2021年7月31日土曜日

判例裁決紹介(令和元年5月7日裁決、法人税法における非営利型法人の要件)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、令和元年5月7日裁決で、法人税法における非営利型法人としての該当性が課題となった事例です。

具体的には、一般社団法人である請求人が種々の教育、不動産事業等を行い、かかる事業から受け取る収益、手数料が収益事業に該当するのか否かという点が主たる争点となっているものである。詳細は記録されていないので、いささか特殊な(珍しい)社団の業務が対象となっているようにも考えられるものではあるが、社団法人が受け取る収益が課税対象となるものであるのかという点が背景となって法人税法が定めるいわゆる非営利型法人として該当性が中心的な争点となっているものである。この種の非営利型法人としての該当性が争われることが珍しく、本件の判断は公益認定等委員会等の第三者の判断があったとして、租税法規上、受け入れられない可能性を示しているもので興味深い。

法人税法施行令3条
 法第二条第九号の二ロに規定する政令で定める法人は、次の各号に掲げる要件の全てに該当する一般社団法人又は一般財団法人(清算中に当該各号に掲げる要件の全てに該当することとなつたものを除く。)とする。
 その会員の相互の支援、交流、連絡その他の当該会員に共通する利益を図る活動を行うことをその主たる目的としていること。
 その定款(定款に基づく約款その他これに準ずるものを含む。)に、その会員が会費として負担すべき金銭の額の定め又は当該金銭の額を社員総会若しくは評議員会の決議により定める旨の定めがあること。
 その主たる事業として収益事業を行つていないこと。
 その定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を受ける権利を与える旨の定めがないこと。
 その定款に解散したときはその残余財産が特定の個人又は団体(国若しくは地方公共団体、前項第二号イ若しくはロに掲げる法人又はその目的と類似の目的を有する他の一般社団法人若しくは一般財団法人を除く。)に帰属する旨の定めがないこと。
 前各号及び次号に掲げる要件の全てに該当していた期間において、特定の個人又は団体に剰余金の分配その他の方法(合併による資産の移転を含む。)により特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと。
 各理事について、当該理事及び当該理事の配偶者又は三親等以内の親族その他の当該理事と財務省令で定める特殊の関係のある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が、三分の一以下であること。

以上のように、本件の中心的な争点は、上記法人税法施行令3条におけるいわゆる非営利型法人としての該当性が争点となっているものであり、特に特定の個人等への特別の利益を与えることが争点となっている。

通達は、
「経済的利益の供与又は金銭その他の
資産の交付で、社会通念上不相当なものをいう」
として特定の利益を解しているものであるが、所得税法の伝統的な考えに則り、広くその対象を解している点が理解されるのみであり、特定の個人等を如何に捉えるのかという部分に関しては、具体的な指針が欠けている現況にある。不相当とはいかなるものであるのかという点は具体的な指針が困難であり、また、予測可能性が高いものとは言えないだろう。

本件では、社団の社員への祝い金等の支出が行われてる点が、この部分に該当するものとして、最終的には特定の個人への利益を与えているとの判断がなされている。請求人の主張では、社団の会員には積極的に勧誘を行っており、社団への加盟の可能性がある点が主張され、地域における特定の者にのみ利益が供与されるものではないと主張されているが、この点が法人税法上はその該当性が否定されている。かつては公益認定の理由書の中では、このような会員資格への制約が低いことが、公益性の主張としてよく行われていたものと考えられるが、法人税法上においては、やはり仮定としての理由付けが認められる可能性は非常に低く、実際の供与が行われるかいなかという点が基本的な判断の根拠となっている点は意義がある判断であろう。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。



 

2021年7月27日火曜日

判例裁決紹介(平成31年2月8日裁決、非嫡出子に関する相続開始のあったことを知った日)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成31年2月8日裁決で、非嫡出子である相続人に関する相続開始の日が如何なるものであるのかという点が中心的な争点となっているものです。

具体的には、本件が請求人(相続人の法定代理人)が相続税申告を行ったところ、期限後申告であるとした処分が適用されたことを不服として提起されたものであり、起点となるべき法が定める相続開始のあったことを知った日が如何なるものであるのかという点が中心的な争点となっているものである。本件は基本的には、戸籍上の父や、嫡出推定、その否認と生物学的な父(被相続人)とその法定配偶者や嫡出子の存在、など、複雑な事実関係の経過が課題になっているものであり、かかるような事実関係の中でいかなる状況が相続開始の日であるのかという点が争われているものである。より具体的には請求人への遺贈を記載した遺言書の検認に立ち会ったタイミングであるのか、嫡出推定が否定され、死後認知が成立し、タイミングであるのかという点(実質的に遺贈における記載を認知を基礎とした遺贈契約であるものと理解している)が問題になっている。最終的に相続の了知を基礎とする相続税法の基本的な理解から、検認に立ち会っており、このタイミングで遺贈内容を了知していたとして請求人の請求を否定している。

なかなかこのような事実関係は珍しいものであろうが(おそらく本件の最大の興味深い点はこの点で、遺言があっても解決しないものであり、法定配偶者との対立など相続において検討すべき点が多く含まれている)、民事法の家族法関係の知見も踏まえた上で、判断をくださねばならないことでもあるので、ケーススタディの対象として、トレーニング事例として位置づけられる事例であろう。一般的な人物が遺言書の検認の意義を理解していたと考えるのはいささか酷とも想定されるが・・・(相続人が無戸籍者であった期間も考慮すると)。

相続税の申告書)
第二十七条 相続又は遺贈(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものに係る贈与を含む。以下この条において同じ。)により財産を取得した者及び当該被相続人に係る相続時精算課税適用者は、当該被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格(第十九条又は第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に係る相続税の課税価格(第十九条又は第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)に係る第十五条から第十九条まで、第十九条の三から第二十条の二まで及び第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定による相続税額があるときは、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内(その者が国税通則法第百十七条第二項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで当該期間内にこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

以上のように、本件は事実関係の中で、相続の開始を知ったことという点を中心的な争点としている。


「その相続の開始があったことを知った日」とは、自己のために遺贈があったことを知った日を意味し、遺贈を受けた本人が未成年者である場合については、本人が弁識能力のないときは法定代理人が、本人が弁識能力を有しているときは本人又は法定代理人が、その遺贈があったことを知った日と解すべきである。

現代社会の状況を鑑みると現行法の規定において、この相続に関する了知を起点とする文言が妥当であるのか、整合性を有しているのかという点も課題となるのではないかと想定されるところであるが、相続や遺贈による財産の取得者がその了知を基礎としている点は主観的な要素が介在する可能性が高く、法的な安定性に欠ける点は否めない。親族の死亡を中心とした相続の事実関係、発生経緯であれば致し方ないのかもしれないが、現実的な運用、解釈において、本件の検認など、法的な行為をベースに判断が行われている点で法的安定性と事実関係の整合を図っている点は相続税の制度において重要な判断材料になっていることは留意されるべきであろう。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものであり、完成度は低いですが参考までに。


2021年7月10日土曜日

判例裁決紹介(最判令和3年6月24日、相続税における更正の請求督促と財産評価の誤りの修正)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、最判令和3年6月24日で、未分割財産に関する相続税の更正の請求に関する特則と評価の誤りの関係が課題となったもので、地判高判の中で肯定された、別件裁判の影響を受けた財産評価基本通達の変更に伴う取引相場のない株式の評価の反映を許容するとした判断が否定され、更正の請求の特則の立脚点に立ち返り、評価の誤りの修正を除斥期間終了後は認められないとした最高裁の判断です。

具体的には、相続人として取引相場のない株式の取得を行った非上告人(納税者)が、相続税申告時は、遺産分割が未了であった状態で申告を行い、7年ほどを経過して(除斥期間が終了)調停が終了し、もって更正の請求の特則を利用して更正を求めたところ、かかる時系列において別件訴訟において、取引相場のない株式の評価に関する評価方法の判決がありもって財産評価基本通達の修正が行われていた(著名な裁判例)ことを反映した形での、すなわち修正後の取引相場のない株式の評価に基づき、更正の請求が認められるのかが争われた事例である。

本件は財産規模としても数億円に及び、特に取引相場のない株式の評価という、わが国の相続税実務において、最も紛争とされることの多い財産評価項目における判断である。財産評価基本通達の修正を受けた事例でもあるが、原審において許容された、財産評価基本通達の修正を反映した評価が覆され、課税庁の主張が認められ、原則通り、一定の特則を条件とした相続税の更正の請求の規定を鑑みて、その理由が限定されていることで、かかる中に評価の誤りは対象外であるという点を元に、たとえ別件判決があろうとも法的根拠が欠ける状況では評価の修正による更正の請求は許容されないという点において、実務上も影響力のある最判ではないだろうか。特に未分割遺産における相続税申告の難しさを表現しているともいえ、また相続税における当初申告、特に評価の重要性が背景にあることは租税専門家として認識されるべきであろう。

いささか特殊な事実関係、時系列、更正の請求の特則を対象とした、基本的には事例判決であるように捉えられるものであるが、上記のように、判決の前提となるものは相続税申告における評価の誤りの位置づけであり、近年は、評価の修正、誤りの是正が相続税申告においては増加しているようであるが、改めて当初申告における相続税法評価の重要性が認識されるべき事例であるものと考えられる。

(取消判決等の効力)
第三十二条 処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する。
 前項の規定は、執行停止の決定又はこれを取り消す決定に準用する。
第三十三条 処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。
 申請を却下し若しくは棄却した処分又は審査請求を却下し若しくは棄却した裁決が判決により取り消されたときは、その処分又は裁決をした行政庁は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分又は審査請求に対する裁決をしなければならない。
 前項の規定は、申請に基づいてした処分又は審査請求を認容した裁決が判決により手続に違法があることを理由として取り消された場合に準用する。
 第一項の規定は、執行停止の決定に準用する。

以上のように本件は原審が上記行政事件訴訟法における、取消判決の拘束をもって、別件判決で確定した評価方法が適用されるべきであるとした判示を覆すことになっている。

(更正の請求の特則)
第三十二条 相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する事由により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額(当該申告書を提出した後又は当該決定を受けた後修正申告書の提出又は更正があつた場合には、当該修正申告又は更正に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額)が過大となつたときは、当該各号に規定する事由が生じたことを知つた日の翌日から四月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき更正の請求(国税通則法第二十三条第一項(更正の請求)の規定による更正の請求をいう。第三十三条の二において同じ。)をすることができる。
 第五十五条の規定により分割されていない財産について民法(第九百四条の二(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつたこと。
 民法第七百八十七条(認知の訴え)又は第八百九十二条から第八百九十四条まで(推定相続人の廃除等)の規定による認知、相続人の廃除又はその取消しに関する裁判の確定、同法第八百八十四条(相続回復請求権)に規定する相続の回復、同法第九百十九条第二項(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)の規定による相続の放棄の取消しその他の事由により相続人に異動を生じたこと。
 遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したこと。
 遺贈に係る遺言書が発見され、又は遺贈の放棄があつたこと。
 第四十二条第三十項(第四十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定により条件を付して物納の許可がされた場合(第四十八条第二項の規定により当該許可が取り消され、又は取り消されることとなる場合に限る。)において、当該条件に係る物納に充てた財産の性質その他の事情に関し政令で定めるものが生じたこと。
 前各号に規定する事由に準ずるものとして政令で定める事由が生じたこと。
 第四条第一項又は第二項に規定する事由が生じたこと。
 第十九条の二第二項ただし書の規定に該当したことにより、同項の分割が行われた時以後において同条第一項の規定を適用して計算した相続税額がその時前において同項の規定を適用して計算した相続税額と異なることとなつたこと(第一号に該当する場合を除く。)。
 次に掲げる事由が生じたこと。
 所得税法第百三十七条の二第十三項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定により同条第一項の規定の適用を受ける同項に規定する国外転出をした者に係る同項に規定する納税猶予分の所得税額に係る納付の義務を承継したその者の相続人が当該納税猶予分の所得税額に相当する所得税を納付することとなつたこと。
 所得税法第百三十七条の三第十五項(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定により同条第七項に規定する適用贈与者等に係る同条第四項に規定する納税猶予分の所得税額に係る納付の義務を承継した当該適用贈与者等の相続人が当該納税猶予分の所得税額に相当する所得税を納付することとなつたこと。
 イ及びロに類する事由として政令で定める事由
 贈与税の課税価格計算の基礎に算入した財産のうちに第二十一条の二第四項の規定に該当するものがあつたこと。
 贈与税について申告書を提出した者に対する国税通則法第二十三条の規定の適用については、同条第一項中「五年」とあるのは、「六年」とする。

 税務署長は、第三十二条第一項第一号から第六号までの規定による更正の請求に基づき更正をした場合において、当該請求をした者の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した他の者(当該被相続人から第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産を贈与により取得した者を含む。以下この項において同じ。)につき次に掲げる事由があるときは、当該事由に基づき、その者に係る課税価格又は相続税額の更正又は決定をする。ただし、当該請求があつた日から一年を経過した日と国税通則法第七十条(国税の更正、決定等の期間制限)の規定により更正又は決定をすることができないこととなる日とのいずれか遅い日以後においては、この限りでない。
 当該他の者が第二十七条若しくは第二十九条の規定による申告書(これらの申告書に係る期限後申告書及び修正申告書を含む。)を提出し、又は相続税について決定を受けた者である場合において、当該申告又は決定に係る課税価格又は相続税額(当該申告又は決定があつた後修正申告書の提出又は更正があつた場合には、当該修正申告又は更正に係る課税価格又は相続税額)が当該請求に基づく更正の基因となつた事実を基礎として計算した場合におけるその者に係る課税価格又は相続税額と異なることとなること。
 当該他の者が前号に規定する者以外の者である場合において、その者につき同号に規定する事実を基礎としてその課税価格及び相続税額を計算することにより、その者が新たに相続税を納付すべきこととなること。


(未分割遺産に対する課税)
第五十五条 相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第九百四条の二(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。ただし、その後において当該財産の分割があり、当該共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつた場合においては、当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として、納税義務者において申告書を提出し、若しくは第三十二条第一項に規定する更正の請求をし、又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げない。

判示は、下記のように、相続税における更正の請求の特則の趣旨を理解した上で、


「相続税法32条1号及び35条3項1号は,同法55条に基づく申告の後に遺産分割が行われて各相続人の取得財産が変動したという相続税特有の後発的事由が生じた場合において,更正の請求及び更正について規定する国税通則法23条1項及び24条の特則として,同法所定の期間制限にかかわらず,遺産分割後の一定の期間内に限り,上記後発的事由により上記申告に係る相続税額等が過大となったとして更正の請求をすること及び当該請求に基づき更正がされた場合には他の相続人の相続税額等に生じた上記後発的事由による変動の限度で更正をすることができることとしたものである。その趣旨は,相続税法55条に基づく申告等により法定相続分等に従って計算され一旦確定していた相続税額について,実際に行われた遺産分割の結果に従って再調整するための特別の手続を設け,もって相続人間の税負担の公平を図ることにあると解される。」

「相続税法32条1号の規定による更正の請求においては,上記後発的事由以外の事由を主張することはできないのであるから,上記のとおり一旦確定していた相続税額の算定基礎となった個々の財産の価額に係る評価の誤りを当該請求の理由とすることはできず,課税庁も,国税通則法所定の更正の除斥期間が経過した後は,当該請求に対する処分において上記の評価の誤りを是正することはできないものと解するのが相当である。また,課税庁は,相続税法35条3項1号の規定による更正においても,同様に,上記の評価の誤りを是正することはできず,上記の一旦確定していた相続税額の算定基礎となった価額を用いることになるものと解するのが相当である。」

更正の請求における理由としても限定されていること、現行の評価誤りに関する基本的な原則を基礎として、一旦確定した評価を覆すことを除斥期間経過後は基本的に認められないとした従前の判示との整合性が図られている。取消判決の拘束をもってしても法的な根拠が欠ける行為を促すものではないとしたものであり、私見としては相続税法において、更正の請求の特則が設けられた趣旨、更には租税法規における更正の請求の意義、機能に則った基本に忠実な判断であるように捉えられる。かかる点からは更正の請求による権利救済の可能性が減少する、限定されるという指摘はあり得ようが、文理に則った解釈であり、改めて当初申告における財産評価の重要性、遺産未分割のリスク等が認識されるべきことが求められる事案であるように考えられる。


「当該判決の個々の財産の価額や評価方法に関する判断部分について拘束力が生ずるか否かを論ずるまでもなく,課税庁は,国税通則法所定の更正の除斥期間が経過した後に相続税法32条1号の規定による更正の請求に対する処分及び同法35条3項1号の規定による更正をするに際し,当該判決の拘束力によって当該判決に示された個々の財産の価額や評価方法を用いて税額等を計算すべき義務を負うことはないものというべきである。」

以上です。毎回のごとく備忘録として作成されているものであり、完成度は低いですが参考までに。

2021年6月29日火曜日

判例裁決紹介(令和元年6月20日裁決、盗難経費の必要経費該当性と立証)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は令和元年6月20日裁決で、貴金属店を営む請求人が盗難事件にあったことによる損失を必要経費に入れていたことにつき、帳簿未保存による青色申告の取り消しと必要経費計上を否定した事例です。

具体的には本件が請求人が貴金属店を営んでいたところ、盗難事件の被害にあい、各種貴金属(色々と書かれていたのですが私にはよくわからないものです)の仕入原価等を盗難経費として必要経費に該当するものとして計上していた事実関係において、かかる盗難経費が必要経費に該当するものであるのか否かが争点となっているものである。帳簿未保存からの青色申告の取り消し、そして、必要経費の否認というながれをとっているので、理由の提示等が直接的な争点になっているものではないものの、必要経費としての該当性をいかに具体的に誰が立証の責任を負うものであるのかという観点から判断が示されており、近年の傾向特徴を表している裁決事例であると考えられよう。

裁決では、下記のように判断して、納税者の立証責任を拡大して、本件でも盗難経費の計上を否定している。

事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、その年における事
業所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に
要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他事業所得を生
ずべき業務について生じた費用の額であるところ、課税標準である各種所得
の証明責任は原則として課税庁の側にあると解すべきであり、事業所得の金
額が総収入金額から必要経費を控除する方法により算出されることに照らせ
ば、収入金額についてはもちろん、原則として必要経費についても誤税庁側
に証明責任があると解される。
しかしながら、申告納税制度の下における納税者は、税法の定めるところ
に従った正しい申告をする義務を負うとともに、税務調査に際しては、その
所得金額認定の基となる取引の実態を最もよく知るものとして、資料を提示
し説明する義務を負っていると解すべきであること、所得税法が、事業所得
を生ずる納税者に記帳義務や帳簿・証ひょう書類等の保存義務を課している
こと、必要経費が納税者にとって有利な事実であり、その証ひょう書類を取
得して保存し、帳簿に計上することが極めて容易であることからすれば、上
記の各義務を負担する納税者が、税務署長が合理的と認められる方法により
把握した必要経費以外の必要経費が帳簿外に存在すると主張する場合には、
当該納税者においてその存在及び価額を具体的に立証する必要があると解す

るのが相当である。

上記のように、必要経費に関する証明、説明責任(訴訟段階ではないが立証責任と捉えるべきであろう)は、所得税法が記帳義務や証憑等の保存義務を定めている点から更に申告納税を根拠に具体的な立証責任を納税者側が有しているという点を明確に示している。記帳義務に関する法規定が変化している点も考慮されるべきであるが、納税者自身がやはり必要経費に関しては手元に保有しており、特に帳簿外の経費が存在する場合には、納税者側に立証の責任があるものと解している。これは帳簿記帳の法定等を考慮したものであり、事実上、従来納税者ではなく、課税処分には基本的に課税庁にその立証責任があると解してきた状況を変化させるものであり、納税者に立証責任が転嫁される可能性を租税の専門家としては認識しておくべきものであろう。私見としても本件では必要経費に関する部分であるが、帳簿を一つの判断材料としているものであり、かかる点を基軸に立証責任の分配が行われることが、近年の特徴として理解されるべきものと考えられる。一律に課税庁にその責任を負うべきものとして理解するのではなく、本件のようにその責任は証拠との距離、特に帳簿を基準に分配される可能性があることが帳簿を作成する段階で認識しておくことが、法改正により、青色申告に限らず記帳義務が課せられていることの意義として理解されるべきであろう。


以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。


2021年6月22日火曜日

判例裁決紹介(平成31年4月19日裁決、条件未達成の権利の相続財産該当性)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成31年4月19日裁決で、請求人が相続により取得した和解による和解金を受領すべき権利(債権)が和解の条件を未達成であり、かかるような状況でも相続財産に該当するのかという点が争点となったものである。

具体的には、本件は請求人たる相続人が当該相続税申告において、未申告であった被相続人が受領する和解金の権利が、相続時点において、支払を受ける条件を未達成であり、いわゆる(停止条件付権利)であって、相続財産を構成するものではないとしていたものに対して調査により、当該権利も相続税を構成するものであるとした処分が行われ、不服を提起したものである。

本件ではいわゆる相続税における基本となる相続財産がいかなる範囲であるのか、課題となる権利が相続財産を構成するか否かという点が争点となっているものである。本件は、和解金の受領という(10億)という停止条件付の権利であり、相続時において、和解の条件が達成されるか否か、未確定であり、条件未達成の状態にあったものである。この権利を相続対象に含めるべきであるのか(おそらく一般の納税者の感覚ではこのような曖昧模糊として権利はその対象とすることに違和感があるのであろう)、そしていかに評価されるべきであるのかという点が中心的な争点になったものである。相続財産の範囲の確定はごく基本となるべきものであり、租税の専門家においては当たり前であるのかもしれないが、このような抽象的な権利、未確定な状態である権利が課税対象になるのかという点が争われたものとして参考となるべき事例であろう。特に課税庁の主張を認め相続財産の範囲としているが、具体的な評価方法において、異なる判断を下しており、かかる事実認定とのバランスは参考となる事例ではないだろうか。


相続税の課税財産の範囲)
第二条 第一条の三第一項第一号又は第二号の規定に該当する者については、その者が相続又は遺贈により取得した財産の全部に対し、相続税を課する。

以上のように、本件は上記相続税法2条に定めのある、相続財産の範囲をいかに捉えるべきであるのかという点が争点となっているものである。裁決は、以下のように解釈を示して、相続財産の広範囲であることを基礎に本件権利の課税対象としての導出が行われている。法は上記のように財産の全部という表現で定めるだけで如何なるものが課税対象として該当するのかという点は、実は不明確な概念であるが、下記のように判例としては、非常に広範囲を対象としている(その根拠としては如何なるものであるのか、そもそも相続税の趣旨に関わるものであり、必ずしも明確ではない)。社会通念に委ねるような表現でもあり、実務上も指針としても本件の権利をはじめ、近年多数の取引が行われているような比較的未確定、処理方法が定かではない、新しい取引、財産、最近はNFTとかも出てきているようで、このような権利の譲渡が担保されるような環境下で、どのように租税法として対応していくことになるのかという点は重要な課題でしょう。本件でも問題になっているが法解釈上、単に範囲が広いというだけでは問題は解決しないので、どのような評価方法とするのかなど、重要な論点は多数に上るものと考えられる。

「相続税法第2条第1項は、相続税の課税財産の範囲を「相続又は遺贈により取得した財産の全部」と規定しているところ、これには特に限定は付されておらず、また、同法は「財産」についての規定を設けていないから、社会通念上財産と認められるものは、原則として、全て相続税の課税財産に含ま
れると解される。
もっとも、相続税法上の「財産」とは、これを課税価格に算入する必要上、金銭的に評価することが可能なものでなければならず、そうすると、相
続税の課税財産は、金銭に見積もることができる経済的価値のある全てのものをいい、既に存在する物権や債権のほか、いまだ明確な権利とはいえない
財産法上の法的地位なども含まれると解するのが相当であり、これには、相続開始時において期限未到来の始期付権利や、条件未成就の停止条件付権利
も含まれると解される。」

上記のように法令解釈上は非常に広範囲のものを相続税の対象としていることは賛意を示すことができよう。そもそも論として具体的な範囲が定まっていないことを問題視する意見もあろうが、上記のように相続財産を構成するものが多様化している現況下においては致し方ないものであり、まずは広範囲のものをいかに評価するべきであるのか、という点が重要であるのかもしれない。ただし、相続税法上は特に債務控除において、明確に確定しているもののみを対象としている点と比べると課税対象となる相続財産の判定はバランスを欠くという指摘もあり得ようが、立法上の課題であろう。

本件では、最終的に権利の評価において、権利の契約金額ではなく、一定の評価を行い、権利の評価を行う形での結論を導いているが、このような点が実務上は重要な論点になるのであろう。未確定な存在であるがゆえに、評価を実施することは非常に困難であるという点を言うだけでは問題が解決せず、具体的な評価方法をいかにとらえるのか、客観的な交換価値という法令解釈との整合性の課題も含め、近年の多様な資産環境においてはこの点を如何に確定させるのかという点は実務をつかさどるうえでは欠かすことのできない視点であるように思われる。

本件は相続税の基本となる相続財産の範囲及び評価という事例が混在している事例であり、有力な事例研究のティーチングケースとしてとらえることができるものと考えられる。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

2021年6月14日月曜日

判例裁決紹介(令和2年3月10日、修繕費の前倒し計上と仮装)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は令和2年3月10日裁決で、損金として前倒し算入した修繕費の計上が仮装に該当するのか否かという点が争点となり、課税庁の主張が排斥され、認められず納税者の主張が認められた最近では珍しい事例です。

本件は事案としてはシンプルで、請求人が法人の損金として算入した修繕費に関して、調査により年度末において未着工であるとして請求書等の日付に基づき損金として計上した処理は、事実の状況と異なる請求書等の発行を促し、経理処理、申告処理を行っているとして、仮装隠蔽に該当するものであるとした課税庁の処分を不服として提起された事例であり、この事実関係における仮装として評価されうるものであるのかという事実関係の認定が中心的な課題となっているものである。

結論として裁決段階において、課税庁の主張が排斥され、仮装行為が成立していないとした判断である。この点は、本件の事実関係は請求書等に記載情報と実態の乖離、そして請求書等に基づく申告という、非常に一般的な事案が租税となっているものであり、どのような点が仮装としての評価にまで至らないものと評価されるのかという点を考える上では、実務上も参考となるものではないだろうか。

本件では年度内の日付が付与された請求書等の準備及び帳簿への虚偽の記載が主たる争点となっている。
まず、請求書の準備に関しては、施工業者が準備段階に入った段階で提出されたものであり、納税者から請求書の記載等を求めた通謀虚偽があったとまでは認められないとの評価であり、納税者と施工業者との間での通謀関係があるのか否かという側面から係る点の証拠等の提出がないことが判断の要因となっている。必ずしも準備段階において日付を付与した請求書の発行は便宜的なものであり、不自然であるとまでは評価し難いとの民事的な判断がベースになっている。

また、帳簿への記載に関しても納税者は関与しておらず、税務代理人が会計処理を行ったものであるという点を基本に(我が国の現況法人は大部分はここに該当することになるだろうが)、納税者に対して当該修繕費が損金対象とはならないとの認識があったものとは言い難いという点が評価されている。テクニカルな点において納税者が損金等の知見を有しているような状況は想定し難いものであるが、代理人の行為と納税者の行為を分断しているようにも捉えられる。税務代理という点は、現実的に通常の代理とは異なるものと評価しうるのかという点は気になるところであるが、このような租税専門家が関与するような状況はごく日常的なものであり、係るような背景から会計処理等における納税者の関与をどのように評価していくのか、仮装行為においては本件は検討の素材となるだろう。

いずれにしても、仮装という行為において重加算税を賦課することは、故意に事実を歪曲するような状態を基礎としている法解釈を背景としており、故意であるとの評価がなされるような事実関係にあるものではない、特に税務代理人が関与しているごく一般的な事実関係において、このような故意の成立を否定している判断の枠組み、行為と会計処理の両側面から判断していることはティーチングケースとして参考となる事例ではないだろうか。

以上です。毎回の如く備忘録として作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに

2021年6月2日水曜日

判例裁決紹介(東京地判令和2年3月26日、法人代取の個人的費消と交際費否認)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京地判令和2年3月26日判決で、原告法人の代取が個人的に費消した交際費が否認された事例です。

具体的には、パチンコ等の複数の原告法人の代取が支出したクラブ(銀座らしいです)、ホステスさんとの同伴に関する経費(6000万超、一回あたり20万円を超えるらしい)を法人の損金として計上していた事につき、かかる経費は、法人の業務とは関連がない、個人的な費消であり、法人の損金としては認められないものであり、法人調査の指摘による貸付金への振替も含め、仮想隠蔽に当たるとして重加算税の賦課決定処分が行われたことを不服として提起された事例である。

法令解釈としては特段珍しいものではなく、修正申告における貸付金への修正、振替そのものも重加算税の対象としている点は珍しいものであるようにも考えられるが、本件はクラブホステスとの個人的な費消に関する費用を法人の損金として、特に交際費として適合するものであるのかという点が中心的な課題となっている事例であろう。時代錯誤のような事例でもあるように捉えられるところでもあるが、本件はこのような事実関係が未だに特段珍しいものではない点を楽しむべき、事案として理解されるべきであろう。

このような法人と個人の境界が曖昧なまま運営されているビジネス環境は特段珍しくないという点は、程度の差もあるところであるが、我が国の法人の大多数が中小法人であり、また赤字であることが大半とされていても、実態はこの種の私的費用が介在していることを租税に関わるものとして再認識すべきだろう。この辺がきれいな世界ではあまり想定されないところだろうし、租税に関わって初めて目にするところで、テキストではかかれない租税の世界の面白い、人間臭いところだと言えよう(生まれたときからどっぷり使っている私としては当たり前の感覚で、こんなところが俗世間にまみれている法律屋と呼ばれるだとは思うが)。

より具体的な主張においては、非常に多数のウイスキーが注文されていることが複数人による交際の証であるとか(原告主張)、法人の役員である代取の妻にホステスの写真(そもそもこのような写真まで準備するんだ・・・と思うが)を見せて交際費として確認しないとと課税庁の職員が発言していることが違法な調査に当たるとの主張がなされている点などは、実務での、現場でのやり取りが垣間見えるものであり、正直、読んでいてニヤッとしています(不謹慎ですが)。

何れにせよ朝一番に読むべき案件ではないようには思うが、我が国の租税の世界での事実関係の典型として理解されるべき事案ではないだろうか。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。