さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は令和3年4月13日裁決で、勝馬投票券による所得が課税対象としていかなる所得に該当するのかという点が争われた事例です。
具体的には、請求人がソフトウェア等を利用せず、年間で10億を超えるような金額を動かし、競馬による所得を得ていた(数年間では、マイナスの年も)ものでかかる所得が事業所得)に該当するとした主張に対して、一時所得に該当するとした課税処分の適否を争った事例である。
本件は近年大量の判例事例が積み上がっている競馬関係の所得区分の適否を争う事例であり(本件を始め思うところであるが、世の中には、投機行為に10億円を超える金額を投じている人が実は多く、存在しているんだな~という素朴な驚きで、ほとんどのケースは例外的な特殊な取引という認識であったのですが、どうも異なるのかもしれません)、一連の事例と同一の類型に該当するものである。なお、本件は、明確に事業所得に該当するという点が主張として争われたものであり、一時所得・雑所得という対立概念だけではなく、近年少しずつ登場してきた、類型でもあろう。金額的には一般の事業と比して遜色ないものであるが、このような所得がいかなる所得として社会通念も含め該当するのかという点を検討する素材となるだろう。事業所得という概念の検討においても資するものであるように捉えられる。
特に対価という概念がキーとなっている(一時所得の定義によるものであろうが)ものであり、事業所得や所得税における重要な概念として今後の検討素材となるだろう。
本件では、下記のように請求人の主張として
「競馬所得は、請求人の着順予想とい
う知的労働に基づく馬券購入という役務行
為に密接・関連して給付がなされたことに
より発生するものであり、また、馬券の発
売総額の15%相当額から賞金、JRAの
運営費、人件費等を差し引いた額の半分が
JRAの所得となることから、払戻金は、
着順予想の的中者に対するJRAの運営に
協力したことの見返りであるため、対価と
しての性質を有する。」
う知的労働に基づく馬券購入という役務行
為に密接・関連して給付がなされたことに
より発生するものであり、また、馬券の発
売総額の15%相当額から賞金、JRAの
運営費、人件費等を差し引いた額の半分が
JRAの所得となることから、払戻金は、
着順予想の的中者に対するJRAの運営に
協力したことの見返りであるため、対価と
しての性質を有する。」
知的労働による所得であるとしてその対価が本件の対象所得であるという主張がなされている。このやり取りが本件でも特徴的であり、興味深いところであろう。
一般的に競馬の購入が知的労働なのか(ノウハウなどと同様に)というような議論もあり得ようが、投資や数多くの人的役務の提供においては、このような知的労働という存在が今後も登場しうるものであるのかもしれない。少し事例を離れるがそもそも対価という概念が物品販売(市場による)・一対一の関係を基礎とした印象が強いものであるが、近年、役務提供が主流となりつつあるような中(提供方法も多様化し)で、契約関係の対価がベースに構築された判断基準が対価の概念として妥当であるのかという問題意識は発生しよう。クラウンドファンディングがその典型であろうが。
このように対価という概念に営利性を含むものであるのか、それとも単なる契約関係の中での行為の対価という概念にとどまるものであるのか、本件をはじめとした、投機的行為のようなり~ターンが必ずしも明確に確定しているものではない、あるいは近年はNPOを始め、共感を基礎とした事業のベースが構築されているような事例も登場してきており、対価という概念は見直しが必要な時期に来ているように思われる。
以上です。
毎回のごとく備忘録として作成しているものですので、完成度は低いですが、参考までに。
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