さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成29年2月6日裁決で、自販機を設置し、収益を得る事業を営んでいる請求人が主張した、入金額の一部が貸付金の返済であるのか否か、そして処分理由の提示における記載内容が問題となった事例です。
具体的には、自販機設置の業務を行う請求人(他の業務を行う法人の代表者でもある)が設置対象から受領した金員が一部貸付金、自販機設置の当初契約を行った際(請求人は、契約を引継いている)、に支払った金銭(契約金、協賛金)の立替分の返済(貸付金の返済)であるのか、それとも前払費用の償却であるのかという点を基礎として、未申告であった請求人の収入状況の把握が基本的な問題になっているものである。基本的には上記のように、その問題点は、事実関係を以下に認定するのかという点に限られており、未申告で帳簿等も作成していない(事実上請求書の名義を請求人名義とはしていないなど、仮装が実施されている)請求人の所得を以下にして把握するのかという点が中心的な争点となっているものであり、納税意識の希薄な納税者(逋脱案件ではないのでこの程度の表現が妥当だろう)に対する事業所得の認定が行われている典型的な類型に属する事例であると考えられる。貸付けの有無に関しては、ほぼ契約の有無に焦点が当てられており、特段特徴的な事例ではないが、詳細に必要経費の認定を各種費用ごとに認定を行っており、ほぼすべての項目で、相手側の存在や、家事関連費として明確な区分を伴っていないことを理由が含まれていることは、処分行政庁における経費認定の中心的な対応策であり、個々の費用項目ごとにいかなる認定を行っているのかという点は必要経費の認定において、実務上一定の参考となるものではないだろうか。
また、本件では、不利益処分を行う際の理由の提示に関して(何故か理由附記の条文解釈ではないところが疑問であるのだが)、以下のように判断しており、理由の提示に関して、処分行政庁による恣意の抑制と不服申立て等の権利救済における便宜を基礎としている。この点に関しては、従前と整合的であろうし、この記載・提示の内容が従前問題とされてきている。この点に関して本件では、理由欄において、その記載事項として、課税庁が認定した収入金額及び必要経費の詳細金額が記載され、総収入金額が記載されていた。この点に関して、調査等において上記のように見解が対立した、一部貸付金の返済であり、損益取引から除外されるものがあるとする点において何ら記載がなかったことが問題とされている(判断では、詳細な記載をもってその対応に付き理由提示の趣旨に反するものではないとしている)。本件のような未申告であった納税者が対象であるような事例においては、事実関係において影響を及ぼすものであるのであろうが、また本件は旧国税通則法下、行政手続法に対する判断であるものであるが、処分理由を理由附記することは現行法においても重要な制度であり、調査終了段階での説明や勧奨が制度化されたような状況下において、本件と同様に、見解の相違や反証等を記載すべきことは理由開示において求められていないのか否かという点は、かかる理由開示が法令解釈と整合的であるのか(おそらく現行法においても、下記のような趣旨に変更はないものと想定されるが)という点は、より検討されるべきではないだろうか。
行政手続法第14条第1項が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されるから、同項に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは、上記のような同項の趣旨に照らし、当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を
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