さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京高判令和2年9月10日で、20年以上前に提出された税理士による消費税の簡易課税制度の選択届が有効であるのか否かが争点となった事例です。
具体的には、本件は控訴人たる弁理士が、なした本則課税における消費税の確定申告を、課税庁が簡易課税選択届が出ているとしてその適用を認めなかったことを不服として、提起された事例である。控訴人の主張は、当該届が提出されて以降、20年以上も本則課税による申告を受け入れており、かかる提出(当時の税理士による)が有効なものであるのか否か(無権代理によるものであるのか)という点が基本的な課題となっているものである。届け出を行った税理士が死亡しているような長期間経過している事例であり、係る書類の提出の有効性、経緯が具体的な争点となっているものの、その追求、立証においては課題があるように捉えられる。
本件でも控訴人は地裁とともに無権代理であることを主張しているが間接事実であり、税理士における通常の契約の包括的な税務委任が明確に評価されている点は本件の特徴でもある。かかる点から納税者の主張は認められていないが、本件のように20年以上も届け出とは異なる申告を許容していたとしても一旦有効に成立した納税関係に関する届け出は覆すのは困難であることはまずもって租税実務家においても認識されるべきであろう。
本件でも過去に提出された届け出の有効性が無権代理であるのか否かという点から争われているが、税務という性格上、特に以前は個別の税目等で委任契約を結ぶような慣習はなく(おそらく現在も相続税を除けば、包括的な契約が主体であろう、本件も口頭であり明確な契約書を交わしているわけではない)、無権であることを主張立証することは納税者にとってもハードルが高いものとなっている。専門家への委任であることからどうしても包括的な契約であることが想定されることが多い現状を反映しているものと言えよう。
私見としては、このような20年もの長期に渡って届け出とは異なる申告を受けて入れていた課税庁にも責はあるものと思われるところであるが、課税関係の安定を重んじる現行法の解釈としては信義則による救済の可能性は否定されるものであろうし(公の見解の表示はなく)、このような課題は立法の問題となろう。消費税は今後重要性をまし、個人の自営が増加する中では、本件のように一旦有効に成立した届け出の効力は、覆すのは容易ではなく、課税状況の判定も含め、慎重な判断が求められるべきことは再認識させられる事例であろう。
以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。
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