さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京高判令和2年8月26日で、消費税の帳簿不提示と保存の意義が課題となった事例です。
具体的には、遊技場を経営する控訴人(法人)が課税庁の調査に対して、税理士や弁護士の指導により調査における忌避を繰り返し、もって帳簿等を提示せず、かかるゆえに、適正なタイミングでの提示が行われなかったとして、消費税法が定める仕入税額控除の保存要件を満たしていないとして仕入税額控除を否定した(金額が巨大で30億円以上)更正処分を受けたことにつき、提起された事例である。事実認定として再三に渡る調査要請に応じなかったことが帳簿不提示が継続し、従前の最判にある保存の意義から、適時保存、提示がないものとして、仕入税額控除が適用されないこととされているものである。本件は金額が非常に多額であり(あまりこの点は考慮すべきものではないのかもしれないが)著名なものであるが、、実質的な帳簿不提示、調査協力に対する懲罰的な位置づけになりつつある現況が非常によく現れている事例であろう。
法令解釈としては、最判が示した保存の意義の忠実に踏襲しており、特段特徴的なものであるとは考えにくい。このような懲罰、制裁的な要因を持つようになってきている現況は、租税の専門家としては改めて認識されるべきである。最判が出た当初は拡張的な解釈であるとして否定的な見解も多かったものであるが(最判である以上当然かも知れないが、)現行法の解釈として上記のような文言の意義を解する見解は、通説としても実務上の基準としても定着しているものといえよう。本件でも関与税理士等がかかるような批判的な見解を示して、対応措置を捉えているが、現行法の解釈としては覆し難く、立法によるほかないだろう。今後は、適格請求書保存方式が導入され、より形式的な請求書の保存が基礎となる以上(もちろん純粋なインボイスとは異なり、帳簿による補完を図ることは我が国の制度的特徴であろうが)、この保存要件の解釈及び、厳格な適用は維持されることが帳簿だけではなく適格請求書にも同趣旨で適用される基本軸となるだろう。仕入税額控除の本来の趣旨(強調する人は控除権として主張するのかもしれない)を鑑みれば、このような制度構成は否定的な意見もあり得ようが、インボイス、適格請求書による相互牽連が現状において必ずしも実効性を有していない以上、立法においても現行の保存要件は維持されることが妥当であるものと考えている。
いずれにしても、保存の解釈は最判が基軸であるべきであり、今後は、質問検査の行使と任意調査、受忍義務、調査忌避として、このような仕入税額控除の否認が実質的な制裁になっていることをどのように捉えていくのかという課題となるだろう。憲法論として、調査手続きの中でこのような実質的な制裁を課題と捉える見解もあり得る。本件でも主たる争点として、この仕入税額控除の非常に高額の否認は、他の保存が争われた事例と比して、課税庁による仕入税額控除に関する説示が欠けていたとして、他の事案とは異なり、適正な手続きに反しているとの主張、説明義務を尽くしていないとして調査手続違反を主張している。判示では、この点も納税者による調査への非協力でもって説明義務に関しては放棄されていると理解されている(説明義務は必ずしも常に要求されるものではなく、放棄がありえる)。おそらく実質的に何をもって放棄していると判断されることになるのかという点は今後の実務においては明らかにされていくべきだろう。
本件は他に特徴として、租税専門家である税理士や弁護士の関与が挙げられる。両者が攻撃的に調査拒否を行った、指示していたとして、納税者本人はマインドコントロール下にあったというような、不提示、調査拒否は納税者の真意ではないとの主張も控訴審では付け加えられているが、判示では申告納税方式の下において、税務職員が行う帳簿書類の検査に対し事業者がこれに応じることは、納税義務者の当然の義務であるから、として(質問検査の通説的理解からは外れるのではないか)かかる主張は排斥されている。このような主張自体は珍しいもので、租税専門家と納税者の信頼関係が改めて重要であり、専門家として納税負担等バランスの取れた判断が求められることも示唆されるのではないだろうか。
以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。
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