2021年7月27日火曜日

判例裁決紹介(平成31年2月8日裁決、非嫡出子に関する相続開始のあったことを知った日)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成31年2月8日裁決で、非嫡出子である相続人に関する相続開始の日が如何なるものであるのかという点が中心的な争点となっているものです。

具体的には、本件が請求人(相続人の法定代理人)が相続税申告を行ったところ、期限後申告であるとした処分が適用されたことを不服として提起されたものであり、起点となるべき法が定める相続開始のあったことを知った日が如何なるものであるのかという点が中心的な争点となっているものである。本件は基本的には、戸籍上の父や、嫡出推定、その否認と生物学的な父(被相続人)とその法定配偶者や嫡出子の存在、など、複雑な事実関係の経過が課題になっているものであり、かかるような事実関係の中でいかなる状況が相続開始の日であるのかという点が争われているものである。より具体的には請求人への遺贈を記載した遺言書の検認に立ち会ったタイミングであるのか、嫡出推定が否定され、死後認知が成立し、タイミングであるのかという点(実質的に遺贈における記載を認知を基礎とした遺贈契約であるものと理解している)が問題になっている。最終的に相続の了知を基礎とする相続税法の基本的な理解から、検認に立ち会っており、このタイミングで遺贈内容を了知していたとして請求人の請求を否定している。

なかなかこのような事実関係は珍しいものであろうが(おそらく本件の最大の興味深い点はこの点で、遺言があっても解決しないものであり、法定配偶者との対立など相続において検討すべき点が多く含まれている)、民事法の家族法関係の知見も踏まえた上で、判断をくださねばならないことでもあるので、ケーススタディの対象として、トレーニング事例として位置づけられる事例であろう。一般的な人物が遺言書の検認の意義を理解していたと考えるのはいささか酷とも想定されるが・・・(相続人が無戸籍者であった期間も考慮すると)。

相続税の申告書)
第二十七条 相続又は遺贈(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものに係る贈与を含む。以下この条において同じ。)により財産を取得した者及び当該被相続人に係る相続時精算課税適用者は、当該被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格(第十九条又は第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に係る相続税の課税価格(第十九条又は第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)に係る第十五条から第十九条まで、第十九条の三から第二十条の二まで及び第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定による相続税額があるときは、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内(その者が国税通則法第百十七条第二項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで当該期間内にこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

以上のように、本件は事実関係の中で、相続の開始を知ったことという点を中心的な争点としている。


「その相続の開始があったことを知った日」とは、自己のために遺贈があったことを知った日を意味し、遺贈を受けた本人が未成年者である場合については、本人が弁識能力のないときは法定代理人が、本人が弁識能力を有しているときは本人又は法定代理人が、その遺贈があったことを知った日と解すべきである。

現代社会の状況を鑑みると現行法の規定において、この相続に関する了知を起点とする文言が妥当であるのか、整合性を有しているのかという点も課題となるのではないかと想定されるところであるが、相続や遺贈による財産の取得者がその了知を基礎としている点は主観的な要素が介在する可能性が高く、法的な安定性に欠ける点は否めない。親族の死亡を中心とした相続の事実関係、発生経緯であれば致し方ないのかもしれないが、現実的な運用、解釈において、本件の検認など、法的な行為をベースに判断が行われている点で法的安定性と事実関係の整合を図っている点は相続税の制度において重要な判断材料になっていることは留意されるべきであろう。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものであり、完成度は低いですが参考までに。


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