2017年9月19日火曜日

判例裁決紹介(平成28年9月7日、一括借上住宅提供契約に伴う消費税非課税)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。
今回は平成28年9月7日裁決で、消費税法における非課税となる住宅の貸付に関して、契約により一括借上げによって住宅として転貸している場合において当該非課税の対象となりうるのか否かという点が争われたものです。

具体的には、請求人が保有する建物を住宅用途にて、外部の住宅会社に対して契約により一括にて貸付け、その後当該住宅会社が住宅として、利用者に対して貸し付けることが契約により保証されているものであり、このような一括借上げに伴う転貸、住宅用途建物としての貸付けが課税資産の譲渡等に該当するとして、確定申告を行ったところ通達に基づく、転貸に該当するとして更正処分を行ったところ、当該処分を不服として、提起されたものが本件である。消費税法6条に定める非課税となる住宅の貸付けに該当するのか否かという点が争点となったものである。近年の取引において、一括借上に伴う不動産賃貸の取引形式は非常に増加傾向にあり、複合的な課題を有するものであるが、今後もこのような実質的には家賃保証等の役務提供等の内容を含有する契約(本件においても契約により住宅としての貸付用途限定、家賃保証等が明記されているが、利用者が特定されていないこのため本件における請求人のを如何に評価すべきであるのかという点は課題となるのであろう。かかる点で本件は参考となるべきものと考えられよう。

本件は裁決である以上、基本となる課税処分を巡って、契約によって居住の用に供する旨が限定されているものの、このような契約に基づく貸付けが下記のように通達が対象とする転貸に該当するのか否かという点で争いが行われているが、特に通達による転貸の想定が本件における取引を含有するのか否かという点が、課題として考えられている。上記のように近年はこのような賃料保証等を含む一括借上のような形式による転貸契約は増加傾向にあり、かかるような取引が本件のように、消費税法上如何に捉えられるものであるのかという点が本件の問題の背景にあるものである。かかる点において本件は実務上も検討すべき課題、特に消費税法上の取引の捉え方を如何に行うべきであるのかという点を検討する上で有益な事例であろう。かかる検討においては、前提として消費税法上の非課税となる住宅の貸付けが如何なる趣旨目的を持つものであり、かかる点から如何に住宅の貸付けという意義を捉え、本件のような事実関係において当てはめるのかという点が争点となるものである。

第六条  国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない。

十三 住宅(人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分をいう。)の貸付け(当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされているものに限るものとし、一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)

上記のように消費税法上、代表的な非課税対象となるものとして、住宅の貸付けがその対象となっている。消費税法の別表に於いては上記のように定め、一時的なもの等を除外する制度的な構築を行っているものである。本件における問題となるものは、契約において人の居住の用に供するものとして明らかであることが求められていることに起因する。そもそも居住の用とは如何なるものを指すものであるのかという点は必ずしも定かではないが、この点に起因する転貸契約における契約状況の把握が住宅用途として、如何に捉えられ、通達によって一定の概念的な拡張を図られているものと考えられる。実質的な居住の用途に利用する転貸という点が制度的な趣旨から合理的なものとして拡張されているものといえる。

(住宅の貸付けの範囲)

6-13-1 法別表第一第13号《住宅の貸付け》に規定する「住宅の貸付け」には、庭、塀その他これらに類するもので、通 常、住宅に付随して貸し付けられると認められるもの及び家具、じゅうたん、照明設備、冷暖房設備その他これらに類するもので住宅の附属設備として、住宅と一体となって貸し付けられると認められるものは含まれる。
 なお、住宅の附属設備又は通常住宅に付随する施設等と認められるものであっても、当事者間において住宅とは別 の賃貸借の目的物として、住宅の貸付けの対価とは別に使用料等を収受している場合には、当該設備又は施設の使用料等は非課税とはならない。

(転貸する場合の取扱い)

6-13-7 住宅用の建物を賃貸する場合において、賃借人が自ら使用しない場合であっても、当該賃貸借に係る契約において、賃借人が住宅として転貸することが契約書その他において明らかな場合には、当該住宅用の建物の貸付けは、住宅の貸付けに含まれるのであるから留意する。
(注) この場合において、賃借人が行う住宅の転貸も住宅の貸付けに該当する
「住宅の貸付けが非課税取引とされている趣旨は、住宅の貸付けを行う事業者が賃借人に対し、消費税相当額を転嫁しないことにより、住宅賃借人を政策的に保護することにあるものと解される。そして、本件通達は、上記1の(4)のハのとおり、住宅用の建物の賃貸借係る契約において、賃借人が自ら使用しない場合であっても、賃借人が「住宅として転貸することが契約書その他において明らかな場合」には、上記の趣旨に鑑み、当該住宅用の建物の賃貸借を非課税取引と取り扱う旨を定めたものであり、本件通達の取扱いは当審判所においても相当であると認められる。」

かかる通達による拡張的な解釈としては、上記のように本件では合理的である旨が判断されているが、この点は、裁決である以上特に問題とならないのであって、まずはこの拡張的な住宅の貸付けの意義が如何なる趣旨に基づいているものであるのか、という点が検討の素材であろう。すなわち本件の基本的な問題の背景は上記通達の拡張的概念に対して本件の事実関係が該当するのか否かという点で通達の合理性、適用対象となる拡張的な取引対象をいかに捉えるべきであるのかという点が過大となるものである、かかる点がまずは議論の焦点を当てるべきであるが、上記のようにこの合理性を住宅賃借人を政策的に保護するものと捉え、合理性を肯定している。本件が裁決である以上、やむを得ないものであるが、如何なる理由で、住宅賃借人が具体的に保護されているのか、かかる規定の趣旨が上記のような理解では具体的な保護対象となるべきものが明示的ではない。おそらくは、契約により転貸が明示的である以上実質的な貸付対象は住宅であり、上記条文における非課税の保護となるべきものと考えられたものであり、実質的な取引・契約内容を非課税取引に於いて反映させるべきものと捉えたものと考えられるが、まずもって政策的な保護という対象が具体的な保護対象を明らかにしておらず、かかる点において、住宅の貸付けを拡張的に実質的な契約をも反映させるべきであるのかという点は判断プロセスとして疑問である。

また、上記の法文において住宅としての貸付けであることが明らかであることを要請していることからも、契約によって、住宅としての貸付に利用されることが明らかであることをも拡張的に住宅の貸付けとして捉えることが可能であるとの考え方もありえよう。しかしながら、上記規定は非課税の保護の対象となる以上、その具体的な判定において、認定において、利用用途によって建物の消費税法上の取扱が異なりうるという状況下において、主観的な要因を排除し、もって恣意的な非課税としての保護を受けるべき対象を操作することが忌避されうべきものと捉えられ、これを防止する趣旨によるものであり、かかるように捉えるならば、住宅の貸付けを実質的なものまで契約によって拡張的に判断認定することを要請するものと考えられない。すなわち非課税規定としての趣旨を鑑みるならば、消費者に対して一定の便宜を供与するものであり、かかる点からはその適用対象としては厳格に捉えられるべきものとという点を考慮したものであり、逆に非課税の対象となる取引等を実質的に拡張する趣旨を含むものと解することは、本件の中心的な争点となる規定が非課税規定であることからも否定されるべきものであり、拡張的な解釈は厳格に捉えるべきものと考えられるべきである。もちろん消費税法上の非課税規定であり、所得税法等の非課税とは同視されるべきものではないとの考えもありえる。しかしながら租税法規の基本的な要請からも拡張的な解釈によって事実関係と課税要件を捉えることは法的な安定性や納税者の予測可能性を減ずるものであろう。かかる点からは本件の通達の対象となる取引は必ずしも転貸というような形式的な契約状況に合致すればそれを非課税の対象とするような判断は合理性を欠く可能性がありえよう。

本件のように、賃料保証等を付与されている場合においては、転貸といえど、仮に住宅の貸付けを行ったとしても、居住者の不在の場合においても何らかの金銭収入が入ってくることになる。上記非課税規定が一時的な居住を排除している(もちろんより詳細な点においては一時的なものとは如何なる程度のものを指すのかという点は課題であるものの)、点からも対象となる住宅の貸付けを限定的に捉えることも可能であろう。一時的な居住を認めることにより、容易に非課税規定の保護を受けるような状況は排除されるべきであり、かかる点からは居住を実質的な期間的な意義も含め、居住実態の存在を要請しているものと捉えることも可能である。このように考えると居住者が不在(一時的に)の場合においても稼得されるような収入は非課税の対象となるべき取引となりうるものといえるのであろうか。本件ではあまり問題視されていないが、かかるような居住者が不在の場合も考慮すると、あくまでも転貸によって家賃保証を得つつ住宅の貸付けによる不動産収入を意図した取引であり、住宅の貸付けを含むものの一種の役務提供を行ったものと捉えることも充分に可能であり、より詳細な住宅の貸付けとして如何なるものを保護すべきであるのか、さらには保護によって如何なる政策的な対象者を消費税の転嫁対象として排除しているものであるのかという点はより検討すべきものといえよう。

通達において住宅の貸付けを実質的に捉え、拡張的に契約の文言をもって転貸も含むと解することは、消費税法が個々の取引段階において課税を行い、相互牽引によって形式的に判断することを要請している点とも照らし合わせて如何に判断すべきであるのかという点を考えるべきであろう。現在の非課税規定において住宅の貸付けの存在は重要な位置づけを占めており、具体的に如何なる判断方法を取っているのかという点は重要である。単に住宅の貸付けを拡張的に解釈を行い実質的な状況を反映させるべきであるのか、たとえ消費税法が取引段階を課税対象とし、流通税であり、大量の取引を処理するためには、契約等の形式的な文言を重視し、実質的なあるいは恣意的な、主観的な要因を反映させるべきものと捉えることは困難であるが、さらには実際の居住の状況までも非課税規定の適用において考慮要素とすることは実際的ではないかもしれないが、判断プロセスとしてはより詳細な検討が必要であるように考えられる。

以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2017年9月4日月曜日

判例裁決紹介(平成28年8月4日裁決、外国籍者の居住者非居住者判定、住所推定)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成28年8月4日裁決で中国籍の不動産等を売買する個人事業者がわが国の国内に所在する不動産を請求人に対して譲渡した場合において、その支払が外国事業者への支払に該当し、源泉徴収義務を負うのか否かが争われた事案です。

具体的には、不動産投資業務等を営む請求人が、不動産売買契約を締結し、契約当事者である当該不動産の譲渡人に対して売買代金として譲渡代金を支払ったものの、この契約当事者である相手方、譲渡人が中国籍であり、国外居住者(住民票あり、親族は中国、日本法人を経営、過半数日本に滞在等)であるとして、課税庁が当該譲渡代金の支払に対して、源泉徴収義務があるとして更正処分を行った事案であり、当該非居住者であるという認定及び係る認定に基づく源泉徴収義務の存在を不服として提起した事案である。

本件は、請求人がなした取引に伴う対価の支払が所得税法上、非居住者に支払った対価の額に該当し、しかるに源泉徴収義務を負うべきものであるのか否かという点が課題となったものである。具体的に取引当事者である譲渡人が国内に居住している、居住者であるのかというように居住の実態が存在し、あるいは外国籍者であり、非居住者であるのか否か中心的な争点となっており、この点は、国際租税においては、単なる源泉徴収義務を判定するのみならず、国内源泉所得を中心に所得が如何なる帰属を有しているのか、すなわち課税管轄の判断を行う上で重要な問題であり、単なる国内に居住、住所を有するか否か、たった二文字ではあるものの重要な概念であり、従来よりその具体的な判断を行う基準(要素)が如何なるものであるのかという点が租税法規の解釈から特に、住所や居住の概念から導かれるものであり、この具体的な解釈意義に左右されるものであって、議論が行われているものである。本件はその類型に属するものであり、所得税法における、また国際租税における具体的な所得源泉の帰属を判断する、決定する上で重要な事例と考えられる。

特に本件は、中国における国籍を有する者が、わが国に於いて如何なる居住状況にあるのかという点が具体的な事実関係として問題となっており、従来の居住判定は中心として欧米が中心となったものであり、近年の経済環境を鑑みれば、かかる点においても参考となるものと考えられよう。

但し私見ではあるが、通常のわが国の取引において、特に実務家が直面する取引において、取引当事者が国外に居住しているのか否かという点を問題とする局面は如何なる状況であろうか。具体的に専門家はともかくも、一般的な企業において、相手先が国外であるのか否かという点を問題視することは、国外との貿易取引等を除き、実際には必要とされる局面は限定的であると考えるほうが妥当であろう。しかしながら、近年は、ネット取引や通貨決済環境が変化(仮想通貨等)し、国外者との取引の可能性は従来と比して発生する可能性は格段に高まっているのではないだろうか(この点は実務家に聞いてみたいところ)。このような国外との取引を意識する貿易や国境をまたぐ移動等のサービスとは異なる一般的な取引においてもなお、相手先が国内に居住しているのか否かという点を明示的に把握することは困難ではないだろうか。少なくとも国際的な取引が明らかであるような場合とは異なり、通常の一般的な取引当事者が相手先が国内での居住をしており、実態を有した居住者であるのか否かという点を把握、判断することが実務としても実際的であるのか現状に合致しているのかという点は疑問を抱かざるを得ない。

かかるような取引において、徴収を確実に実行し、国内に源泉のある取引に基づく所得を適正に課税するための本制度ではあるものの、国内に居住する取引当事者に対して源泉徴収義務を課すことが、すなわち国内に居住する者に負担を負わせることがfairな状況であるのかという点は疑問を覚える。かかる点は立法的な課題ではあるが、かかる点は疑問として近年の状況に鑑み、かつての国外者との取引が、限定的であり、一部のものに限られていた時代とは異なる環境であることを考慮するならば(経済取引環境が変化していることを考慮するならば)、当該状況を、時代背景を考慮した制度設計があるべきものではないだろうか。少なくとも租税負担の適正な配分、徴収の実効性を図る本制度の合理性は現況においても変わらないものと考えられるが、宥恕規定の見直しなど、制度背景にあるべき状況を反映した制度の見直しや負担の考慮を行うべき状況にあるものと考えられる。

このように本件では、所得税法における居住・非居住の具体的な判断が争点となっているが、本件の中心的な問題はかかるような具体的な判断による、租税負担を決定する所得の帰属先を決定することが必要であるということが背景にある。この決定は、従来より問題となっているが、所得税法は以下のように、定義規定において、所得の源泉を決定する居住者を定めている。具体的には、国内への住所若しくは継続的な居所の存在(保有)が定義規定となっている。従来、この具体的な認定としては住所の存在が問題となっており、如何なるものが住所として解されるのかという点が課題として捉えられている。

 居住者 国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人をいう。

本件判断でも、以下のように、最判を引用し、住所認定を行っている。

生活の本拠とは、その者の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心を指すものであり(最高裁昭和35年3月22日第三小法廷判決・民集14巻4号551頁参照)、一定の場所がその者の住所であると認定するについては、その者の住所とする意思だけでは足りず、客観的に生活の本拠たる実体を具備していることを必要とするものと解すべきである(最高裁昭和32年9月13日第二小法廷判決・集民27号801頁、同平成23年2月18日同小法廷判決・集民236号71頁参照)。

各人の住所の認定は、その者の国内外での①滞在日数、②生活場所及び同所での生活状況、③職業及び業務の内容及び従事状況、④生計を一にする配偶者その他の親族の居住地、⑤資産の所在、⑥生活に関わる各種届出状況等の客観的諸事情を総合的に勘案して行うのが相当である。

上記のように、所得税法における住所概念が、生活の本拠であることは近年、判例学説ともに確定しており、この具体的な認定が、継続的な居所の保有も含め本件事実関係のもとで、あらゆる所得を帰属する居住の事実を有する、居住者に該当するのか否かという点が、本件の意義であり、従来議論されている住所概念の延長にあるものと捉えられよう。但し、本件は通常の所得源泉、課税管轄を巡るものとは異なり、課税庁が非居住者であることを主張立証している事例であり、通常の事例とは異なる(課税管轄の存在、住所の所在)ものであり、かかる点で、居住者非居住者の具体的な判定を行う上で、実務的にも参考になるものといえる(租税条約における概念、規定との調整も含め)。

特に具体的な事実の認定においては総合的な各種要素(住居、住民票、職業、親族、資産の所在等)を判断材料としている。形式的な書類情報のみならず、客観的な事実関係を基礎に判断を行い、事実関係の認定を行っており、この点も客観的な状況を重視する租税法規における要請を参照しており、恣意の介在する余地を回避しようとしているものと考えられる。実務においては、決定的な要素が存在しないことに予測可能性や法的な安定を欠くものであるとして批判することは可能であろうが、上記も含めわが国の現行法において総合的な判断を採用していることは動かし難く、かかる点で、各判断要素の具体的な対応は重要となるものであろう。特に本件では判断要素としての適格性や他の要素と比しての優劣が主張立証されているが、もちろん個々の要素において如何なる理由をもって判断認定要素として他の要素と比して劣位に置かれるのかという点で合理的な、法令解釈に起因する根拠に欠けている部分も見受けられるが、具体的な事実との関係において認定する要素の中身を検討する上では重要と考えられる。

また、本件では居所との関係についても判断されており、

所得税法第2条第1項第3号でいう居所とは、人が多少の期間継続して居住はしているが、その者の生活の本拠という程度には至らない場所をいうものと解される。

定義にいうところの居所として、上記のような解釈を示している。本件では居住していないとごく簡単に認定を行っている。この点は上記の住所概念、生活の本拠との差異、差別化という点で、疑問を覚える。多少の期間継続とは如何なるものであり、法令では一年以上としているが継続とは、断続的であることを許容するのか等、また、居所としての場所の存在のみが問題であり、実際の居所としての事実関係の存在(居住の実態)が問題視されないのか(ホテル等への一時的な宿泊施設への継続的な居住との差異等、法令解釈として如何なるものが居所であり、生活の本拠という程度には至らないという点も曖昧である。特に場所的な概念としてのみ捉えるならば、ホテル等への継続的な滞在との差異を対比して、如何に所得を帰属させるべきであるのかという点は問題となるのではないだろうか。私見としては租税回避を考慮して単に居住可能な状況にあるような場所的な概念のみとは捉えず、具体的な所得の帰属先として合理的な一定の生活上の実態の存在も含む概念であると考えられるが、この点を突き詰めると生活の本拠との対比や如何なるものを帰属理由として捉えるのかという点が問題であり(モデル租税条約や国際的な所得帰属先の認定とのバランスも含め)、居所という概念も一義的に定まる概念とは捉え難く今後の課題ではないだろうか。

第十四条  国内に居住することとなつた個人が次の各号のいずれかに該当する場合には、その者は、国内に住所を有する者と推定する。
 その者が国内において、継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有すること。
 その者が日本の国籍を有し、かつ、その者が国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有することその他国内におけるその者の職業及び資産の有無等の状況に照らし、その者が国内において継続して一年以上居住するものと推測するに足りる事実があること。
 前項の規定により国内に住所を有する者と推定される個人と生計を一にする配偶者その他その者の扶養する親族が国内に居住する場合には、これらの者も国内に住所を有する者と推定する。

加えて、本件では上記のように、所得税法施行令に定める推定規定の適用に関しても問題となっている。最終的には判断においても当該規定の適用はそもそも対象とする趣旨が異なるものであり、本件のような事実関係においては適用の対象となる範囲ではないと判断している。中心的な争点は上記のように居所の認定や住所認定であるものの、この規定の解釈という点では、その適用対象を限定的に解釈した事例として、興味深いものである。私見としては上記のような推定規定の適用を制限する趣旨が本件規定に含まれているものと解することは困難であるようにも捉えられると考えられるが、この制度背景等をより具体的に検討する必要があるものといえる。また本件では詳細な検討を行っていないものの、上記規定は、住所推定において職業との関連において、通常必要という概念を用いて関連付けを行っている。特に検討なく、本件では、当該取引当事者が国内において通常継続的な居住を要しないものと捉えているがこれが如何なる根拠であり、そもそも上記規定における通常必要な職業とは如何なるものと解されるのかという点は定かとはいえず、上記本件規定の趣旨も含め、今後の課題となる。少なくとも所得を帰属させる住所概念との関連において推定規定として如何なるものを通常必要な職業と解するべきであるのかという点は、職業を所得の源泉と捉えるものであり、職業に起因する所得帰属を対象としているものと考えられるが、所得に応じて住所認定を本規定が想定する規定ぶりとはなっておらず、この点においても本規定の解釈がより検討すべきものといえよう。

以上です。毎度のごとく論文Stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2017年8月24日木曜日

判例裁決紹介(鳥取地判平成27年12月18日、青色事業専従者給与の相当性)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は鳥取地判平成27年12月18日で、事業を営む原告の妻に青色事業専従者給与を支出した際に、当該金額が課題であるとして、その過大額の必要経費性を否認した事例です。

具体的には、税理士業を営む原告の事業所得において妻に対して支払った給与額が、青色事業専従者給与に該当するのか否か、かかる点において必要経費の額として如何なる金額であることが必要であるのかという点が問題となったものである。他にも、別件税務訴訟費用としての弁護士費用が事業所得における必要経費に該当するのかという点もあわせて争っているものの中心的な争点は、青色事業専従者給与における相当性、過大額の判定であろう。この点において本件は特徴的なものであり、従来青色事業専従者給与に於ける具体的な争点は、対象者が如何なる者であるのか、あるいは、内部的な関係に基づき(生計を一にする親族)を対象としたものであり、実際に勤務状況等が把握されうるのかという点(実在性)が中心的な課題となって議論検討されていたが、本件では、金額の相当性が争われた事案であり、単に税理士業における青色事業専従者給与の相当額に限らず、他の業務における実際の金額の判定においても参考となるべきものと考えられる。実務においては実際、この支給する金額は如何なる方法をもって決定しているのかという点は興味深い点であり、リサーチしてみたいところであるが、上記のような争点を検討するにとどまり実際には具体的な金額そのものを検討することは限定的ではないだろうか(あまり事例が存在していない、確かに個人事業であり通常あまり金額的に相当程度を超過するものの支給という事実関係は想定し難い)。かかる点で実務的にも留意点を明らかにする上で有益な事例であろう。特に本件で問題となる過大額の判定は、通常法人税法における役員給与退職金に於いて問題となることが中心でもあり、その対比という点でも興味深いものであると捉えられる。特に法令は青色事業専従者給与において一定の判断要素をもってその過大額を判定する旨明示的に定めており、適用事例は多くないものの、この具体的な解釈及びその判定基準の適用、さらには事実への当てはめにおいて本件は重要な判断であるものと考えられる。

第五十六条  居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。
第五十七条  青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者と生計を一にする配偶者その他の親族(年齢十五歳未満である者を除く。)で専らその居住者の営む前条に規定する事業に従事するもの(以下この条において「青色事業専従者」という。)が当該事業から次項の書類に記載されている方法に従いその記載されている金額の範囲内において給与の支払を受けた場合には、前条の規定にかかわらず、その給与の金額でその労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、その事業の種類及び規模、その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況その他の政令で定める状況に照らしその労務の対価として相当であると認められるものは、その居住者のその給与の支給に係る年分の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入し、かつ、当該青色事業専従者の当該年分の給与所得に係る収入金額とする。

本件はその中心的な争点として、上記のように、青色事業専従者給与の相当性が争われたものであり、原告が営む事業において勤務する専従者の労務(この点が本来、特徴的な規定である、役員とは異なり、職務ではなく労務としての支払が想定されている)、と比して高額であるのか否かという点が事業所得の必要経費としての該当性という点で問題となっている。当該条文は所得税法57条において、規定されているものである。

同じく従来、支給額の相当性が問題となっていた事例としては役員給与退職金の相当性が問題となっている事例が中心的なものであったが、近年はその具体的な適用事例が減少しているものと考えられるものの、金額的な相当性に関しては、租税法規において多様な争点が提供されている。この対比としても本件は興味深いものであるが、所得税法の青色事業専従者給与の相当性が問題になった事例として、極めて珍しく、個別的な事業(税理士業)における判断であるものの、特に相当性を判断する枠組みをより具体化するという点で有益な事例であると捉えられる。役員たる者に対する支給額が問題とされる法人税法規定とは異なり、専従者はその業務内容ととして、必ずしも多様なものではなく、以下のように、使用人としての労務の対価としての相当性が中心として施行令に於いて規定されている。役員業務の多様性からとは若干距離があり、他の企業との対比、同種同程度の他者との比較以外にも、他の使用人との労務内容との比較がその中心として捉えられている。本件にもその具体的な認定においては、当該専従者が担う業務、職務内容との類似、労働時間などが主たる判断基準として具体的な相当額が認定されている。この点が法人税法との大きな相違であり、このように考えれば、実は、他の従業員との比較という明示的な対比基準が事業主体内部でも把握可能であり、リスクマネジメントとしても、特異点をより把握することが金額の相当性を主張立証する根拠となるべきものであるだろう。

すなわちその相当性を判断する上で、過大額を判定することが比較的容易であり、この点は充分に認識されるべきものと考えられる。機械的な判定が行われるべきものとといえよう。少なくとも、業務内容と、職務内容との対比において内部との調和は重要な点であるように考えられる。


第百六十四条  法第五十七条第一項 (事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等)に規定する政令で定める状況は、次に掲げる状況とする。
 法第五十七条第一項 に規定する青色事業専従者の労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度
 その事業に従事する他の使用人が支払を受ける給与の状況及びその事業と同種の事業でその規模が類似するものに従事する者が支払を受ける給与の状況
 その事業の種類及び規模並びにその収益の状況

このような判断は、本規定が、規制する対象者として専従者として事業主と生計を一にする親族を前提としたものであり、役員とは異なり、選定プロセス等において大きな相違があることも影響しているであろう。また、規定として57条が単独で規定されているものではなく、56条において事業から対価を受ける親族に対する特例として、累進課税構造を前提として、所得を分割し、租税回避を防止することを原則的に禁止する規定とセットで解釈されているものと考えられる。法人税法規定は平成18年において、同様に役員給与を原則禁止し、その例外として一定の支給を許容する構造に規定が変化しているが、本件規定はその制定当初より、この構造を採用しており、例外として厳格に運用されるべきものと評価すべきであろう。

青色事業専従者給与は、そもそも青色申告における特典であり、また法人役員以上に、その操作性は高いものと評価せざるを得ない(従って従来その実在性が中心的な問題となっていたものといえよう)。かかる点を背景として生計を一にする親族という特殊な関係を前提とし、さらには、担う職務においても、通常の労働等も対象となるものであり、原則的に経費計上を否認する対応の例外的な規定であるものと解するべきであり、その適用範囲は幅広く、具体的な認定としては実際は厳格に運用されるべきものと考えられる。

すなわち、単に利益調整や租税回避の意図などは必要とされるべきものではなく、少なくとも相当程度に金額的な高額であることを要請するものではなく、単に職務内容との対価として適正な金額であることを要請する基本的な性格を本件規定は有しているものと解するべきであろう。

判時においても、以下のように例外的な必要経費としての算入を明確にしている。

青色事業専従者に支給した給与の額が、その労務の対価として相当であるといえる場合に、例外的に必要経費としての算入を認めていることからすれば、当該給与が必要経費として認められるためには、提供された労務との対価関係が明確であることが必要であるというべきである。

さらに、労務との対比において支給金額が対価関係として明確であることが必要であるというべきとしており、かかる判断は上記のような判断から導かれるものとして合理的なものといえよう。つまり、本件規定はその対象としている租税回避が特殊関係者に対する所得分割を対象としており、恣意性の排除や利益調整に対応する役員給与とは若干異なるものとも考えられる。かかる点が上記解釈にも影響を及ぼしているものと捉えるべきである。単に租税回避の防止をその趣旨としているものと理解するのみならず、背景としている具体的な租税回避をも考慮して、具体的な基準を導くべきものといえよう。もちろん、上記規定においても同業種との対比も考慮されているものであるが、より特徴的な部分である内部との対比という点も特徴的な点として再認識されるべきものと解するべきであろう。


以上です。毎度のごとく論文Stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが、参考までに。

2017年8月23日水曜日

判例裁決紹介(東京高判平成27年11月18日、関連会社への株式譲渡価額、帳簿書類の保存)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、
東京高判平成27年11月18日で、関連会社に対する上場株式の譲渡が市場価格よりも低額(10%)であり、当該差額が寄附金として扱われるか否かが問題となった事案です。

具体的には、本件は納税者が行った関連会社への上場株式(取引企業であり、グループ外への売却は事実上不可)の譲渡を行った際に、その譲渡価額が、取引日における市場価格と比して低額(約10%低額)であり、かかる取引によって、一定の市場価値との差額部分に該当する価値が関連会社に対して移転したとして、寄附金課税されたことに対して、法が定める要件としての対価は、基本的に譲渡契約の当事者の約定金額であり、また、仮に時価であるとしても、その対価としては市場取引における時価として取引日の時価の範囲内であれば、足りるとして、低額譲渡には該当せず、もって寄附金としての位置付けを受けるべきものではないということから不服として提起されたものであり、さらには、過失によって紛失した総勘定元帳を調査時において提示できなかったことに対して、青色申告承認取消事由に該当するとした点も争われている。判示としては、地判と基本的に同一であり、納税者の主張を全面的に退けているものである。中心的な争点は2つ存在し、帳簿保存等における理由不備や紛失による取消の不当性等、帳簿等の保存に関する検討及び、有価証券譲渡における適性や益金の認定、時価の認定が問題となっているものである。いずれも基本的な論点ではあるものの、法人税法の基本となる22条2項、及び基礎としている会計帳簿等の保存をめぐる事例であり、かかる点で両点ともに基本的な法令の趣旨やその背景となる制度趣旨等を前提として検討されるべきものであって、より基礎的な理解が必要となるものであると捉えられる。また、上場株式の譲渡や帳簿書類等に対する紛失は、実務においても日常的に起こりうるものであり、このような取引に対する具体的な処理としては、実務家としても、更にはトレーニングとしても留意点を明らかにするという点で有益な事案であるように考えられる。

第百二十六条  第百二十一条第一項(青色申告)の承認を受けている内国法人は、財務省令で定めるところにより、帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存しなければならない。
 納税地の所轄税務署長は、必要があると認めるときは、第百二十一条第一項の承認を受けている内国法人に対し、前項に規定する帳簿書類について必要な指示をすることができる。

まず上記のように本件の中心的な課題となっているのは、法人税法126条以下における青色申告における帳簿書類の備付け保存が問題となっており、保存の要件として摘示による(質問検査権の行使などの)開示を含むことは、既に最高裁判決によって明らかであり、この点を前提として、過失による不備(紛失)が当該取消事由として不当ではないのか、すなわち、裁量を逸脱しており、妥当性を欠く処理であるとして争っているものである。保存の意義において通常の用法よりもより拡張的に解釈を行い、提示までも含むものと解した最判で問題となった事例とは異なり、調査への不協力ではなく、過失による紛失によって、当該帳簿書類を提示できなかったことをもって、これを取消対象としたことは妥当性を欠くものであるという点が控訴人の主たる主張である。

そもそも青色申告に於いては、上記のように、一定の帳簿書類の作成が義務付けられているものであり、その作成義務があることに異論の余地はない。しかしながら、如何なる程度をもって当該帳簿書類を作成を作成すべきものであるのかという点は、その具体的な程度、対象等必ずしも明瞭となっているものではない。上記法文では明文をもって記載しておらず、財務省令に委ねられているが、その具体的規定が下記のようになっており、複式簿記の原則、整然明瞭と曖昧な文言をもってプラグラムされている。対象は資産等に影響を及ぼす一切の取引としており、この影響を及ぼすという意義が法的評価として如何なるものを指すものであると捉えるべきであるのかという点はより検討が必要であるものと捉えられる。青色申告制度がその基本的な前提として制度導入に当たって適格な帳簿書類を作成し、特典をもってその作成を奨励し、もって適格な租税負担の能力を把握することにあることを鑑みるならば、単に手続規定として捉え、内容面等の不備は問題としないものと捉えることは制度の基本的な趣旨に反するものといえるのではないだろうか。しかるに適格な帳簿書類の作成が求められており、より具体的な適格な帳簿等を判断する基準が法人税法において如何なる点で求められているのかという点が課題となるだろう。

また本件とは直接的には別件ではあるが、上記126条2項において税務署長に対して、帳簿書類に対して、必要があると認められる場合には、必要な指示をすることができるとしている。この必要性が如何なるものであり、如何なる基準を以て必要性を判断すべきであるのかという点は明示的ではなく、さらに、税務署長の権限として必要な指示とは如何なるものであるのか、単に提示を求める等の権限を規定しているものであるのか、記録修正や関連書類の確認等、より広範囲の権限を有するものであるのかという点で解釈が争われよう。この点も必要性や、法が求める適格な帳簿書類等がいかなるものであるのかという点にも依拠するものといえよう。私見としては、青色申告制度が上記のように、内容面の適格性を要請しているものと解されることからも単に提示等を求めるものではなく、関連書類の確認や場合よっては記録の修正を求めることが可能であると解するべきものと考えられる。

この点に対して、法人税法は、22条4項において公正処理基準を作成し、基本的には、その具体的処理において企業会計等に依拠することを明記しているが、その具体的な手続として青色申告における重要な要素として、企業会計における概念との連動が図られているものである。しかるにこの基準をもって、法人税法が求める青色申告において適格な帳簿書類を判断すべきものと解するべきであろう。但し、公正処理基準の具体的な現れとして捉えるならば、青色申告において要請されているものとして限定的に捉えるべきものではなく、法が要請する適格な帳簿書類の意義として解するべきと考えられる法人税法が求める適切な納税者の負担能力を把握する観点からは、相違がなく、単に特典をもってその作成を企図しているものであり基本的な趣旨目的は同一であって、差異を設けるべきものではなく、単に適格性を欠く帳簿書類は青色申告における取消事由となりうるものであると考えるべきであろう。つまり青色申告における帳簿と白色における帳簿との間で、求められる適格性において相違はないものと考えるべきである。そもそも一般論として青色申告にち、法人税法において如何なる帳簿を揃えるべきであるのかという課題は、課税要件を法定し、明示的であることを要請する租税法律主義の立場からも、また適格な納税負担を図る上でも、より精緻化されるべきものといえよう。

第五十三条  法第百二十一条第一項(青色申告)の承認を受けている法人(以下この章において「青色申告法人」という。)は、その資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引につき、複式簿記の原則に従い、整然と、かつ、明りように記録し、その記録に基づいて決算を行なわなければならない。
第五十四条  青色申告法人は、全ての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿(次条において「仕訳帳」という。)、全ての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿(次条において「総勘定元帳」という。)その他必要な帳簿を備え、別表二十に定めるところにより、取引に関する事項を記載しなければならない。
第五十五条  青色申告法人は、仕訳帳には、取引の発生順に、取引の年月日、内容、勘定科目及び金額を記載しなければならない。
 青色申告法人は、総勘定元帳には、その勘定ごとに記載の年月日、相手方勘定科目及び金額を記載しなければならない。

本件では、上記のように紛失によるいわば過失による総勘定元帳の紛失に起因して、青色申告の承認取消が争われている。本件取消原因が調査への不協力に起因して当該保存の不備を問題とした最判とは異なり、単に過失によるべきものであり、納税者に対する帰責性が程度として低いものと捉えていることが控訴人の主張に垣間見られる。確かに青色申告の取消は取消後の事業年度において影響を及ぼすものであり、申告納税制度において単なる一定時点の過失が、及ぼす影響しては過大であって衡平を失っているものと考えることもできよう。しかしながらこれは、帳簿書類や会計処理に対する認識の相違あるいは会計記録に対する基本的な知識不足であるかもしれないが(法律家に多い)、上記のように青色申告、ひいては法人税法が求める記録としての帳簿書類の適格性に対する基本的な前提を欠くものであろう。

そもそも、青色申告をもって特典を与え、適格な帳簿書類の作成を求めていることがあり、会計記録としては、単に単年度の記録としての不備として評価すべきものではない。複式簿記の原則によるものとしていることからも明らかなように、損益取引と財政状態を記録するものとして求めており、単なるフローの記録のみを求めているものではなく、財政状態を記録し、事業年度ごとを連環することで、継続的な記録を重視していることは明らかであり、会計記録において、単なる一定時点の不備は、記録の正確性や網羅性を欠くものと捉えられる。すなわち継続的な取引の記録として一定の適格性を備えているものが法の要請する帳簿書類であり、単なる一定時点に影響を及ぼす不備ではないものと評価すべきであり、一過性のものではなく、申告納税制度においては複数年度において影響を及ぼすべき重要な点であると評価すべきである。このように考えると、実務家としては結果の重要性も考慮して、正確な記録を連続性をもって確保することが重要なものであると理解するべきである。この連続性が会計記録上の重要な要素として、認識されておくべきであろう。

また、本件では上記手続上の問題と同時に実定法上の問題として、法人税法上、有価証券売買における対価の額が問題となっている。関連会社に対してその保有する株式を譲渡したことによって、生じた時価、市場価格との差額が如何なる評価を受けるのか、すなわち時価・市場価格よりも低額の譲渡(約90%、約10%の評価差額)として評価され当該差額が関連会社への寄附金として認定されうるか否かという点が争点となっている。より具体的には取引日の市場価格の約10%を差し引いて譲渡したものであり、この取引の合理性が問われたものである。

第六十一条の二  内国法人が有価証券の譲渡をした場合には、その譲渡に係る譲渡利益額(第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。)又は譲渡損失額(同号に掲げる金額が第一号に掲げる金額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。)は、第六十二条から第六十二条の五まで(合併等による資産の譲渡)の規定の適用がある場合を除き、その譲渡に係る契約をした日(その譲渡が剰余金の配当その他の財務省令で定める事由によるものである場合には、当該剰余金の配当の効力が生ずる日その他の財務省令で定める日)の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。
 その有価証券の譲渡に係る対価の額(第二十四条第一項(配当等の額とみなす金額)の規定により第二十三条第一項第一号又は第二号(受取配当等の益金不算入)に掲げる金額とみなされる金額がある場合には、そのみなされる金額に相当する金額を控除した金額)

(低廉譲渡等の場合の譲渡に係る対価の額)

2-3-4 法人が無償又は低い価額で有価証券を譲渡した場合における法第61条の2第1項第1号《有価証券の譲渡損益の益金算入等》に規定する譲渡に係る対価の額の算定に当たっては、4-1-4《上場有価証券等の価額》並びに4-1-5及び4-1-6《上場有価証券等以外の株式の価額》の取扱いを準用する。(平12年課法2-7「四」により追加、平15年課法2-7「八」、平17年課法2-14「四」、平19年課法2-3「十」により改正)
納税者の主張にもあるように、法人税法上は、有価証券における譲渡損益の認定としては、上記のように法人税法61条の2に於いて対価として規定されている。この対価の額として、本件低額譲渡における譲渡価額が該当するのか否かという枠組みが問題となっているものであり、この対価の額がいかなるものであるのかという法令解釈が問題となっているものと考えられよう。

この対価の意義として通常の用法に従い、契約当事者における合意した価格として取り交わされた金額と捉えるのかまたは、法人税法独自の概念として適正な対価の額によるべきものとして理解されるべきであるのかという点が争いがあるものである。法人税法は法人税法22条2項に定める無償譲渡等と同様に、さらには、当該譲渡との間での租税負担の公平という点で、同じく低額譲渡における適正な価額による課税が肯定されているものであるが、この法人税法一般に益金として定めるものと本件規定がいかなる関係に立つものであるのかという点が法令解釈上の問題であろう。

本件規定が22条2項のと別段の定めであり、必ずしも22条2項と同様の状況にあるものと解することが当然視されるものではないが、この規定を如何に捉えるべきであろうか。判示に於いては、この対価の額に関しても、22条2項と同様に、一般的な益金の計上と異なるものではなく、同様の背景にあるものと捉えている。租税法がその基本的な要請として、課税要件の明確性を要請しているものと考えられ、基本的に文理解釈によるべきであり、その解釈として文言の用法に従うべきものと考えられるが、本件では、その解釈として、法人税法の根本に属する22条2項の解釈と特に分離することなく、固有の概念をもっているものと解しているものと考えられる。私見としても、当該規定は、別段の定めであるものの、有価証券取引における適切な譲渡損益をより明示的に規定したものと解され、かかる背景から鑑みるに、一般的な規定と別意に解するべき根拠は存在していないものといえよう。確かに別段の定めとして有価証券特有の計算方式を定めたものとの理解も可能ではあろうが、法人税法の最大の特徴である適正な所得益金計算の要請を調整するべきものとして理解することは非常に困難であろう。有価証券の取引においても、その特有の取引としての取扱を求めるべき要因を見出すことは懇談ではないだろうか。

また、この規定が適正な所得計算を求めるものであり、時価による課税を要求するものであり、無償、低額等の取引に対してこれを適正な金額(時価)での取引があったものとして引き直す根拠規定として解されるものと考えると、その適正な時価が如何なるものであるのかという点が課題であり、本件取引における約90%の取引金額がその時価に該当するのか否かという点が判断されることになるものといえる。

納税者の主張としては、当該市場取引が前提となっている限りにおいて、取引日の値動きに於いてその低額なものも時価に該当しうるとの主張を行っており、仮に本件規定が時価によるべきものを要請する規定であるとしても一定の合理性がある取引として本件取引による価額を捉え、すなわち対価の額に該当するものといえると判断しているものと考えられる。確かに時価という概念は法人税法にとどまらず、租税法規一般においてその具体的な算定は非常に困難を極めるものである。しかるに一定の幅のある概念であり、必ずしも一義的に算定が可能なものと捉えることはできないといえる。かかる状況において、法が求める価額、時価が如何なるものであるのかという点をより明確にする必要があるものと考えられる。

明示的に法令解釈としてこの対価の額が如何なるものであるのかという点は必ずしも明示的に規定されているものではないが、上記のように法人税法が求める適正な益金所得の額としての計算
を図るものとして捉えるならば、その求めるところとして、時価による課税を想定しているものといえよう。この時価がより具体的な如何なるものであるのかという点が課題であるが、その意義としては他の租税法規との統一的な解釈という点で、不特定多数による市場取引を前提とした客観的な交換価値がその具体的な意義として合理的であろう。客観的な金額の確定、公平負担を要請する観点からは、この市場取引を前提としている限りにおいて、特段の合理的な価格形成が期待できないような状況にないかぎりにおいては、基本的に市場取引における終値をその対象として理解するべきであり、租税法規が求める客観性や確定性が充足しているものと考える。主張にあるように、一定の幅の取引に於いてその操作性を認めることは、法人税法が求める客観性を求めている点で恣意性が介入する可能性があり、許容されるべき可能性は低いと評価される。より合理的な価格として主張するならば客観性や確定性、明示的な金額が確定することで恣意が介在することないとの一定の条件を認められることがまずは第一であり、その上で適正な対価額として比較衡量されることになるだろう。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2017年8月9日水曜日

判例裁決紹介(平成28年8月2日裁決、長期譲渡所得課税特例と居住の意義)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。
今回は平成28年8月2日裁決で、長期譲渡所得の特例の適用対象要件として居住の用に供していたタイミングに対する終点が争われたものです。

本件は、請求人がなした建物等の譲渡が下記、租税特別措置法に定める居住用財産の長期譲渡所得の特例(6000万控除)の適用対象に該当するか否か争われたものである。より具体的には、当該制度の適用対象となる家屋等に該当するのか否か点が課題であり、請求人の所有していた家屋が居住の用に供されているか否か、あるいは居住が如何なるタイミングにおいて終了しているのかという点が中心的な争点となっているものである。すなわち居住のように供しているということが如何なる意義を有するものであり、その具体的な事実関係との当てはめにおいて、重要な概念として考えられるが、この点を如何に捉えているのかという点が中心的な解釈上の問題となるものといえる。本件では、請求人が農業、就農研究のために離居しており(賃借による家屋へ移転)、住民票は当該家屋に存在していたものの、既に別の居宅を有しており、かかる点で、法が定める居住の用に供することを終了したタイミングが如何に捉えられるのか本件特例の適用対象範囲であって如何なるタイミングにおいて居住を終了し、移転しているのかという判断が問題となっている。居住の用に供することは、他の租税特別措置法においても同様に要件となるものであり、租税法において重要な特に、担税力の減少を把握する(そもそもこの概念自体があやふやではあるものの)、租税負担を減少させる要因として規定されているものであり、この適用要件を具体的に検討することは、実務的にも重要ではあるだろう。

私見としては、近年納税者の生活の本拠として、住所概念を争う事例、具体的な事実関係を争う事案は存在している、議論が多いものの、本件は、文言としては別のものであり、居住という概念を、別物として理解すべきであり(より正確には租特の趣旨目的から具体的に判断すべきではあるが)、文言も異なり、住所としての生活の本拠という概念的意義は有しておらず、この対比としても居住の用に供していたということが如何なる概念であり、小規模宅地等の特例等、その他にも居住の用に供しているという要件は用いられており、検討の必要性は高いものといえる。係る制度適用の要件を判断する上でも参考になるべきものと考えられる。

第三十一条の三  個人が、その有する土地等又は建物等でその年一月一日において第三十一条第二項に規定する所有期間が十年を超えるもののうち居住用財産に該当するものの譲渡(当該個人の配偶者その他の当該個人と政令で定める特別の関係がある者に対してするもの及び所得税法第五十八条 の規定又は前条、第三十三条から第三十三条の三まで、第三十六条の二、第三十六条の五、第三十七条、第三十七条の四、第三十七条の五(同条第五項を除く。)、第三十七条の六、第三十七条の七、第三十七条の九の四若しくは第三十七条の九の五の規定の適用を受けるものを除く。以下この条において同じ。)をした場合(当該個人がその年の前年又は前々年において既にこの項の規定の適用を受けている場合を除く。)には、当該譲渡による譲渡所得については、第三十一条第一項前段の規定により当該譲渡に係る課税長期譲渡所得金額に対し課する所得税の額は、同項前段の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額に相当する額とする。
 課税長期譲渡所得金額が六千万円以下である場合 当該課税長期譲渡所得金額の百分の十に相当する金額
 課税長期譲渡所得金額が六千万円を超える場合 次に掲げる金額の合計額
 六百万円
 当該課税長期譲渡所得金額から六千万円を控除した金額の百分の十五に相当する金額

 前項に規定する居住用財産とは、次に掲げる家屋又は土地等をいう。
 当該個人がその居住の用に供している家屋で政令で定めるもののうち国内にあるもの
 前号に掲げる家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたもの当該個人の居住の用に供されなくなつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間に譲渡されるものに限る。)
 前二号に掲げる家屋及び当該家屋の敷地の用に供されている土地等
 当該個人の第一号に掲げる家屋が災害により滅失した場合において、当該個人が当該家屋を引き続き所有していたとしたならば、その年一月一日において第三十一条第二項に規定する所有期間が十年を超える当該家屋の敷地の用に供されていた土地等(当該災害があつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間に譲渡されるものに限る。)
 第一項の規定は同項の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書に、同項の規定の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、同項の規定に該当する旨を証する書類として財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。
 税務署長は、確定申告書の提出がなかつた場合又は前項の記載若しくは添付がない確定申告書の提出があつた場合においても、その提出又は記載若しくは添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該記載をした書類及び同項の財務省令で定める書類の提出があつた場合に限り、第一項の規定を適用することができる。

本件のような事実関係においては、また居住のように供するという文言からは、まずは居宅としては、生活の本拠という解釈が確定している住所とは異なり、単一の場所的概念を必ずしもないことが前提であるように考えられるが、(もちろん何らかの生活の拠点としての意義を求めるものとしての共通点を有することからも、住所概念との対比は必要であるが、)、まずはこの居住の用に供するとは如何なる意義を有するのかという点が解釈上の争点となっているものである。

本件特例の趣旨としては判断にもあるように、

本件各特例は、個人が自ら居住の用に供している家屋又はその敷地等を譲渡するような場合は、一般の資産の譲渡に比して特殊な事情があり、担税力も高くない例が多いことなどを考慮して設けられた特例であると解される

としており、一般の財産との対比において、特殊事情としての居住、すなわち、何らかの次の場所が必要であるという背景を考慮した規定であるものと考えられる。単に担税力が低いとの判断は、そもそも担税力自体が概念として明示的ではなく、具体的な解釈の指針としては機能し得ないと考えられるので、まずは本件制度の具体的な背景を明らかとした上で判断すべきものであろう。この点があまり具体的に明らかにされていない点で居住の用に供するという概念の明示的な解釈は困難であり、一定の幅のある概念とならざるをえないものと捉えられる。少なくとも譲渡損益は、次の居所地を確保する上で必要な原資となるべきものであり、かかる点から課税対象としてなじまないとの判断であるのであろうか。制度適用対象として居住のように供さなくなってから時間的な制限をおいていることからも、かかる制度背景は、肯定されるべきものであり、居住の用自体は、複数の居所地が想定されるべき文言規定であるが、上記のようにその背景を捉えるならば、単に、管理所有している、事業にも使用している、別荘等に使用しているなどの一時的なもの等の場合は、その対象から離れると捉えるべきであり、現実に何らかの対象者が実際に居住していることを要請するものと解すべきものであろう。制度上は、配偶者その他特別の関係にある者であることを要するものとして居住主体が定められている。本件では単身者であり、あまり問題にならないが、法規定上は、まずは居住において如何なる者が主体であるのかという点の認定が確定されるべきである、これは居住が一定の者の住居として捉えられる以上自明のことかもしれないが、居住概念においても(住所概念と同様に)、主体が認定確定されるべきものといえよう。

かかる点において、本件判断では、他の法規の解釈も含め総合的に判断を行っているものの、最終的には実際の居住が事実関係として客観的に認定されることが必要と解している点で、結論としては合理性を有するものといえよう。

そもそも本件の居住の用に供するという概念において、居住とはいかなる状態を指すものであるのかという点は必ずしも明示的なものとは捉えられない。本件では事実認定として、具体的な居住関係を把握する際に、公共料金の使用状況が中心的な基準として活用しているが、この合理性を支えるものとしてまずは居住が如何なる概念であるのかという点を明らかにすることが求められるものといえよう(かつては別件であるが、ランプを持ち込み、公園の水道を利用してたというような居住を主張するような事例も存在している)。
しかしながら、この概念を明らかにすることは今後の課題ではあるものの、上記のように居住の用に供することは、実際の居住関係を要請するものという点からは、上記の公共料金による
認定は一定の合理性を有するものとも評価される。

住所概念においては、生活の本拠という形で何らかの主観的な意図が介在することになろうが(もちろん客観的な確定が可能であることが条件としては言うまでもないが)、居住に関しては、上記のように、実際の生活実態(実在性を)を重視した概念であり、かかる点からも客観的な事実関係として公共料金による判断は他の要素と比して優位性をもつものと考えられる。
しかしながら、このように考えると生活実態の実在性は、複数存在することも考えられ(本件では制度上一定の配慮として主たるという要件が追加されている)、住所とは異なり、居住においては、その概念として生活実態としての期間的な継続・連続性が必ずしも要請されていないものとも捉えられる。制度適用、特に租税特別措置として一定の政策的配慮を行うべき、特に特例適用によって何らかの租税負担の減少を図るべきものとしては、その背景として次の生活実態としての箇所を必要とすることを要請しているものであり、単に居住の外形的な事実関係に左右されるような状況は好ましいものではなく、管理支配等との概念的な相違を明らかとし、より、制度趣旨、背景に合致した要件の付与を要請すべきものであるものとも考えられるが、少なくとも事実関係に基づく、制度適用の要件の操作性は排除されるべきであり、より恣意的な判断とならないような制度的対応が必要であるように評価される。

また本件の直接の争点とはなっていないものの、本件の事実関係では、まず、請求人が確定申告において譲渡所得の特例適用の申請を行わず、本制度の適用を求めて更正の請求を行っている。この当初申告においては、当然の如く制度適用がないため、長期譲渡所得に関する特例適用条件たる書類添付等の要件を満たしていない。本件特例はその適用要件として手続要件として、書類添付の要件が定められている。かかるような事実関係を行った理由は附帯税に対するリスクを回避するべく、税理士のアドバイスに従ったものであるようであるが、当初申告要件を充足しておらず、上記のような実態的な事実認定のみならずこのような手続規定の不備がその適用を受けられないという判断を肯定しているものであるこの手続要件の不備を巡って宥恕規定の適用を争っているがこの点も否定されており、二重の意味で本件制度適用の合理性は否定されていることになっている。このような課税要件の充足に関するグレーな判断が必要とされるような状況下では、本件のように、とりあえず、適用を申請せず後に制度適用を争う手法を採用することが多いように(追徴のリスクを避けるためにも)思われる。
しかしながら、租特はその公平負担の原則を犠牲にし、一定の政策的な目的を達成しようとする以上、厳格な制度適用の要件が存在するものと解するべきであり、上記のような適用要件としての実態的なもののみならず、手続要件の充足も非常に重要視されるべきものである。これは租特の性格上、公平負担の犠牲を観念する以上、衡量としてその適用を充足するような事実関係にあるかどうかを明示的にしておく趣旨としていることからも合理性を有するものといえる。本件ではおそらく、専門家としての責任(最終的に適用はないので、大きな過失とはならないかも知れないが)として当初申告要件の重要性は改めて認識されるべきであり、そのリスクは充分に認識されておくべきであろう。


以上です。毎度のごとく論文Stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2017年8月3日木曜日

判例裁決紹介(平成28年8月22裁決、実質所得者課税原則)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。
今回は平成28年8月22日裁決で、飲食業を営む実質的な経営者に対して、それぞれ法規の実質所得者課税の原則等の適用により法人所得課税、消費税課税が行われ、その是非が争われたものです。

具体的には、本件は、請求人が異なる名義で営む飲食店において発生した収益が如何なる者に帰属するべきものであるのかという点が争われたものである。請求人が多数経営する飲食店においては、営業許可等は請求人以外の名義によって行われているものの、売上の管理や従業員雇用、設備費の負担等を総合的に勘案した結果、かかる収益は、法人税法11条及び消費税法13条に定める実質所得者課税の原則、資産の譲渡等における実質判定の規定により、請求人に帰属するとした更正処分の是非に関して、これを不服として提起されたものである。上記のように営業許可などの名義が異なる場合において如何なる者に対して収益が帰属されるべきであるのかという点が中心的な争点であり、実質的な帰属判定を行う、上記規定の適用が行われたものである。この適用の是非、如何なる基準によって判断されるべきであるのかという点が問題となっているものである。

下記、本件で問題となった実質的な判定は、英米法的な性格を有するものであり、その基本的な趣旨は共通しており、実質的な妥当性や租税負担の公平を企図したものであり、本規定は、租税法の基本的な要請として明確な要件を定め、法規による制約の点で予測可能性の確保や、法的な安定性の要請が問題となってきたものであると考えられる。従来この点は、かかる点で租税法律主義の観点から問題視されているものであり、本件もその適用を巡って争っているという点で、同様の類型に属するものと考えられる。かかる点で、その判断の合理的な基準をより具体化する上で、またこのような実際の名義が異なるような事実関係の経営が、実務的にも行われうるものであるのかという点は、一度実務家の皆さんにも聞いてみたいところであるが、所得の帰属のみならず、広義の点で実質的な判断による課税は広く行われていることも想定され、かかる点でも実務家においてもその具体的な帰属判断を行う上で、有益な事例であるように考えられる。

このような実質的な判断を行う規定の存在に対しては、単に適用要件が明確ではなく、その解釈として、適用が納税者の予測可能性に反するというような一面的な理解では、その制度趣旨を反映させえず、かかる点でその妥当性が欠けるものと批判することは容易であるものの、本件のように、租税法規の適用にあたって、実質的な判定の重要性は、上記のように、基本的な租税負担の公平性や実質的な租税負担を適正に実際の租税負担に反映させるという基本的な意図を考慮すれば、租税法律主義との間で、その衡平が図られた規定であり、当該規定の合理性は肯定され得よう。しかしながら、上記のように、本規定は、実質的な状況を反映させ租税負担・帰属を判断する法的な性格を有したものであり、租税法の基本的な要請に合致し得ない、納税者に取って、予測可能性に懸念のあることは否めない。例えば各種要素(売上管理、雇用等)を総合的に判断を行うことなどはその典型であろう。また、実質的な判断を行う対象が所得の帰属等や資産の譲渡等を行った者の判断、すなわち租税負担を行うべき帰属対象者を判定するという法規定の枠組みを超えて、対象を拡張し、私法の関係性を超過して、租税負担を帰着させるような判断を行うことは、法規定の、特に上記のように衡平を図った本件規定の趣旨にも反するものであり、あくまでも帰属等を判断する上での適用に限定されるものと考えるべきであろう。かかる点で、広く実務的にも実質基準、実質主義、実質課税の原則等の基準的な処置は、必ずしもその法的な性格として、合理性を有するものではないものといえる。この点は、旧来より議論されている点ではあるが、かかるような基本的な背景、制度趣旨に基づき、実質を総合的に判断する上で、考慮すべき要素が如何なるものであり、如何なる点で重視されるべきであるのかという点をより明示的にしていくことが検討課題であるといえよう。

第十一条  資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

第一三条 法律上資産の譲渡等を行つたとみられる者が単なる名義人であつて、その資産の譲渡等に係る対価を享受せず、その者以外の者がその資産の譲渡等に係る対価を享受する場合には、当該資産の譲渡等は、当該対価を享受する者が行つたものとして、この法律の規定を適用する。

本件は、その具体的な判断として、従来より議論が存在する法人税法における実質所得者課税の原則の適用に加えて、消費税法上の資産の譲渡等を行った者の実質的な判定を追加しており、法人税法の納税義務者を実質により判断するのみならず、消費税の納税義務者も同時に判断しており、同じ枠組みの中で判断している点で、特徴的である。

「法人税は、その営む事業から生じる所得に着目して課される税であり、その納税義務者は当該事業に係る費用収益の帰属主体である。また、消費税等は事業者が行う資産の譲渡等に着目して課される税であり、それらの納税義務者は課税資産の譲渡等を行った事業者である。そして、実質的な費用収益の帰属主体及び資産の譲渡等の帰属主体については、名義と実質が一致しない場合においては実質的にこれらを享受する者に対して課税されることとなる(法人税法第11条《実質所得者課税の原則》、消費税法第13条《資産の譲渡等を行った者の実質判定》参照)。 上記実質的な費用収益及び資産の譲渡等の帰属主体については、事業に至る経緯、経営の実態、経理関係、関係者の認識等を総合して判断されるべきである」

具体的に、判断においても上記のように、基本的に消費税法と法人税法の判断において、同様の枠組みにて検討を行っている。この判断根拠が如何なるものであるのかという点は定かではないが、単に上記規定が実質を判断するものではなく、租税法規の基本的な要請とのバランスにおいて成立していることを鑑みれば、この判断は、いかなる理由であるのかという点は疑問を覚える。

上記のように本件の中心的な争点は請求人が経営する各店舗の収益の帰属及び資産の譲渡等の実質的な行った者が如何なるものであるのかという点が問題になっているが、その判断はこのように同様の枠組みに基づき判断を行っている。すなわち本件における中心的な課題は、上記実質判定の基準が如何なるものであるのかという点にあるといえる。判断においては、詳細な事実認定と、各店舗それぞれの状況を詳細に検討を行った上で判断を行っており、収益管理の状況や雇用、設備負担の状況などに基づき判断を行っている(この点では実務上もその租税負担の帰属を判断することは。しかしながら請求人及び課税庁共に、実質的な判断を各種要素に基づき総合的に判断することで双方の主張を構成しており、かかる点で大きな相違はないものの、具体的にその判断を行っている要素は、ズレがある。この点は特に詳細に検討が行われてはおらず、上記のように、その判断において、事業に至る経緯、経営の実態、経理関係関係者の認識等、具体性に欠ける判断基準を示している。この点において、それぞれが如何なる点で本規定の趣旨目的に合致しているのかという点では詳細は不明であり、かかる判断は、実質的にフリーハンドによる負担帰属の判断を行うことになりかねない。かかる点で危惧される。

また既に言及したように、本件の特徴は、①及び②という基本的な租税構造が異なる全く別の法規による実質的な判断を同様の枠組みと捉え、認定判断を行っている点に疑問を覚える。法人税法と消費税法は、上記規定ぶりを見ても、必ずしも同一の帰属関係に基づくものではなく、その基本的な性格は、所得と資産の譲渡等と異なるものである。かかる点で相違するものに対してなぜ、同一の基準に基づく判断が妥当であるのか、確かに、両規定は実質的な判断を行う根拠規定として創設されたものであり、その基本的な趣旨は上記のように共通するものの、判断されるべき対象は納税義務を異にしている。通常の付加価値税と異なり、帳簿方式をその基礎としているわが国の消費税法の性格を鑑みれば、その判断において共通しているいるとの判断を行うことは必ずしも否定されるべきものではないのかもしれないが、法人税法と消費税法は間接直接税、課税方式、課税客体等が異なるものであり、各法規においてもその規定ぶりは共通している部分は多いものの、対象となる収益と対価という概念において決定的に相違しており、この点においても同一の枠組みで判断を行うことは非合理的ではないだろうか。特に、法人税法において、収益という概念自体が明示的ではなく、その定義規定が置かれておらず、原則的に企業会計の判断に依拠しているものであり、また消費税法における対価概念は、その具体的な意義がこちらも必ずしも定義されておらず、学説判決においてもその具体的な依拠すべき点で概念が必ずしも一義的に定まるものではないことが、現状であり、かかる点においてもその具体的な対象が必ずしも定かとはいえないものと考えられる。しかるに、同一の枠組みで判断を行っている点では、論理的には飛躍を覚える。

加えて総合的な判断を行っている点も検討を要する。本件のように実質的な判断を行うことは、重要であることは否定しようがないことであるが、実質のような、私法の状況を超過し、主観的な要因、幅のある概念の適用を行う上で、恣意的な判断が行われる懸念が存在する。各種要素を総合的に判断していることも、予測可能性や安定的ではないという意見も発生し得よう。但し、実質を適切に反映させ、適切な租税負担を行うためにも単一若しくは、限定的な要素を明示的に行うことは非常に困難であり、かかる処置はその実質的な判断を行う趣旨を損なうものであろう。この恣意の発生と租税負担の合理性を比較衡量し、如何なる要素が重要であるのかという点を明らかにして、恣意の発生する余地を減少させることが課題となる。この点が租税法の基本的な課題であり、本件のように判断すべき要素・基準が明示的ではないものは批判的に捉えられるべきである。実質を判断をすることは、必ずしもフリーハンドでの判断を肯定するものではないこともまた理解されるべきであろう。

以上、本制度は同族会社の行為計算否認と同様に、わが国の租税法規において、少し異質な存在であり、その基本的な趣旨としては租税法律主義の基本的な要請と、租税負担の実質的な公平性をバランスするものであり、かかる点で実質的な妥当性を図るものとして位置づけられる。しかしながらその規定はかかる性質上、一定の概念的に明確的ではない文言の使用を行わざるを得ず、またその制度適用の効果も、私法上の取引・契約構造を否認、越えて、租税負担を位置づけるものであり、かかる点で、その濫用、恣意的な運用が図られる危惧が避け得ない。課税庁にとっては、強力な手段でもあり、また最終手段であることは明らかであり、その具体的な適用においては慎重さ(具体的ではないので、意味は持たないかもしれないが)が必要であり、より明示的な要件の検討を図るべきものと捉えられる。

以上です。毎度のごとく論文Stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2017年7月31日月曜日

判例裁決紹介(平成28年8月24裁決、納税猶予の要件)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、
平成28年8月24日裁決で、納税者たる請求人がなした消費税申告に対する売上減少が納税の猶予の要件に対して適合するのか否かという点が争われたものです。

具体的には、事業を営む請求人が消費税の確定申告をしたところ、当該納税につき、当該請求人が下請け企業であって、元請企業から売上減少をしていることをもって、納税の猶予を申請したところ課税庁が納税の猶予の要件を充足しないとして不許処分を行い、この処分の取消を求めるものが本件である。従って、納税の猶予を定めた国税通則法46条2項に定める要件に合致しているのか否かという点が争点となったものであり、より具体的には、下記のように、4合における事業への著しい損失とその類似事実の発生が問題となっており、事実認定というよりは、当該法令解釈によって如何なる点をもって類似していると判断するのか否かという点が中心的な争点となっている。

納税の猶予の関しては、基本的に手続法上の問題であり、実務上はあまり目にする機会はないものであるかもしれないが、業績の問題もあり、しかしながら、消費税の負担の増加や近年の災害等の発生も考慮するとこのような納税の猶予の関する規定の理解は普段から取扱うものでないかもしれず、事例としても珍しいものであるようにも想定されるが、企業再建などの局面においても専門家の関与は増加しており、この制度背景の理解は一定の貢献はあるものと考えられる。

 税務署長等は、次の各号のいずれかに該当する事実がある場合(前項の規定の適用を受ける場合を除く。)において、その該当する事実に基づき、納税者がその国税を一時に納付することができないと認められるときは、その納付することができないと認められる金額を限度として、納税者の申請に基づき、一年以内の期間を限り、その納税を猶予することができる。前項の規定による納税の猶予をした場合において、同項の災害を受けたことにより、その猶予期間内に猶予をした金額を納付することができないと認めるときも、また同様とする。
一 納税者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難にかかつたこと。
二 納税者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと。
三 納税者がその事業を廃止し、又は休止したこと。
四 納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと。
五 前各号のいずれかに該当する事実に類する事実があつたこと。
従前よりこの類似点も含め、猶予に関する解釈上の争点は議論が行われているものであるが、まずは、その前提となる納税の猶予制度の基本的な背景がまずは問題となろう。

 通則法第46条第2項に基づく納税の猶予は、期限内納付及び国税が期限内に完納されなかった場合の強制徴収の例外として、一定の事由により納付困難になった納税者を救済するものであるが、租税徴収手続における他の納税者との公平という観点をも考慮すると、4号該当事実とは、納税の猶予を申請した納税者の責めに帰すことができないやむを得ない事由によって生じた国税の納付を困難ならしめる事業についての著しい損失をいうものと解される 。通達においては以下のように例示している。

その他の事実)
12 この条第2項第5号の「前各号のいずれかに該当する事実に類する事実」とは、おおむね次に掲げる事実をいう。
(1) 第1号又は第2号に類するもの
イ 詐欺、横領等により財産を喪失したこと。
ロ 交通事故の損害賠償(使用者責任による場合を含む。)をしたこと。
ハ 公害の損害賠償をしたこと。
ニ 納税者の取引先等である債務者について、おおむね次に掲げる事実が生じたため、その債務者に対する売掛金等(売掛金のほか、前渡金、貸付金その他これらに準ずる債権を含み、また、これらの債権について受領した受取手形のうち割り引かれていない部分の金額及び割り引かれているものであっても、不渡り等のため買戻しを行ったものを含む。)の回収が不能又は著しく困難になったと認められること(従前に比べて決済に要する期間が著しく長期化したと認められる場合を含む。)。
(イ) 所在不明又は無財産になったこと。
(ロ) 事業の不振又は失敗により休廃業に至ったこと。
(ハ) 企業担保権の実行手続の開始決定があったこと。
(ニ) 破産手続開始の決定があったこと。
(ホ) 会社法の規定による特別清算開始の命令があったこと。
(ヘ) 法律の定める整理手続によらないが、債権者集会による債務整理の決定があったこと。
(ト) 手形交換所において取引の停止処分を受けたこと。
(チ) 災害、盗難、詐欺、横領により財産の大部分の喪失があったこと。
(リ) 会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生手続開始の決定があったこと。
(ヌ) 民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったこと。
(ル) 外国倒産処理手続承認の決定があったこと。
ホ 納税者と生計を一にしない親族(納税者の親族と同視できる特殊の関係にある者を含む。)が病気にかかり、又は負傷したこと。
(2) 第3号又は第4号に類するもの
イ 納税者の経営する事業に労働争議があり、事業を継続できなかったこと。
ロ 事業は継続しているものの、交通、運輸若しくは通信機関の労働争議又は道路工事若しくは区画整理等による通行路の変更等により、売上の著しい減少等の影響を受けたこと。
ハ 市場の悪化、取引先の被災、親会社からの発注の減少等により、従前に比べ納税者の事業の操業度の低下又は売上の著しい減少等の影響を受けたこと。
ニ 著しい損失の状態が生じたとまではいえないものの、それに近い税引前当期純損失の状態が生じる原因となった売上の著しい減少又は経費の著しい増加が生じたこと。
ホ 納税者が著しい損失(事業に関するものを除く。)を受けたこと。
(注) 「売上の著しい減少」とは、単に従前に比べて売上が減少したというだけでは足りず、事業の休廃止若しくは事業上の著しい損失があったのと同視できる か又はこれに準ずるような重大な売上の減少があったことをいう(平成23.5.26名古屋高判参照)。

本件判断においても、上記のように述べてこの納税猶予制度の基本的な前提を一定の事由の発生により、納付が困難になった納税者を救済する制度趣旨をもっている。そもそも租税は、行政の費用支弁を目的として調達される財源であり、租税債権債務の確定後、速やかに納期限等において現金により納付することが求められるものである。これは租税の基本的な性格から考えて自明なものであるといえようが、債権債務関係の早期確定を図りもって確実な徴収を図る基本的な趣旨とは異なるものとして解される。これが救済措置としての位置付けとしての本制度であり、この猶予制度が、単なる一定事由の発生のみを問題とするものではなく、税務署長による実質的な納税の困難を判断することを求め、できる規定として裁量的権限を与えていることからもその性格は裏付けられる。このような租税徴収における基本的な前提と本制度の趣旨を比較考量するならば、そして、納税者間の公平性を確保するためにも、その適用要件、特に法定の一定事由の解釈は限定的とならざるをえない。たとえ5号に於いて一定の類似性あるものと定められているとしても1~4号までの具体的な事由から如何なる点が類しているべきか明示的に解釈を行い、安定性と公平性を担保する必要性があることになる。すなわち、一般的に公平性を犠牲にしてもなお、なお納付が困難な状況にあることが求められるものと考えるべきであり、かかる状況が客観的に確定していることが必要であると考えられ、この納付が困難な状況にあることが法定事由及びその類似事由として確保されているのか否かという点が、本件の起因となるものと考えられる。つまり、納付が困難な状況にあること及びその原因が問題となるものであって、問題とその原因の間にあるべき関係性は納付が困難な状況にあることの因果関係であって、納付が困難になったことにな対して納税者の責めに帰すべき事情の存在を必ずしも求めているものではなく、この点は明確に峻別して捉えるべきであろう。

しかしながら、本件では特に問題とされていないものの、上記判断でも記載のように、納税者における帰責性の有無を具体的な要件として求めている。その根拠は納税者間の公平性を確保することに求めており、下記のように、通達においても一般的に猶予の条件として捉えている。この点において、本文の記載のない、一般的に帰責性を求めることに違和感がある。確かに、一般的に公平性を犠牲にしてもなお納付が困難な状況を救済する措置であり、かかる点で公平性の確保の観点から、一定の制約があるものとは理解されるが、法文には明示的ではなく、この要件の付与が如何なる根拠を持つものであるのかという点は必ずしも定かではない。制度が税務署長に裁量権を与え実質的な納付が困難であることを求めている以上、一般に帰責性を求めていることとしているのは法文に根拠を持たない措置であり、租税法律主義の基本的な要請に反するものではないかとも考えられよう。法定事由としての1~2号は天災等を対象としており、また46条1項も同様のものを対象としている。天災等においては確かに納税者の帰責性が存在していないものであるが、3~4号は必ずしも納税者の意思によっても発生しうるものであり、法文上、かかる制限はかかっておらず、納税が困難な状況を担保するに過ぎない。本件の問題は4号との類似性を議論するものであり、必ずしも、1~2号と同様に解することは飛躍があろう。救済措置であるが故に、同様に帰責性の存在がないことを理由づけすることは法が定める要件として具体的な事由を列挙している趣旨からいって異なるものと理解するべきである。

しかるに、猶予要件としては必ずしも、一般的に帰責性の有無を問うものではないともいえるが、上記1~2号要件との類似性、及び3~4号要件との類似性に於いてはその性格が異なるものと理解すべきであり、一般的に帰責性の存在を観念することは過剰であろう。

(納税者の帰責性)
8-2 この条第2項各号に該当する事実は、納税者の責めに帰することができないやむを得ない理由により生じたものに限る。
すなわち立法論とでも考えられるが、単に法定な事由の発生のみを問題としているのではなく、納付が困難であることの事実上の状況の立証も必要であると買いすべきであり、本件の適用にあたっては具体的な財務書類等の提出が求められるものと考えられる。但し、納付が困難であるということは必ずしも定量的な概念ではなく、制度上の一部限定での猶予や、金額の限度を定めていることからも定量、画一的な基準の設定は困難であって、納付が困難であるという課税の犠牲の上、単に事実の発生のみでは足りず、困難性もまた立証責任の転換を図り証明すべきであろう。しかしながらこの点においてあくまでも証明すべきは、納付が困難な状況にあることの法定事由との因果関係であって、自己の責任までも必ずしも要請されているとは考えることは困難であろう。この要請は逆に救済制度としての本制度の基本的な運用の制限であり、趣旨を損なうものとなるだろう。
また、具体的に、本件では売上の減少が約20%あったことが、4号要件の著しい損失に該当するのかという点が判断されている。この具体的な売上減少がその対象となるのか否かという点では具体的な納税の困難さあるいは重大である旨の立証を納税者が行っておらず、かかる点において不備があり、本件判断の原因となったものである。必ずしも20%の売上減少が対象となるのか否かという点は必ずしも定かではない。本件のみをもって、対象外と判断することは早計であろう。
またそもそも、何をもって著しい損失と捉えるのかという点は定かではなく、かかる点で類似性を如何に判断するのかという点は問題といえよう。この著しいという文言は、他の租税法規でもその意義について問題となるが、通達では以下のように理解している。
(事業上の著しい損失)
11-2 この条第2項第4号の「事業につき著しい損失を受けた」とは、猶予期間の始期の前日以前1年間(以下この項及び第46条の2関係1において「調査期間」という。)の損益計算において、調査期間の直前の1年間(以下この項及び第46条の2関係1において「基準期間」という。の税引前当期純利益の額の2分の1を超えて税引前当期純損失が生じていると認められる場合(基準期間において税引前当期純損失が生じている場合は、調査期間の税引前当期純損失の額が基準期間の税引前当期純損失の額を超えているとき)をいう。
この点で1/2という一定の基準が示されているものの、猶予制度の趣旨からいえば、本来いかなる状況にあれば著しいと判断するのかという点は明らかではなく、特にこの規定を受けて類似性を判断する5号要件の該当性を判断する上では安定性に欠けている。
納付限度額を設け、一部の納付を猶予する場合もある以上、制度上、この著しいとは事業の継続が困難な状況にあることまでも求めていること要請していると解することは困難であるが(高裁判断とは異なるものの)、納付が困難であることの理由付けが客観的に認定しうるレベルで必要であると解するべきであり、単なる売上の減少や損失の発生程度であっても対象となることはないとする判断は合理的であるが、救済制度としての制度背景を考慮すると、納税が困難であることの証明で足りるものであり、本件でもこの20%の売上減少が著しいものではないという判断に関しては必ずしも合理的な根拠を示してはいない。著しい=1/2という判断は安定性や予測可能性の観点からは合理的であるが、何をもって納付が困難であるとするのかという定量的な判断基準の作成は困難である者の、より具体的な判断基準の策定が必要になるものと理解される。
以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。