さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京地判令和2年9月15日で、収益帰属や、地域対策費の必要経費該当性が主たる争点となった事例です。
具体的には、本件は、風俗業を営む原告が、事業所得を申告せず、共同事業としての利益の分配が行われているものであり、また、計上した地域対策費(みかじめ料等)が必要経費として該当するのかという部分が課題となった事例である。
この種の業種が租税法規の適用上、ほ脱に近い状況であるようなケースは特段珍しいものではなく、ランキングの上位を常に締めているが、本件もその類型であろう。ただし、訴訟段階まで、この取扱が課題となった事例は珍しい。特に収益の帰属と、地域対策費という存在が必要経費として認められるのかという部分が課題となっている点は、興味深いものである。本件は基本的に事実関係の問題であり、いかなる者がどのような程度の収益の帰属を受けるものであるのか、実質的な所得の帰属者の認定において、このような共同事業における認定は、約定に欠け、先例的なものも少ないので、実務家として参考とすべき点が含まれているように考えられる。もちろんアンダーグラウンドな性格を帯びた業種であることは疑いのないものであり、特殊事案としての特徴は割り引いて考えるべきであるが。
また、上記のように本件の主たる争点は収益の帰属の判定であり、判決の大部分を締めている。しかしながら、必要経費に着目する視点からは、計上されている地域対策費の必要経費としての認定が興味深い争点である。違法な経費支出の存在は、法人税、所得税問わず、更には今後はインボイス中心となる消費税でも、課題となるものであろうが、一律その計上を否定するものであるのか、という点では従前課題となっている。本件のように、毎月定期的な支払いや、多様な内容を混在する経費(みかじめ料など)の存在を詳細に議論することなく、相手方の存在や領収書の不存在(調査後に作られた信用に欠、お粗末な準備ではあろう)等の視点から、相手方・目的等の検証ができないことが、必要経費計上の主たる要因として判断されていることは、当然といえば当然であるが、このような違法性を帯びた経費支出への基本的なアプローチとなっている点は、実務の基本的な方法論として、理解されるべきであろう。いわば最初に支出側に基本的なハードルを課した上で、その上で、必要性などの観点から、議論される2段階のアプローチが取られることになるものとも言えよう。
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