2016年11月24日木曜日

判例裁決紹介(平成27年12月15日、固定資産税評価における増築の判定】

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。
今回は東京地判平成27年12月15日で、固定資産税評価において、増築を行ったことに対する評価が問題となったものです。

判示では、納税者の請求を退けていますが、具体的には原告が保有する建物に対して増築を行い、ビルの屋上にプレハブ小屋を設置した場合において、当該プレハブ小屋が独立の建物であり、構築物として評価されるものであるとした原告が主張したのものであり、プレハブ小屋がビルと一体の建物であり、増築に該当するものであるとして鉄筋コンクリートに基づく、建物の一部であるとした課税庁が主張した事案です。

納税者の主張の一つには、増築部分としして判断した場合、鉄筋コンクリートづくりの建物の評価がプレハブの部分にまで及んでおり、鉄筋コンクリートと軽量鉄骨が同様の基準に基づき評価することは不合理であるとしています。増築であるかいなかがその問題として考えられる場合、たしかに、その区分が問題となるべきでありますが、今回は、実際のところその評価において、増築部分と既存の建物を区分してそれぞれ製造材に基づき評価されています。その点で、納税者の主張は大きく根拠を失っているところですが、実務上、具体的な評価の実施において建材の区分は、その評価に関わることを改めて認識すべきと言えるでしょう。具体的な評価において建造費用を確定する上では、重要になるものと評価できるでしょう。逆に言えば、製造材の相違が重要は建物の区分において重要な基準となりうるものと言えるでしょう。

また、実際の評価において、用途区分が考慮されています。具体的には事務所用と居住用と主に区分されています。この用途に応じて評価における具体的な減点補正が行われることになりますが、この建物の用途に関しては、実際複合的な用途である場合がありうるところであり、その具体的な判断が問題となります。本判示においては、複合的な用途である場合には、主たる用途に基づき判断されうこととされているのですが、これを如何にして主たるものとして判断するのかという点については、定かではありません。法令解釈としてはこの主たるものについては、固定資産税が不動産の利活用にその趣旨をおいていることを鑑み原則として用地活用における面積基準が中心となるべきと解するべきと考えられますが、当該面積につき、如何に利用されているのか利用されている面積を確定するにあたり、具体的な利用状況を総合的に判断するべきものと考えています。

また、増築の有無を判断する際にも如何に判断されるべきであるのかという点も法令解釈上問題となりえます。本件では、ビルの増築であるのか、単に別途構築されたものであるのかが問題となりましたが、具体的に、増築であるのか否かがいかにして判断されるのかという点は重要なものであると言えるでしょう。
そもそも家屋や、事務所用、店舗用と言うかたちで用途区分を行っていますが、それぞれいかにして判断されるのか、その意義は必ずしも一義的であるといえるでしょうか。また、その判断過程において、利用者・所有者の意思に基づくべきであるのか、それとも現況によるべきであるのかこの点も明確にするべきでしょう。固定資産税が不動産に関する利用をベースに時価を判断する以上、実際の利用状況を鑑みるべきであると解されるところです。

まずは、ビルとの定着性が問題とされています。納税者の主張は、簡易的な設置であり、一時的なものであるとして、定着性を否定して独立の建物である根拠としています。家屋の一体性は、最終的には総合的な判断に基づくことになるでしょうが、設備の一体性や期間的な要素が中心的な判断要素として示されています。期間的な要素がどの程度であるべきかは定かではないものの屋根等による遮蔽や設備の一体性が固定資産における一体性を判断する指標であることは揺るぎないものであるといえるのではないでしょうか。

納税者の主張するように簡易的なプレハブであることは一体性を減ずる要素であることは必ずしも否定できるものではないと考えられますが、設置・撤去に関して一時的であるとの判断は、主として利用者の意思に依拠することとなり、客観的な裏付けが求められるべきものと考えられます。

何を持って一つの不動産であるとの判断は個々の資産類型によって異なりうるものですが、建物の一体性を判断する指標として本件における判断は意義を有するといえるものと評価されます。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。裁決

2016年11月19日土曜日

判例裁決紹介(社交飲食店に関する上納金の所得帰属、所得区分、平成27年12月11日裁決】


さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成27年12月11日裁決です。
社交飲食店を営む請求人の他人名義の口座に振り込まれた金銭がいかなる所得であるのか、が問題となった事例です。

具体的には、不動産業を営む請求人が、複数のキャバクラ経営者【これを社交飲食店と言うそうです、初めて知りました】から定期的に各店舗の売上の一部を継続的に送金させ、しかも当該送金先は、他人名義【これもいわゆる交際相手:愛人関係にあったようです】であった事案で、重加算税が課された事案です。なかなかドロドロとした事案ですが、当該送金を指示した携帯電話が数年間で20回近く機種変更されるなど、また、情報提供やクレジットカードの機械手数料であるとの主張もなされましたが、課税庁の認定としていわゆる上納金であるとして、雑所得として課税を行った事案です。

上納金【そもそもこれは何でしょうか、一般的な意義ではわかるのですが】という認定自身も興味深いですが、事実関係も含め、複雑な社交関係飲食店に関する事実関係を表す事例としても興味深いものと思います。

裁決の判断もこの課税庁の処分を是認していますが、当該経済的利得がいかなる認定を受けるべきものか?そもそも、法的な権利のない所得であり【あえて違法とは評価していません】、所得の帰属はどこになるのかという点も問題となっており、中心的な争点は所得の帰属に関する事実関係の争いであるというべきでしょう(特に、携帯電話のやり取りなどは特殊ですが、なかなか興味深いものです】。

法令解釈としては、いわゆる所得の認定において管理支配基準の適用によって、その経済的利益の課税関係を認定しています。対象となる金銭が送金された口座の実質的に支配に基づき、その判定を行っているのですが、この点では管理支配基準の具体的な適用として、何をもって実質的な支配であるのかという点は、検討すべき課題であり、参考となるものと考えています。

また、法的な権利に基づかない、金銭所得の所得判定プロセスも重要であり、本件のように、所得の帰属が主たる論点となり、所得の種類自身は主たる争点とはならず、ほぼ帰属の判定をもって雑所得認定を行っている点は一般性を持つのではないでしょうか。

加えて本件では直接的な争点とはなっていませんが、当該上納金は事業所得の経費としていかなる立場に該当するのでしょうか。所得分類の影響と経費性を如何に関連付けるという点では、思考実験として当該上納金がいかなる経費性を帯びているのか、そもそも必要経費性を有するのかという点は検討すべきではないでしょうか。


以上、少し雑駁な裁決事例であり、そもそもこの面白さは事実関係の認定にあるところではあるのではないかと考えており、論文Stockとしてはいつものようにならないような気もしますが、参考までに。
裁決



2016年11月9日水曜日

判例裁決紹介【名古屋地判平成26年10月23日、消費税における区分判定】

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は名古屋地判平成26年10月23日で、消費税法における課税仕入が個別対応方式において如何なるものに該当するのかを、どのタイミングで判断すべきかが問題となった事例です。

具体的には、原告がなした賃借用の建物を取得する課税仕入が、課税資産の譲渡等にのみ要するものとして区分した申告につき、当該仕入は、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものと判断して更正処分を行ったことに対してその取消を求めた事案です。

本件で問題となった課税仕入の対象建物は、その用途として、事務所用・住宅用双方に活用する意図をもって建築していたものですが、事業年度【課税年度】の終期である時点までに課税仕入は発生していたものの、その時点では、事務所用の利用は発生していたのですが【課税売上は発生】、住宅利用に関する入居等はなく、非課税売上は発生していなかったとして、かかる時点での現況に基づき、本課税年度における当該建物に関する課税仕入は課税資産の譲渡等にのみ要するものとして区分して申告をなしたことに対して、課税庁は、当該利用用途の判断は課税仕入の時期における時点において判断されるべきであるとして、利用意図に基づき、更正処分を行っています。なお、その後翌期において住宅賃貸も開始され、非課税売上が発生しています。

判決としては、課税庁の判断を支持し、タイミングとしては、課税仕入の時期によるべきとしていますが、法令解釈としては一般論として、課税仕入についていかなるタイミングで、その属性を判断すべきかという一般的な法解釈が問題となると考えています。すなわち消費税法30条における「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」の解釈としていかなる時点での判断が行われるべきであるのかという点が解釈上の問題となった事例です。

また、そもそも課税資産の譲渡等にのみ要するとは如何なるものであるのか、本件判断では、要するという文言を法令が採用していることをもって実際の売上との関連性とはないものと判断して課税仕入の時期における判断をサポートしています。従来より疑問なのですが、如何なるものをもって課税仕入と課税売上の関連・必要性を判断するのか定かではありません。
所得税法や法人税法においても、家事関連費や寄附金等、事業経費の必要性の認定は、直接間接をとわず、多岐にわたるものであり、如何なるものをもって売上との関連・必要性を認定することは困難な場合が少なくありません。このように考えると、消費税の課税売上との関連・必要性を「のみ」という文言で限定している本件のような課税仕入における個別対応方式において課税資産の譲渡等にのみ要するものが如何なるものであるのかという点は、どのように判断されるべきであるのか検討すべき課題でしょう。

私見としては、所得法人の益金とは異なり、課税資産の譲渡等という消費税法の直接的な課税対象をその関連・必要性を判断する起点としており、消費税が個々の取引における課税関係を想定していることからも、また、仕入税額控除が課税の累積を排除する消費税法における基本的な制度であることを考慮すると、この課税資産の譲渡等の解釈でもあるのですが、この譲渡等と直接的な関連・必要性が具体的な要件として必要であると解するべきであり、課税仕入の発生のタイミングによる状況や客観的な状況において判断されることは適切な消費税法における仕入税額控除の基本的な趣旨に反する可能性があるものと考えられます。適切な課税仕入の把握に基づき、仕入税額控除の実効性を確保するためにも、実際の課税資産の譲渡等との関連をもって客観的に判断される状況にあるべきであって、適格請求書保存方式の導入も含め相互牽制機能も考慮し、明確に課税仕入との関連・必要性を求めつつ、実際の課税売上との関係を断ち切る考えは妥当とは判断し得ないものと考えています。要する文言が、実際の課税売上との関連を問題にしてはいないとの判断には疑問があります。

もちろん、消費税法が所得法人と同様に一定の期間【事業年度 】の終了をもって算定を行い、納付税額を求めることからも、また、課税売上と課税仕入のタイミングがズレるような場合や損失の発生も考えられることから、実際の課税売上との関連・必要性を求めることは、そのタイミングまで、本件のような判断を保留することとなり現実的ではないのかもしれません。日々大量に発生する課税仕入において、立証に耐えうるような関連性・必要性を求めることはコスト的にも合理的ではないのでしょう。

しかしながら、現実の課税売上との関連を求めず、あくまで予定段階での課税仕入のタイミングでいかなる使用用途であるか否かに依拠する判断は、恣意の介入する余地を残すものであり、制度的な対応であるのかもしれませんが、事業年度の終了時での現況によるべきか否かは、ともかく(私見としては5億円以下の課税売上であることがそもそも制度適用の前提であるので、その売上が確定する事業年度終了時点での判断が合理的であると考えています】、実際の課税売上との関連性・必要性を排除すべきではないでしょう。仕入れ段階での客観的な状況に依拠するのであれ、今後適格請求書保存方式が導入される状況下において、形式的な保存で発生しうる租税回避を防止する上でも相互牽制作用を基礎として課税売上との関連性・必要性を直接的に求めるべきでしょう。実際の使用用途の変更に伴い、転用を認めていることは、より適格な消費税負担を図る意図であり、仕入れ段階での予定で判定することを求めているものではないと思います。

また、別件ですが、この課税資産の譲渡等にのみ要するものであるかについていかなる判断過程をとるべきであるのかという点についても興味があります。本件では、建物の建築の意図において住居事務所兼用としていましたので、実質的には共通して要するものであることに疑いの余地はなく問題とはならないのですが、一般的に考えて、課税資産の譲渡等にのみ若しくは非課税売上にのみ対応しているか否かの立証をいずれかを行えば良いのでしょうか。実務的には日々大量に発生するものに対して厳密な立証は困難であることでしょうが、このように問題になったような場合において、いかなる判断過程で、対応区分を判断するのかは明確にしておくべきだと考えています。共通性と個々限定【のみ)の立証は異なるものであると認識しているのですが・・・。日々の取引に関する立証においては証拠との距離から考えて、また、使用用途も考慮されることから、近年の傾向としてその立証責任は納税者に委ねられるべきものと想定されることからもいかなる判断で、本件のような取引に於ける対応区分を判断すべきであるのか明確にすべき課題ではないでしょうか。

以上です。長々と書きましたが、相変わらず論文Stockとして作成しているものですので完成度は低いですが、参考までに。

2016年11月7日月曜日

判例裁決紹介(平成27年10月7日裁決、ソフトウェア委託開発の課税仕入の日】

また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。

今回は平成27年10月7日裁決でソフトウェアの開発を依頼した請求人の消費税法における仕入税額控除のタイミングとして課税仕入を行った日が問題となったものです。
  具体的には、外部業者にソフトウェアの開発を委託していた請求人が、当該外注費用を課税仕入の額に含めて確定申告を行ったところ、課税庁が当該費用の仕入税額控除を否認し、仮装隠蔽が行われたとして重加算税を賦課決定したところこれを不服として提起されたものです。
法令解釈としては、仕入税額控除の判定を行う課税仕入の日がいつになるのかという意義内容が問題となったことになるのですが、ソフトウェアのみならず外注における課税仕入の日を具体的に判定する基準として、実務上も有益なものであると考えています。
課税仕入が如何なるものであるのか自身がそもそも法令解釈としては、問題でもあるわけですが、現状の帳簿方式を前提とする以上、課税資産の譲渡等を表裏一体の関係にあると解されることになります。仕入税額控除の趣旨目的から鑑みてこの解釈自身の妥当性も議論されるべきではあると考えていますし、今後適格請求書保存方式が導入される中でこの一体性が今後も同様の解釈がなされうるものであるのかという点は疑問の余地もあります。現状においては法的な取引が成立履行した時点をもって課税資産の譲渡等が行われたものと判断すべきであり、租税法の基本的な要請に従い、客観的に契約の成立履行が確認可能なタイミングによるべきと解するべきであります。この具備が適格請求書保存方式の採用において変化すべきか否かは、今後より検討すべき課題であると考えています。
  したがって具体的な当てはめにおいては、今回の外注が請負契約である以上、通常の外注は請負契約であることは当然のことかもしれませんが、民事法上、この請負契約が、いかなる性格のものであり、この点から上記課税仕入、課税資産の譲渡等に該当した日として判断されるべきか決定されるべきであり、基礎となる取引の有する法的な性格に基づき当該判断は行われるべきものと考えています。単に課税仕入れがいつ行われたかという当事者の認識に基づくものではなく、恣意性を排除し客観的な事実関係に支持されたものであるべきでしょう。
このような考えによれば請負契約は契約の整理その性格上一定の目的物の完成引渡しをその主たるものとしています。この目的物の完成引渡しがいかなる時点であり、課税資産の譲渡等において合致するのかが問題となります。今回はソフトウェアの外注による委託開発という成果物であることの特性が課税仕入れの日の判断に影響を及ぼすことになるでしょう

  つまり成果物の完成がいかなるものであり、どのタイミングで引き渡しされたものととらえるべきか判断されることになるのでしょう。本件の事実関係ではメールでの引き渡し・納品である場合に、いかなる時点で引き渡しが行われたものであり、それが完成したものであるのか判断する(検収)プロセスが基準として重要なものとなるでしょう。より具体的にはメールサーバーでの到着日がメール納品における判断基準として指摘されています。ソフトウェアという性格上、メール納品が行われることからもどのタイミングが消費税法上、適格であるのかさらに議論されるべきでありますが、バグの修正等完成の判断が明示的ではないものであり、本件でも完成が未了でありながら、部分的に納品されたものをもって課税仕入れとして判断していたとの認定で課税庁の判断を支持しています。本判断ではあまり問題になっていないのですが、仕様、契約内容における具体的な要求に基づいているのか等の基準の明確化が今後このようなソフトウェア開発等の増加に対して租税法の課題であると考えています。もちろん適格請求書の導入においても一義的にこの請求書に依拠した判断はかえって、租税負担の公平性を損なう恐れがあり、この観点からもこの基準の検討が必要であると考えています。
  本件で問題となった外注業務一般においてもいかなる時点で請負契約の完了を租税法務において認定し、消費税法上課税仕入れの日として判断するかは上記のような枠組みによるべきものと考えられますが、成果物の性格に基づき、具体的な完了を客観的に判断する基準を見出すことが必要であるといえるでしょう。もちろんこの判断は基本的には民事上の議論に依拠すべきものであることも事実ですが・・・。
 また、他にタイミングの決定を補完するものとして、いかなるものを考えるべきでしょうか。現行は帳簿方式を採用していることもあり、法人税法上の損金計上のタイミングに基本的に整合しています。この点は本件のような事実関係においても整合するものとして判断されるべきでしょうか。この形式は簡易的ではありますが、そもそも法人税法と消費税法は性格を異にするものであり原則的に整合すべきものであるとは考えていません。また、実際の金銭の支払関係をいかに把握したうえで判断に活かすべきでしょうか。消費税の性格上個々の取引に応じて判断されることから実際の金銭の支払はそのタイミングを決定する上で考慮要素として実務的には重要なのは変化がないのではないでしょか。この点も今後も検討したいところです。

長々と書きましたが、以上です。
毎度のごとく論文ストックとして作成しているものですので完成度は低いですが、参考までに。 裁決