げる書類とする。
    1号 当該特例対象宅地等を取得した個人がそれぞれ措置法69条の4第1項の
      規定の適用を受けるものとして選択をしようとする当該特例対象宅地等又は
      その一部について同項各号に掲げる小規模宅地等の区分その他の明細を記載
      した書類
    2号 当該特例対象宅地等を取得した全ての個人に係る前号の選択をしようとす
      る当該特例対象宅地等又はその一部の全てが措置法69条の4第2項各号に
      規定する限度面積要件のうちのいずれか一の要件を満たすものである旨を記
      載した書類
    3号 当該特例対象宅地等又は当該特例対象山林若しくは当該特例対象受贈山林
      を取得した全ての個人の1号の選択についての同意を証する書類(以下、同
      号に規定する書類を「選択同意書」という。)

具体的にはこの部分が争われたものであると考えられます。なお、本件土地は、原告が事業のように供していたことからも被相続人の遺言により、全て原告に相続させる旨が、記載されています。そして、本件では、その他の相続人との間で、未分割の土地等を有していました。課税庁は、この規定の解釈として添付書類として、相続人全ての当該制度の適用に関する同意書が必要であるとして、本件申告における、その欠如を理由として、相続税申告における、小規模宅地等の特例の適用を否認しました。判示もこの判断を是認しています。

なお、本件は相続訴訟ではありませんので、なぜ、この同意書が不備であったのかは定かではありませんが原告の主張を読む限り、相続に伴う、財産分割において紛争が存在し、遺言に定めのある財産の状況が未分割となったような状況にあるように捉えられます。本件では、特にこの未分割の他の財産においても貸付けの用に供してあり、小規模宅地等の特例制度の適用を行うことが可能であることが、更に問題となっているところです。

上記のように規定ぶりだけでは、同意書の添付は、適用対象となった財産を取得した個人のみで良いとする解釈も行うことは可能でありますが、私見としては相続税法が、一定のタイミングにおいて確定的に取得した財産をその対象としている以上、そして、相続人に連帯納税義務をもってその納税を担保していることからも、相続人間の同意をもって本件制度を適用すべきものと、すなわち起点としているものと解され、その実態的な確認、現れが本件で問題となった選択同意書であって、取得した財産や取得者においてその租税負担が異なることからも、生活の基盤への配慮を趣旨とするこの制度の対象として相続財産の一部を選択する場合には、関連する相続人全ての同意が必要であると解すべきであると考えられ、本件の判断は妥当なものであると評価しています。

また、現行法において、未分割の財産に対する規定をおいている(主として未分割の財産は、共有の状態にあるものと解されます)、この規定の性格やこれによる具体的な相続財産に対する法的な関係性をいかに捉えるのかは重要な課題ではありますが、他の相続税法の規定においても取得した財産に関しては、包括的に規定しており、本件で対象となった規定のみ別意に解するべき理由は当該制度の趣旨等からも肯定できるものではないでしょう。小規模宅地等の特例制度が、納税者間のバランスを考慮しつつも、残された相続人の生活の基盤の確保という趣旨から一定の評価減を定めており、かかる理解にたてば、要件としての同意書の存在を限定的に捉えるべき、もしくは他の規定と別意に解すべき理由は存在しないものと考えるべきです。本件のように他の相続財産が存在し、未分割の状態であり、更には、当該土地以外にも本件制度のの適用対象となりうるものである場合においては小規模宅地等の特例に於いて本件土地を対象とする相続人間の同意は重要な要件と言えるでしょう。

本件はすなわち事実上、相続人間の相続財産に対する紛争の存在を、その解決すべき義務を租税負担に帰着させようとするもので合理的な措置ではないものといえます。

本件のように、相続時における紛争の存在(あるいは可能性)をもって限定的に相続対象財産に対する解釈を変更することは、すなわち原告が主張するように、同意書の対象を限定的に捉えることは、立法論としてそのような措置をとり、相続財産の紛争の有無にかからず実質的な相続における租税負担の公平性を図ることは、ありうるものではあることは否定できませんが、解釈を限定的に捉えることは、租税法の基本原則たる法的な安定性を阻害するものであり、許容されるものと評価すうることはこんなんでしょう。立法に関しても、本質的に相続財産に関する紛争は、民事上の財産の帰属に関する問題であり、民事上処理すべき事案であって、租税負担において考慮すべきものであると捉えていませんが、この点は実務家としてはいかがでしょうか。

いずれにしても、正直なところ、実質的に相続財産に関する紛争の存在を租税負担に帰着させているだけであり、なぜ本件が訴訟となったのか理解に苦しむところもあるのですが、本件のように、結果として、紛争の存在によって特例の適用が困難な状況であれば、全体の相続税負担が増加することは、相続に関わるものであれば、常識に属する点であり、この点を納税者に周知する責任が専門家にはあることを留意すべきということを明らかにしている点では、実務上も有益な事案であるように考えられます。


以上、毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

また、本年も皆さんにはお世話になりました。特に本年はプライベートも多く変化し、大変な一年でしたが、また来年も公私共に大きな変化があるように予想されます。皆さんのご協力をよろしくお願い致します(特に論文作成予定の人は(笑))。
それでは仕事も忙しいとは思いますが、くれぐれも皆さん体調には留意の上で、良い年をお迎えください。判決