2020年2月17日月曜日

判例裁決紹介【平成30年3月8日裁決、青色事業専従者の行為と重加算税)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年3月8日裁決で、青色専従事業者の行為が納税者の行為と同視され、重加算税の対象となりえるのかという点が争点となった事例です。

具体的には、本件は、焼肉店を飲食店として営む請求人(個人事業主)に対して、調査があり、青色事業専従者(妻及び長男)が売上伝票の破棄等を行い所得金額を隠蔽等していたとして重加算税の賦課決定処分を受けたことに対して、当該行為は委ねていた専従者が勝手に行ったものであるとして、指示したものではないとして納税者の行為と同視して重加算税の賦課に対して不服を申し出た事例である。通常、青色事業専従者における実施者が納税主体と同視できるのかという点は、従業員等を対象にして、その範囲が問題となるケースが多いが、本件は、青色事業専従者がその対象となっている。実際には青色事業専従者は納税者の親族であり、圧倒的に、このような納税事実に関する仮想隠蔽行為を行う主体として取り上げられることが実務上多いものと考えられるが、裁決段階の判断としては、特徴的であろう(ほとんどこのような理由で不服が申し立てられることがないとも祖考えられるが)。このような場合において、どのような判断枠組みにおいて、納税者の行為と同視されるのかという点が採用されるのか、興味深い事例であろう。雇用者などとは異なり、配偶者等の親族はその行為を納税者と同列に扱うことにさほど抵抗がないものと通常は想定されるものであるが(あるいはそのように考えることが一般社会の通年によるものであろうが)、重加算税は制裁的な要因が強いものであるものの、刑事罰ではないので、納税者本人以外の行為もその対象となることは解釈上明らかであるが、如何に適用されるのかという点は重要な判断要素であって、本件もかかる点から参考となる事例であるだろう。納税者が知っていたか否かという点は従前同様問題とされていない。


重加算税)
第六十八条 第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。

以上のように本件は重加算税の賦課決定処分における仮想隠蔽行為を納税者本人ではなく、青色事業専従者が行った場合には対象となりうるのかという点が課題となっている。以下のように本件の判断は、趣旨目的から刑事罰との相違を指摘して、趣旨目的からその対象範囲を納税者以外にも拡張的に解釈している。重加算税のの負担が他の附帯税に比して重いことは明らかであり、このような判断を行うことは事実上の制裁として、機能している重加算税の性格からは過度に賦課を課すものであるとして指摘する見解もあり得ようが(納税者本人が知らなかった、任せていたなどのように主張して)納税者の責任を限定されるような判断を導くことも可能であろうが、現行法の解釈としては対象を納税者本人に限定されるものではないことは改めて認識されるべきであろう。ここの事実関係によっては、納税者の責めに帰すものであるのかという点が否定される事例は存在するものと理論的には考えられるが、現実的には制限があるものであるだろう。

「通則法第68条第1項は、過少申告をした納税者が、その国税の課税標
準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又
は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出し
ていたときは、その納税者に対して、重加算税を課する旨規定していると
ころ、この重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて、隠蔽、
仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い負担
を課することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告
納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとする行政上の措置
であ
り、納税義務者本人の刑事責任を追及するものではないことからすれば、
その合理的解釈としては、隠蔽、仮装の行為者が納税義務者本人ではな
く、その代理人、補助者等の立場にある者で、いわば納税義務者本人の身
代わりとして同人の課税標準の発生原因たる事実に関与し、同課税標準の
計算に変動を生じさせた者である場合を含む
ものであり、かつ、納税義務
者が納税申告書を提出するに当たり、その隠蔽、仮装行為を知っていたか
否かに左右されないものと解すべきである」

本件判断も、上記のように対象範囲に関して従前の判断と整合的であるが、重加算税の性格からおもすぎるとの意見もありえよう。実質的には納税者の責任を回避するすべはないものと判断されるものであろうか。本件からは離れるが、実質的に納税者行為として、あるいは責任がないようなケースもあり得ることは否定できない。最終的に本件では、申告納税において、仮想隠蔽による利益を享受していることを判断要素の一つとして、納税者の行為と同視しうるものとの判断を導いているが、如何に親族にとはいえ、このような判断は、些か乱雑だという指摘もあり得よう。


以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2020年2月1日土曜日

判例裁決紹介(平成30年4月4日裁決、国外居住者への不動産の販売と厳選帳徴収義務)

各位

濱田です。
今週は、ちょっと落ち着きつつ、書き物をしています。世間は新型肺炎の話題も
あるようですが自動的に人込みを避けているような日々です。明日は一般向けの
生涯学習講座で相続税に関してしゃべるので、少し緊張しているのですが、一般
の人は相続に関心があるのだろうか・・・。税理士と弁護士の相続における一般
的なかかわり方のようなものを性質の相違から話してみるつもりです。まあ、忍
耐と寛容を持って耐えてもらおう。


さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年4月
4日裁決で、非居住者としての判断が問題になったものです。

具体的には、不動産取引の対価の支払先が非居住者であったとして請求人が土地
取引に関する代金支払いを行った取引において(支払先はオーストラリアに居住、
売買にかかる領収書の一部には国内の住所を記載するなどの行為を行っているが、
基本的に本件において実際に国外に居住していることについて争いはない)、す
なわち非居住者に対して支払った国内不動産の譲渡対価に該当するとして、もっ
て源泉徴収義務があったとして、納税告知処分の対象となったことを不服として
提起された事例である。源泉徴収は、国内における給与所得等の一部所得(配当、
報酬など)を対象とした事例が中心として当該義務が発生しているのか否か(取
引、所得の発生等)が課題となるケースが多いが、本件のように、国際的な取引
においても課税を確実に実行するため、徴収を担保するためにも重要な手法とな
っており、国内取引と国際取引では若干判断の枠組みが異なる可能性もある。本
件は、このような国際取引における取引、支払いにおける源泉徴収義務が対象と
なった事例であり、特に近年、この種の取引(取引の当事者が国外に居住してい
るような取引)が課題となる事例が増加している(判例も)。その原因は国外へ
の移住等国外への居住がまれなものとして評価される時代から、選択肢の一つと
して成立するような社会的な背景が存在しているものと考えられる。従前と比し
て国外居住の判定が行われることが増加していることと認識されるべきであろう。

本件ではオーストラリアがその居住地となっているが、この国は相続税がない国
として移住先として著名になりつつあるものであるが、一見して国内に居住して
いるのかという点から対応することは的確ではなく、また、国外に居住している
者や国外との取引を頻繁に行っているような業種ではない、不動産業、特に不動
産業は基本的に属地的なものであり、多くの場合において国内での取引を前提と
しているように捉えられるが、このような業種であっても国外に居住している取
引の当事者を対象としうるような状況になりつつあるのが現代の社会情勢なので
あろう。本件は国内不動産の取引が課題となっているが、逆に国外に不動産を取
引対象とするような事例も増加しており、不動産取引においても国外との取引、
国際的な取引への配慮が源泉徴収義務に限らず必要となりつつあるのではないだ
ろうか。

本件もこのような文脈におけるものとしてとらえられるべきものであり、今後の
参考として留意されるべきであろう。以前取り上げた判例事例においても近年は
このような契約の相手方が非居住者であることを判定することが困難であった
(一見日本国籍を有している)事例もあり、通常の非居住者としての該当性や対
象となる取引が成立しているのかという判断の枠組みよりも取引の当事者とある
納税者においても合理的に相手が非居住者であることを判断しえたか否かという
事前段階の状況をいかに源泉徴収義務に反映させることができるのか否か、源泉
徴収義務の中核的な性格からの対比、検討が、問題の俎上にあがってきているよ
うにも考えらえる。

(源泉徴収義務)
第二百十二条 非居住者に対し国内において第百六十一条第一項第四号から第十
六号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得(政令で定めるものを除く。)
の支払をする者又は外国法人に対し国内において同項第四号から第十一号まで若
しくは第十三号から第十六号までに掲げる国内源泉所得(第百八十条第一項(恒
久的施設を有する外国法人の受ける国内源泉所得に係る課税の特例)又は第百八
十条の二第一項若しくは第二項(信託財産に係る利子等の課税の特例)の規定に
該当するもの及び政令で定めるものを除く。)の支払をする者は、その支払の際、
これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月
十日までに、これを国に納付しなければならない

(国内源泉所得)
第百六十一条 この編において「国内源泉所得」とは、次に掲げるものをいう。
五 国内にある土地若しくは土地の上に存する権利又は建物及びその附属設備若
しくは構築物の譲渡による対価(政令で定めるものを除く

以上のように、本件は、源泉徴収義務の成立自身を問うものというよりは、主と
して請求人が合理的な配慮の下で国外居住者であることを認識しえたかどうかが
課題となっている。本来ならばこのような回避しえない合理的な予測が困難な状
況を加味してもなお、源泉徴収義務を有しているのかどうかという点は、源泉徴
収義務の法的な性格から判断されるべきものであるが、法は宥恕規定を置いてお
らず、現行法の解釈上かかるような状況を加味すべきかどうかは定かではなく、
立法によるべき救済の議論であるのかもしれない(憲法上の過度な義務であるの
かという点などは憲法論として争いになるのかもしれないが)。このような点か
らは本件は争点がずれているようにも考えられるが、国内における不動産取引に
おいてこのような相手方の判断が困難であることは現代の社会的な環境の変化が
認められよう。

本件の事実関係では、非居住者が領収書などの書類に国内の住所を記載していた
ことと覚書などには、国外の居住を示す国外の住所を記載しているなど、いささ
か予測が困難な状況をいかに評価するのかという点が起点となっている。判断と
しては最終的に覚書のような中心的な書類において国外の住所を記載しているこ
とを重く評価して、一般的に高額な取引となる不動産取引において一般にこのよ
うな相手方の居住の有無も確認されるべきとして、納税者の責任を判断している。
中心となるべき相手側に非居住者としての判断が困難であるのかという点は判断
が行われておらず、法令上はこのような問題に対して合理的な配慮が尽くされて
いるのかどうか、というような点は、争点としては現実的には困難となっている
とも考えられる。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いで
すが参考までに。

2020年1月28日火曜日

判例裁決紹介(平成30年2月26日裁決、特例適用に関する税務相談会での誤りと過少申告加算税の正当な理由)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成30年2月26日裁決で、特例適用に関する過少申告加算税の賦課に関する宥恕として税務署での税務相談での署員の誤りを見逃したことが該当するのかという点が争われた事例です。

具体的には、本件は居住用財産譲渡に関する特別控除(3000万円)の適用に関する誤り(適用できない譲渡に対して適用を申請して確定申告)に端を発する修正申告に対して、過少申告加算税の賦課決定処分を受けた請求人が、そもそも当該申告の誤りは、税務署が開催する申告相談会での提出(確定申告)の際に署員のチェック漏れによるものであり、正当な理由があるとして当該処分の取消しを求めたものである。最終的な判断としては、請求人の主張を認めず、正当な理由の成立を認めていない。宥恕規定としての正当な理由に該当するのかという点が争点となる事例は多数存在するものであるが、納税者の直接的な行為ではなく、申告相談会での税務署職員の行動(本件の場合は、単純な受理業務におけるチェックであるが)が正当な理由に対して如何なる影響を及ぼすものであるのかという点が争われた事例としては特徴的なものであろう。本件はかかる点において、正当な理由の法解釈、事実認定を判断する上で、参考となる事例であるだろう。まれに、課税庁職員のミスが課題とされる事例はあるが(殆どの場合は賠償は認められない。)、申告相談会という納税者向けのサービスが法令上どのように位置づけられるのかという点も課題となっているものと言えよう。

国税通則法
過少申告加算税)
第六十五条 期限内申告書(還付請求申告書を含む。第三項において同じ。)が提出された場合(期限後申告書が提出された場合において、次条第一項ただし書又は第七項の規定の適用があるときを含む。)において、修正申告書の提出又は更正があつたときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に百分の十の割合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、百分の五の割合)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。

4 次の各号に掲げる場合には、第一項又は第二項に規定する納付すべき税額から当該各号に定める税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。
一 第一項又は第二項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となつた事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかつたことについて正当な理由があると認められるものがある場合 その正当な理由があると認められる事実に基づく税額

以上のように本件は、国税通則法に定める過少申告加算税の正当な理由が課題となっているものである。

「通則法第65条第1項に規定する過少申告加算税は、過少申告による納税
義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対して課されるものであ
り、これによって、当初から適正に申告し納税した納税者との間の客観的不
公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を
防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行
政上の措置である。このような過少申告加算税の趣旨に照らせば、通則法第
65条第4項第1号に規定する「正当な理由があると認められる」場合と
は、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記の
ような過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦
課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最
高裁平成18年10月24日第三小法廷判決・民集60巻8号3128頁参
照)。」

本件の判断は、上記のように、最高裁判例を引用して、正当な理由が納税者への帰責性が中心的な概念として判断されているものである。これに対して事実関係の当てはめとして、本件判断は、申告納税制度の基本的な趣旨と、以下のように税務署が行う納税相談を判断してその帰責性を指摘して、もって納税者の主張を退けている。

「税務署における納税相談は、税務署側で具体的な調査を行
うことはなく、納税者の申立ての範囲内で行政サービスとして納税申告をす
る際の参考とするための指導又は助言を行うものにすぎない」

このように、税務相談は、一種のサービスであって、指導助言を行う場であるからという点を強調している。本件は、納税者の特例適用において必要な書類(登記事項証明書)の添付がなかったことも、影響しているのかもしれないが(特例適用の正当性を判断する材料がなかったという点で)、一般的にこのような前提にたつものであれば、税務相談はにおける課税庁の対応は、正当な理由としての適用においては否定的に捉えられることになろう。納税者の帰責性を判断する枠組みが基礎となるものではあるが、このような課税庁職員の行動が事実上対象外となることは、妥当であるのかという点は課題となるだろう。現実的に税務署という専門機関における判断・行為が税務相談という位置づけであっても枠外に置かれうるものとして一般の納税者に対して理解が得られるものであろうか。確かに調査等の対応がなされているものではないが、課税庁職員によるチェックが行われている段階において、納税者が誤りのチェックをしているものという信頼や期待を申告納税制度という前提があるからといって否定的に捉え、一律に税務署での相談会での行為を納税者の帰責性を判断する上で否定的に捉えることが理解されうるものであるのかという点は困難であろう。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2020年1月21日火曜日

判例裁決紹介(平成30年3月1日裁決、葬式費用と検認費用の債務控除該当性)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年3月1日裁決で、国外居住者に対する葬儀への出席費用や債務引継ぎに関する検認関連費用の債務控除該当性が争われた事例です。

具体的には、相続人たる請求人が米国に居住していた被相続人の財産を相続により取得した際に支出した費用として、葬儀のための渡米費用及び、米国における財産の引継ぎに必要な検認費用(プロペイト、100万以上)が債務控除として相続財産として控除することが可能であるのか否かという点が争われた事例である。本件のように、米国における相続の発生は、租税条約はあるものの1980年代で止まっており、幾分と時間が空いている。現在とは相続の状況が整合的であるのかという疑問は発生しよう。ましてや米国以外の状況までも相続の発生において鑑みられるような状況であると(課税庁は情報交換で口座情報は入手しているし)、本件のように検認手続費用などが発生した場合、どのように取り扱いを受けることになるのかという点は疑問に覚えることも増加するだろう。現在は、国外に財産を保有していることは珍しいものではなく(したがって国外財産の評価の不整合が問題とされるような状況も発生するわけだが)、評価やその引継ぎなど多様な問題が通常の国内の相続以上に想定される。このような状況は、国内法を基礎とする相続税法においては、いさささか想定外と捉えられるものであり(近年は民法改正により相続法の改正によって現代的な対応が図られているが、もしかすると本件のような課題も民事法の問題として処理されるべきであるのかもしれないが)、本件のような国外財産の関する費用の取り扱いは、今後の課題として検討されるべきであろう。かかる点において本件は参考となるべき事例であろう。本件はいずれも現行法の債務控除の判断から、その相続財産からの控除を否定している。上記のような国外財産の取り扱いは基本的には立法の範囲に属する問題として理解されよう。しかしながら相続税は他の租税に比して滞納、課税漏れが多いものであり、国外財産の把握(調書もこの流れからであろう)は、執行面の課題として所得税よりも課題が多いものと考えられる。


(債務控除)
第十三条 相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第一条の三第一項第一号又は第二号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 被相続人に係る葬式費用

以上のように、本件は相続税法にいう、債務控除の対象として、以下のように判断され、その該当性を否定されている。現に存するものとして認められないことは明らかということで否定されている。

渡米費用が葬式費用に該当しないことは、被相続人にかかるものとして限定している法令の規定からは明らかであろう。葬式費用そのものは、多様なものを含みうるものであるが、限定的に理解されているものであろう。近年は葬儀も多様化しつつあり(宇宙葬まであるとか)、現状はこの解釈は儀礼的なものを中心に理解されているが、今後はどのようなものとして取り扱うべきであろうか。そもそもなぜ葬式費用が認められるのか、相続税における趣旨からみてどのように位置づけられるのか、より検討されるべきであろう。

「請求人が■■■■■■■■で執り行われた本件被相続人の葬儀へ出席するに際して支出した交通費等の費用であり、また、それ以外の本件費用は、本件被相続人の死亡後に発生した同人の遺産に係る検認手続(プロベイト)、本件遺言に基づく遺贈手続及び本件信託証書の定めに基づく信託財産の分配手続に係る諸費用であり、いずれの費用も、本件被相続人の債務で相続開始の際現に存するものに該当せず、また、本件被相続人に係る葬式費用にも該当しないことは明らかである。」

諸手続費用に関しては、相続のための必要経費であると認められるが、この点は立法の属するものであり、債務控除の対象として、法令が現に存する債務に限定していることは留意されるべきであろう。債務控除が相続時の純資産、特に客観的な形での把握に力点をおいており、このような必要経費の存在は認められていない。法令解釈上、債務の意義に関しては法令として解釈上の課題は少ないものであろうが、現に存するか否かという点が中心的な課題になる。債務控除は必要経費を考慮するものであるのかという点は基本的な趣旨として否定的に理解されるべきであろう。

以上、毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2020年1月7日火曜日

判例裁決紹介(平成30年4月23日裁決、趣味と事業の区分)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成30年4月23日裁決で、趣味的な行為による所得が事業として認められるのか否かが課題となった事例です。

具体的には本件は、請求人(代表取締役として給与所得あり)が、個人として営んだ行為(レコード、オートバイ、ラジコン等のレンタルを行った結果、生じた損失を事業所得における損失として、給与所得との損益通算を企図した申告を行ったところ、当該行為は事業としては認められず、趣味的な行為に伴う損失であって、雑損失として計算されるべきとして損益通算を否定した課税庁による課税処分を不服として提起された事例である。本件では請求人は多様な行為を行っており、一部車両のレンタルに関しては、第三者である運輸局の免許も保持している(車両賃貸に関する)ような状況であり、同好の士にとっては貴重なレコード、オートバイ、ラジコン等のレンタルを行っているものである。このような状況を踏まえ、本件では、詳細な事実認定を行い、事業としての該当性を否定している事例である。本件は事業として認められるものであるのか、規模や社会的な地位を認められるものであるのかという点を中心に、事業と雑所得の区分を如何にして区分されるべきであるのかという点が争われた、典型的な事例であり、その基準を巡ってはよく議論されているものである。本件もその累計に属するものであるとも言えようが、本件のように、趣味的な行為が起点となって発生した所得を如何に取り扱うのかという点は、珍しい。本件ではあまり問題となっていないが、近年は、ICTの発達によって趣味的な行為であっても一定の所得を稼ぎ出す、市場性、利益獲得の意図が成立しうるような市場の発生が想定される状況になりつつあり、また副業の活発化など、趣味的な行為による所得の発生に関して、事業として如何に評価されうるものであるのか、再検討すべき状況にあるのではないかとの問題も考えられる状況とも考えられ、本件は、特段法令解釈としては、特徴的なものではないが、現行法の枠組みに置いてどのような点を重視し、事業と雑の区分を行う基準となっているのかという点を考える上では、ティーチングケース、環境変化と事業の認定における参考事例として有益なものであろう。


(事業所得)
第二十七条 事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
2 事業所得の金額は、その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。

(事業の範囲)
第六十三条 第二十七条第一項(事業所得)に規定する政令で定める事業は、次に掲げる事業(不動産の貸付業又は船舶若しくは航空機の貸付業に該当するものを除く。)とする。
一 農業
二 林業及び狩猟業
三 漁業及び水産養殖業
四 鉱業(土石採取業を含む。)
五 建設業
六 製造業
七 卸売業及び小売業(飲食店業及び料理店業を含む。)
八 金融業及び保険業
九 不動産業
十 運輸通信業(倉庫業を含む。)
十一 医療保健業、著述業その他のサービス業
十二 前各号に掲げるもののほか、対価を得て継続的に行なう事業

「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反覆継続して業務を遂行する
意思と社会的地位とが客観的に認められる業務であると解される。」

以上のように本件は、所得税、施行令における事業とはいかなるものであるのかという点を基礎としている。従来はこの事業と雑の区分に関しては、社会的な地位が認められるのかという点が中心的な争点として争われるケースが中心であった。本件も上記のように法令解釈を基礎として、事業の環境、社会的な認知の状況を基礎として、事実認定をベースに、事業としての該当性を否定している。本件では特に請求人の行為が趣味的な行為の延長であって事業としての外形的な状況に至っていないという点を基礎として判断を行っている。上記のように近年はネット環境の変化もあり、趣味的な要因を持つものであっても市場性を確保できるような状況が顕現しつつある。このように考えれば、事業と趣味を明確に二律背反のようなものとして捉えることは現状の前提として妥当なものと言えるだろうか。私見ではこのような趣味的な要因であっても事業としての営利性や遂行の意図が本来ならば問題とされるものであり、趣味的行為として認められるものであっても事業としての該当性を直接的に否定されるべきものではないという時代的な背景にあるように捉えている。もちろん、個人が行う行為は多様であり、趣味的な行為も非常に多岐にわたるものであろう。ただし市場へのアクセスは従前とは明らかに変化しており、収益化、営利性を備えるような場合は想定され得よう。結果としての損失の発生は、趣味的な行為故に事業としての該当性を否定される要因ともなりえる状況もあり得ようが、損益通算の意図としての存在、租税回避的な行為としての否定を事業としての認定に依拠するのではなく、どのように行うべきであるのかも課題とはなろう。条文はあくまでも対価性と継続性を基礎として判断することを求めており、文理解釈、予測可能性の観点からは趣味的な要因の排除による不安定な要因はできる限り排除されるべきではないだろうか。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

判例裁決紹介(平成30年3月19日裁決、所得の事後的転換)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年3月19日裁決で、雑所得として申告した所得が事後的に転換し、元本の返済であったとして更正の請求を行ったところその立証不足をもとに、主張が退けられた事例です。

具体的には、本件は、請求人が4億の投資を行い、毎月1000万円の配当を受ける契約にて、振り込みを行ったところ、約5千万円に関しては配当が実施されたものの、それ以後は配当が実施されなかった場合において、かかる配当としての5千万円を雑所得として申告していたところ、かかる所得は元本の返済であるとして、所得そのものの発生を否定し更正の請求を行ったもので、その請求を否定した課税庁の処分につき不服を申し立てているものである。当該投資案件は詐欺的な案件であろうが、詐欺としての刑事処分が行われることは困難、立件は困難であるとの、担当弁護士からの報告書が提出されているものであり雑損控除の適用が困難な状況にあり、本件のような争い方がなされているものと考えられる。判断としては、上記のような担当弁護士からの報告書があることをもってその詐欺的な行為に近いものとして、所得の発生を否定するものであり、申告時点において、その所得が不存在、あるいは更正の請求の条件たる納税額等が過大であったとの主張が十分になされていないものとして、請求人の判断を否定している事例である。

そもそも本件は事後的には、4億の投資に対して毎月1000万円の配当という一種の詐欺的な契約、投資詐欺に類似する行為によるものであると捉えられる。このような特殊な事案、事実関係が起点となっているものと考えられるが、これらの状況から、所得が事後的に転換され、あるいは所得がその存在を抹消されるような状況(配当として入ってきた金額が所得として捉えられるのか、あるいは元本の一部弁済として捉えられるのか)が発生したことが本件の問題のスタートとなっている。いささか特殊な事実関係を基礎とするものであり、暦年ごとの課税年度が終了するたびに確定する所得税の申告において、確定申告後において、投資の結果や、時系列により、かかる所得の評価が変化したものと評価されよう。このような事後的な状況の反映は、一定の年度を区切って課税所得を計算する所得税法においては、発生しうるものであり(おそらくスポットでの課税取引を中心とする相続税や譲渡所得税においてより顕著でもあるかもしれないが)、このような対応において、租税法規がどのような救済を図るべきであるのかという点を検討する上で、あるいは契約、事実の評価を行う上では本件は有益な参考事例となるものと考えられる。

以上、本件では、まずは納税者の主張立証責任の充足が課題となって判断の基礎が形成されている。更正の請求の枠組みにある以上(なぜ本件のようなケースで更正の請求を採用したのかは定かではない、事後的な性質変換に関する救済措置としては更正の請求は、法令上、申告の誤りや過大を争うものであって相性が悪いと認識されるのであるが)、納税者に主張の立証責任があるとの判断であるのかもしれないが、近年は訴訟段階ではなく、裁決段階でも本件のように主張の立証責任が求められるケースが傾向として見られるようになっており(是非はともかく)、かかる点は本件に限らず、租税の実務家としても認識されていくべきであろう。かかる点からは単に租税の計算の基礎としての理解から租税法規の理解の方向性が重要となるように思われる。

また本件では、当初の段階では、約上の則り所得として認識をしていたことが問題となる(事後的には詐欺的なものであり、これに引っかかったことを問題視するのかもしれないが)。所得計算の誤り、あるいは過大であったことを請求の基礎とする枠組みが揺るがない以上、当初段階での所得としての認識を崩すことがない限り、更正の請求の対象としては、困難となるだろう。本件のように事後的な転換、変化へは相性が悪いものと考えざるを得ない。単に納税額の返還を求める手続きではないことは留意されるべきであろう。
このように本件はいわば申告後、事後的な変化、状況の変動に対して(なお、本件以外の翌年分の配当に関しては所得としての処理を行わず、修正申告を行っている)、所得の性質が変化したことを、契約による投資が損失に切り替わったことから裏付けられるのかという点が問題の基礎となっており、事実上民事関係の評価の問題とも捉えられるが、かかるような状況において所得の計算上救済を求めるものである。上記のように本件の事実関係からは、事後的な変化を反映させることは、制度の枠組みからはは困難と解さざるを得ない。ゆえなくして支払った租税負担であるとの認識から不当利得返還請求による救済の方法もあるのかもしれないが(裁決である以上、課税処分を争うものであって対象としては困難だが)、そもそも不当利得の成立の立証はハードルが高く同じく立証責任が納税者に求められることになろう。本件のような事後的な状況変化を如何にして救済すべきかという点は課題であるのかもしれないが、雑損控除の枠組みまで至らない段階のもの、いうなれば扱いが明確ではないグレーなもの(法的には不安定な、不明確な存在)を如何にして租税法規において対応を考えるのかという点は、立法に属する課題であるが、現実的には様々な事後的な状況が考えられ、具体的な対象を検討することは困難だろう。

以上、毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2019年12月21日土曜日

判例裁決紹介(平成30年2月6日裁決、関与専門家へのUSBメモリの引渡しと相続税申告における財産の漏れ、重加算税の賦課)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年2月6日裁決で、相続税の申告漏れに関する重加算税の成立が認められなかった事例です。

具体的には、請求人が調査により指摘された相続税申告における申告漏れとなった現金(相続発生直前に相続人口座から引き出された現金)やその他財産(USBメモリに財産状況の示した書類を記載し、相続手続きの弁護士に交付しているのかという点も争点になっている)に関して、申告漏れがあったとして重加算税が賦課決定処分された状況に関して、その処分が取り消された珍しい事例である。すなわち、重加算税の賦課要件たる仮想隠蔽の成立があるのか否かが課題となっている事例である。重加算税の成立が裁決段階で認められる事例は少なく、本件は相続税の基礎たる財産の把握、計上漏れに対して起きた事例であり、その成立の回避は、参考となる事例であろう。

より具体的には、本件は当該現金が引き出されたものであることが起点となっているが、相続の実務に詳しいものであれば、周知のように死亡により口座が成約を受けると相続確定までは引き出し等が困難になる状況であり、かかる際に、入院費や葬儀費用として一定額を引き出すことは特に珍しい事例ではない。このような事実関係において、かかる現金が申告漏れをきたした状況が仮想隠蔽の状況に該当するのかという点が争われたのが本件の中心的な争点である。

仮想隠蔽の成立においては、その行為にあたって、当初から過少に申告することを企図していたことが、あるの否かという点が、意図的であるのか否かという点が認められることが必要とされるものであるが、本件では、この点において、関与している専門家に対して、財産資料が入ったUSBメモリを渡しているのかという点もあり、現金引き出しの事実は用意に把握できることから、その意図の存在を認めなかったものである。当初はこの専門家が当該資料の受け取りを否認していたことが仮想隠蔽の起点となったものとも考えられるが、結局の所、当該USBに入っていたものと同様のファイルが弁護士事務所のサーバーに保管されていたことが判明し、当初意図の認定が回避されたものである。

なぜ、関与専門家がこのような対応を行ったのかという点は定かではないが(おそらくは、この財産漏れは専門家が十分に財産状況の調査を行いきれなかったことが原因のように思われる)、近年はこのような電子ファイルのやり取り重要な要因となってきているのであろう。調査の現場ではどのような形になっているのか(この点は実務家にも聞いてみたいところ)。従前、帳簿資料や財産資料が、調査における中心資料として考えられてきていたが、近年は裁判事例をみても、このような電子的なファイルの調査、メールのやりとり、契約書の内容確認などの事例が増加しているように認識されるところ(国際租税では随分以前から変わっていたものとも思われるが)、このような対象も含めた資料対応に対する調査制度、留置制度の検討が必要ともいえよう。メールやラインなどのやり取りが記録としてどの程度の価値を持つのか(一般の裁判でもこの評価が課題となることは多いようであるが)という点からも、租税法規における位置づけを再検討すべき時期に来ているのかもしれない。特に本件のような意図に代表される内心に関わる判断を行う上では、時系列での記録や日常的な判断の情報は重要な意義を持つものであり、租税回避の事例などにおいてもこの日常的なやり取りの記録を専門家としては留意しておくべきであろう。


重加算税)
第六十八条 第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。


以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。