2018年6月30日土曜日

判例裁決紹介(平成29年6月15日裁決、信用出資による消費税納税義務の特例の判断)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成29年6月15日裁決で、信用出資により設立された法人の消費税の納税義務における納税義務の特例の該当性が問題となった事例です。

具体的には、行政書士法人を設立した請求人において、当該法人の新設にあたり、通常の財産出資ではなく、信用の出資によって設立した場合において、当該評価が1000万円を超過していたと評価されている状況において、下記に定める消費税法上の新設法人に対する納税義務の免除の特例の適用対象となりうるものであるのか否かという点が争点とされたものである。 より具体的には資本金の額又は出資の金額 と消費税法に定められているものであるが、かかる信用出資が上記に該当するものであるのか、すなわち、かかる法規文言の解釈が問題になっているものと考えられる。上記資本金・出資等に関しては、法規においてその具体的な定義は定められておらず、かかる意義を如何に解すべきであるのかという点が中心的な争点になっているものと考えられる。事実関係は至ってシンプルであり、その出資に関する評価額等につき、争いはないものであって、上記解釈が問題となっているものと捉えられる。法人税法等では資本等取引等の判定において、かかる意義がいかなるものと考えられるのかという点が課題となることが多いが、消費税法においてはかかる意義をいかに捉えるべきであるのかという点は、上記のように法規定の定めがなく、その意義を取り扱っている点で興味深い事例であろう。現行実務でも新設法人においては、その具体的な出資等の額を定めるのかという点は、消費税法の納税義務にかかる問題であり、その金額は重要な考慮事項であろう(おそらく)し、当然のように検討されるものと考えられるが、本件のように、行政書士法人における信用出資と言う特殊なケースであるものの(かかる点においては実務上の直接的な適用性は少ないと判断されるものであるが)、新設段階における消費税法上の留意点を表しているという点において、参考となるべき事案であるように考えられる。


第九条 事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等につき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
第一二条の二 その事業年度の基準期間がない法人(社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二十二条(定義)に規定する社会福祉法人その他の専ら別表第一に掲げる資産の譲渡等を行うことを目的として設立された法人で政令で定めるものを除く。)のうち、当該事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が千万円以上である法人(以下この項及び次項において「新設法人」という。)については、当該新設法人の基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間(第九条第四項の規定による届出書の提出により、又は第九条の二第一項、第十一条第三項若しくは第四項若しくは前条第一項若しくは第二項の規定により消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間を除く。)における課税資産の譲渡等については、第九条第一項本文の規定は、適用しない。
以上のように、本件の中心的な争点は一般的な財産出資ではなく、金銭的な評価が劣位にある信用出資を対象として(労務出資とも異なり、典型的な人的会社であると言えよう)、かかるような出資においてもなお、上記、消費税法上の新設法人に対する納税義務の免除特例の対象となりうるものであるのか否かという点が課題となっているものである。この 資本金の額又は出資の金額が千万円以上 であるという要件において、その意義がいかなるものであるのかという点が課題となっているものであり、判断としては、消費税法基本通達にある以下のように、非常に幅広い解釈を採用して、請求人の主張を退けているものである。


1-5-16 法第12条の2第1項《新設法人の納税義務の免除の特例》に規定する「出資の金額」には、営利法人である合名会社、合資会社又は合同会社に係る出資の金額に限らず、農業協同組合及び漁業協同組合等の協同組合に係る出資の金額、特別の法律により設立された法人で出資を受け入れることとしている当該法人に係る出資の金額、地方公営企業法第18条《出資》に規定する地方公共団体が経営する企業に係る出資の金額及びその他の法人で出資を受け入れることとしている場合の当該法人に係る出資の金額が該当するのであるから留意する。(平10課消2-9により追加、平18課消1-16、平21課消1-10、平22課消1-9、平25課消1-34により改正)

請求人は、会社法施行規則をもって、本件の資本金等の意義を「社員が履行した出資により持分会社に対し払込み又は給付がされた財産の価額」としており、かかる解釈を借用した概念であるとして、かかる点から信用出資における新設法人としての免除特例の例外には該当しないものとして主張しているものである。租税法規の基本的な要請として、法的な安定性や予測可能性を重視するならば、かかるような借用概念として理解することは一定の合理性を有しているものと考えられる。しかしながら、判断では、上記通達の処理を肯定しており(裁決である以上当然でもあるが)、いわば、資本金等の意義として、財産出資等の範囲を拡張的に解釈して、非常に幅広い判断を前提としているものと捉えられ、いわば、資本金等の意義を固有概念として解しているように考えられる。租税法規の基本的な解釈指針としては、原則的に明示的な意義をもって法文において明示されていない以上、統一的に借用概念として捉えることが妥当であるものと考えられる。本件はこの例外をしましたものとも評価されうるものである。しかるにいかなる所以をもって、その原則的な判断からの逸脱を図ることになったものであるのかということが課題であり、上記通達の合理性を検討すべき点でもあろう。

「消費税は、消費一般に広く負担を求めるものであり、その趣旨からすると、多くの事業者が納税義務者となるが、零細事業者の事務処理能力(事務負担)、徴税コスト、転嫁の実現可能性等の面を考慮し、全ての事業者を納税義務者とするのは適当ではないとして、一定の事業規模以下の小規模事業者については、納税義務を免除することとされている。」

上記のように判断では、消費税法の納税義務の判定における小規模事業者への配慮を定めているものとして理解されている。私見としては、資本金等の意義につき、借用概念として捉えることも、予見可能性や安定性の観点からも一定の合理性を有しているものと評価されるべきものと考えられるが、幅広い納税義務を基礎とする消費税法における例外的な対象を規制する、趣旨であり、従前の新設法人における一律の納税義務の免除に対する判断を是正すべきものとした立法措置である経緯を鑑みるに、すなわち、従前の新設法人における基準期間の有無を問題とする法構造から転換を図った上で、納税義務の免除(そもそも、消費税法の導入時とは異なり、ソフトウェアの発展や消費税法への理解も進んできたことから【もちろん消費税法に対する理解が未だ低いとの判断もあり得ようが】、この免除自身が必要であるのかという点はより本格的に検討されるべきものであるように考えられるのではないだろうか。事務負担の増加と言う側面は存在するものの、人的な役務提供が個人事業主によって提供されるような働き方の改革が進んでいるような状況やインボイスの普及も捉えるならば、小規模事業者への免除特例の本格的な役割は役目を終えたのではないだろうか、かかる存在がかえって、租税回避を生み出し、本件のような免除特例の対象となるような例外規定の制定が必要とされるようになっていることはシンプルな租税制度である消費税法の行動にとって合理的な存在であろうか)の基本的な趣旨に立ち返った判断、すなわち、事務負担への配慮(ただし、この事務負担の配慮という点も必ずしもその具体的な意義が定かであるとは言えず、具体的にいかなる負担への配慮であるのかという点が定かとはならない。上記のように消費税法を取り巻く環境や、制度が変更となっている状況下において、対象となるような具体的な負担を以下に捉えるべきであるのか、もって従前と同様に納税義務の免除を持って対応すべきものであるのかという点は検討の余地があるだろう)を合理的に判断することを目的とした制度であり、かかる点から、目的の異なる計算規則による資本金等の意義を借用すべきものであるとは考えられず、例外的な、消費税法における固有概念として捉えるべきものと言える。借用概念とすると出資の形態により規模の判断が異なることになり、同種の法人形態であっても消費税法における納税義務が異なる結果となり、かえって課税負担の公平性・中立性に反するものとなりかねず、根拠法令となる行政書士法においても出資による差異が具体的に存在していない以上、広範囲に捉える判断は妥当であろう。

ただし金額と文言において表現されている以上、客観的な金額の確定が可能な財産出資を原則とする考え方も一定の合理性がある。より発展的には、そもそも基準期間に基づく納税義務の判定そのものが妥当であるのかという点も課題となろう。また出資金額においても、近年の金融取引の多様的な状況を鑑みれば、優先株、劣後債などの資本との類似的な機能をもたせた形式の組成が可能である。かかるような点からは資本金等に基づく判断にも潜脱の可能性があり、本件のような解釈論において対応できるのかという点も今後は課題となるのではないだろうか。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

判例裁決紹介(東京地判平成28年12月20日、地方税における二次納税義務の適用と処分理由の提示)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京地判平成28年12月20日で、地方税における二次納税義務の適用にあたって処分理由開示の不備が争点となった事例です。

具体的には、地方自治体が、滞納法人の取締役である原告に対して二次納税義務の履行を求めたものであり、その手続段階において、通知における理由提示の不備が問題となった事例である。より具体的には通知に記載の二次納税義務の根拠が地方税法の規定を根拠としているものと記載されており、しかるに、行政手続法14条における不利益処分に対する理由提示が行われるべきであり、この提示を欠いた二次納税義務の履行の求めは無効であるのではないかという点を争点とした事例である。基本的に地方税に関する事案であり、また、二次納税義務の履行に関する問題であって、民間の実務家としては、参考となるような状況は少ないかもしれないが、近年改正された課税処分に対する、理由提示に関わる、特に地方税法に関わる事例であり、かかる点では貴重な事例であるように捉えられる。地方税法の位置づけや地方税の課税根拠等の基本的な理解に基づく判断が行われている事案であり、地方税法における事例として参考となるものと考えられる。

地方税法18条の4(行政手続法の適用除外)
  (1) 1項
      行政手続法3条又は4条1項に定めるもののほか、地方税に関する法令の規
     定による処分その他公権力の行使に当たる行為については、同法第2章(8条
     を除く。)及び第3章(14条を除く。)の規定は、適用しない。

以上のように、本件の主たる争点は、地方税法の徴収手続における理由提示上の不備が発生しているのか否かという点であり、地方税法における不利益処分に対する行政手続法の理由提示を如何に捉えるのかという点が起点となっているように考えられる。

上記のように、地方税法における理由附記に関しては、行政手続法の適用除外として長く対応されてきたものであるが、平成23年の国税通則法の改正により、地方税法の適用除外規定は、削除され、行政手続法の14条における不利益処分に関する理由提示は法律上求められているものと捉えられる。以下の税制改正のすべてにおいても、国税通則法における改正と歩調を合わせる形で、改正が行われていることが確認される。

「不利益処分等に係る理由附記
 総務大臣が地方税に関する法律に基づき行う不
利益処分又は申請により求められた許認可等を拒
否する処分(以下「不利益処分等」といいます。)
について、行政手続法の規定に基づき理由を附記
することとされました(地法18の4 ①)。」

しかしながら、この改正における理由附記の対象は法律に基づく処分が対象となっているものであり、自治体がおこなう地方税の実際の不利益処分に関しては、適用対象としていない。地方税法の改正が行われているがあくまでも地方税関する処分は、地方自治の本旨に則り自治体が条例に基づくものとして考えられ、各自治体の条例により定めに委ねられている。すなわち各自治体の判断により、理由吹きを行うべきであるのかという点が決定されていることになろう。本件で問題となった東京都の条例においても、地方税の課税根拠を、条例に求めており、更にその手続に関しては、理由提示の規定の適用対象とはしていない。

 1 都税条例1条(課税の根拠)
   東京都都税(以下「都税」という。)及びその賦課徴収については、法令その他に
  別に定があるものの外、この条例の定めるところによる。
 2 都税条例12条の2(東京都行政手続条例の適用除外)
  (1) 1項
      東京都行政手続条例3条又は4条に定めるもののほか、この条例に基づく処
     分その他公権力の行使に当たる行為については、同条例第2章及び第3章の規
     定は、適用しない。
  (2) 2項 〔略〕
 3 都税条例施行規則40条の3(第二次納税義務者に対する納付の通知等)
   法11条1項の規定による第二次納税義務者に対する納付または納入の告知は、納
  付(納入)通知書により、同法同条2項の規定による第二次納税義務者に対する納付
  または納入の督促は、納付(納入)催告書による。

ここに本件における二次納税義務の通知書において記載された、地方税法における規定を根拠としたという点が課題となる余地が発生することになる。すなわち、二次納税義務の根拠を地方税法あるいは条例に基づくか否かにより、理由提示の義務が課せられるものであるのか否かという点が左右されることになる。

かかる点につき、判示では以下のように、

「地方税法は、地方団体が同法の定めるところによって、地方税を賦課徴収することができる旨を定める(同法2条)とともに、地方団体が「その地方税の税目、課税客体、課税標準、税率その他賦課徴収について定をするには、当該地方団体の条例によらなければならない」(同法3条1項)と定めており、地方公共団体が自主財政権に基づく自治課税権を有していると解されること(憲法94条)に鑑みても、地方税の賦課徴収の直接の根拠は、地方団体の条例にあると解すべきであり、地方税法は地方団体がその課税権を行使し得る範囲を定める標準法ないし枠法であると解される。なお、地方税法2条は、地方団体が地方税を賦課徴収する権能を付与したものであるが、このことをもって地方税の賦課徴収の根拠が地方税法であるということはできず都税条例1条は、都税及びその賦課徴収については、飽くまでも同条を介することにより、都税条例に定めるもののほか、地方税法の定めるところによるものとするという趣旨に解され、原告が主張するように、都税条例に要件や効果の定めがない事項については、都税条例1条を介することなく地方税法の規定が直接に適用されるという趣 旨に解することはできない。」

地方自治体に憲法上認められた課税権の存在を基礎として、あくまでも、条例に基づくものとして課税の根拠を理解している。基本的にこの原則的な考え方は従前と整合的であり、課税の根拠が地方税法ではなく、各自治体の条例にあることは、妨げられないものと考えられる。しかるに、地方自治体が行う課税処分においては、条例が基礎となっているものであり、もって行政手続法の適用が直接的に行われる、不利益処分の理由提示の規定は適用されないものと考えるべきであろう。このように地方税法はあくまでも課税の根拠を定めたものではなく、枠法としての位置づけであると理解するならば、各条例において、地方税法の規定を一般的に通則的に取り込む規定を置くことが妥当かという点は懸念される。枠法として課税の平準化を企図したものであり、住民の意思に基づく条例をその基礎として捉えることになるならば、地方税法の規定を一般的、通則的に取り込むことは、地方自治の原則に反するのではないだろうか。あくまでも地方税法の規定が個々に吟味され、取り込むべきであるのかが決定されるべきであり(もちろん立法技術の制約はあろうが)、枠法というだけでは具体的に取り込むべき内容を必ずしも明らかとしたものとは言えず、条例を根拠としながらも明示的にその規定内容を理解することは困難であろう。

また、そもそも、地方自治体の行う課税処分において、理由提示を定めていないことは、憲法が保証する適正手続保障の原則に反するのではないかという点も課題となる。国税に関する処分に関しては、基本的に理由提示、附記を求めており、その対比において自治体の課税処分において係る保障が図られていないことは、説得力に欠けるという指摘もあり得よう。判示においてもはかかる点につき、

「行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、その全てが当然に憲法31条による保障の枠外にあると判断することは相当ではないが、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解すべきである〔最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁参照)。都税条例に基づく処分その他公権力の行使に当たる行為は、極めて大量かつ回帰的に行われるものであり、理由提示に係る事務負担は少なくなく、これにより制限を受ける納税者の財産上の利益は、事後的な回復が可能であることにも照らすと、都税条例に基づく処分その他公権力の行使に当たる行為について理由を提示することが憲法上要請されているということはできず、都税条例12条の2第1項が憲法31条に反するということはできない。」

以上のように述べ、課税処分の基本的性格から必ずしも求められているものと理解することは困難であるとしてその適用除外を肯定しているが、国税とのバランスの観点は、取り入れられていない。自治の尊重を基礎としてかかる判断は各自治体に委ねられている現状であるが、これは隠れ蓑であり、権利保護の観点からは、課題であるとの指摘もあり得ようし、一般の納税者において国税とのバランスが取られていない現状は違和感が指摘されても当然であろう。しかしながら現実的に地方税に関する理由提示が困難であるのか否かという点は考慮されるべきであり、拙稿において指摘したように、手続整備がかえって、大量の処分を行うことが前提となっている課税においてはその負荷を嫌い、実務的にかかる提示が行われないように調査が長期化するような状況も想定されるところでもあり、また、各自治体の実務的な処理を行うマンパワーなどの状況も相違があるものと考えられ、一律でも対応も困難であろうし、また、やはり自治体の判断は尊重されるべきものであろう市慎重な検討が行われるべきものと考える。立法論であろうが、このように地方税法に関する理由提示に関しては、このような課題を抱えており、本件はかかる課題を提示する好例として考えられよう。

地方税法11条の8(無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務)
   滞納者の地方団体の徴収金につき滞納処分をしてもなおその徴収すべき額に不足す
  ると認められる場合において、その不足すると認められることが、当該地方団体の徴
  収金の法定納期限の1年前の日以後に滞納者がその財産につき行った、政令で定める
  無償又は著しく低い額の対価による譲渡(担保の目的でする譲渡を除く。)、債務の
  免除その他第三者に利益を与える処分に基因すると認められるときは、これらの処分
  により権利を取得し、又は義務を免かれた者は、これらの処分により受けた利益が現
  に存する限度(これらの者がその処分の時にその滞納者の親族その他の特殊関係者で
  あるときは、これらの処分により受けた利益の限度)において、当該滞納に係る地方
  団体の徴収金の第二次納税義務を負う。

また本件で課題となった二次納税義務に関しては、基本的に課税要件を充足した納税義務者とは別途に、当該主たる納税義務者との特別な関係性を基礎として、二次的な納税義務を課す特別な規定であり、公平負担や徴収の確保をその基礎とするものであって、その性格に関しては解釈が争われてきた。かかる点につき処分行政庁は、本件の主張において以下のように主張し、理由提示との関係において、根拠を示せば足りるものとして、いわば理由提示の範囲を限定的に捉えている。

「第二次納税義務に係る納付告知等の処分は、主たる納税義務が具体的に確定しており、かつ、当該処分の名宛人と主たる納税者との間に特別な関係があることを前提としてされるものである以上、主たる納税義務の成立につき課税庁の恣意が介在する余地が存在しないばかりか、当該処分に係る書面において適用される条文の記載さえあれば、当該処分の名宛人が第二次納税義務者として主たる納税義務の履行責任を負う原因となった具体的な事実関係たる課税理由についても、当該処分の名宛人自ら理解できるはずであり、同人による不服の申立てにつき支障が生じることもなく、行政手続法14条1項の趣旨を損なうものではない。」

かかる点に関しては最終的には判示においては検討が行われていないが、このような理由附記との関係において、行政手続法の趣旨を損なうものではないとの考えから、開示対象を限定的に理解することは妥当なのであろうか。この二次納税義務は本来の納税義務者とは異なる者に対して、納税義務を課す規定であり、財産権の侵害を伴う規定であると考えるならば、また、主たる納税義務者の、課税処分につき、二次納税義務者が争うことが可能であるのかという点が議論になるように、事後的な救済を図ることが確保されることがこの理由提示の基本的な趣旨であると捉えるならば、単に根拠を示せば足りるものと捉えて、限定的に考えることは疑問であるとも考えられる。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが、参考までに。

2018年6月19日火曜日

判例裁決紹介(平成29年4月4日裁決、不法行為に伴う損害賠償・確定判決と更正の請求の対象)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成29年4月4日裁決で、不法行為に伴う損害賠償請求を命じた確定判決が更正の請求の特例対象理由として該当するのか否かという点が争われたものです。

具体的には、コンサルティング業を営む請求人が業務委託先として受領した金員が、不法行為に伴う損害賠償請求の対象となったことにより生じた確定判決によって、当該業務委託収入を益金とした確定申告につき、下記、国税通則法23条2項に定める更正の請求の原因として該当するのか否かという点が争われた事例である。
より具体的には、計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決として、当該損害賠償請求が該当するのか否かという点が課題となっており、かかる部分の解釈が起点となっているものと考えられる。最終的には、あくまでも本件判決は、業務委託費の金額の修正を伴うものではなく(返還義務が発生しておらず)、不法行為に基づく、損害賠償義務の発生がもたらされたものであり、公正処理基準により、前期の損益修正を行うべきものでなく、もって過大であるとは判断されていないものである。手続法に関する部分であり、また、かつてのように更正の請求の期間制限が一年と短いものではなく、下記のように5年に延長された事により実質的な問題としては影響力が小さいものであるのではないかとも考えられるが、権利救済における対象範囲を律するものであり、適正な手続をその具体的な内容とすると考えられる租税法律主義の要請として、より具体的に考えら得るべきものであるように捉えられる。基本的に事実関係が問題となっているとも評価されるべきものであるが、納税者の一般的な意識としては、損害賠償として支払うことで受領した金員が過大であることを証左するものとして捉えて、過年度の租税負担を修正すべきものとして考えることは、想定されうるところであり、かかる意識とのズレが生じうることは、専門家として留意されるべきものといえよう。また、本件はかかる点以外にも、損害賠償請求のタイミングも課題とされており、かかる点も(あるいはこの点のほうが)実務家としては参考となるべきものと考えられる。

(更正の請求)
第二十三条 納税申告書を提出した者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該申告書に係る国税の法定申告期限から五年(第二号に掲げる場合のうち法人税に係る場合については、十年)以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額等に関し次条又は第二十六条(再更正)の規定による更正(以下この条において「更正」という。)があつた場合には、当該更正後の課税標準等又は税額等)につき更正をすべき旨の請求をすることができる。
一 当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたこと又は当該計算に誤りがあつたことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過大であるとき。

2 納税申告書を提出した者又は第二十五条(決定)の規定による決定(以下この項において「決定」という。)を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する場合(納税申告書を提出した者については、当該各号に定める期間の満了する日が前項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限る。)には、同項の規定にかかわらず、当該各号に定める期間において、その該当することを理由として同項の規定による更正の請求(以下「更正の請求」という。)をすることができる。
一 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき その確定した日の翌日から起算して二月以内

以上のように本件の中心的な争点は請求人が訴訟により得た確定判決によって生じた負担である、損害賠償請求に対する負担が、過年度の申告事実を修正することを求めた更正の請求の対象として該当するものであるのか否かという点が課題となっている。その適用にあたっては、

「通則法第23条第2項による更正の請求が認められるためには、同項に規定するいわゆる後発的事由の発生及び同項所定の期限内の更正の請求という手続的要件を満たすだけでは足りず、同条第1項各号に掲げる税額が過大であるなどの各租税実体法に定める実体的要件が満たされていることが必要である。」

上記のように本件では判断を行い、更正の請求においては、その適用要件として期限内等の手続要件のみならず、事実関係の過大であることなどが問題とされている。この点は、従前と整合的であるものと考えられるが、かかる点が如何なる点に依拠しているものであるのか、より具体的には、更正の請求の排他性等を考慮しており、その制限を基礎づけているのかという点は問題となろう。この点は本件においては特段議論されておらず、基本的な性格の検討が必要とも考えられる(立法的な救済の議論であるとも言えようが)。

この実体的な適用の要件充足に関しては、以下のように判断を行っている。

「法人税法上、法人の当該事業年度において生じた損失の額は当該事業年度の損金の額とすべきものであり、当該事業年度前の各事業年度に遡及して所得の金額を修正すべきものではないから、請求人は、本件確定判決によって支払うこととなった不法行為による損害賠償請求権基づく損害賠償金について、本件事業年度に遡及して、本件業務委託費に係る所得の金額を修正することはできないというべきである。そうすると、本件確定判決により、請求人の本件事業年度における法人税について、所得金額又は納付すべき税額が過大となることはなく、通則法第23条第1項各号に掲げる課税標準等又は税額等が過大であるなどの実体的要件を欠くことになる。 」

以上のように、本件で対象とされた確定判決(そもそも確定しているかどうかも争点になりうるが、また確定が何を意味しており、それゆえに、何を果たそうとしているのかという点も課題となろう)では、不法行為に基づく、判決であり、損害賠償義務が認められている。原因となった支払いの返還(原状回復)や契約の無効等が発生しているものではなく、不当利得に基づく返還等が問題になっていないことは、まずは留意されるべきであろう。損害賠償義務は、計算の基礎となった業務委託が過大であったことを証左するものであり、かかる点を起点としているものである。すなわち実質的な過大の是正として損害賠償を行っているものとして認識されている(特に請求人において)。しかしながら判断では、かかる判決は、基礎となる事実である業務委託費の支払いに対する損害賠償義務の発生を示すにとどまるとして認識されている。かかる点において、過年度の申告における租税負担の救済の対象範囲を限定しているものと言えよう。

そもそも、この計算の基礎となる事実が如何なるものであるのかという点は必ずしも明らかであるとはいえず、もってその過大であるのか否かを判断するのかという点は検討の余地がある。過大であるとはその起点が重要であり、不当利得のような法的な根拠を持たないものを基礎としているものと考えられるのであろうか。損害賠償のような実質的な過大であるような経済的な評価を反映させることまでも含むものであるのかという点は限定的に捉えられているものと考えられる。基礎となる事実に対する過大と言う文言は、経済的な負担を評価するものであり、かかる点から上記実体的な要件の充足の判断につき、判断するという枠組みも一定の合理性を有している。租税法規が財産権を対象としており、更正の請求により権利救済を基礎としているものと捉えるならば、その具体的範囲を実質的な経済的・租税負担を基礎としても良いのでないかという点も合理的であろう。しかしながら、課税処分の基本的な性格や、実質的な権利救済を更正の請求に制限していることからも現行法の解釈として、判決による事実関係の変更、過大であることを超え、実質的な判断を行うことを含むと解することは、安定性を欠くものとも考えられる。法が確定した判決を要件としているものであり、客観性は確保されているともいえ、経済的な負担を反映した過大であるとの評価も行うことも可能であろうが、この点は立法によるべき議論であるのかもしれない。今後の課題となるのではないだろうか。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものであり、完成度は低いですが参考までに。


2018年6月12日火曜日

判例裁決紹介(平成29年5月15日裁決、複合的な投機的行為による所得区分)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は平成29年5月15日裁決で、オートレースやモーターボート、競馬等の複数の投機的な行為により得た所得の区分がいかなるものであるのかという点が争われた事例です。

具体的に本件は、請求人がソフトウェアを使用せず、独自のノウハウにもとづき、複数の名義人の口座等を活用して、度々大量に購入を行っていたオートレース、モーターボート、競馬等の起因する収入につき、かかる収入が所得税法上如何なる所得であると評価されうべきものであるのかという点が課題となった事例である。より具体的には請求人が行っていた当該購入行為は、継続的に行われていたものの、そしてインターネット回線を使用していたものの、ソフトウェアは使用されておらず、かかる収入が所得税法上いかなるものとして評価されるのか、すなわち、一時所得あるいは雑所得に該当するのかという点が課題となっているものである。最終的には、近年問題となっているような雑所得としての認定を行うことはせず、一時所得として評価している。平成29年12月(最判平成29年12月15日)において、ソフトウェア以外のノウハウ等を利用した事例における最高裁判決が出ているが、本件は、それ以前の段階であり、経過的なものとして評価されるものでもあり従前の最判の枠組みを深化させる、射程を議論する上で参考となるべきものと位置づけられよう(最新の最判に基づくものであったとした場合、どのような結論になるのかという点も興味深い)。但し本件では、従前の事例とは異なり、ソフトウェア利用の有無やノウハウの評価というような点も特徴的であるが、単一種別の投機行為を前提としたものではなく、種々の投機行為を複数名義の口座等で管理しており、複合的な取引が実施されている点は留意されるべきであろう。すなわち、従前の単一酒類の登記のける一体的な行為としての評価とは異なるものであり、かかる点を起点として行われた行為が所得税法上、如何に評価されるべきものであるのかという点を
課題としているものと評価される。

そもそも近年は競馬における所得区分、必要経費の存在等を巡って、一般受けする点でもあり、裁判例が数多く存在し、注目が集まっている。IR等の振興等の状況はありうるものであるが、その前提とするべきものは賭博、投機的な行為に対する課税であり、一般性を有するものであるのかという点は疑問があり、社会痛うねんとの対比も避けようがない。さらに、一時所得を生み出す稼得行為の一類型(しかも投機的な)に過ぎないとも捉えられ、以上のような事例の存在は租税法規としての重要性は如何なる部分に求められるのかという疑問は発生し得るところであり、所得税法の解釈において重要であるとの認識をもつことは困難であるとも評価されよう。

しかしながら、本件はその具体的な対象として、投機的な行為を対象としていることに着目されがちであるが(ここに一般に関心があるように思料される。そもそもこのような投機的な行為が所得を生み出す源泉であるのかという点も興味があるが、)、その本質としては、インターネットを活用したあるいはソフトウェア等を活用した所得の稼得形態を所得税法において如何に評価されるべきであるのか、すなわち、現行の所得税法の枠組みのおいて評価適用を行うものであるのかという点が課題となっているものとも考えられる。昨年、仮想通貨に対する租税法規としての評価が話題となったが、近年の技術発展の影響は、単に企業が大規模な投資、研究開発等に基づき、知的資産の開発等をもって所得を稼得している段階から、個人ベースにおいて、従来は想定し難い大量の取引などが比較的容易に行うことが可能となってきている(ノウハウに基づく取引を趣味の枠を超えて大量取引などの所得源泉として落とし込むことが可能となっている)。このように個人ベースにおいて起こりうる技術発展の影響は、近年の働き方改革と同様に、個人所得課税において今後如何なる対応を行うべきであるのかという点を浮き彫りにしていると考えるべきであり、本件に代表される近年の事例は、その先駆けとして捉えるべきではないだろうか。ギャンブル等の投機的行為をその端緒とした以上、一時所得としている現行の取扱い(そもそもこれが如何なる解釈に基づくものであるのかという点は疑問)との対比が着目されたものであるが、かかる点はいわば不幸な点であり、ソフトウェアやノウハウ、インターネットを活用した所得稼得形態の特徴を見出し、現行所得税法との対応関係(おそらくは、事業的規模や、網羅性などが議論対象となろう)を検討すべき段階に至っていると考えるべきではないだろうか。
所得税法基本通達
34-1 次に掲げるようなものに係る所得は、一時所得に該当する。
(1) 懸賞の賞金品、福引の当選金品等(業務に関して受けるものを除く。)
(2) 競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く。)
(注)
  1. 1 馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する。
  2. 2 上記(注)1以外の場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、一時所得に該当することに留意する。
以上のように、本件は基本的に当該収入が如何なる所得として評価されるものであるのかという点が課題となっているものである。判断枠組みとしては、上記近年の最判が出る前の段階であり、上記基本通達の枠組みが活用(私見としては、改めて、最判の追加により、通達解釈の変更、例示の追加などが行われるべきものと考えられるが)した上で、一時所得として判断されている。具体的には、上記通達にあるように、インターネットを介した長期間、かつ多数回頻繁、網羅的な購入等を条件として一時所得からの除外を行うべきであるのかという点を判断しており、下記のように提示している。

「所得税法第34条第1項にいう「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」は、一時所得ではなく雑所得に区分される。そして、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間の他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である。これを各種投票券の払戻金に係る所得についてみると、例えば、各種投票券を自動的に購入するソフトウェアを使用するなどして独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の各種投票券の的中に着目しない網羅的な購入をして的中した各種投票券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、一連の各種投票券の購入が一体の経済活動の実態を有するといえるなどの事実関係の下における各種投票券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に当たると解せられる。」

裁決である以上当然であるともいえるが、従前の最判を基礎とした通達であり、ソフトウェアの利用などを判断の基準としているものである。

しかしながら、ソフトウェアの利用はわかりやすいものの、必ずしも必須なものではなく、継続性や頻度、網羅性を担保する手段であり、かかる利用のみを前提とした判断は疑問が残る。そもそも前提とされているソフトウェア自身が一律に捉えられるものであるのであろうか。自動的な取引を図るものであるが、網羅性や、応答スピード、正確性、基礎となるデータベース等において多様な存在が想定されるものがソフトウェアであり、明示的に一様なものとして評価することは困難であろう。しかるにこの利用を前提とした判断では必ずしも基礎として活用しうるものとは評価しがたいものと考えられる。逆にソフトウェア以外のノウハウを活用されていても、ソフトウェアの利用がないことをもって上記判断が一時所得からの離脱を否定するものではないと解するべきであろう。ソフトウェアはいわば、従前の最判においては例示にとどまるものであって、一連の投機的な取引行為が如何なる性格を持つものであるのかという点が従前の枠組みの理解として適格であろう。これは前記近年の最判においてソフトウェア以外の利用が必ずしも否定されていないこととも整合的である。つまり、ソフトウェア等の利用が問題となるものではなく、上記通達(最判も)の後半である一連の投機的取引が一体の経済活動として評価されうるものであり、そこに営利性や継続性の有無が根本的な問題になるものと理解されよう。私見としては網羅性が如何なる点をサポートしており、取引の一体性を担保するものとして評価されるのか、という点(私見としては統計的に偶発的な要因を排除することによって一体としての取引における営利性が確保を企図しているのではと捉えている)が重要であり、網羅性が確保されていることが重要な要件であるものではないのであるが、これが事実上の条件として考えられていることが問題であろう。いわば従前の最判が解しているように、下記の要素から総合的に判断するべき枠組みが重要なものであり、ソフトウェア等の利用等は必ずしも要件としているものではないことは理解されるべきである。

「営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは,文理に照らし,行為の期間,回数,頻度その他の態様,利益発生の規模,期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である(最高裁平成26年(あ)第948号同27年3月10日第三小法廷判決・刑集69巻2号434頁参照)」

また、本件では請求人が有するノウハウに基づき、取引が行われている。そもそも所得税法において、個人の所得課税においていかなるものとして評価するのかという点は課題となっているものである。従前は意匠や著作等の法的に保護されているものを対象として個人が有する知的資産としてのノウハウを租税法規、所得税法において捉えていた。現在のインターネット、技術の発達は、その他のノウハウ等の知的資産を大量反復的に取引を行うなどして、所得稼得ツールとして機能しうる、客観的に評価されうことが可能な状況になりつつあると考えられる。例えばタイムバンクなどの個人の余暇時間の活用や、 VALU (以前友人の税理士が登録していてびっくりした覚えがあります)等の個人の資金調達が可能な状況がその証左であるのではないだろうか。

このように考えるならば、馬券の購入などのような所得を稼得する取引に着目して所得区分を判断することは妥当性を欠くことになろう。すなわち、所得分類の決定において(あるいは新しい所得分類として)所得の稼得形態に着目した判断をこの種の取引においても行う必要があるように考えられる。現行の所得税法は、所得をその発生原因等によって分類し、労働や請負等の人的役務の提供という稼得形態による所得(事業や給与)と利子配当、不動産等の稼得の源泉(資産保有、偶発的な所得等)によって分類している(もちろん、源泉の意義を広く解すれば人的役務の提供も源泉として捉えられる)。しかるに本件のようなノウハウ等の知的資産に基づく所得も新たな所得稼得形態として捉え(立法論ではあるが)たり、現行の所得分類において如何に捉えるべきであるのかという点は、所得税法において改めて課題となってきていると考えるべきであろう。

加えて、本件はその特徴として、複数種のギャンブル・投機的な行為が混在、複合されている。従前の例は、基本的に単一種の投機的な行為による所得を対象としており、かかる点において相違している。本件判断では、かかる点に対して、各投機的な行為ごと(オートレース等)に、分類し、かかる購入行為が網羅的であるか否か等の評価を行っている。所得が細分化され、その具体的な内容に応じて所得の性格を判断されることは一般論として理解できるが、本件のようなギャンブル、投機的な行為を原因別に分類する根拠は必ずしも明らかではない。口座の管理などは基本的に混在しており、投機対象は異なるものの、基本的に投機による所得であることに変わりがなく、所得分類の趣旨である担税力に応じた課税を実施することを鑑みれば、実質的な所得の租税負担能力に各投機対象によって差異があることは考え難い。しかしながら、判断では、各投機対象に応じて網羅性の判定を行っており、当然のごとく網羅性が確保されているものと評価することは困難である(分解されている以上、個々に網羅性が確保される可能性は。一体としての経済取引として該当するか否かが上記の通り問題なのであり、かかる判断を行う上で、分解してその判断を行うことは必ずしも合理的ではないのではないだろうか。そもそも網羅性が如何なる点を担保するものであるのかという点が必ずしも定かではなく、かかる点を明らかとせず、実質的な基準として網羅性を適用・判定していくことは必ずしも従前の最判の枠組みにおいても肯定されるものではないのではないだろうかとも考えられる。つまり網羅性を必然的な条件として位置づけることは判例の枠組みにおいても、本件のような複合的な投機対象取引においては適格なものではないのではないかと捉えられよう。

以上です。毎回のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。



濱田 洋

2018年5月26日土曜日

判例裁決紹介(平成29年4月4日裁決、保証債務履行に伴う譲渡所得課税特例の適用と求償権の行使可能性)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成29年4月4日裁決で、保証債務履行に伴う譲渡所得課税の特例の適用にあたって求償権の行使可能性が課題となった事例です。


具体的には、母親の連帯保証人となっていた請求人がその保証債務の履行のため所有する土地を譲渡して得た所得につき、確定申告後、保証債務履行に関する譲渡所得課税の特例の適用があるとして更正の請求を行ったところ、求償権の行使可能性が存在していないとして否定された事例である。すなわち当該譲渡所得課税の適用の有無、適用要件の解釈が課題となったものである。譲渡により請求人は母親に対する保証債務履行によって求償権を得ているが後に母親が死亡したことにより、相続によって求償権が混同によって消滅した状況が発生しており、かかるような状況の発生を基に、この譲渡時において、求償権の行使可能性がなかったものとして取り扱われることになるのではないかという視点から、当該タイミングにおいても求償権が行使不能の状況に会ったのではないのか否かという点が争点になっているものである。行使不能の状況の判断のタイミングや債務超過でありながらも一定の資産の保有等を前提とした求償権の行使可能性の判断等、種々の論点を含むものであるが、この求償権の行使可能性の判断に関しては、下記のように基本的に貸倒れに関する判断通達を準用していることもあり、より広い状況においても活用可能な事例でもあると考えられる。

最終的には、相続により求償権という債権が消滅するものであるが、このような事後的な状況の発生が前提となって、納税者においては、直感的に租税負担を発生させるべき所得の発生が観念されない、担税力の減少を伴うものであるとして実質的に捉えられる状況にあるとした判断を行うことは宜なることかなと考えられるが、このような直感的な状況とは異なる結論が導かれる事例でもあり、専門家としては留意すべきものを示唆しているだろう。本件に限らず、保証契約に関する租税負担に関しては、債務不履行等の事後的な状況が発生することがままあるものでありこのような状況を見越して如何にして租税負担において反映させるべきであるのかという点が重要であろう。本件判断は、このような親子関係、相続、債権の消滅、後見等の状況も加味された事例であり、現代の高齢社会における租税負担や家族間での求償権の行使等を検討する上で参考となるべき事例であるように考えられる。

第六四条 その年分の各種所得の金額(事業所得の金額を除く。以下この項において同じ。)の計算の基礎となる収入金額若しくは総収入金額(不動産所得又は山林所得を生すべき事業から生じたものを除く。以下この項において同じ。)の全部若しくは一部を回収することができないこととなつた場合又は政令で定める事由により当該収入金額若しくは総収入金額の全部若しくは一部を返還すべきこととなつた場合には、政令で定めるところにより、当該各種所得の金額の合計額のうち、その回収することができないこととなつた金額又は返還すべきこととなつた金額に対応する部分の金額は、当該各種所得の金額の計算上、なかつたものとみなす

 保証債務を履行するため資産(第三十三条第二項第一号(譲渡所得に含まれない所得)の規定に該当するものを除く。)の譲渡(同条第一項に規定する政令で定める行為を含む。)があつた場合において、その履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこととなつたときは、その行使することができないこととなつた金額(不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を除く。)を前項に規定する回収することができないこととなつた金額とみなして、同項の規定を適用する。

以上のように本件では本件の事実関係において事後的な状況として、相続により債権の消滅が行われるような状況であり、これら結果論としての事実関係を踏まえてもなお、請求人の有する求償権が行使不能であり、上記保証債務の特例の適用要件を充足しているのか否かという点が問題となっているものである。

「土地の譲渡に係る譲渡所得の計算上、本件特例の適用があるといえるためには、①債権者に対する保証債務が存在し、②土地の譲渡が行われその譲渡代金を当該保証債務の履行に充て、③当該保証債務の履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができなくなったことの各要件が満たされなければならないものと解される。そして、上記③の求償権の全部又は一部を行使することができなくなったこと」とは、求償権の相手方たる債務者について、破産手続開始の決定を受けるか、又は、失踪、事業閉鎖等の事実が発生したり、債務超過の状態が相当期間継続して金融機関や大口債権者の協力を得られないため事業運営が衰微し、再建の見通しもないこと、その他これらに準ずる事情があるため、求償権を行使してもその目的が達せられないことが確実になった場合をいい、これは、求償権の相手方たる債務者の資産や営業の状況、ほかの債権者に対する弁済の状況等を総合的に考慮して客観的に判断すべきものであると解される。」

具体的な判断としては、基本的には事実関係が問題になっているものと考えられるが、上記のように 「求償権の全部又は一部を行使することができなくなったことを  如何に解すべきであるのか、その判断枠組みが起点となっているものである。かかる解釈は基本的に従前と整合的であり、総合的な判断を基礎として、法的な債務の消滅に限定されるものではなく、実質的な判断を許容している点に特徴があるものである。従ってこの具体的な判断が課題となる。

(回収不能の貸金等の貸倒れ)

51-12 貸金等につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、当該債務者に対して有する貸金等の全額について貸倒れになったものとしてその明らかになった日の属する年分の当該貸金等に係る事業の所得の金額の計算上必要経費に算入する。この場合において、当該貸金等について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとすることはできない。(昭57直所3-1改正)
(注) 保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできないことに留意する。
この点につき判断は以下のように判断し、上記貸金の貸倒れを基礎とした判断を行う基本通達の立場を準用している点を基礎としてかかる点を基準として判断している。私見としては必ずしも貸金債権と保証債務における求償権(特に家族間での)に関して類似のものとして判断基準を同一と捉えることには飛躍があるようにも考えられるが、執行の便宜等を考慮したものであるのかもしれない。
「基本通達51-12は、法律上債権は存在するがその回収が事実上不可能である場合、すなわち債務者の資産状況、支払能力等からみて、その債務者に対して有する貸金等の全額が回収できないことが明らかになったと認められる場合において、その貸金等の全額を貸倒れとすることができる旨定めていることから、本件特例における適用については、債務者の資産状況、支払能力等からみて、その債務者に対して有する求償権の全額が回収できないことが明らかになったと認められる場合において、求償権の行使が不能であるとすることができるものとして取り扱われることになると解される」

前述の通り、本件は納税者にとって事後的な状況を反映させるべきであり、すなわち、納税者にとっては将来その求償権が行使不能に至るような状況であることから、実質的には発生時点で求償権の行使不能な状況であると認識しているものであることは明らかであろう。いわば後付の事実をもってその具体的な主張を支えるものとしていることをいかに租税法規において評価するのかという点が問題となる。つまり判断のタイミングが課題となろう。 法は上記のように譲渡(同条第一項に規定する政令で定める行為を含む。)があつた場合において、 としているものであるがこの解釈として如何なるタイミングであるのか、という点が課題と言える。本件では、譲渡後、納税義務の発生時点を基礎としているように捉えられる。かかるタイミングは他の行使不能を判断する上でも重要となろう。いわば直感とは異なるような状況が生み出される要因でもあり留意されるべきものと考えられる。判断では複数のタイミングにおいて判断が行われているが、財産状況が変動することも考えれば如何なるタイミングにおいて判断されるべきであるのかという点は予測可能性の点から確定されるべきものといえる。私見としては譲渡所得が譲渡時をキャピタルゲインを顕在化するタイミングとしている以上、所得の発生の有無に関わるものであり、同一時点で判断されるべきものと考えられる。

本件におけるこのような事後的な相続における債務の消滅は、かかるような処理は納税者の任意によるものであり、必ずしも消滅という事実関係が求償権の行使不能をサポートする事実として一般的に評価されるべきものであると捉えることは、判断において、後付の状況の反映や納税者の恣意が介在する事になり、特例の適用によりなかったこととされるキャピタルゲインの顕在化を基礎として課税する譲渡所得課税の基本的な性格や客観的な状況を求め租税負担の公平性を要請する基本的な要請に反するものではないだろうか。また、債権の混同による消滅と求償権の行使不能を同一視する点も課題があろう。あくまでも弁済の一種であるといえる。加えて判断タイミングにおいて債務超過状態にあることも本件においては重要視されていない点も特徴的であろう。一定の財産の存在・運用の状況があることが前提となっているものである(一定の財産の運用により利益をうる可能性がある以上、行使不能が客観的に確定しているものとはいい難いとの評価であろう)が実質的な債務超過を対象とすることを事実上制限しているものと捉えられ、一定額の財産の幅が必ずしも明らかではなく、運用等の不確実な状況を前提としており予測可能性を非常に残っているものと考えられるのではないだろうか。上記のように、法は法的な権利の消滅等のみならず、実質的な行使不能も対象としていることからすれば、かかる点は判断の基準として曖昧な物となっているのではないかと評価されうるだろう。

また、本件の特徴としては請求人は保証対象である母親の成年後見人担っていたことが挙げられる。成年後見人としては財産の運用を決定すべき権限を一定程度保証されているものであるが、そこには限定もあるのであり、上記のように債務超過状態における運用の可能性を考慮に入れた判断においてはかかるような状況も考慮すべきではないだろうか。近年は高齢社会の到来により、意思能力制限をうけることは増加傾向にあり、横領等その財産管理に関しては課題が多く財産の運用においては司法の関与など制約も発生する。かかる点においてこのような後見における制約を租税法規において如何に評価すべきであるのかという点は必ずしも明らかとなっていない。民事法の制約を租税法規においてどの程度反映させるべきであるのかという点は、立法の課題であるかもしれないが、このように高齢社会に対応した法制度の存在は、今後の租税法規において如何に解釈論として対応することになるのかという点は、より検討すべきであるのかもしれない。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが、参考までに。


2018年5月19日土曜日

判例裁決紹介(平成29年8月21日裁決、中間取引の実在性、調査終了時の手続)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は不動産取引における保有資産を仲介業者等を経由させて実質的に損だしを行っていることを、否定すべく、当該中間取引の真実性を否定することで対応しようとした事例です。

具体的には、不動産取引業を営む請求人が不動産取引につき、仲介業者等への売却を行い、もって中間的な取引が経由することで損だしが行われているような状況であり、一連の取引の真実性はなく、その実質において中間取引を否定した課税庁の判断につき適否が争われている事例である。関連する取引においては、実質的経営者や配偶者などの多様な利害関係者が絡んでくる取引であり、課税庁が主張するように、その取引に対する実質的な存在を疑われたとしても致し方ないような本件の事実関係であるが、最終的に課税庁の主張する取引の真実性否定が排斥されている状況であり、判断としては取引の存在は認めている。後述するように、調査手続等の争点も含むのが本件ではあるが、その課税庁が主張する実質的な取引に対する租税法規としての評価とその実在性を肯定した事例として本件は特徴的でもあり、かかる点において、如何なる点をもって事実関係としてその実在性を裏付けているのであるのかという点は、参考となるべき事例であるように考えられる。

一般に本件において争点とされるような租税法規においてその対象となる取引の真実性が否定されるような状況は、基本的に租税回避との境界線、いわば仮装取引(いわゆる通謀虚偽表示)に基づく、取引の真実性(無効)との議論とよく課税庁が主張する実質課税の原則(最近はこのような原則の存在は正面から語られることは少なくなっているようであるが、約10年前までは、税大のテキストにおいても実質所得者課税の原則の部分を実質課税の原則として紹介されていた)が語られることが多いものであるが、その適用範囲は明確ではない(実際の現場においてはどのように用いられているものであろうか、この点は実務家に聞いてみたいところではある)。この点の混在があるように考えられる。租税負担の公平性を基礎としている租税回避行為への対応と通謀虚偽表示によって当該取引の真実性が失われているような状況(そもそもとしての取引は無効)とは理念的に異なるものであり、現状はその混在、概念的に区分がなされていないようにも考えられる。本件でも実在性を議論対象としているが、その対応は、従前と基本的に変わらないものといえよう。租税回避行為に関しては、実際の取引としては異常な法形式を採用しつつも基本的にその取引の真実性が疑われるものではなく、租税負担の回避等を図っているものであり、私法上の選択可能性の濫用的な取引である。この濫用を如何にして対応して行くのかという点が課題であり、租税法律主義に関する基本的な要請としては、同族会社の行為計算否認の規定など、個別的な否認規定の存在等の法的な根拠を当該行為の否認には必要なものであると解すべきであり、実質的な課税という不明瞭な取扱をもって対応すべきものではなく、概念的に明瞭に区分される必要があろう(最も実際の取引においてその区分が必ずしも容易ではないことも重要な点であろうが、かかる点は一般的な否認規定の存在などをもって対応すべきものであり、実質課税のような納得の良い文言で対応すべきものではないだろう(法的根拠の曖昧な状況ではなく)、私見としては、具体的な適用要件、その定義は議論の余地があるものの、現在の複雑な租税回避の存在を前提として捉えるならば、具体的な判断方法を定めるなどして、同族会社の行為計算否認の拡張など一般的な否認規定の存在は法的根拠として導入が図られるべきものとも考えられる。

本件においても低額な取引を初回において請求人が行っており(約1/5の金額)、かかる点が異常な取引(経済的に異常ではあるが、金額の操作という点では特段、珍しいものではないが)であり、着目されたものであろうが、金銭のやり取り、所有権移転登記の存在等、客観的に取引の実在性を否定するような状況ではなかったことが本件の課税庁の判断を否定している点であろう。課税庁の主張の根拠は、取引当事者の証言において、中間の仲介者にあったこともないとの証言が基礎となっている点は、客観的な上記資料を否定するものとしては主観的な要因に依拠しているものと評価せざるを得ない。最終的には、下記のように法人税法22条の規定を活用して適正な時価をもって取引したものとして、取引の価額を修正し、実際の取引価額に近似させることで損だしの経済的な効果を否定している。この判断は、法人税法の特徴でもあり、実際の取引内容よりも経済的な成果を反映させる下記22条2項の規定を活用した本件判断は法人税法の本質を理解した判断であるだろう。このような取引価額の操作は古典的なものであり、実際の対応方法としては低額譲渡(下記規定は無償譲渡の規定であり、解釈上低額譲渡にまでその適用が及ぶかは争点となりうるが、公平負担の観点から、かかる部分まで対応してると解すべきであろう。最新の法改正においてはこの取引価格の算定は価額によるべきものとされており、立法的に解決されているものと考えられるが)として修正を行い、差額部分を寄附金として取り扱う、非常にオーソドックスな対応方法としてなっており、本件としては、ティーチングケースとして、このような対応を併記している点は参考となるべきものといえよう。

法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第1項は、内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする旨、同条第2項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする旨規定している

法人税法第22条第2項は、各事業年度の所得の金額の計算上、当該事業年度の益金の額に算入すべき金額の一つとして、無償による資産の譲渡に係る当該事業年度の収益の額を規定しているが、これは、法人が資産を他に譲渡する場合は、その譲渡が代金の受入れその他資産の増加を来すべき反対給付を伴わないものであっても、譲渡時における資産の適正な価額に相当する収益があると認識されるからである。そうすると、譲渡時における適正な価額より低い対価をもってする資産の低額譲渡の場合でも、当該資産には譲渡時における適正な価額に相当する経済的 価値が認められるものであるから、益金の額に算入すべき収益の額には、当該資産の譲渡の対価の額のほか、これと当該資産の譲渡時における適正な価額との差額も含まれるものと解するのが相当である。

以上のように本件の中心的な争点は請求人がなした取引の真実性が、実在性として、中間売買の不成立が問題となっているものであり、最終的には低額譲渡しての取扱を行っているものである。当初の課税庁の主張とは異なる判断が行われており、不服審査として適切な納税者の主張が行われているのかという点は疑問の余地があるが、争点主義・総額主義の観点からも古典的なケースではあるものの、裁決段階では、課税庁の主張は一貫しており、これに対する反論の機会は一定程度、担保されているようにも考えられる。もし課税庁が主張事実が変更されていれば、本件の理由附記、調査終了の際の説明の課題がより課題となってくるだろう。

特に調査終了の際の手続の際の説明に関して、本件は興味深い点を提供している。具体的に本件は、請求人の実質的な経営者に対して当該修了手続としての説明を実施している。この説明対象としての妥当性、調査手続としての瑕疵の存在の評価が課題となっているものである。

この調査終了の手続は下記のように平成23年の税制改正によって導入されたものであり、まだまだその位置付け、議論すべき点、法的な評価等が必ずしも定まっているとはいい難い(この点について特に説明義務について議論したものとして拙稿参照)。かかる点において本件は具体的な対象者として実質的な経営者のような存在への説明を行ったことが如何に評価されるべきであるのか、瑕疵として捉えられるべきものであるのかという点において課税庁の考え方を理解する点で参考となるべきものと考えられる。実際においてこの調査終了の際の手続が如何になるように運用されているのかという点は実務家の意見を聞いてみたいところであるが、いかがだろうか。


(調査の終了の際の手続)
第七十四条の十一 税務署長等は、国税に関する実地の調査を行つた結果、更正決定等(第三十六条第一項(納税の告知)に規定する納税の告知(同項第二号に係るものに限る。)を含む。以下この条において同じ。)をすべきと認められない場合には、納税義務者(第七十四条の九第三項第一号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に掲げる納税義務者をいう。以下この条において同じ。)であつて当該調査において質問検査等の相手方となつた者に対し、その時点において更正決定等をすべきと認められない旨を書面により通知するものとする。
2 国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする。
3 前項の規定による説明をする場合において、当該職員は、当該納税義務者に対し修正申告又は期限後申告を勧奨することができる。この場合において、当該調査の結果に関し当該納税義務者が納税申告書を提出した場合には不服申立てをすることはできないが更正の請求をすることはできる旨を説明するとともに、その旨を記載した書面を交付しなければならない。
4 前三項に規定する納税義務者が連結子法人である場合において、当該連結子法人及び連結親法人の同意がある場合には、当該連結子法人へのこれらの項に規定する通知、説明又は交付(以下この項及び次項において「通知等」という。)に代えて、当該連結親法人への通知等を行うことができる。
5 実地の調査により質問検査等を行つた納税義務者について第七十四条の九第三項第二号に規定する税務代理人がある場合において、当該納税義務者の同意がある場合には、当該納税義務者への第一項から第三項までに規定する通知等に代えて、当該税務代理人への通知等を行うことができる。
6 第一項の通知をした後又は第二項の調査(実地の調査に限る。)の結果につき納税義務者から修正申告書若しくは期限後申告書の提出若しくは源泉徴収による所得税の納付があつた後若しくは更正決定等をした後においても、当該職員は、新たに得られた情報に照らし非違があると認めるときは、第七十四条の二から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定に基づき、当該通知を受け、又は修正申告書若しくは期限後申告書の提出若しくは源泉徴収による所得税の納付をし、若しくは更正決定等を受けた納税義務者に対し、質問検査等を行うことができる
上記のようにこの調査終了の際の手続に関しては平成23年における説明責任の強化を企図した税制改正により導入されたものである。但し、私見ではあるが、必ずしもこの説明責任という基礎的な目的が如何なる法的な責任を指しているのか定かではなく、単なる目標的なものを表すものであるのではないかとして具体的な解釈の指針として機能するものであるのかは議論の余地があるものと評価される。いずれにしても、この手続の租税法規における位置付けは従前の調査手続きに関する議論との延長線上にあるのか否か等、その具体的な性格は必ずしも明らかとなっていないものと考えられる。

判断では手続き上の瑕疵として実質的な経営者(そもそもこれがどの程度の位置付けであるのかという点は様々な状況が想定される)への説明が該当するとしても、課税処分の効力において如何なるものと捉えられるのかという点から検討を行っている。すなわち、従前の手続上の議論としても行われたように、一定の瑕疵が会ったとしてもその瑕疵が重大なものがあった場合においてのみ課税処分の無効性が問われるものと解されるものであるという点に依拠して、重大な瑕疵としての評価とはなりえない(確かに実質的な経営者に対して行っておれば、重大な瑕疵として評価することは困難であろう)として課税処分の有効性を判断している。しかしながら、課税処分の手続として、かかるような新規の改正により導入された手続の性格が如何なるものであるのか、従前のものと基本的に同一であるのかという点がまずは検討されるべきであろう。かかる点からの検討が実施されていない。私見としては、そもそもの前提となる質問検査の基本的な趣旨は変更となっているものではなく、租税負担の公平性を担保すべき制度であり、この点において基本的な性格は変わっておらず、、また調査手続きにおいては様々な調査が導入されており、明示的な法的な評価に関する規定や判示が存在しない以上、一律に瑕疵をもって当該処分の効力を失する状況となることは均衡に反するものと考えられるため、当該制度にいても従前同様瑕疵が会った場合においてもその重大性に対する一定の制限、より限定的な制限が付与されているものと解すべきものといえる。しかるに本件のように重大な瑕疵の不存在というテストを挟むことが妥当であるように考えられる。この点は上記のようなスローガン的な改正趣旨をもってして(おそらくは説明責任の強化は、反論の機会の確保において一定の担保されていることを保証するものと解すべきであろう)も変化するものと捉えることは困難であろう。もちろん、改正の趣旨をより適格に反映させるためには、当該手続の瑕疵が、処分の適格性を損なうものであるという主張もあり得ようことは想定される。

しかしながら、この重大性を如何に評価すべきであるのかという点は、議論の余地がある。従来この重大性に関しては刑罰法規との状況など極めて重大な瑕疵に関するものが判示においては明らかにされているが、如何なる程度が法的な保証として機能するものであるのかという点は必ずしも定かとなっていないものと考えられる。本来ならば改正の趣旨目的から具体的にその性格が議論されるべきであるが、上記のようにその点は必ずしも定かとなっていない。私見としては手続の相互関係、特に、終了後、更正等においては理由附記の制度が担保されていること等の点も鑑みれば(かかる点からは、この手続における瑕疵は治癒の余地が大きいだろう)、勧奨等への対応や法的な安定の確保等一定の反論の機会の保障を確保することと捉え、その重大性を検討することは可能であろうが、かかる点はより検討が必要であるようにも考えられる。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが、参考までに。





濱田 洋

2018年5月8日火曜日

判例裁決紹介(平成29年6月26日裁決、相続により取得した財産の取得費)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成29年6月26日裁決で相続により取得した財産を譲渡した際における取得費として相続税評価額を適用すべきであるとして争った事例です。

具体的には、請求人が他の相続人と共同で相続した土地を譲渡した場合において、取得費として収入金額の5%ルールを適用して申告し、更正の請求として相続により取得したものであり相続税評価額をもって取得したものとすべきであると主張して提起した事例である。すなわち譲渡所得におけるキャピタルゲインを算定する基礎として取得費が以下に考えられるべきであるのかという点が基本的な争点になっているものである。

取得費が如何なるものであるのかという点は、その範囲として登録免許税を含むか否か等、種々の論点が提起されてきており、本件はその一類型に属するものであるが、本件は財産を取得したものとして相続を捉え、取得費として主張しているものである(但しこのように考えれば、相続税と所得税の二重課税の課題が通常は出てこようがその部分は主張されていない。)。遺産取得税を基礎とする相続税の性格から鑑みれば一定の理解が可能であるものであるが、このような主張は基本的に立法によりその性格が下記のように明らかとされており、実質的に取得に相続を含んでいないものとして、取得費を引き継ぐことになっているしかるに、本件のより詳細な争点として5%のルールの適用の是非があろうが、かかる点に関してはその合理性が問われたとしても、直接的に相続税評価額を取得費とすべきとする論拠にはなりえず、かかる点において、総合的に本件の主張の整合性は疑問も多い。いずれにしても本件の主張のように遺産取得税としての性格を強調して、譲渡所得税における取得費として相続税評価額を活用することは立法論として主張を受けることが多いものであるが(この書き方のように私は生命保険における二重課税の問題も含め、課税対象を異にするものであると評価しているが)、法令解釈としてこのような取得費としての意義を採用することは些か困難であろう。但し、一般的な納税者の思いとして、財産を利用するにあたって相続税を必要としており、実質的な取得費ではないのかという素朴な思いを持つことは容易に理解できよう。かかる点につき、本件は解釈論としてというよりは、相続税と譲渡所得課税を中心とした所得税との関係(特に二重課税)をより検討する上で参考とすべき事案であると評価されよう。


第三三条 譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。

第三八条 譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。

以上のように、本件の中心的な争点は上記所得税法に定める、取得費が如何なるものであるのか、特に、相続により取得した(便宜的にこのように称するが)財産の取得費が如何に評価されるべきであるのかという点が課題となっている。本件で直接的に問題になる相続等による取得費については、確認的に(下記の法規が確認的であるか否かという点は、生命保険に関する二重課税の課題を起点としている)所得税法において明示されており、所有関係が継続していたものとみなして課税することとされている。いわばキャピタルゲインを課税することを譲渡所得課税の本質として捉えているゆえの処理であり、この理解が本件においてはまずは留意されるべきものと考えられる。

第六〇条 居住者が次に掲げる事由により取得した前条第一項に規定する資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす
一 贈与、相続(限定承認に係るものを除く。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)
二 前条第二項の規定に該当する譲渡
 居住者が前条第一項第一号に掲げる相続又は遺贈により取得した資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が当該資産をその取得の時における価額に相当する金額により取得したものとみなす

私見としても、上記規定はみなし規定としてその趣旨からも明確であり、解釈上の例外を認めるものではないことは明らかであるものと考えられる。通達においてもその適用関係が下記のように示されており、相続により取得した財産の取得費に関しては一定の解決が図られているものと考えられる。しかるに、このみなし取得関係において、如何なる取得費が形成されるべきであるのかという点が基礎的な課題となることになるものといえよう。故に、下記の通達の処理により昭和28年以降の財産の取得関係においていわゆる5%ルールの適用があるとした解釈が合理的であるならば(この点に関しては以下のように必ずしも論理的な根拠を背景としているものではないものとも考えられるが)、本件判断の示した当該取得費として5%ルールにより算定していることは、必ずしも否定されるべきものではない。このように考えるならば、本件判断は妥当であろうが、あくまでも差し支えないとした通達を根拠としたものであり、必ずしもキャピタルゲインに対して適切に課税を行うことを企図した制度としての譲渡所得課税の本質と取得費の関係が示されておらず、立証のプロセスが課題ともいえよう。

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継続保有とみなし規定の存在から、相続税評価額を取得費とすることは、取得の意義を非常に広範囲に捉えているものといえ、上記規定の成立過程から鑑みれば、またキャピタルゲインを課税対象とする譲渡所得課税からは、整合性が取れないことは明白なものと考えるが、近年、非常に大きな課題とされた所得税と相続税の二重課税の調整の課題においては、課税対象は異なるものの、その課税物件は基本的に共通しており、二重課税として捉える評価が成立する余地もあり得よう。すなわちこの二重課税との関係において、立法論として取得費の調整との視点は、今後の課題として理解されるものであり、かかる検討は我が国における相続税の基本的な課税根拠と譲渡所得課税の本質との対比・理解において重要な検討課題であるように捉えられる。

第三十一条の四 個人が昭和二十七年十二月三十一日以前から引き続き所有していた土地等又は建物等を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、所得税法第三十八条及び第六十一条の規定にかかわらず、当該収入金額の百分の五に相当する金額とする。ただし、当該金額がそれぞれ次の各号に掲げる金額に満たないことが証明された場合には、当該各号に掲げる金額とする。
一 その土地等の取得に要した金額と改良費の額との合計額
二 その建物等の取得に要した金額と設備費及び改良費の額との合計額につき所得税法第三十八条第二項の規定を適用した場合に同項の規定により取得費とされる金額
2 第三十条第二項の規定は、前項の規定を適用する場合について準用する。この場合において、同条第二項本文中「山林」とあるのは「第三十一条の四第一項に規定する土地等又は建物等(以下この項において「土地建物等」という。)」と、同項ただし書中「山林」とあるのは「土地建物等」と読み替えるものとする。

以上のように、本件は、上記租税特別措置法の5%ルールの適用範囲を拡張した下記通達の合理性を認め最終的に課税庁の判断を肯定している。

31の4-1 措置法第31条の4第1項の規定は、昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地建物等の譲渡所得の金額の計算につき適用されるのであるが、昭和28年1月1日以後に取得した土地建物等の取得費についても、同項の規定に準じて計算して差し支えないものとする。

「措置法第31条の4第1項は、個人が昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、所得税法第38条及び同法第61条の規定にかかわらず、概算取得費とする旨、ただし、概算取得費が実額取得費に満たないことが証明された場合には、実額取得費とする旨それぞれ規定している。 このように、措置法第31条の4第1項の規定は、昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地に適用されるものであるが、昭和28年1月1日以後に取得した土地の取得に要した金額が不明である場合、同項の規定が適用されないために取得費が零円となるとするのは不合理であり、また、この場合に同項の規定に準じて取得費を計算しても納税者の利益に反することもない。そのため、措置法通達31の4-1は、昭和28年1月1日以後に取得した土地の取得に要した金額が不明である場合においても、措置法第31条の4第1項の規定に準じて計算して差し支えないものとする旨定めているところ、このような措置法通達31の4-1の取扱いは、当審判所においても相当と認められる。」

しかしながら、この実務上の便宜等による5%ルールの適用範囲の拡大は、納税者にとって不利益はないとの指摘から法令規定を拡張しているものである。裁決である以上、当然のことかもしれないが、この不利益はない旨等の根拠を支える事実関係が必ずしも明白ではなく、当該措置の合理性を支えるものとして評価し難い。実務上は問題とならないものであるのかもしれないが、便宜的な処置として法令の適用範囲を拡張的に解することは租税法研究者として違和感を覚える点は否めない。本当に不利益は生じない、不利益を救済する措置は確保されているものであるのであろうか。そもそも法がその適用範囲を区切った趣旨を考慮した上で、執行や実務上の便宜性との均衡において評価されるべきものではないだろうか。譲渡所得課税におけるその所得金額を算定する場合において、取得費がその投下資本を表し、具体的な所得金額を計算する上で、重要なものであることは否定し難いものであり、このような便宜的な取扱を肯定することは杞憂であるのかもしれないが慎重にあるべきではないだろうか。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

濱田 洋