2021年4月7日水曜日

判例裁決紹介(令和元年6月27日裁決、山林の貸付所得の人格なき社団への帰属)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は令和元年6月27日裁決で、山林の貸付による所得が山林所有者か、人格なき社団として森林管理組合にあるのかが争われた事例です。

山林に関する所得は、所得税法における所得の一つであるが、おそらく殆ど実務においてみる機会はないのが現状であろうが、本件は山林の貸付による所得がいかなる者に帰属するものであるのかという部分が課題となっているものである。山林所得の特殊性においても議論されるように、山林に関する所得は比較的長期間の時間軸をベースに構築される。このような中で関係者、特に本件のような地縁や周辺との関係によって構築された団体において、いかなる者に対して所得が帰属することになるのかという点で本件は興味深い事例であろう。おそらく時代の変化により、求められる管理なども変化しているのであり、当事者の関係、収益環境なども変化する中で、どのように所得の帰属を判断するべきであるのかという点は、法人税、所得税のように一種のフィクションとして年度を区切って納税を把握する環境とは相性が悪いものではないだろうか。本件は基本的な人格なき社団であることは特段議論が行われるものではなく、所有主と管理組合のいづれかにおいて所得が帰属するのかという部分が争いになっているものであるが、単年度ベースで所得の帰属関係が判断されているようにもみえ、より中心的にはこのような単年度ベースでの課税の構築が実態を反映できるものであるのかということが問われる点に特徴があるように捉えています(所得が実質的な帰属者を課税対象とすることから生じるものでもあるでしょうか。)。


第四章 所得の帰属に関する通則
(実質所得者課税の原則)
第十一条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

以上のように本件の中心的な争点は、人格なき社団としての森林管理組合と山林の所有者のいずれかが山林の貸付による所得を享受しているものであるのかという点である。基本的には事実認定の問題であるが、所得税法人税ともに実質的な所得の帰属者を課税対象としていることから、その判断において見解の相違が発生しているものである。人格なき社団が関与する場合は、このような所得の帰属をいかに判断されるべきであるのかという帰属をめぐる点も課題となることが多いが、本件はその典型的なケースであるように考えられる。

判断は、課税庁の主張を肯定し、人格なき社団において所得が帰属するという判断を導いているが、その判断の基礎は、事実関係において、資金や収益の管理状況をその基礎としておいている。法的な根拠を示さず、実質的な所得の帰属者を判断されているが、基本的には、上記の法人税法11条の実質所得者課税の原則をそのベースにおいているものであろう。判断や各主張にも表現されていないが。収益を享受するという側面をベースに法規程が整備されているが、本件判断も資金の管理をもとに帰属を判断しており、実質的な所得の帰属者においてはこの資金管理状況が一つのキーとなっていることは、他の帰属関係を争う事例と同様に、法的な権利者から実質的な所得者の認定(帰属)の判断において重要な点であろう。ただこの点において、山林を取り巻く環境や特性は殆ど考慮されていないことは指摘される。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。


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