2021年7月31日土曜日

判例裁決紹介(令和元年5月7日裁決、法人税法における非営利型法人の要件)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、令和元年5月7日裁決で、法人税法における非営利型法人としての該当性が課題となった事例です。

具体的には、一般社団法人である請求人が種々の教育、不動産事業等を行い、かかる事業から受け取る収益、手数料が収益事業に該当するのか否かという点が主たる争点となっているものである。詳細は記録されていないので、いささか特殊な(珍しい)社団の業務が対象となっているようにも考えられるものではあるが、社団法人が受け取る収益が課税対象となるものであるのかという点が背景となって法人税法が定めるいわゆる非営利型法人として該当性が中心的な争点となっているものである。この種の非営利型法人としての該当性が争われることが珍しく、本件の判断は公益認定等委員会等の第三者の判断があったとして、租税法規上、受け入れられない可能性を示しているもので興味深い。

法人税法施行令3条
 法第二条第九号の二ロに規定する政令で定める法人は、次の各号に掲げる要件の全てに該当する一般社団法人又は一般財団法人(清算中に当該各号に掲げる要件の全てに該当することとなつたものを除く。)とする。
 その会員の相互の支援、交流、連絡その他の当該会員に共通する利益を図る活動を行うことをその主たる目的としていること。
 その定款(定款に基づく約款その他これに準ずるものを含む。)に、その会員が会費として負担すべき金銭の額の定め又は当該金銭の額を社員総会若しくは評議員会の決議により定める旨の定めがあること。
 その主たる事業として収益事業を行つていないこと。
 その定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を受ける権利を与える旨の定めがないこと。
 その定款に解散したときはその残余財産が特定の個人又は団体(国若しくは地方公共団体、前項第二号イ若しくはロに掲げる法人又はその目的と類似の目的を有する他の一般社団法人若しくは一般財団法人を除く。)に帰属する旨の定めがないこと。
 前各号及び次号に掲げる要件の全てに該当していた期間において、特定の個人又は団体に剰余金の分配その他の方法(合併による資産の移転を含む。)により特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと。
 各理事について、当該理事及び当該理事の配偶者又は三親等以内の親族その他の当該理事と財務省令で定める特殊の関係のある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が、三分の一以下であること。

以上のように、本件の中心的な争点は、上記法人税法施行令3条におけるいわゆる非営利型法人としての該当性が争点となっているものであり、特に特定の個人等への特別の利益を与えることが争点となっている。

通達は、
「経済的利益の供与又は金銭その他の
資産の交付で、社会通念上不相当なものをいう」
として特定の利益を解しているものであるが、所得税法の伝統的な考えに則り、広くその対象を解している点が理解されるのみであり、特定の個人等を如何に捉えるのかという部分に関しては、具体的な指針が欠けている現況にある。不相当とはいかなるものであるのかという点は具体的な指針が困難であり、また、予測可能性が高いものとは言えないだろう。

本件では、社団の社員への祝い金等の支出が行われてる点が、この部分に該当するものとして、最終的には特定の個人への利益を与えているとの判断がなされている。請求人の主張では、社団の会員には積極的に勧誘を行っており、社団への加盟の可能性がある点が主張され、地域における特定の者にのみ利益が供与されるものではないと主張されているが、この点が法人税法上はその該当性が否定されている。かつては公益認定の理由書の中では、このような会員資格への制約が低いことが、公益性の主張としてよく行われていたものと考えられるが、法人税法上においては、やはり仮定としての理由付けが認められる可能性は非常に低く、実際の供与が行われるかいなかという点が基本的な判断の根拠となっている点は意義がある判断であろう。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。



 

2021年7月27日火曜日

判例裁決紹介(平成31年2月8日裁決、非嫡出子に関する相続開始のあったことを知った日)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成31年2月8日裁決で、非嫡出子である相続人に関する相続開始の日が如何なるものであるのかという点が中心的な争点となっているものです。

具体的には、本件が請求人(相続人の法定代理人)が相続税申告を行ったところ、期限後申告であるとした処分が適用されたことを不服として提起されたものであり、起点となるべき法が定める相続開始のあったことを知った日が如何なるものであるのかという点が中心的な争点となっているものである。本件は基本的には、戸籍上の父や、嫡出推定、その否認と生物学的な父(被相続人)とその法定配偶者や嫡出子の存在、など、複雑な事実関係の経過が課題になっているものであり、かかるような事実関係の中でいかなる状況が相続開始の日であるのかという点が争われているものである。より具体的には請求人への遺贈を記載した遺言書の検認に立ち会ったタイミングであるのか、嫡出推定が否定され、死後認知が成立し、タイミングであるのかという点(実質的に遺贈における記載を認知を基礎とした遺贈契約であるものと理解している)が問題になっている。最終的に相続の了知を基礎とする相続税法の基本的な理解から、検認に立ち会っており、このタイミングで遺贈内容を了知していたとして請求人の請求を否定している。

なかなかこのような事実関係は珍しいものであろうが(おそらく本件の最大の興味深い点はこの点で、遺言があっても解決しないものであり、法定配偶者との対立など相続において検討すべき点が多く含まれている)、民事法の家族法関係の知見も踏まえた上で、判断をくださねばならないことでもあるので、ケーススタディの対象として、トレーニング事例として位置づけられる事例であろう。一般的な人物が遺言書の検認の意義を理解していたと考えるのはいささか酷とも想定されるが・・・(相続人が無戸籍者であった期間も考慮すると)。

相続税の申告書)
第二十七条 相続又は遺贈(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものに係る贈与を含む。以下この条において同じ。)により財産を取得した者及び当該被相続人に係る相続時精算課税適用者は、当該被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格(第十九条又は第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に係る相続税の課税価格(第十九条又は第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)に係る第十五条から第十九条まで、第十九条の三から第二十条の二まで及び第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定による相続税額があるときは、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内(その者が国税通則法第百十七条第二項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで当該期間内にこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

以上のように、本件は事実関係の中で、相続の開始を知ったことという点を中心的な争点としている。


「その相続の開始があったことを知った日」とは、自己のために遺贈があったことを知った日を意味し、遺贈を受けた本人が未成年者である場合については、本人が弁識能力のないときは法定代理人が、本人が弁識能力を有しているときは本人又は法定代理人が、その遺贈があったことを知った日と解すべきである。

現代社会の状況を鑑みると現行法の規定において、この相続に関する了知を起点とする文言が妥当であるのか、整合性を有しているのかという点も課題となるのではないかと想定されるところであるが、相続や遺贈による財産の取得者がその了知を基礎としている点は主観的な要素が介在する可能性が高く、法的な安定性に欠ける点は否めない。親族の死亡を中心とした相続の事実関係、発生経緯であれば致し方ないのかもしれないが、現実的な運用、解釈において、本件の検認など、法的な行為をベースに判断が行われている点で法的安定性と事実関係の整合を図っている点は相続税の制度において重要な判断材料になっていることは留意されるべきであろう。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものであり、完成度は低いですが参考までに。


2021年7月10日土曜日

判例裁決紹介(最判令和3年6月24日、相続税における更正の請求督促と財産評価の誤りの修正)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、最判令和3年6月24日で、未分割財産に関する相続税の更正の請求に関する特則と評価の誤りの関係が課題となったもので、地判高判の中で肯定された、別件裁判の影響を受けた財産評価基本通達の変更に伴う取引相場のない株式の評価の反映を許容するとした判断が否定され、更正の請求の特則の立脚点に立ち返り、評価の誤りの修正を除斥期間終了後は認められないとした最高裁の判断です。

具体的には、相続人として取引相場のない株式の取得を行った非上告人(納税者)が、相続税申告時は、遺産分割が未了であった状態で申告を行い、7年ほどを経過して(除斥期間が終了)調停が終了し、もって更正の請求の特則を利用して更正を求めたところ、かかる時系列において別件訴訟において、取引相場のない株式の評価に関する評価方法の判決がありもって財産評価基本通達の修正が行われていた(著名な裁判例)ことを反映した形での、すなわち修正後の取引相場のない株式の評価に基づき、更正の請求が認められるのかが争われた事例である。

本件は財産規模としても数億円に及び、特に取引相場のない株式の評価という、わが国の相続税実務において、最も紛争とされることの多い財産評価項目における判断である。財産評価基本通達の修正を受けた事例でもあるが、原審において許容された、財産評価基本通達の修正を反映した評価が覆され、課税庁の主張が認められ、原則通り、一定の特則を条件とした相続税の更正の請求の規定を鑑みて、その理由が限定されていることで、かかる中に評価の誤りは対象外であるという点を元に、たとえ別件判決があろうとも法的根拠が欠ける状況では評価の修正による更正の請求は許容されないという点において、実務上も影響力のある最判ではないだろうか。特に未分割遺産における相続税申告の難しさを表現しているともいえ、また相続税における当初申告、特に評価の重要性が背景にあることは租税専門家として認識されるべきであろう。

いささか特殊な事実関係、時系列、更正の請求の特則を対象とした、基本的には事例判決であるように捉えられるものであるが、上記のように、判決の前提となるものは相続税申告における評価の誤りの位置づけであり、近年は、評価の修正、誤りの是正が相続税申告においては増加しているようであるが、改めて当初申告における相続税法評価の重要性が認識されるべき事例であるものと考えられる。

(取消判決等の効力)
第三十二条 処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する。
 前項の規定は、執行停止の決定又はこれを取り消す決定に準用する。
第三十三条 処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。
 申請を却下し若しくは棄却した処分又は審査請求を却下し若しくは棄却した裁決が判決により取り消されたときは、その処分又は裁決をした行政庁は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分又は審査請求に対する裁決をしなければならない。
 前項の規定は、申請に基づいてした処分又は審査請求を認容した裁決が判決により手続に違法があることを理由として取り消された場合に準用する。
 第一項の規定は、執行停止の決定に準用する。

以上のように本件は原審が上記行政事件訴訟法における、取消判決の拘束をもって、別件判決で確定した評価方法が適用されるべきであるとした判示を覆すことになっている。

(更正の請求の特則)
第三十二条 相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する事由により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額(当該申告書を提出した後又は当該決定を受けた後修正申告書の提出又は更正があつた場合には、当該修正申告又は更正に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額)が過大となつたときは、当該各号に規定する事由が生じたことを知つた日の翌日から四月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき更正の請求(国税通則法第二十三条第一項(更正の請求)の規定による更正の請求をいう。第三十三条の二において同じ。)をすることができる。
 第五十五条の規定により分割されていない財産について民法(第九百四条の二(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつたこと。
 民法第七百八十七条(認知の訴え)又は第八百九十二条から第八百九十四条まで(推定相続人の廃除等)の規定による認知、相続人の廃除又はその取消しに関する裁判の確定、同法第八百八十四条(相続回復請求権)に規定する相続の回復、同法第九百十九条第二項(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)の規定による相続の放棄の取消しその他の事由により相続人に異動を生じたこと。
 遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したこと。
 遺贈に係る遺言書が発見され、又は遺贈の放棄があつたこと。
 第四十二条第三十項(第四十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定により条件を付して物納の許可がされた場合(第四十八条第二項の規定により当該許可が取り消され、又は取り消されることとなる場合に限る。)において、当該条件に係る物納に充てた財産の性質その他の事情に関し政令で定めるものが生じたこと。
 前各号に規定する事由に準ずるものとして政令で定める事由が生じたこと。
 第四条第一項又は第二項に規定する事由が生じたこと。
 第十九条の二第二項ただし書の規定に該当したことにより、同項の分割が行われた時以後において同条第一項の規定を適用して計算した相続税額がその時前において同項の規定を適用して計算した相続税額と異なることとなつたこと(第一号に該当する場合を除く。)。
 次に掲げる事由が生じたこと。
 所得税法第百三十七条の二第十三項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定により同条第一項の規定の適用を受ける同項に規定する国外転出をした者に係る同項に規定する納税猶予分の所得税額に係る納付の義務を承継したその者の相続人が当該納税猶予分の所得税額に相当する所得税を納付することとなつたこと。
 所得税法第百三十七条の三第十五項(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定により同条第七項に規定する適用贈与者等に係る同条第四項に規定する納税猶予分の所得税額に係る納付の義務を承継した当該適用贈与者等の相続人が当該納税猶予分の所得税額に相当する所得税を納付することとなつたこと。
 イ及びロに類する事由として政令で定める事由
 贈与税の課税価格計算の基礎に算入した財産のうちに第二十一条の二第四項の規定に該当するものがあつたこと。
 贈与税について申告書を提出した者に対する国税通則法第二十三条の規定の適用については、同条第一項中「五年」とあるのは、「六年」とする。

 税務署長は、第三十二条第一項第一号から第六号までの規定による更正の請求に基づき更正をした場合において、当該請求をした者の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した他の者(当該被相続人から第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産を贈与により取得した者を含む。以下この項において同じ。)につき次に掲げる事由があるときは、当該事由に基づき、その者に係る課税価格又は相続税額の更正又は決定をする。ただし、当該請求があつた日から一年を経過した日と国税通則法第七十条(国税の更正、決定等の期間制限)の規定により更正又は決定をすることができないこととなる日とのいずれか遅い日以後においては、この限りでない。
 当該他の者が第二十七条若しくは第二十九条の規定による申告書(これらの申告書に係る期限後申告書及び修正申告書を含む。)を提出し、又は相続税について決定を受けた者である場合において、当該申告又は決定に係る課税価格又は相続税額(当該申告又は決定があつた後修正申告書の提出又は更正があつた場合には、当該修正申告又は更正に係る課税価格又は相続税額)が当該請求に基づく更正の基因となつた事実を基礎として計算した場合におけるその者に係る課税価格又は相続税額と異なることとなること。
 当該他の者が前号に規定する者以外の者である場合において、その者につき同号に規定する事実を基礎としてその課税価格及び相続税額を計算することにより、その者が新たに相続税を納付すべきこととなること。


(未分割遺産に対する課税)
第五十五条 相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第九百四条の二(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。ただし、その後において当該財産の分割があり、当該共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつた場合においては、当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として、納税義務者において申告書を提出し、若しくは第三十二条第一項に規定する更正の請求をし、又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げない。

判示は、下記のように、相続税における更正の請求の特則の趣旨を理解した上で、


「相続税法32条1号及び35条3項1号は,同法55条に基づく申告の後に遺産分割が行われて各相続人の取得財産が変動したという相続税特有の後発的事由が生じた場合において,更正の請求及び更正について規定する国税通則法23条1項及び24条の特則として,同法所定の期間制限にかかわらず,遺産分割後の一定の期間内に限り,上記後発的事由により上記申告に係る相続税額等が過大となったとして更正の請求をすること及び当該請求に基づき更正がされた場合には他の相続人の相続税額等に生じた上記後発的事由による変動の限度で更正をすることができることとしたものである。その趣旨は,相続税法55条に基づく申告等により法定相続分等に従って計算され一旦確定していた相続税額について,実際に行われた遺産分割の結果に従って再調整するための特別の手続を設け,もって相続人間の税負担の公平を図ることにあると解される。」

「相続税法32条1号の規定による更正の請求においては,上記後発的事由以外の事由を主張することはできないのであるから,上記のとおり一旦確定していた相続税額の算定基礎となった個々の財産の価額に係る評価の誤りを当該請求の理由とすることはできず,課税庁も,国税通則法所定の更正の除斥期間が経過した後は,当該請求に対する処分において上記の評価の誤りを是正することはできないものと解するのが相当である。また,課税庁は,相続税法35条3項1号の規定による更正においても,同様に,上記の評価の誤りを是正することはできず,上記の一旦確定していた相続税額の算定基礎となった価額を用いることになるものと解するのが相当である。」

更正の請求における理由としても限定されていること、現行の評価誤りに関する基本的な原則を基礎として、一旦確定した評価を覆すことを除斥期間経過後は基本的に認められないとした従前の判示との整合性が図られている。取消判決の拘束をもってしても法的な根拠が欠ける行為を促すものではないとしたものであり、私見としては相続税法において、更正の請求の特則が設けられた趣旨、更には租税法規における更正の請求の意義、機能に則った基本に忠実な判断であるように捉えられる。かかる点からは更正の請求による権利救済の可能性が減少する、限定されるという指摘はあり得ようが、文理に則った解釈であり、改めて当初申告における財産評価の重要性、遺産未分割のリスク等が認識されるべきことが求められる事案であるように考えられる。


「当該判決の個々の財産の価額や評価方法に関する判断部分について拘束力が生ずるか否かを論ずるまでもなく,課税庁は,国税通則法所定の更正の除斥期間が経過した後に相続税法32条1号の規定による更正の請求に対する処分及び同法35条3項1号の規定による更正をするに際し,当該判決の拘束力によって当該判決に示された個々の財産の価額や評価方法を用いて税額等を計算すべき義務を負うことはないものというべきである。」

以上です。毎回のごとく備忘録として作成されているものであり、完成度は低いですが参考までに。