さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年11月27日裁決で、国外扶養親族に関する納税者の不知による不服が申立てられたものです。
具体的に本件は、請求人が確定申告で記載した扶養控除の適用対象として、国外に居住する、非居住者である親族を加えていた事に対して、当該控除の適用上、必要とされる書類の添付、提示がなかったとして、適用を否認した更正処分を行ったことに対して不服を申立てるものである。事案としてはシンプルな、書類の添付漏れという事案であるが(おそらくこの件に限らず実務的には大変多い事態であるように思われるが)、かかる処理に対して、制度適用がなかったことを自らの制度理解が不十分であるというわけではなく、課税庁の説明がなかったことによるものとして不服を申し立てている。
結論としては、ある意味当然であるのかもしれないが(租税制度の複雑さは、とりあえず横においておくとして)、請求は認められていない。法の不知に対して、かなり冷淡なという表現が妥当であるのかわからないが、反応は、租税に限ったものではないが、本件も、下記のように判断をして結論を導いている。
「課税庁は、国税庁ホームページなどにおいて、法令の改
正に関する事項を広く一般に周知しているところ、申告納税制度の下にお
ける所得税等の確定申告は、納税者自身の判断と責任においてなされるべ
きこと、また、原処分庁所属の職員が納税者に対して法令の改正について
説明をしなければならない旨を定めた法令の規定はないことから、原処分
庁が、請求人に対し、事前に法令の改正について説明をせずに本件更正処
分を行ったことに違法な点はない。」
正に関する事項を広く一般に周知しているところ、申告納税制度の下にお
ける所得税等の確定申告は、納税者自身の判断と責任においてなされるべ
きこと、また、原処分庁所属の職員が納税者に対して法令の改正について
説明をしなければならない旨を定めた法令の規定はないことから、原処分
庁が、請求人に対し、事前に法令の改正について説明をせずに本件更正処
分を行ったことに違法な点はない。」
申告納税制度という点が、国税の大半において現行法の基本にあることは言うまでもないが、やはりこの点が判断の基礎となっている(もう一点は法令上の責任として説明が行われていることが定められているのかという点)。現行法の基本的な立場からは、この申告納税制度として、納税者自身がその状況をつまびらかとして、制度を理解して申告を行うことが背景にあることは揺るがない。制度の複雑さや、専門技術としての高さからは、批判も存在し得ようが、昔よりもHPなどによる広報は広がっており、内容も充実している。制度改正に関しても周知される環境にあって改善していることは確かであろう。かかる点で、本件のような不知による申告を修正することは認められない(旧法の状況が適用されるなどの状況は認められることはないだろう、錯誤によるものは別途検討課題となるだろうが)という判断は妥当であろうし、他の同様の事例においても変わらないだろう。
二 第一項の規定による申告書に、第八十五条第二項又は第三項(扶養親族等の判定の時期等)の規定による判定をする時の現況において非居住者である親族に係る障害者控除、配偶者控除、配偶者特別控除又は扶養控除に関する事項の記載をする居住者 これらの控除に係る非居住者である親族が当該居住者の親族に該当する旨を証する書類及び当該非居住者である親族が当該居住者と生計を一にすることを明らかにする書類
しかしながら、本件の問題の基礎にある国外扶養親族が課題となる事例は近年のトピックである。確定申告の喧騒に紛れ(今年は一月延長されましたが、コレはこのまま定着しないのだろうか)、あまり焦点が当たるものではないのかもしれないが、実務においても扶養対象がいかなる者であるのかという点は重要なテーマであろう。特に本件のような国外の扶養親族の存在は、近年増加傾向にあり、実務でも見かける機会が増えつつあるのではないだろうか。本件でもこの書類の添付が対象となっているものであり、改正が数多くの問題事例からも強化されているものであり、定期的なチェックが必要であろう。
法は上記のように生計を一にすることを明らかにする書類ということで、実務上は、送金の事実を明らかにする書類が基礎となっている。送金イコール生計を一にするという理解はいささか解釈としては、限定し過ぎではないかと言う印象であるが、実務は送金によって扶養が判断されている。この生計を一にするという文言自身が如何に解釈されるものであるのかという点は、よくある論点であるが、送金額なども本来は考慮されるべきであろうし、多様な判断が本来ありうるものではないだろうか(ではどのようなものが対象となるのかというのは具体性にかけるが)