2021年3月29日月曜日

判例裁決紹介(平成31年4月5日裁決、歯科技工における消費税の簡易区分)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、歯科技工業務に関する消費税の簡易課税の適用の際の業種区分、製造であるのかサービス業であるのかが争われた事例です。

具体的には、本件は、歯科技工所を営む法人である請求人が、その消費税の申告において簡易課税の適用を申請し(手続上の瑕疵はない)、第三種の製造業に当たるとして申告したところ、課税庁よりサービス業として第5種事業に該当するとして更正処分を受けたことから、これを不服として提起された事例である。

簡易課税の適用区分をめぐる事案は多いが、本件も日本標準産業分類を適用することの是非が中心的な争点となっている。歯科技工という業務が素材となっているものであるが、人的役務の提供におけるサービス業(そもそも法にサービス業という非常に曖昧な概念を導入している事自体が個人的には疑問)として如何に捉えられるべきであるのかという点は今後の社会情勢の変動から多様化、多発化する事例であり、今後の参考として留意されるべき事例であろう。

日本標準産業分類の利用は通達を根拠としているものであり、この是非が解釈として妥当であるのかどうかという点は、今後の残る疑問であろうが、そもそも業種業態
が多様化している現在において、このような簡易課税のアプローチ自身が岐路を迎えているのではないだろうか(そもそも適格請求書制度の導入によりこの制度自体の存在意義自体が疑われるべきものであろうが)。


(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例)
第三十七条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、その納税地を所轄する税務署長にその基準期間における課税売上高(同項に規定する基準期間における課税売上高をいう。以下この項及び次条第一項において同じ。)が五千万円以下である課税期間(第十二条第一項に規定する分割等に係る同項の新設分割親法人又は新設分割子法人の政令で定める課税期間(以下この項及び次条第一項において「分割等に係る課税期間」という。)を除く。)についてこの項の規定の適用を受ける旨を記載した届出書を提出した場合には、当該届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間(当該届出書を提出した日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間である場合には、当該課税期間)以後の課税期間(その基準期間における課税売上高が五千万円を超える課税期間及び分割等に係る課税期間を除く。)については、第三十条から前条までの規定により課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れ等の税額の合計額は、これらの規定にかかわらず、次に掲げる金額の合計額とする。この場合において、当該金額の合計額は、当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。
 当該事業者の当該課税期間の課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)に係る課税標準である金額の合計額に対する消費税額から当該課税期間における第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額の百分の六十に相当する金額(卸売業その他の政令で定める事業を営む事業者にあつては、当該残額に、政令で定めるところにより当該事業の種類ごとに当該事業における課税資産の譲渡等に係る消費税額のうちに課税仕入れ等の税額の通常占める割合を勘案して政令で定める率を乗じて計算した金額)
 当該事業者の当該課税期間の特定課税仕入れに係る課税標準である金額の合計額に対する消費税額から当該課税期間における第三十八条の二第一項に規定する特定課税仕入れに係る対価の返還等を受けた金額に係る消費税額の合計額を控除した残額

以上のように本件は上記消費税法が定めるいわゆる簡易課税制度の適用における業種区分が課題とされているものである。実務上は日本標準産業分類が基礎となっていることが事実上の標準となっているものであり、特段疑われることがなく、適用されているところであろうが、具体的な法としては、下記のように施行令において、各種事業の定義が定められている。

 施行令
前各項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 第一種事業 卸売業をいう。
 第二種事業 小売業をいう。
 第三種事業 次に掲げる事業(前二号に掲げる事業に該当するもの及び加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業を除く。)をいう。
 農業
 林業
 漁業
 鉱業
 建設業
 製造業(製造した棚卸資産を小売する事業を含む。)
 電気業、ガス業、熱供給業及び水道業
 第五種事業 次に掲げる事業(前三号に掲げる事業に該当するものを除く。)をいう。
 運輸通信業
 金融業及び保険業
 サービス業(飲食店業に該当するものを除く。)
 第六種事業 不動産業(前各号に掲げる事業に該当するものを除く。)をいう。
 第四種事業 前各号に掲げる事業以外の事業をいう。
 売上げに係る税抜対価の返還等の金額 法第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額から同項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額に七十八分の百を乗じて算出した金額を控除した金額をいう。
 前項第一号の卸売業とは、他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業をいうものとし、同項第二号の小売業とは、他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業で同項第一号に掲げる事業以外のものをいうものとする。

そもそも、この立法案自体が日本標準産業分類を前提として作成されたものであるとの意見もあろうが、サービス業やその他事業、製造業など具体的な意義が定まっていないものが導入されているものであり、多くの紛争事例が発生している要因の一つであろう。6号において、卸売と小売の境界となるべき基準は示されているが、他の区分における判断基準は、明瞭とされているものではない。上記のようにサービス業とは如何なるなものであるのか、必ずしも明確ではないだろう。事実上イメージに依拠した区分であり、金額的に少額なものを対象とするものであるとしても、制度として、執行において租税法律主義の観点から疑義が含まれるものであることは否めない。


イ 消費税法施行令第57条第5項第3号及び第4号は、第三種事業及び第五種事業に該当する業種を列挙するのみで、第三種事業及び第五種事業に
該当する各業種自体の内容を明らかにした定義規定は存在しておらず、「製造業」と「サービス業」の意味内容ないし用語例についても、必ずし
も一義的に解釈可能なほど明確な概念とまではいえないことから、「製造業」と「サービス業」のいずれに該当するかを判断するに当たっては、簡
易課税制度における税負担の公平性等を考慮した上で解釈するのが相当である。

この点に関しては、判断は上記のように明確に定義がないことを示した上で、下記のように、日本標準産業分類の活用を肯定している。

ロ ところで、日本標準産業分類は、上記(1)のイの(イ)のとおり、統
計調査の結果を産業別に表示する場合の統計基準として、事業所において
社会的な分業として行われる財及びサービスの生産又は提供に係る全ての
経済活動を分類するものであり、統計の正確性と客観性を保持し、統計の
相互比較性と利用の向上を図ることを目的として設定されたものであるか
ら、課税政策に基づいて設定された消費税法上の事業区分とは目的を異に
するものでは
あるが、消費税法施行令第57条第5項第3号及び第4号に
掲げる業種(なお、「製造業」は同項第3号ヘに、「サービス業」は同項
第4号ハに掲げられている。)は日本標準産業分類の大分類に列挙されて
いる産業と一致している上、日本標準産業分類における分類は、社会通念
に基づく客観的なものであり普遍性
を有しているといえるから、簡易課税
制度を公平に適用するため
には、この産業分類が有用であるといえ、ある
事業が「製造業」又は「サービス業」のいずれに該当するかを判断するに
当たり、普遍性を有する合理的な基準として日本標準産業分類を用いるこ
とは相当であるといえる。


上記のように、日本標準産業分類の政策目的は異なることを明確に表現し(この点は珍しい)、社会通念の観点から客観性を有している点を評価して、簡易課税制度の公平な適用を起点として肯定的に捉えているのである。裁決である以上当然であるかもしれないが、課税庁の基礎的な考えとして、公平な執行を基軸においている、判断の拠り所が不安定にならないことを目標としている点は留意されるべきであろう。この点において現行法の解釈としては正当性があるものと捉えられる。フェアの概念が基礎となっていることが主観的な納税者の判断に依拠することよりも合理的と考えられるのである。そもそも所得税法においても課題となることが多いが、近年は特に事業内容が多様化しており(人的役務の提供を主軸としたサービス業が増加していることがその一因だろう)、日本標準産業分類において捉えきれない、事業内容を如何に捉えられるべきであるのかという点が課題であるように捉えられる。

13-2-4 令第57条第5項第3号《事業の種類》の規定により第三種事業に該当することとされている農業、林業、漁業、鉱業、建設業、製造業(製造小売業(自己の製造した商品を直接消費者に販売する事業をいう。以下13-2-6及び13-2-8の2において同じ。)を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業(以下「製造業等」という。)並びに同項第4号の規定により第五種事業に該当することとされている運輸通信業、金融業、保険業及びサービス業(以下「サービス業等」という。)並びに同項第5号の規定により第六種事業に該当することとされている不動産業の範囲は、おおむね日本標準産業分類(総務省)の大分類に掲げる分類を基礎として判定する。
 この場合において、サービス業等とは、日本標準産業分類の大分類に掲げる次の産業をいうものとし、また、不動産業とは、日本標準産業分類の大分類に掲げる「不動産業、物品賃貸業」のうち、不動産業に該当するものをいう。

そもそもこの利用における根拠は上記のように基本通達である。分類を基礎としてという表現を活用している点は租税法規の関連にいるものとしては当たり前の表現であろうが、原則としつつも例外も許容されうるものである。今後の社会情勢の変化により登場するような事業においては、この例外をどのように判断の枠組に落とし込んでいくことになるのかという点が課題であり、製造等の文言に着目されることになるのではないか(例示としては水を採取することなども製造に該当することは有名だが)。日本標準産業分類の分類の活用自体が争点となるが、上記のように現行法としては適正な執行として係る対応は合理的であると評価されるものであり、本来ならば事例の積み重ねによってより詳細な判断枠組みが議論されるべきものであるが、日本標準産業分類の是非に関しての検討が中心であることは課題であると考えられる。実務では日本標準産業分類がベースになってしまっていて、金額的にも簡易課税であり、多くは問題にならないことが要因だろう。制度趣旨と消費税の負担分配の観点からは好ましい状況とは言い難いであろう。

しかしながら、今後は、適格請求書等の保存方式の導入により、また、比較的小規模な人的役務の提供者が増加し、最終的な消費税の負担者になることが予想される。このような状況においては、如何なるものが人的役務において、サービスと捉えられるのか、製造と捉えられるのか、この判断基準を明確化していく意義はあろう。

本件では最終的に、歯科技工においては(通常の職務内容から製造を行っていることは否定しがたいものの)法において定義された歯科技工士の職務において、医師の指示、発注書に基づいて提供される、加工の役務提供であり、医療行為の一環であるとして医療というサービス業(医療がサービスであることに異論があるかもしれないが)という分類とされている。歯科技工という法的に定義された職務内容からの判断であり、消費税が基本的に課税資産の譲渡等とベースとして個々の取引をベースに判断することとしている中では矛盾も感じるところでもあるが、所得税法における事業と同様に業務としての全体の枠組みから判断する流れを踏襲しており、製造業務に一部に着目した判断を回避している点は特徴的であろう。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。



2021年3月9日火曜日

判例裁決紹介(大阪高判令和2年10月16日、複数の公営ギャンブルによる所得区分、営利性)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は大阪高判令和2年10月16日で、以前書いたオートレースなどの複数の公営ギャンブルによる所得が一時所得であるのか否かという点が争点となっているものです。

具体的には、控訴人が、オートレースなどの複数の公営ギャンブルに関して行った大量の購入による所得が一時所得であるのか否か、特に地判では最終的な損益がマイナスになっている期もあり、営利性に欠けるとして一時所得からの離脱を認めていなかった事例である。本件判示でも地判が維持され、納税者の主張を棄却している。

本件は、基本的にソフトウェアの利用がなく、購入履歴が半分確認されることがない段階であったことが影響しているものであるが、購入に関する行為の状況が確認できず、一般的な購入方法との相違がノウハウや陳述に基づくものであって、明確に確定できないことから地裁では、損益の結果に着目し、一時所得からの離脱要件である営利性を有しているのな否かという点が主たる争点とされていた。

高裁では、かかるように鋭利性を中心的なものとする判断枠組みを批判する納税者の主張に対して、下記のように捉え、但し、上記と同様に購入の状況が不明であり、かかる点から客観的な資料として損益の状況を捉えているとして地判を肯定している。

「営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当であると解されるところ、これらの考慮要素は、総合して考慮されるのであって、その間に優劣はないというべきである。

車券等の払戻金は、本来的には、偶然性に左右される性質の所得であり、車券等の購入行為が大量に反復継続されたからといって、直ちに営利を目的とする継続的行為
になるわけではない。それが営利を目的とする継続的行為と評価されるためには、一連の行為の態様その他の状況等を総合考慮して、偶然性の要素が減殺され、客観的にみて利益が上がると期待し得る行為と認めることができなければならない」

網羅的な購入など、偶然性を減少させるための行為の態様が確定できないことから本件のように損益の状況に着目されることとなったものであるが、営利性の着地点として偶然性の要素が減殺されることが重要な判断の枠組みとなっていることが注目される。一時所得の基本的な理解から判断されて、偶発的な所得を対象とするものであるとの考えから導かれたものであろうが、営利性の判断の趣旨目的を偶然性の減殺に求め網羅的な購入等による統計的な理解が基軸になっているようにも考えられる(純粋に考えると最初から政府納入金が差し引かれているので偶然性の減殺があったとしても営利性が肯定されることにつながらないようにも考えられるのだが)。営利性イコール実際の損益のplusであるという理解がなされているものではないところは注目されるべきである。営利を目的とするという文言からもかかる点は肯定されよう。

今後は、このような営利性の判断の枠組みが、ギャンブルの行為に伴う所得以外の一時所得や所得税法における営利性の判断に関しても適用可能であるのかという点が重要であるように思われる。私見としては本件判断はギャンブルという偶然性が基底となった行為に最適化された判断であり、偶然性を減少させるような行為、営利性から裏付けられるものであるのかという判断が、一般的な理解となりうるものであるのか否定的であるが(一連の判断の射程は限定されるものではないか)、かかる点から考えれば、判例等で用いられている、事業所得における営利性とは些か方向性を異にするものであるのではないだろうかという認識であるが、より今後も所得税法における営利性の判断は如何になされるべきものであるのか注目していきたい。一時所得における偶発性偶然性をどのように捉えるべきであるのかという点もさらに検討したい。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2021年2月22日月曜日

判例裁決紹介(東京地判令和2年1月30日、役員給与の不相当に高額、抽出最高額の利用)

 

また、興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京地判令和2年1月30日で、役員給与の不相当性が争われたものです。

具体的には、原告たる法人(車両輸出入)が支給した代表取締役に対する報酬が、約1億円から約5億円程度にまで大幅に増加されたことを契機に、課税庁が不相当に高額な役員給与であるとして更正処分が行われたことを不服として提起された事例である。法人税法における不相当に高額な役員給与をめぐる問題は、その具体的な不相当額の算定、抽出方法、、制度趣旨の変化、比較対象情報の入手方法やデータの信憑性等、多様な争点が従前積み重ねられているものである。古いくて新しい問題であるといえようが本件もその類型に属するものであるが、近年、また少しずつ増加傾向にある役員給与への不相当額の算定(おそらくは、団塊の世代が70代を迎えつつあり、創業者として活躍してきた層が退職する退職金の問題が多いのであろうが)の中で、近年の事情に合わせた判断を行っている点で、実務的にも参考となる事例であろう。特に本件は、詳細な事実認定が行われており、不相当性の認定の端緒となる、売上の変化や、収益率の低下、役員報酬の変化等を丹念に認定されている点は、参考となるものと考えられる。


また、本件は、法令解釈等において、従来と特段特徴的なものはないが、役員が行っている業務や業績との関連から、対比対象として抽出された同業者の中(今回は5社)から、平均を取ることが事例としては多いものであるが、その業務や実績を加味して、抽出対象の中から最高額を持って比順対象として選抜している点は、興味深い。微妙な相違ではあろうが、課税庁が機械的に算定する抽出対象の平均をもって、対象とすることで、創業者や会社の状況等を加味したものであるとして、従来基本軸となっていたものではなく、業務や実績から、一部考慮要因を付け加えて、不相当額を認定している判断は、珍しいものと捉えられる。本件の個別的な判断であるのか、それとも、他の事例においても拡張可能であるのか、考慮要因の拡大や、個別事情の一定の加味の側面から、さらに、本件は検討課題とされる必要があるものであろう。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

2021年2月13日土曜日

判例裁決紹介(東京高判令和2年8月26日、消費税の調査拒否と保存)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京高判令和2年8月26日で、消費税の帳簿不提示と保存の意義が課題となった事例です。

具体的には、遊技場を経営する控訴人(法人)が課税庁の調査に対して、税理士や弁護士の指導により調査における忌避を繰り返し、もって帳簿等を提示せず、かかるゆえに、適正なタイミングでの提示が行われなかったとして、消費税法が定める仕入税額控除の保存要件を満たしていないとして仕入税額控除を否定した(金額が巨大で30億円以上)更正処分を受けたことにつき、提起された事例である。事実認定として再三に渡る調査要請に応じなかったことが帳簿不提示が継続し、従前の最判にある保存の意義から、適時保存、提示がないものとして、仕入税額控除が適用されないこととされているものである。本件は金額が非常に多額であり(あまりこの点は考慮すべきものではないのかもしれないが)著名なものであるが、、実質的な帳簿不提示、調査協力に対する懲罰的な位置づけになりつつある現況が非常によく現れている事例であろう。

法令解釈としては、最判が示した保存の意義の忠実に踏襲しており、特段特徴的なものであるとは考えにくい。このような懲罰、制裁的な要因を持つようになってきている現況は、租税の専門家としては改めて認識されるべきである。最判が出た当初は拡張的な解釈であるとして否定的な見解も多かったものであるが(最判である以上当然かも知れないが、)現行法の解釈として上記のような文言の意義を解する見解は、通説としても実務上の基準としても定着しているものといえよう。本件でも関与税理士等がかかるような批判的な見解を示して、対応措置を捉えているが、現行法の解釈としては覆し難く、立法によるほかないだろう。今後は、適格請求書保存方式が導入され、より形式的な請求書の保存が基礎となる以上(もちろん純粋なインボイスとは異なり、帳簿による補完を図ることは我が国の制度的特徴であろうが)、この保存要件の解釈及び、厳格な適用は維持されることが帳簿だけではなく適格請求書にも同趣旨で適用される基本軸となるだろう。仕入税額控除の本来の趣旨(強調する人は控除権として主張するのかもしれない)を鑑みれば、このような制度構成は否定的な意見もあり得ようが、インボイス、適格請求書による相互牽連が現状において必ずしも実効性を有していない以上、立法においても現行の保存要件は維持されることが妥当であるものと考えている。

いずれにしても、保存の解釈は最判が基軸であるべきであり、今後は、質問検査の行使と任意調査、受忍義務、調査忌避として、このような仕入税額控除の否認が実質的な制裁になっていることをどのように捉えていくのかという課題となるだろう。憲法論として、調査手続きの中でこのような実質的な制裁を課題と捉える見解もあり得る。本件でも主たる争点として、この仕入税額控除の非常に高額の否認は、他の保存が争われた事例と比して、課税庁による仕入税額控除に関する説示が欠けていたとして、他の事案とは異なり、適正な手続きに反しているとの主張、説明義務を尽くしていないとして調査手続違反を主張している。判示では、この点も納税者による調査への非協力でもって説明義務に関しては放棄されていると理解されている(説明義務は必ずしも常に要求されるものではなく、放棄がありえる)。おそらく実質的に何をもって放棄していると判断されることになるのかという点は今後の実務においては明らかにされていくべきだろう。

本件は他に特徴として、租税専門家である税理士や弁護士の関与が挙げられる。両者が攻撃的に調査拒否を行った、指示していたとして、納税者本人はマインドコントロール下にあったというような、不提示、調査拒否は納税者の真意ではないとの主張も控訴審では付け加えられているが、判示では申告納税方式の下において、税務職員が行う帳簿書類の検査に対し事業者がこれに応じることは、納税義務者の当然の義務であるから、として(質問検査の通説的理解からは外れるのではないか)かかる主張は排斥されている。このような主張自体は珍しいもので、租税専門家と納税者の信頼関係が改めて重要であり、専門家として納税負担等バランスの取れた判断が求められることも示唆されるのではないだろうか。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。



 

2021年2月9日火曜日

判例裁決紹介(平成30年6月1日、印紙税における課税文書該当性、契約書内容と実態の乖離)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年6月1日裁決で、印紙税における課税文書としての該当性が契約書内容と実態の相違により争いになった事例です。

具体的には、本件は宗教法人たる請求人が不動産賃貸による駐車場施設の貸付を、設備を置く、事業形態において実施している(消費税法においても駐車場施設の貸付として処理されている)状況下において、提携事業者と作成された契約書に関して、課税文書に該当するのか否か(裁決例ではなぜか具体的な課税文書が何であるのかが黒塗りにされている)が課題となっているものである。契約書に記載された文言は、駐車場用地の貸付であり(設備の設置の許可も含む)、上記のように事業の実態は駐車場施設の貸付となっているような状況であり、契約書の文言、内容と事業実態が乖離している、齟齬があるような状況が本件の起点となっているものであり、これにより如何なるものを基礎に課税文書としての該当性を判断するのかという点が中心的な争点となっているものである。

印紙税は実務において、税理士の関与外でもあろうが、非常に形式的な判断が行われるものであり、課徴金も3倍とシンプルな構成となっている制度であるがゆえに、その紛争事例が表に出ることは稀であるが、本件は、その珍しいものであり、基本となる課税文書としての該当性を判断する上で、如何なる点を基準に置くべきであるのかという点が争点となっているものであり、重要であり、珍しいものであって実務においても参考となろう。

そもそも印紙税そのものが、文書を対象としているものであり、取引税として、消費税が登場している、あるいは電子化が進んでいる状況においてはもう時代遅れとなっているとの指摘もあるが(電子化において、すすめる誘引になると思うのだが)、未だに税収はほとんど変化がない(預金通帳などの存在があるからであろうが、これも現在は減ってきているだろう)。消費税よりもより純粋な取引に対する租税として、デジタル文書であっても課税対象として捉えるようなスタンプ税としての印紙税よりもより拡大した形で再構築されるべきであると考えているのではあるが(時代遅れと言われるかもしれないが)、取引税としての消費税を補完する上でフェアな租税制度の構築という視点からはその役割が期待されるものであると捉えているのであるが、近年では税制改正大綱でもあまり取り上げられる事がなくなりつつあり、地味ながら重要な税制として考えられる。

第3条 文書が課税文書に該当するかどうかは、文書の全体を一つとして判断するのみでなく、その文書に記載されている個々の内容についても判断するものとし、また、単に文書の名称又は呼称及び形式的な記載文言によることなく、その記載文言の実質的な意義に基づいて判断するものとする。

2 前項における記載文言の実質的な意義の判断は、その文書に記載又は表示されている文言、符号を基として、その文言、符号等を用いることについての関係法律の規定、当事者間における了解、基本契約又は慣習等を加味し、総合的に行うものとする。

以上のように本件は、契約書に書かれた内容(内容そのもの自体が争われているわけではない)と実際に行われている事業実態が乖離していることを起点としている。上記のように印紙税の基本通達は、その第3条において、文言の実質的意義(多くはこれがいかなるものであるのかという部分が争点となることが多いのであるが)による課税文書としての判断を解釈としている。印紙税そのものが形式的な部分を重視した、文書をその対処とするものであり、一方でフェアな課税を維持する上では上記のような、必ずしも文書の文言に依拠した判断に限定したものではないという枠組みは正当なものとして理解されている。

しかしながら、本件は、文書の記載内容ではなく、事業実態が文書記載と異なる点で、状況を異にする。

「印紙税は、特定の契約や権利等それ自体を課税対象とするものではなく、
これらの事項を証明する目的で作成された文書を課税文書とするものである
から、課税文書に該当するかどうかは、その文書に表されている事項に基づ
いて判断するべきであり、その文書に表されていない事項は、原則として判
断の要素に取り入れるべきではなく、
また、当事者の約束により文書の名称
や文言は種々の意味に用いられる可能性があることからすれば、単に文書の
名称又は呼称及び形式的な記載文言によることなく、その記載文言の実質的
な意義に基づいて判断するべき
ものと解される。」

裁決はこの点につき、上記のように判断をください、文書文言に原則的な判断を依拠するべきであり、一定の例外的なものとして、文言の実質的な意義を追求するものと解して通達の立場から(裁決である以上当然でもあるが)、納税者が主張するように、契約による実質的な事業実態も考慮すべきとした納税者の主張を排している。

上記の通達や裁決の判断は、契約書などの文書の判断を形式的な判断に加え、文書慣習等を総合的に判断するとしているが、これは確かに文書内容に必ずしも限定されているものではなく、実質的な実態も考慮対象となりうると言う主張が合理性を有するのかという点で本件は課題となっているものである。本件は契約の、文言記載事項が、事業実態と乖離する、契約によって実際に行われている事業活動が異なることとなっており、課税文書を基礎とする印紙税と消費税申告における取り扱いに差異が生じる結果となっている(消費税法上の取り扱いの妥当性については争われていないが、一定の客観性をもって実態が合致していることは否定し難いのであろう)。このような状況は予測可能性の確保を法の基本目的とする租税法規の取り扱いとして妥当であるのかという点が問題の中核と考えられる。

そもそも契約内容と実態が乖離すること自体が発生することに違和感を覚えるところでもあろうが(我が国の法文書、契約に対する意識が現れているともいえようが)、現実的には、このような状況の発生も大いに存在しうるものであろう(長期に渡る契約期間においては実態が乖離することも想定されよう、ここで、単に契約内容と異なることがそもそもおかしいというのは現実を本当に捉え考えていないのだろう)。

私見としても、課税物件が課税文書に限定されている、文書に焦点を当てた制度構成となっていることからも、その文書内容に関して総合的に判断して、列挙された文書としての該当性に検討を行うことと、文書以外の状況を反映させることは問題の性質が異なるものと捉える。文書の内容を超えて判断をすることは不確実な要因を考慮に入れることであり、法的な安定を書くことに繋がりかねない。印紙税がその基本的な趣旨として、文書の背景にある行為や契約自体そのものに租税を負担する能力を見出しているという点に立ち返れば(文書自体はそれを表章するものに過ぎないと考える立場からは)、契約の実態を反映させることは、趣旨に合致したものと捉えるべきという意見もあり得ようが、本来ならば実態との乖離すること自体が回避されるべきであり、いたずらに契約の文言を超えた判断は租税法律関係を不安定とするものであり、回避されるべき判断の枠組みであるだろう。


以上です。毎回のごとく、備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。



2021年2月2日火曜日

判例裁決紹介(令和2年2月5日裁決、輸入取引価格の仮装)

 

また、興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は令和2年2月5日で、輸入取引金額の仮装が問題となった事例です。

具体的には中国からのアパレル商品を仕入れ販売を行っている法人たる請求人が、同一の代表者が経営する中国現地法人からの請求書等に基づいて損金に仕入金額を計上し、確定申告を行っていたところ、課税庁が通関業者が税関に申告した取引価額が正当な、真正なものであり、損金が過大に計上されているとして、更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行ったことにつき、税関への申告額は誤りであるとして不服を申し立てているものである。

税関と国税をまたがる案件で、裁決にもそれぞれの調査が行われている事実が示されているが、近年はこのような輸入取引の関係する事案の増加が目立つ傾向にある。輸入取引が個人ベースでも拡大しているものであり、その金額をめぐる、あるいは仮装などの課題は今後も増加していくのであろう。特に消費税の仕入税額控除が着目され対応の必要性がましていくことも予想され、租税に関わるものとしては一見単純な取引であるが留意が必要な状況になりつつあるのだろう。

基本的には事実関係の問題であり、如何に代表者の証言に対する信憑性を争うことになるのかという点からも興味深いもので、通常輸出入取引は通関業者が関与するなど第三者によって関与されることが多いの【最近は郵送も含め必ずしもそうではないのかもしれないが、実際のところはどうなのだろうかこの辺は聞いてみたいところ】で、通常は記載の真実性やそれに基づく仮装であるのか否かという点を争うことは困難であるように思われるが、請求人の主張はこの真実性を主張することが主たる目的であるように思われるが、自身が代表者を務める法人が発行している請求書と通関価格が大幅に相違する事案が大量にある時点でミスとして事実関係を裏付けることは裁決が否定している。このような調査案件は今後も注目されるものであろうし、有益なティーチングケースとして認識される事案だろう。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。


2021年1月23日土曜日

判例裁決紹介(大阪地判平成30年12月6日、不動産取得価額と評価額の大幅な乖離)

 

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は大阪地判平成30年12月6日で、不動産取得税と固定資産税評価額がにつき、落札により入手した金額と評価額に大幅乖離があったことに対する国家賠償請求訴訟です。

具体的には、社会福祉法人たる原告が平成19年に取得した家屋(厚生省管轄の温泉施設、これで大体イメージが付きそうですが、、昭和40年代に建築された設備で取得時は休業中)に対する処分庁の不動産取得税評価額及び固定資産税評価額を付した各処分が減点補正率が不当に高く、もって付与された価額が不当に高額であったとして、国家賠償請求訴訟を求めているものである。問題の起点はかかる取得時における落札額が400万円程度であるのにも関わらず、付与された不動産取得税評価額が500万円を超過するような状況であって、約10年保有して固定資産税等を支払ってきたものである。このような落札額と評価額の乖離が本件の起点となっているものであり、処分庁の評価段階で付与された家屋損耗の程度を反映させる減点補正率の認定が中心的な争点とされているものである。訴訟のきっかけ、原告主張にある参考人の鑑定意見が減点補正率を0.1と大幅な評価減を求めているものであり(そもそも鑑定士の評価によるものであるのかは定かではない)、一般的な課税実務においてこのような減点補正率を採用することが極めてまれなものを俎上に載せるなどしている点から、訴訟の経緯に不明な点は残るものの、このような過去の取得金額や評価額に対して疑義が申し出られ訴訟となるようなケースが、特に地方税の評価額の算定において増加している。本件もそのような類型に属するものであるが、実際に固定資産税評価額において20年超の長きに渡って、過大に評価されてきた事例も存在しているところであり、人によっては固定資産税は住民の無関心に支えられているという人もいるのですが、近年は少しずつ潮目が変わりつつあるようにも捉えられるところである。本件のようなきっかけとなる減点補正率の算定は過度な主張であるように捉えられ、本件でも、算定の評価プロセスやその段階における不動産鑑定士の評価(減点補正率を0.1)としたものに対して、国家賠償の対象となるような過失は認められず原告の主張は退けられている。

しかしながら、このように話題になった厚生省関係の施設であって経年劣化した施設、家屋の評価は固定資産税評価額の算定において、非常に課題が多いものであろう。落札額と評価額の大幅な乖離が発生しているところがこの問題の起点となっていることは上記のとおりであるが、かかるような乖離を是認されるべきものであるのか、妥当な評価額はいかなるものであるのか(不動産取得価額も含め)、という点が本件においても含有されているように捉えられるものである。特に経年劣化の状況は家屋、資産の利用において、多大な影響をもたらすものであり、そもそもとして実需を反映した価格の評価そのものが非常に困難を伴うものであることは容易に想定される。

近年は、特に地方部において、このような老朽化した施設が相続などの局面によりあぶり出され、課題とされる事が多いが、一般的にも家屋、不動産は従来のように上昇をあるいは底堅いものであるとの前提は崩れており(今までの日本の状況からは寂しいものではあるでしょうが、実需において縮小は回避し難いのです)、租税法規が時価として客観的な交換価値を前提としていながらも、地方部では、売却市場の形成、が非常に困難になりつつあって鑑定などの評価に依拠せざるを得ない状況に変化していることが認識されるべきであろう。このような社会背景において、固定資産税評価に関しても何らかの変化が必要ではないのかという見解を有するものである。特に、従来の利用を前提とした家屋の評価と市場における評価の乖離は、今後も大きな課題となるだろう。

以上のように、本件は、入手時の落札額と固定資産税評価額が大幅な乖離していることがそもそもの起点となっているもの(この乖離自体が如何なる所以であるのかという点も興味深いが)であるが、本件の争点としては、家屋の経年による劣化、損耗の反映に関してその程度を反映させる減点補正率賀いかなるものであるのか、その算定が妥当なものであったのかという点が主たる争点となっており、この点に対する違法性の判断は、事実関係においてゆるぎようがないだろう。現行の固定資産税評価基準においては違法性の指摘は合致しないとの判示は妥当なものであるように考えられる。納税者の主張としては落札額の大幅な減少していること、非常に小学な金額での取得であることが実質的な現文の裏付けであるとの主張がなされているものであろうが、参考とした鑑定評価を行った者の恣意、感覚的な評価に依拠しているものであるとの裁判所の判断(そもそも原告参考人の主張でも固定資産税評価において充分な知見を有していないことは自認している)は、裁判を維持する材料として期待できなかったものとの判断が導かれている。

しかしながら、私見としてはより本質的な問題として、家屋における原則的な評価自体が家屋の現況と乖離しつつある現況が導出されているようにも思われる。固定資産評価基準は、家屋の評価において、再建築価格評価をベースと捉えており、執行レベルでは、評価基準において明確に定められているものであり、これを覆すことは非常に困難であろうが立法としては如何なることになるだろうか。

この再建築価格評価は、現況を捉え、利用をベースとしたものであり、この点が今後においても原則的なものとしてプライオリティを有するものであるのかという点は更に検討が必要であろう。現実の利用ではなく、利用を前提、仮定した形で、再建築価格を評価のベースにおいているものである(もちろん種々の調整は入るが)。これが時価として客観的な交換価値としての推定を受けうるものであるのであろうか。交換価値を支えるものとして実態の利用の状況、利用意図によって多様な状況が想定され、実際の利用の状況を反映させることは、執行のレベルでの実現可能性があるのかという問題はあろうが、一律に従前の利用を前提とした(そもそもこの利用という物自体がどのように理解されるべきであるのかという点も課題であろうが)、形での評価を行うことは大幅に執行に偏っているとの見解も起こり得よう。執行においては人員の問題もあろうが技術は進んでおり、利用前提の評価は変更の可能性を含みうるものとして構築することは困難であろうか、再検討の余地があるのではないだろうか。

また、本件では再利用にかかる修繕費用(約2億、客観的であるのかという疑問はあるが、全体の評価として原告のベースとなる主張に客観的な根拠が欠けているとの認識が裁判所にもあるのかもしれない)がかかることも主張において評価額の引き下げの要因として原告から主張されているが、判示では、明確な根拠を示さず、考慮要因として充分なものではないとしている。この点は再利用を前提とした中で、減耗において反映されているとの見解かもしれないが、利用を基礎とした評価において、一律に考慮対象外とすることは妥当ではないのではないだろうか。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。