2021年2月2日火曜日

判例裁決紹介(令和2年2月5日裁決、輸入取引価格の仮装)

 

また、興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は令和2年2月5日で、輸入取引金額の仮装が問題となった事例です。

具体的には中国からのアパレル商品を仕入れ販売を行っている法人たる請求人が、同一の代表者が経営する中国現地法人からの請求書等に基づいて損金に仕入金額を計上し、確定申告を行っていたところ、課税庁が通関業者が税関に申告した取引価額が正当な、真正なものであり、損金が過大に計上されているとして、更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行ったことにつき、税関への申告額は誤りであるとして不服を申し立てているものである。

税関と国税をまたがる案件で、裁決にもそれぞれの調査が行われている事実が示されているが、近年はこのような輸入取引の関係する事案の増加が目立つ傾向にある。輸入取引が個人ベースでも拡大しているものであり、その金額をめぐる、あるいは仮装などの課題は今後も増加していくのであろう。特に消費税の仕入税額控除が着目され対応の必要性がましていくことも予想され、租税に関わるものとしては一見単純な取引であるが留意が必要な状況になりつつあるのだろう。

基本的には事実関係の問題であり、如何に代表者の証言に対する信憑性を争うことになるのかという点からも興味深いもので、通常輸出入取引は通関業者が関与するなど第三者によって関与されることが多いの【最近は郵送も含め必ずしもそうではないのかもしれないが、実際のところはどうなのだろうかこの辺は聞いてみたいところ】で、通常は記載の真実性やそれに基づく仮装であるのか否かという点を争うことは困難であるように思われるが、請求人の主張はこの真実性を主張することが主たる目的であるように思われるが、自身が代表者を務める法人が発行している請求書と通関価格が大幅に相違する事案が大量にある時点でミスとして事実関係を裏付けることは裁決が否定している。このような調査案件は今後も注目されるものであろうし、有益なティーチングケースとして認識される事案だろう。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。


2021年1月23日土曜日

判例裁決紹介(大阪地判平成30年12月6日、不動産取得価額と評価額の大幅な乖離)

 

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は大阪地判平成30年12月6日で、不動産取得税と固定資産税評価額がにつき、落札により入手した金額と評価額に大幅乖離があったことに対する国家賠償請求訴訟です。

具体的には、社会福祉法人たる原告が平成19年に取得した家屋(厚生省管轄の温泉施設、これで大体イメージが付きそうですが、、昭和40年代に建築された設備で取得時は休業中)に対する処分庁の不動産取得税評価額及び固定資産税評価額を付した各処分が減点補正率が不当に高く、もって付与された価額が不当に高額であったとして、国家賠償請求訴訟を求めているものである。問題の起点はかかる取得時における落札額が400万円程度であるのにも関わらず、付与された不動産取得税評価額が500万円を超過するような状況であって、約10年保有して固定資産税等を支払ってきたものである。このような落札額と評価額の乖離が本件の起点となっているものであり、処分庁の評価段階で付与された家屋損耗の程度を反映させる減点補正率の認定が中心的な争点とされているものである。訴訟のきっかけ、原告主張にある参考人の鑑定意見が減点補正率を0.1と大幅な評価減を求めているものであり(そもそも鑑定士の評価によるものであるのかは定かではない)、一般的な課税実務においてこのような減点補正率を採用することが極めてまれなものを俎上に載せるなどしている点から、訴訟の経緯に不明な点は残るものの、このような過去の取得金額や評価額に対して疑義が申し出られ訴訟となるようなケースが、特に地方税の評価額の算定において増加している。本件もそのような類型に属するものであるが、実際に固定資産税評価額において20年超の長きに渡って、過大に評価されてきた事例も存在しているところであり、人によっては固定資産税は住民の無関心に支えられているという人もいるのですが、近年は少しずつ潮目が変わりつつあるようにも捉えられるところである。本件のようなきっかけとなる減点補正率の算定は過度な主張であるように捉えられ、本件でも、算定の評価プロセスやその段階における不動産鑑定士の評価(減点補正率を0.1)としたものに対して、国家賠償の対象となるような過失は認められず原告の主張は退けられている。

しかしながら、このように話題になった厚生省関係の施設であって経年劣化した施設、家屋の評価は固定資産税評価額の算定において、非常に課題が多いものであろう。落札額と評価額の大幅な乖離が発生しているところがこの問題の起点となっていることは上記のとおりであるが、かかるような乖離を是認されるべきものであるのか、妥当な評価額はいかなるものであるのか(不動産取得価額も含め)、という点が本件においても含有されているように捉えられるものである。特に経年劣化の状況は家屋、資産の利用において、多大な影響をもたらすものであり、そもそもとして実需を反映した価格の評価そのものが非常に困難を伴うものであることは容易に想定される。

近年は、特に地方部において、このような老朽化した施設が相続などの局面によりあぶり出され、課題とされる事が多いが、一般的にも家屋、不動産は従来のように上昇をあるいは底堅いものであるとの前提は崩れており(今までの日本の状況からは寂しいものではあるでしょうが、実需において縮小は回避し難いのです)、租税法規が時価として客観的な交換価値を前提としていながらも、地方部では、売却市場の形成、が非常に困難になりつつあって鑑定などの評価に依拠せざるを得ない状況に変化していることが認識されるべきであろう。このような社会背景において、固定資産税評価に関しても何らかの変化が必要ではないのかという見解を有するものである。特に、従来の利用を前提とした家屋の評価と市場における評価の乖離は、今後も大きな課題となるだろう。

以上のように、本件は、入手時の落札額と固定資産税評価額が大幅な乖離していることがそもそもの起点となっているもの(この乖離自体が如何なる所以であるのかという点も興味深いが)であるが、本件の争点としては、家屋の経年による劣化、損耗の反映に関してその程度を反映させる減点補正率賀いかなるものであるのか、その算定が妥当なものであったのかという点が主たる争点となっており、この点に対する違法性の判断は、事実関係においてゆるぎようがないだろう。現行の固定資産税評価基準においては違法性の指摘は合致しないとの判示は妥当なものであるように考えられる。納税者の主張としては落札額の大幅な減少していること、非常に小学な金額での取得であることが実質的な現文の裏付けであるとの主張がなされているものであろうが、参考とした鑑定評価を行った者の恣意、感覚的な評価に依拠しているものであるとの裁判所の判断(そもそも原告参考人の主張でも固定資産税評価において充分な知見を有していないことは自認している)は、裁判を維持する材料として期待できなかったものとの判断が導かれている。

しかしながら、私見としてはより本質的な問題として、家屋における原則的な評価自体が家屋の現況と乖離しつつある現況が導出されているようにも思われる。固定資産評価基準は、家屋の評価において、再建築価格評価をベースと捉えており、執行レベルでは、評価基準において明確に定められているものであり、これを覆すことは非常に困難であろうが立法としては如何なることになるだろうか。

この再建築価格評価は、現況を捉え、利用をベースとしたものであり、この点が今後においても原則的なものとしてプライオリティを有するものであるのかという点は更に検討が必要であろう。現実の利用ではなく、利用を前提、仮定した形で、再建築価格を評価のベースにおいているものである(もちろん種々の調整は入るが)。これが時価として客観的な交換価値としての推定を受けうるものであるのであろうか。交換価値を支えるものとして実態の利用の状況、利用意図によって多様な状況が想定され、実際の利用の状況を反映させることは、執行のレベルでの実現可能性があるのかという問題はあろうが、一律に従前の利用を前提とした(そもそもこの利用という物自体がどのように理解されるべきであるのかという点も課題であろうが)、形での評価を行うことは大幅に執行に偏っているとの見解も起こり得よう。執行においては人員の問題もあろうが技術は進んでおり、利用前提の評価は変更の可能性を含みうるものとして構築することは困難であろうか、再検討の余地があるのではないだろうか。

また、本件では再利用にかかる修繕費用(約2億、客観的であるのかという疑問はあるが、全体の評価として原告のベースとなる主張に客観的な根拠が欠けているとの認識が裁判所にもあるのかもしれない)がかかることも主張において評価額の引き下げの要因として原告から主張されているが、判示では、明確な根拠を示さず、考慮要因として充分なものではないとしている。この点は再利用を前提とした中で、減耗において反映されているとの見解かもしれないが、利用を基礎とした評価において、一律に考慮対象外とすることは妥当ではないのではないだろうか。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2021年1月22日金曜日

判例裁決紹介(令和元年6月7日裁決、利益連動給与の計算の適格性)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、令和元年6月7日裁決で、法人税法の利益連動給与としての適格性が争われたものです。

具体的には本件は、法人たる請求人がその業務執行役員に対して支給した利益連動給与を損金として確定申告を行ったところ、かかる利益連動給与の算定方法が、具体的に開示されていない考課係数に基づくものであり、客観性にかけるものであるとして、損金算入を否定した事例である。現在は、業績連動給与に改正されているものであるが、近年の役員給与の支給形態が多様化しつつあることから認められたものであり、実際に紛争として扱われることは極めて珍しいものである。実質的には大手企業を対象とするものであり、租税の専門家でも関わったことは少ないものであろう。立法論として、中小企業への適用の拡大も議論されているところではあるが、本件の争点となる客観性がその中心的な課題となっている点は、認識されるべきであろう。本件は旧法における利益連動給与の事例であるが、支給における具体的な算定方法に関する客観性が中心的な争点となっているものであり、先例として有益であろう。そもそも租税法規では、客観性が重要視されているが、明文をもって客観的であることを要請している制度は少なく、この判断枠組みは注目されてよいのではないだろうか。

 内国法人(同族会社にあつては、同族会社以外の法人との間に当該法人による完全支配関係があるものに限る。)がその業務執行役員(業務を執行する役員として政令で定めるものをいう。以下この号において同じ。)に対して支給する業績連動給与(金銭以外の資産が交付されるものにあつては、適格株式又は適格新株予約権が交付されるものに限る。)で、次に掲げる要件を満たすもの(他の業務執行役員の全てに対して次に掲げる要件を満たす業績連動給与を支給する場合に限る。)
 交付される金銭の額若しくは株式若しくは新株予約権の数又は交付される新株予約権の数のうち無償で取得され、若しくは消滅する数の算定方法が、その給与に係る職務を執行する期間の開始の日(イにおいて「職務執行期間開始日」という。)以後に終了する事業年度の利益の状況を示す指標(利益の額、利益の額に有価証券報告書(金融商品取引法第二十四条第一項(有価証券報告書の提出)に規定する有価証券報告書をいう。イにおいて同じ。)に記載されるべき事項による調整を加えた指標その他の利益に関する指標として政令で定めるもので、有価証券報告書に記載されるものに限る。イにおいて同じ。)、職務執行期間開始日の属する事業年度開始の日以後の所定の期間若しくは職務執行期間開始日以後の所定の日における株式の市場価格の状況を示す指標(当該内国法人又は当該内国法人との間に完全支配関係がある法人の株式の市場価格又はその平均値その他の株式の市場価格に関する指標として政令で定めるものに限る。イにおいて同じ。)又は職務執行期間開始日以後に終了する事業年度の売上高の状況を示す指標(売上高、売上高に有価証券報告書に記載されるべき事項による調整を加えた指標その他の売上高に関する指標として政令で定めるもののうち、利益の状況を示す指標又は株式の市場価格の状況を示す指標と同時に用いられるもので、有価証券報告書に記載されるものに限る。)を基礎とした客観的なもの(次に掲げる要件を満たすものに限る。)であること。

以上のように、本件は、社長が決定する考課係数が連動給与の算定方法として、法の求める客観性を備えているものであるのか、この解釈が問題となっているものである。裁決では、以下のように、法人税法における役員給与の損金算入規制を出発点として、その具体的趣旨から、所得操作、利益調整を排して、恣意性を排除することを求めているものであるとして、理解している。事前の開示と操作性のない、自動的な算定が中心的な概念になっていることが注目されよう。二段階の判断で、客観性を担保しており、単に恣意性を排除することで適正性を確保するのみならず、開示等による透明性の確保も客観性の解釈に求めていることは重要な点であろう。恣意を排除するのみであれば、主張のように限度額があるなどのような点でも一定の客観性が担保されているとの評価が行われても不思議ではないが、多様な役員給与の支給への対応として、多様な支給において(この辺は、他の支給方法も含まれることであろう)、中立性を確保することが必要であるという法的な趣旨が含まれていることが本件のように中立性を確保するため、透明性など相対的に厳格な判断の枠組みにつながっているものとして理解される。現行法においてもこの趣旨目的から厳格な客観性の判定が養成されるものであるのかという点は今後の検討課題であろう。


「法人税法においては、従来から、役員給与の支給の恣意性を排除することが
適正な課税を実現する観点から不可欠と考えられており、具体的には、法人段
階において損金算入される役員給与の範囲を職務執行の対価として相当とされ
る範囲内に制限することとされてきたところである。特に利益連動給与につい
ては、法人の利益に連動して役員給与の支給額を事後的に定めることを許容す
ることは安易な課税所得の操作の余地を与えることになりかねず、課税上の弊
害が極めて大きいことから、損金算入が認められる余地はないと考えられてい
た。しかし、このような形態の役員給与であっても、職務執行の対価性に欠け
るものではなく、支給時期・支給額に対する恣意性を排除した上で損金算入の
余地を与えることとすれば、多様な役員給与の支給形態により中立的な税制
実現し得ることとなることから、平成18年度税制改正により、支給の透明
性・適正性
を確保するための一定の要件を課した上で、このような形態の役員
給与についても損金算入を可能とすることとされたものである。
このような平成18年度税制改正の経緯及び制度の趣旨に鑑みれば、法人税
法第34条第1項第3号イの「算定方法が‥客観的なもの」という要件を満た
すというためには、その算定方法が、個々の業務執行役員の給与の支給時期・
支給額の決定に恣意が働かないような算定方法、すなわち、当該算定方法に利
益に関する指標等を当てはめさえすれば個々の業務執行役員に対して支払われ
るべき利益連動給与の額が自動的に算出される算定方法であることを要し、事
前の定めとは別途の事後的な評価を加えて支給額が決まる算定方法などは上記
要件を満たさないものと解するのが相当である。」

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。





2021年1月7日木曜日

判例裁決紹介(東京地判令和元年11月1日、簡易課税制度選択届の有効性)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京地判令和元年11月1日で、過去の税理士による簡易課税制度選択届出の有効性が争われた事例です。

具体的には、本件は、弁理士たる原告が自己の消費税関係の申告において(当然所得税も)平成26年の申告として本則課税による申告を行ったところ、すでに15年以上まえに当時依頼していた税理士により簡易課税制度の適用選択の届出が出されているとしてその申告を否定し、簡易課税の適用による消費税の申告によるものとして更正処分を行ったことを不服として、かかる届出は税理士によるもので、委任されたものではなく(無権代理)、また、15年以上本則課税によるものを放置していたことを信義則の成立を主張して当該処分の取消を求めたものである。

基本的には、当該旧税理士による届出が有効であるのか否かという、事実認定の問題でもあるが、税理士の代理業務は、他の代理とは異なり、国税庁という存在のみを対象とするものであり、また、税務に関する専門的な業務を委任するものであるから、その具体的な範囲をどの程度であるのか確定させることは、本件のように具体的な認定が必要とされることは認識されるべきであろう。特に旧来このような委任に関しては、口頭での契約の成立が中心であり(現状でも特に変化はないのであろうが)、所得税のみなどのような本件で原告が主張するような個別の契約の成立する余地はかなり少ないものであろう。上記委任契約の性格上、包括的な契約の成立が基軸となることは改めて認識されるべきものとなる。カウンターとして税理士側も同様に包括的な委任が成立していることとなるだろう。この点で本件の事実認定の経緯は実務家にとっても重要なものであるものと捉えられる。また税務代理権限証書の提出が近年は求められるものとなっているが、本件でも提出がなかったように、当該証書の法的な位置づけは必ずしも強固なものではなく、一定の代理としての存在を示すものにとどまり、本件でも重要視されていないが、申告や届出の法的な効果に対しては、重要な位置づけが与えられていないとの基本的な考えは、通常の実務の認識とは異なるものであろう。ただし、近年は、オンラインでの申告が主流となりつつあるし、いくら代理の効果が本人に帰属するといえど、確認や申告業務や手続きの流れが変化していることは否めない。かかる点から立法論として、証書等の位置づけを見直す可能性もあり得ようが、現在はまだ未整備な状況にあり、今後の課題だろう。

また、本件は、旧税理士による手続、申告の後、別の現行の税理士となってから、15年以上、本則課税による申告を受付、受容してきた(合わせて本則課税の書類の税務署からの送付)ことが、法の一般原則である信義則の適用があるのか、そして簡易課税届出の否定につながりうるものであるのかという点も争点となっている。一般の法務関係者の認識であれば、15年もの長期に渡って、申告を受容していたことは、安定した法的な関係が間接的に成立しているものであり、信頼を保護すべきものとして捉えることは違和感はない。しかしながら、租税法規の適用においては、下記のように最判を本件も引用しているが、容易に信義則の成立が評価されるものではない。租税負担の公平性を鑑みて、限定的な成立の余地が示されているものである。特に公的な見解の表示が求められており、この部分が厳格なハードルとなって、本件でもその成立を否定している。積極的な情報、見解の提示が必要とされるものであり、申告納税を基軸とする以上、本人の申告はあくまでも租税法律関係の起点であって、これを受容した段階が継続したことをもって、法的な効果を間接的に期待されるものとして考えることは現行法の解釈としては成立し得ないとの判断が行われている。租税法規が負担の公平性を確保することを重要な原則とする以上、現行法の解釈としてはこのような結果となることは支持されよう。税務署からの書類の送付は単なるサービスであり、ここに法的な位置づけを与えていないことも従来と整合的な判断である。書類の送付は一般的な位置づけとしては継続的な受容と相まって納税者の立場からは現状の申告が是認されたものと評価することは税務の専門家ではない以上、やむを得ないものであるが、かかる認識の相違は立法の範囲に属するものであり、実務家は少なくとも認識しておくべきだろう(オンラインが主流の時代においては、案内やメールでの連絡がどのように位置づけられるべき出るのかという点は今後の課題であるが、現行法としては信義則の成立のハードルは高いものと考えられる)。

「租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義
則の法理の適用により、上記の課税処分を違法なものとして取り消すことがで
きる場合があるとしても、法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原
則が貫かれるべき租税法律関係においては、上記の法理の適用については慎重
でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請
を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れさせて納税者の信頼を保護
しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に限られ、少
なくとも、税務官庁が納税者に対して信頼の対象となる公的見解を表示したこ
とにより、納税者がその表示を信頼してその信頼に基づいて行動したところ、
後に、当該表示に反する課税処分が行われて納税者が経済的不利益を受けるこ
とになったものであるかどうか、また、納税者が税務官庁がした表示を信頼し
てその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事情がな
いかどうかという点の考慮を要するというべきである(最高裁昭和62年判
決)」

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが、参考までに。本年もよろしくお願いします。

2020年12月26日土曜日

判例裁決紹介(令和元年6月24日裁決、居住用財産の譲渡特例、段階相続)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、先週に引き続き、居住用財産の譲渡特例における相続により取得した財産の譲渡資産が課題になった事例です。

具体的には、本件は相続により家屋及び土地を、取得した相続人たる請求人が当該家屋を取り壊し、敷地であった土地を譲渡したことにつき、譲渡所得課税の特例の適用(租税特別措置法35条、居住用財産の譲渡特例)のなして申告したのに対して、本件土地は、対象となるものではないとした課税庁の更正処分に対して不服として提起された事例である。請求人は当該土地を両親から相続により取得しているものであるが、両親の各相続において段階的に取得したものであり、これらの相続による取得が租特の対象となるのかという点が争われた事例である。いささか特殊な事例であるのかもしれないが、本件のように相続に関する譲渡特例が利用されやすい割には、争いが少ないものでもあり、通常相続の発生は段階的に行われることが本来であり、財産の帰属に関しては、このような特例の適用も考慮要因となりうるところであるという点は、実務においても参考となるものであろう。

 相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下第五項までにおいて同じ。)による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人(包括受遺者を含む。以下この項において同じ。)が、平成二十八年四月一日から令和五年十二月三十一日までの間に、次に掲げる譲渡(当該相続の開始があつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間にしたものに限るものとし、第三十九条の規定の適用を受けるもの及びその譲渡の対価の額が一億円を超えるものを除く。以下この条において「対象譲渡」という。)をした場合(当該相続人が既に当該相続又は遺贈に係る当該被相続人居住用家屋又は当該被相続人居住用家屋の敷地等の対象譲渡についてこの項の規定の適用を受けている場合を除く。)には、第一項に規定する居住用財産を譲渡した場合に該当するものとみなして、同項の規定を適用する。
 当該相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋(当該相続の時後に当該被相続人居住用家屋につき行われた増築、改築(当該被相続人居住用家屋の全部の取壊し又は除却をした後にするもの及びその全部が滅失をした後にするものを除く。)、修繕又は模様替に係る部分を含むものとし、次に掲げる要件を満たすものに限る。以下この号において同じ。)の政令で定める部分の譲渡又は当該被相続人居住用家屋とともにする当該相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋の敷地等(イに掲げる要件を満たすものに限る。)の政令で定める部分の譲渡
 当該相続の時から当該譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
 当該譲渡の時において地震に対する安全性に係る規定又は基準として政令で定めるものに適合するものであること。
 当該相続又は遺贈により取得をした被相続人居住用家屋(イに掲げる要件を満たすものに限る。)の全部の取壊し若しくは除却をした後又はその全部が滅失をした後における当該相続又は遺贈により取得をした被相続人居住用家屋の敷地等(ロ及びハに掲げる要件を満たすものに限る。)の政令で定める部分の譲渡
 当該相続の時から当該取壊し、除却又は滅失の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
 当該相続の時から当該譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
 当該取壊し、除却又は滅失の時から当該譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。
 前項及び次項に規定する被相続人居住用家屋とは、当該相続の開始の直前において当該相続又は遺贈に係る被相続人(包括遺贈者を含む。以下この項及び次項において同じ。)の居住の用(居住の用に供することができない事由として政令で定める事由(以下この項及び次項において「特定事由」という。)により当該相続の開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていなかつた場合(政令で定める要件を満たす場合に限る。)における当該特定事由により居住の用に供されなくなる直前の当該被相続人の居住の用(第三号において「対象従前居住の用」という。)を含む。)に供されていた家屋(次に掲げる要件を満たすものに限る。)で政令で定めるものをいい、前項及び次項に規定する被相続人居住用家屋の敷地等とは、当該相続の開始の直前において当該被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地として政令で定めるもの又は当該土地の上に存する権利をいう。

以上のように、本件は租特の適用要件としての35条の4項にある相続直税段階での居住の用に供していたのか否かという点が適用要件状況の争いになっているものである。
すなわち本件家屋が被相続人の居住の用に供されていた家屋であり、かつ、本件家屋に被相続人以外に居住をしていた者がいなかったことが要件となるものであるが、最終的な相続の直前には被相続人(母)と相続人が同居しており(父の相続、すなわち最初の相続では非同居)、適用がないことを不服としているものである。最初の段階の相続も含め、居住の判定を行うべきとする主張がなされたものである。確かに相続としか規定されていないため、段階的な相続を基礎とする事実関係においては、このような主張も成立しないものではないのかもしれない。納税者としては実質的に、同居していたことが譲渡特例の適用の可否を左右することは納得し難いものであるのであろうが、特例の趣旨を鑑みれば、そもそも租特という軽減措置の適用においては、拡張的に解釈されることは困難であろう。明確に財産の取得の直前の相続を対象としているものであり、拡張的な適用の判定は趣旨に反するものであり、立法の問題であろう。

通常、このような特例の適用をめぐる案件では、そもそも居住の用に供していたのかという点が課題とされることになる。しかしながら、本件ではこの点は問題とされていない点が興味深いものでもあるが、居住の用に供しているとの判断自体が幅のある概念である。特に一定の期間を居住実態を持っていたのかという点が判断において重要な点となるが、本件の特例の適用は、直前の状況を問題としており、時点判断を基軸としている点で、適用において齟齬が生まれる可能性があるのではないかとも考えられる。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。
良い年をお迎えください。


2020年12月19日土曜日

判例裁決紹介(平成31年1月18日裁決、介護施設への入居と居住用不動産の判定)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成31年1月18日で、介護施設への入居により居住用不動産の譲渡に関する租税特別措置法規定の適用が否定された事例です。

具体的には本件は、請求人の父が平成15年頃より介護施設へ入居を行っている状況下にあって、もともと自宅として使用していた家屋や土地を売却した事案において、確定申告にて下記、租税特別措置法に定める居住用不動産譲渡所得に関する特別控除の適用を申告したところ、課税庁は、当該譲渡対象資産は、居住の用に供されているものではないとして、その適用を否定した処分の取消を求めるものである。

租税法規の適用において住所や、居住の用に供されているような状況は、実際の法規の適用や租税負担の起点として非常に重要な位置づけを占めることが多い。本件で課題となった特例は非常によく活用される租税特別措置法の一つであり、実務においても見かける機会が多いのではないだろうか。本件はその譲渡所得課税の特例の適用(3000万の特別控除)の是非が争点となったものであり、特に中心的な要件たる居住用財産の適否が基本的な争点となっている点で、本件は参考となるものであろう。現行の実務は通達を基礎として(治療等による一時的な離脱は許容している傾向にあるだろう)、居住に関する認定、その判断が行われている現況にあるが、通達の背景にある考えと実際の居住環境の対応が争点となっているという点で比較的汎用性が高い、留意すべき項目であろう。特に現代は社会構造が変化し、介護の社会化が進み、介護施設の利用や、近親の近接居住がまれな状況下においては介護施設への入居は一時的なもの、恒久的なもの、それぞれ、一般化しているものであり、かかるような状況から、居住の状況を如何に判断されるべきであるのか、従来と変化すべきものであるのかという点は課題となっているものである。


居住用財産の譲渡所得の特別控除
第三十五条 個人の有する資産が、居住用財産を譲渡した場合に該当することとなつた場合には、その年中にその該当することとなつた全部の資産の譲渡に対する第三十一条又は第三十二条の規定の適用については、次に定めるところによる。
 第三十一条第一項中「長期譲渡所得の金額(」とあるのは、「長期譲渡所得の金額から三千万円(長期譲渡所得の金額のうち第三十五条第一項の規定に該当する資産の譲渡に係る部分の金額が三千万円に満たない場合には当該資産の譲渡に係る部分の金額とし、同項第二号の規定により読み替えられた第三十二条第一項の規定の適用を受ける場合には三千万円から同項の規定により控除される金額を控除した金額と当該資産の譲渡に係る部分の金額とのいずれか低い金額とする。)を控除した金額(」とする。
 第三十二条第一項中「短期譲渡所得の金額(」とあるのは、「短期譲渡所得の金額から三千万円(短期譲渡所得の金額のうち第三十五条第一項の規定に該当する資産の譲渡に係る部分の金額が三千万円に満たない場合には、当該資産の譲渡に係る部分の金額)を控除した金額(」とする。

 その居住の用に供している家屋で政令で定めるもの(以下この項において「居住用家屋」という。)の譲渡(当該個人の配偶者その他の当該個人と政令で定める特別の関係がある者に対してするもの及び所得税法第五十八条の規定又は第三十三条から第三十三条の四まで、第三十七条、第三十七条の四、第三十七条の八若しくは第三十七条の九の規定の適用を受けるものを除く。以下この項及び次項において同じ。)又は居住用家屋とともにするその敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡(譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含む。以下この項及び次項において同じ。)をした場合

以上のように、本件の基本的な論点は、居住の用に供されているのか否かを介護施設への入所(事実認定では一時的に帰宅したこともあり、水道等は基本料金を支払いいつでも使用可能な状況としている)ような状況を反映しうるものであるのかという点が課題とされていることになる。現況は入院等の一時的な居住地からの離脱は、居住の用に供しているのか否かという点において判断材料としないことは、主流であるが、本件のようにいつでも戻れる状況にしていることが居住をしているものとみなされるべきものであるのかという点が主張されている。

「本件特例が、居住用財産を譲渡した場合の譲渡所得につき一定額の特別控除額
を認めている趣旨は、個人が居住の用に供している家屋又は当該家屋と共にする
敷地の用に供されている土地を譲渡した場合には、これに代わる新たな居住用財
産を取得するのが通常であるなど、
一般の資産の譲渡に比して特殊な事情があ
り、その担税力が弱い
ことから、居住用財産の譲渡につき30,000,000
円を限度とする特別控除を認め、所得税の負担を軽減して新たな居住用財産の取
得を容易にすることにあるものと解される。
このような本件特例の趣旨に照らすと、居住用家屋とは、真に居住の意思をも
って客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていた家屋
をいうと解す
のが相当である。」

裁決は、その判断として上記のように、当該特例の趣旨を他の譲渡と比べて担税力が低い(そもそも担税力という概念が定かではないが)としてかかる点を根拠に、真なる居住の意思と外観的な一定期間の生活の拠点とすることを求めている。担税力の減少という事情を反映させるべく、意思と実態による2要件を求めているものと解されよう。なぜ居住の意思(真なると表現しているところに如何なる所以があるのかという点も興味深いが)が重要視されるのかという点も、おそらくこの特殊事情の反映において重要な点を表現しているのであろう。ただし意思を重要視しつつも、実態とのバランスをとっているものである。

このように、本件では、居住実態も重視し(一定期間というものが裁量幅が広く、定かではないともいえようが)、請求人の主張するような意思を重視した拡張的な居住の用に供しているとの判断の否定している点は、留意されるべきであろう。居住の用に供するという、資産保有者の意思が介在することが予想される判断枠組みにおいて、居住実態を要求することで真実性、客観性を意図していることが本件解釈の重要な点であるように考えられる。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2020年12月1日火曜日

判例裁決紹介(東京高判令和元年11月6日、輸出名義人と仕入税額控除)

 


さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京高判令和元年11月6日で、輸出名義人として税関長の許可証を有する原告、控訴人がなした輸出免税に関する仕入税額控除の適用を否認した事例です。

具体的には本件は、香港へ商品を輸出取引を行う原告・控訴人が、一月ごとに区分した課税期間を設置し(この時点で、いささか特殊な取引であり、輸出免税による仕入税額控除の還付を目的とした取引を行っているものであろうことが推測される)、当該商品の仕入税額を課税仕入であるとして申告し、還付申告を行った場合において、かかる課税仕入は、原告控訴人が国内で行った売買契約とは認められず、課税仕入が認められないとした更正処分を不服として提起された事例である。本件では、原審と同様に、課税庁の主張が認められ、納税者は単なる名義人、特に、輸出免税における税関長の証明書の名義人に過ぎないのであって、課税仕入の契約当事者ではないとして課税仕入そのものがなかったものとして事実認定されているものである。地判では、取引当事者の国内事業者は、香港の企業と直接契約を行っており(原告控訴人とは契約書などがなく)、国内取引として経理処理されていることを加味して、原告控訴人が契約を行った課税仕入ではないとして、仕入税額控除の認めないとした判示を行っており、基本的に、高裁でもその判断が是認されているものである。

重要なのは、地裁段階で行われた事実認定であり、契約が実際に行われているのか否かという点が基本的な争点となっているものである。いささか特殊な輸出免税のケースであるのかもしれないが、税関長の証明が存在することをもって形式的な判断を基軸におく、消費税の取引判断において、実質的な契約内容が存在するのか、本当に課税仕入が存在するのかという部分によって、課税仕入を比定した事例として、貴重な事例であるように捉えられる。おそらくは地裁段階での事実認定及び高裁で示されているように、形式的な書類保存が重視されることの多い、消費税の実務において、かかるように取引の存在を詳細な事実認定により否定した事例の存在は、今後、適格請求書が採用されたとしても
貴重な事例として考えられるのではないだろうか。

(輸出免税等)
第七条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、次に掲げるものに該当するものについては、消費税を免除する。
 本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け
 外国貨物の譲渡又は貸付け(前号に掲げる資産の譲渡又は貸付けに該当するもの及び輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律(昭和三十年法律第三十七号)第八条第一項第三号(公売又は売却等の場合における内国消費税の徴収)に掲げる場合に該当することとなつた外国貨物の譲渡を除く。)
 国内及び国内以外の地域にわたつて行われる旅客若しくは貨物の輸送又は通信
 専ら前号に規定する輸送の用に供される船舶又は航空機の譲渡若しくは貸付け又は修理で政令で定めるもの
 前各号に掲げる資産の譲渡等に類するものとして政令で定めるもの
 前項の規定は、その課税資産の譲渡等が同項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものであることにつき、財務省令で定めるところにより証明がされたものでない場合には、適用しない。

以上のように、判示では、輸出免税の対象として、下記のように納税者の主張に答え(そもそも課税仕入そのものの存在が争点となっている段階では主張が噛み合っていないものとも言えようが)、形式的な点を重視し、輸出の名義人である納税者の救済を図るべきとの主張に対して、輸出免税の対象を書類の名義人である主体に着目するものではなく、取引の内容に則るものであるべきと明確に判断している点は着目されよう。書類の保存等を重視する形式的な判断を重視している消費税の基本的な運用において、それを逆手に取るような、申告が行われている現状へ、本件の判断はより留意されるべきであろう。かかる判断は、輸出免税の法解釈から導かれているものであることは着目されるべきであろう。


「消費税法7条1項は、事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け」等の同項各号所定のものについては、消費税を免除する旨を定め、同条2項は、その課税資産の譲渡等が同法7条1項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものであることにつき、消費税法施行規則5条所定の方法により証明がされたものでない場合には消費税法7条1項の規定は適用しない旨を定めている。このような消費税法7条の規定の文言に照らすと、同条1項は、取引の主体ではなく、取引の内容・態様に着目して消費税の免除の要件を定めていることが明らかであり、同条1項により消費税を免除されるには、事業者が国内において課税資産の譲渡等のうち同項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものを行ったことを要するものと解される。

本件各取引について、■は輸出許可書の名義人であったというにとどまり、■
と本件各国内事業者との間に売買契約があったとは認められず、■が本件各
取引により資産を譲り受けたとはいえないのであるから、■は、本件各取引
について輸出免税の適用を受けることはできず、輸出免税の適用者として仕
入税額控除の適用があるという余地はない。控訴人の上記主張は、その前提
を欠くものであり、採用できない。」