2021年5月26日水曜日

判例裁決紹介平成31年1月11日裁決(相続財産としての同族会社への貸付金の評価)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成31年1月11日で、同族会社への貸付金を相続により取得した場合における、財産評価、一部回収不能であるのか否かという点が課題となった事例です。

具体的には、本件は相続により請求人が取得した同族会社への貸付金をその相続税申告において計上せず、のちの調査によってかかる貸付金債権は、回収が不可能である、不能であるものであるとして評価を行うことはできないとして、更正処分が行われたことを不服として、特に一部は回収不能であることは明らかであるとして提起された事例である。

このような同族会社への貸付金は、いわゆる役員借入金として実務上、特に法人税法の世界ではごく当たり前に存在するものであろうが、これが相続税の財産評価においては、非常に厳格な評価(正直言うと、単に額面で評価されるというだけとも言えますが、他の財産と比して相続時における評価の余地がないことは確かでしょう)、を適用されることで、相続税のマネジメントの観点からは課題となることをよく表している事例であるように思います。中小企業のMAや事業承継などが課題となるような時代において、このような内部的な債権債務の存在は、今後の税務上のリスクであるという認識は租税専門家として常に意識されるべきものであるように捉えられる。

基本的には、当該貸付金が回収可能であるのか、一部でも不能であるのかという点が争点となっているものであるが、法人の唯一の債務であることなどが考慮要因となって、実質的に事業継続の妨げにならず、もって、回収不能の判断を適用すべきではないという点が中心的な判断の要因となって請求人の請求を棄却している。租税法規の伝統でもあるが、同族会社という存在を前提とした評価の事例であり、単に貸付金の回収可能性を議論しているものではないという点が、単に額面評価にとどまらず、本件のような貸付金評価における実質的な評価を導いていることは改めてその重要性を再認識されるべきであろう。


(貸付金債権の評価)

204 貸付金、売掛金、未収入金、預貯金以外の預け金、仮払金、その他これらに類するもの(以下「貸付金債権等」という。)の価額は、次に掲げる元本の価額と利息の価額との合計額によって評価する。

(1) 貸付金債権等の元本の価額は、その返済されるべき金額

(2) 貸付金債権等に係る利息(208≪未収法定果実の評価≫に定める貸付金等の利子を除く。)の価額は、課税時期現在の既経過利息として支払を受けるべき金額

(貸付金債権等の元本価額の範囲)

205 前項の定めにより貸付金債権等の評価を行う場合において、その債権金額の全部又は一部が、課税時期において次に掲げる金額に該当するときその他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときにおいては、それらの金額は元本の価額に算入しない。(平12課評2-4外・平28課評2-10外改正)

(1) 債務者について次に掲げる事実が発生している場合におけるその債務者に対して有する貸付金債権等の金額(その金額のうち、質権及び抵当権によって担保されている部分の金額を除く。)

イ 手形交換所(これに準ずる機関を含む。)において取引停止処分を受けたとき

ロ 会社更生法(平成14年法律第154号)の規定による更生手続開始の決定があったとき

ハ 民事再生法(平成11年法律第225号)の規定による再生手続開始の決定があったとき

ニ 会社法の規定による特別清算開始の命令があったとき

ホ 破産法(平成16年法律第75号)の規定による破産手続開始の決定があったとき

ヘ 業況不振のため又はその営む事業について重大な損失を受けたため、その事業を廃止し又は6か月以上休業しているとき

(2) 更生計画認可の決定、再生計画認可の決定、特別清算に係る協定の認可の決定又は法律の定める整理手続によらないいわゆる債権者集会の協議により、債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等の決定があった場合において、これらの決定のあった日現在におけるその債務者に対して有する債権のうち、その決定により切り捨てられる部分の債権の金額及び次に掲げる金額

イ 弁済までの据置期間が決定後5年を超える場合におけるその債権の金額

ロ 年賦償還等の決定により割賦弁済されることとなった債権の金額のうち、課税時期後5年を経過した日後に弁済されることとなる部分の金額

(3) 当事者間の契約により債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等が行われた場合において、それが金融機関のあっせんに基づくものであるなど真正に成立したものと認めるものであるときにおけるその債権の金額のうち(2)に掲げる金額に準ずる金額

以上のように、本件の中心的な争点は、財産評価基本通達における貸付金の原則元本評価である。財産評価基本通達は明示的に元本金額をもって貸付金として評価することとしているが、ただし、一部例外的な処置として回収不能である状態における評価減を認めているものである。ここに実質的な判断の余地を設けて現実の状況との比較衡量を図っていることが実務上でも課題となっている。その例外的な措置は、厳格に考慮されるべきであり、これは時価における客観的価値を要求する法の趣旨に合致しているものであろう。したがって、同族会社への貸付金においても上記通達が厳密に適用されるだけではなく(単に形式的に通達の評価方法に依拠するのではなく)、同族会社という状況を反映させ、検討することは妨げられるべきものではないものと解される。係る点で法人の資産債務状況から回収不能であると言う形式的な評価がなされたとしても、同族会社としての性格を考慮して、他の債務(本件ではこの貸付金が唯一のものであるという認定)とのバランスから事業継続の妨げにならず、もって貸付金の評価に回収不能であることを反映させることは否定されている判断が導かれているものである。

このような貸付金を中心とした、債権の評価に関しては法人税における部分的貸し倒れも含め、従前問題とされることとなってきたが、本件では基本的にその判断基準は整合的であるように評価される(特に全体の回収可能性を追求している点は)。予測可能性や安定性の側面からは係る点からは、法人税法と整合的に回収可能性による評価を中軸に貸付債権の評価を行うこととなり、部分的な評価により一部回収が不能であるという点を相続財産の評価においてカウントすることは困難であろう。しかしながら租税法規特に、相続税と法人税法はその目的を異にするものであり、同一の評価軸をもって当たるべきであるのかという点から異論が出る可能性も考えられる。法人税法が条文をもって明確に評価損の計上を否定していることと対比するならば、相続税法において客観的な時価をベースに構築される判断の枠組みと整合的であるべきであるのかという点は、評価損に対する条文のあり方も含め、検討することも、政策論として実務上の負担も考慮されることになろうが、論点としてはあり得るのではないだろうか。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているもので完成度は低いですが参考までに。

 

2021年5月18日火曜日

判例裁決紹介(大阪地判令和2年6月25日、法人資金で費消した法人役員への給与認定)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は大阪地判令和2年6月25日で、法人代表者の妻で役員(副社長)でもある者が法人資金で費消した服飾品・宝飾品の購入が給与所得に該当するとして源泉徴収税の徴収及び仕入税額控除の適用が行われた事例です。

具体的には、リサイクル業務等を行う原告法人(同族会社)において、支出した(交際費として処理、調査後、貸付金処理)金額(服飾品、宝石等)を、個人の受益に属するものであるとして、役員の報酬(給与所得)であるとして、法人における源泉徴収及び、仕入税額控除の否定が行われたことを不服としているものである。金額的に非常に多額(3年間で6億超)である案件であり、この種の法人(特に同族会社)における個人的な費消における給与認定は従前より珍しくないものであるが、このような事例が訴訟で争われることは珍しい(正直今でもこのような多額な公私混同のような支出が行われることがあるんだという印象)。このような社内交際費に該当する事例は、従来は交際費としての該当性が課題となることも多かったが現在は交際費制度の変化もあり、給与認定、給与課税されるものであるのか否かという点が主たる争点となっているものである。実務に携わっている人であれば、このような認定を行う事例は大なり小なりごく当然のように見かけるものであろうが(意外と個人的な費消が給与課税されるという思考が理解が一般にはないだろうが)、法令解釈としては特段珍しいものではなく、よりも事実関係、トレーニングケースとして取り扱うべき案件であろう。本件は事実関係、主張(旦那である代表取締役が外商に売らないように頼む、当人の弁解としての必要性主張)等を興味深く読むべき案件であろう。

本件では理由提示に関しても争いがある。判示では、判断の基礎となった間接事実や補助事実までも詳細に書く必要はなく、判断基準や処分の根拠を提示することを求めている。私見としても、提示の趣旨は、基本的に恣意的な課税処分を抑える目的を持つものであり、訴訟等の救済措置への対応は便宜的にとどまるものと解され、間接事実や補助事実までも詳細に書くべき必要があるものとは考えがたいものと捉えられる。間接事実や補助事実がいかなるものであるのかという点、どのようなものを指すものであるのかという点は必ずしも定かではないが、基本的に判断の根拠や判断プロセスとなる通達等の提示がなされていることで、理由提示に不足はないものと解するべきであろう。

また本件では、立証のプロセス、判決のプロセスに着目するべきであろう。
調査段階での指摘から本件のような貸付金としての主張も行っているが(最近は消費税の観点からもこのような貸付金処理も流行らなくなっているだろうが)、殆ど考慮されていない。初期段階での交際費等としていた点において、贈答者がいかなるものであるのか不明である点をまずは認定し、この段階での交際費としての該当性を否定した上で役員たる地位に基づいているものであるのか、職務内容や権限等の観点から、給与として職務執行の対価としての給与認定を行っている。以前福岡での判決にもあったように、社内交際費としての認定は、変化しているものであるが、帰属が特定の個人に明確であるような場合においてはこの給与認定が課題となることは今後も重要な点であろう。特に消費税がその位置づけを増す現況においては、給与認定と交際費としての認定においてはその租税負担において大きなさいが生じることは明らかであり、本件は非常に金銭的に多額の事例であるが、法人代表者による個人的費消の扱いは慎重な対応が求められるべきものであろう。

判示では、交際費としての否定には、相手先の特定がまずは重要な判断材料としている。交際費としての処理への対応であるが、近年はこのような相手先の不明瞭、判別が困難であるような場合の損金否認が増加している傾向にあり、消費税の適格請求書も視野に入れられているようでもあるが、課税調査における視点が従来の実質的な部分を重視することも減ってはいないものの、形式的とはいえ、損金の支出という部分の立証、証拠の保存がキーとなっていることは留意されるべきである。原告の主張は、経営者としての交際の必要性、理由(交際のためきちんとした格好をしていなければならない、多様な人と損してでも交際するなどの)主張がなされているが、この点は判示では重要視されていない。所得税の必要経費の主張でも垣間見られるものであるが、概して法人経営者の主観的な判断に依拠したものであり、相手先の特定などの客観的な判断を重要している点は租税実務家としては留意されるべきものである。

なお、最終的な給与認定に関しては、法人役員としての職務内容の幅が広いことと、給与所得の従前の解釈から整合的であり、役員個人への帰属が明確である以上は、係る認定を覆すことは現行の法解釈からは困難である。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。



 

2021年5月10日月曜日

判例裁決紹介(宇都宮地判令和元年7月3日、給与支払の実態の欠如と源泉徴収税還付申告)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は宇都宮地判令和元年7月3日で、源泉徴収の還付を求めた原告の訴えを給与支払いの実態がないとして、否認した事例です。
具体的には原告(個人)が休眠状態の法人(太陽光、破綻し信用保証協会からの弁償を受けている段階、元代表取締役で解任済み)から給与を受け取っていたとして確定申告において源泉徴収額の還付申告を行ったものであり、課税庁が当該法人は休眠状態で稼働の実態がなく(未申告)、源泉徴収の対象となる給与支払の実態が存在しないとして、背原告の請求の退けたことを不服として提起されたものである。

破綻に伴う係争が行われ活動実態がない法人の支払に関するもので(そもそも代表取締役を解任された者に対する支払いがあるのかという基本的な疑問あるが)、基本的には報酬支払の事実関係が存在しているのか否かという事実関係の問題であるが、給与支払の台帳などを提示して源泉徴収の還付を求める事案であり、いかなる所以があってこのような請求を行ったのか疑問を覚えるものであるが、口座のやり取りや支払者の状況等、多方面からの事実関係の認定により係る支払の事実関係を否定している点は、いささか特殊な事案であるようにも捉えられるが租税の実務家としてはトレーニングケースとして参考となろう。


給与所得)
第二十八条 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
 給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とする。

以上のように本件の基本的な争点は給与所得の原因となる報酬の支払など、給与所得の実態が発生しているものであるのか否かという点が争われているものである。本件では従来の給与所得の判例と整合し、上記給与所得の法令解釈として給与としての形式的な支払に限らず、雇用契約類似の契約を基礎に労務の対価として提供された指揮命令等の存在が課題であるとして以下のように判示している。

「給与所得とは雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命
令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。な
お、給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において何ら
かの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務
の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかか(マ
マ)重視されなければならない。」(最高裁昭和56年4月24日第二
小法廷判決・民集35巻3号672頁)

判事では上記の判例に則り、要件事実として(あまりこのような表現は従前表現されなかったものであるが)、

「「給与所得」の支給があったといえるためには、①当
該給与支給者との関係で、空間的・時間的な拘束を生じさせる雇用又はこ
れに類する何らかの原因関係が存在していること(要件①)、②かかる雇
用契約等に基づき継続的ないし断続的に労務又は役務の提供がされている
こと(要件②)、そして③かかる労務又は役務提供の対価として上記給与
支給者から一定の給付がされた事実があること(要件③)
を要件として満
たす必要があると解されるから、被告は、これらの要件事実のいずれかが
不存在であることを主張・立証する必要があるものと解され、かつ、それ
で足りるもの
というべきである」

として明確に不存在の局面における立証の材料を明らかとしている点は特徴的である。
給与台帳による支払の証明を限定的に捉え、給与所得の基本的な性格から必要となる立証の範囲を明らかとしており、本件でも特に給与支払の実態や継続的な労務の提供等が不存在であるとの認定が中心となっており、租税法規の特質でもある実態をベースに判断を行っている点は今後の参考として捉えられるのではないだろうか。


以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2021年5月7日金曜日

判例裁決紹介(新潟地判令和2年3月26日、リゾートマンションの固定資産税評価額と実態の乖離)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は新潟地判令和2年3月26日で、地方部に整備されたリゾートマンションの固定資産税評価額に対して、周辺での売買価格より大幅な高額な評価額であり、係る評価に基づく固定資産税評価額が是正されるべきであるとして提起された事例です。

具体的にはリゾートマンションの所有者である原告(居住しておらず、15年以上訪れていないような状況で、扉を開けるなどが困難な損耗が見られるもの)が固定資産税評価額を付与した魚沼市を提起したものであり、固定資産税評価額が課題とされている事例である。近年社会問題となりつつある、地方部の限界的な集落や不動産家屋の負動産として扱われるような状況、空き家問題が議論されているところですが、廃棄寸前の空き家などの存在がクローズアップされている点は周知のとおり。新規供給が途絶えることがない(推進している現況において一方で人口減少の影響から特に地方部で家屋自体が課題となっているものであり、この点が不動産評価においても顕在化しつつある現況をよく表しているものであると評価される事例であろう。従来は、一軒家を中心とした家屋の問題が中心でしたが、マンション、特にこのようなマンションが今後において問題になりつつあるのが我々の最近の見方ではないだろうか。一軒家に比して解体コストや管理コスト、意思決定、周辺への外部効果の大きさなどから影響が大きなマンションなどの区分所有建物ですが、地方では大した量は供給されていないとの見方が支配的だったが、どうも使用されている建材の危険性も含め、地方での老朽化した建物の存在は大きな課題になりそうである。10年後の家屋関係を考える審議会にいますが、家屋評価も含め、このような存在をどのように扱っていくのか、という点が我々世代の課題になるのでしょう。老朽化した団地などは廃墟としかならないように思いますが反射的な反対も含め、地域課題としては間近に迫っているようです(利活用も提案されていますが、おそらく区分所有は難しいでしょう、一軒家には行政の資金が入ることになりましたが、拡大するような気がしてなりません、一斉建築の弊害です)。

このような社会背景となっている現況が典型的に現れているのが本件のリゾートマンションの評価額であり、本件のような事例が今後も継続することでしょう。特に地方税担当の部署においては、このような存在に対する評価の課題が、所有者が近隣にいないことも含め、継続的に対応していくことになりそうです。リゾートマンションという実需から離れたところにある建築物に対しては早めに顕在化しつつあるのであろうが、老朽化している点も含め、需要の対象が高齢化により変化している点は不動産の評価に反映される点において課題が発生していると考えられる。スキーなどのレジャー自体がその影響力を失いつつあり(私は生まれは北陸ですが、あまり興味ないです、なんで寒いときにわざわざ寒いところにいくのでしょうというタイプです。こたつぬくぬくが至高です)、周辺環境の変化が市場取引に影響を与えている点は回避し難いのは本件がよく表している。周辺の建物が10万円でも売却されない状況が生まれつつある点は特徴的であろう。このような建物に固定資産課税台帳の価格が150万との評価が付与されている点は今後このような問題が独発することを想起させる。市場において取引されている場合であれば、近隣価格として参考とすべき点はいえようが、需要が減退し取引が成立しない点が問題となる。都市部においては高騰する不動産価格の現状がありながら、大多数の地方部において不動産価格の減少、市場取引が成立しない環境(このような二極化している点が今後の特徴であろう)を、今後は前提として評価の原則を構築していかねばならない現状に至っているのではないだろうか。

少し判例から離れた立法論とならざるを得ないが、現況は固定資産評価基準に枠組みにおいて評価の是非を争うほかない。本件も減点補正の対象となる特別の事情があるのか否かという点が主たる論点となっているが、その成立を認めていない。主張が基本的に主観的な主張にとどまっているという点が原因とも考えられるが、市場取引が成立していない環境をどのように捉え固定資産税評価に反映させていくのかという点が今後の課題として発生することになる。現行法の制度、特に評価基準の中では本件のような市場取引が成立しない環境を反映させることは困難であると考えざるを得ない。

固定資産税の対象を時価として理解する点がそもそも問題であるようにも思われる。利用を前提とした家屋ではその取引は主観的な事情に依拠せざるを得ない点は否めないが、残存価格の規制も含め、評価基準は、そのベースとして地方税における応益、負担分任の反映がなされている点が忘却されているようにも捉えられる。改めて固定資産税の基本としてこのような応益性や負担分任の思想が反映されている点を再定義していくべきであろう。これと資産価値の反映が行われていることが固定資産税評価の大きな特徴であり、固定資産評価基準は実質において、市場取引が成立しないような不動産の状況をあまり想定していない。均衡ある評価と客観性の確保を重点におき、主観的な要因を排除しつつある評価基準の特徴と根本において地方税や固定資産税の特徴を反映している点が固定資産評価基準の現代的な意義、特徴となっているものであり、固定資産の需給事情の反映、減点補正における今日の社会環境の反映は、主観的な要因の排除の点から遅滞しているものと考えられ、今後の課題として、需給事情の反映における対象の拡大を如何に固定資産税評価基準に反映させていくのかという点が今後の課題となる。本件は、このような社会環境の変化を反映させる上で、重要な起点となるものと考えられよう。

相続登記の義務化や一部不動産の放棄の規程の導入など(管理費の前払いが必要であるようであるが)、地方税における固定資産評価に関する周辺環境の変化も始まっている。今後はこのような変化を反映して(おそらく固定資産税負担は他の費用に比して少ないことが多いのでまだ地方部の不動産は固定化されたままであろうが)、如何なる固定資産税評価の評価が合目的であるのか更に検討が必要であろう。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですが、参考までに。

2021年4月19日月曜日

判例裁決紹介(令和元年5月30日裁決、定期同額給与の該当性、日当の最低支給額)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、病院の理事長に支給された宿直等の日当に関する規定の最低支給額をめぐる、定期同額給与に該当するのかいなかが争われた事例です。

具体的には本件は医療法人の理事長に対して支給された報酬において、宿直等の実務を行った際に支給される歩合の手当において設定されていた最低支給額を毎月支給していたことに対して、毎期一定額において支給されたものであるが、かかる支給は形式的には毎期同額の支給がなされているものの、支給規定は宿直等の特定の業務を行った際に、個別に付与されるものであり、毎期最低額が恒常的な状態で発生しているものとしても、これは定期同額給与には該当しないとした、更正処分を不服として提起された事例であり、この役員給与損金不算入制度の趣旨目的から主張がなされているものである。法人税法における役員給与の損金不算入は、不相当に高額であるのか否かという点を中心に多様な類型の事例が存在しているが、本件は、平成18年の改正において、改正された後の定期同額給与の該当性をめぐる事例であり、いささか特殊な給与の支給形態に起点を置くものであるが、本件のような手当が含有された報酬が支給されていることも多いものと考えられ、支給金額の一定であることのような形式的な状況に委ねるものではなく、定期同額給与の意義内容を考える上で実務上も参考となる事例であろう。定期同額給与の該当性をめぐる事案自体が珍しいものであるが、このような役員給与の損金不算入の規定は、法人税法特徴ともなるものであり、制度背景を考える上でも参考となろう。

(役員給与の損金不算入)
第三十四条 内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与で業績連動給与に該当しないもの、使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの及び第三項の規定の適用があるものを除く。以下この項において同じ。)のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

 その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与(次号イにおいて「定期給与」という。)で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(同号において「定期同額給与」という。)

以上のように本件は、支給実態としては毎期、規定の最低額を恒常的に支給していたものであるが、その支給要因が、歩合的な手当であることに着目して、その定期同額給与としての該当性を否定しているものである。歩合などの業績連動的な性格の強い報酬はそれを否定するものであるという本件の解釈がその背景にあるものと言えよう。上記のように、法は支給額が同額であることを起点としている法文になっており、実際の支給額が同額であることのみを要件としている、意図しているようにも読めるものであるが、支給要因、手当の規定の依拠した判断に基づく判断を行っている点が特徴的である。

請求人の主張としては平成18年改正前の状況を引用して、本件規定の趣旨が利益調整などの恣意的な課税を排除する趣旨にあるものであり、かかるような意図のない多少の変動等は許容されていたことをもとに、本件のような事実関係に基づく恒常的な状態で支給されていた手当等も定期同額給与に該当するものであるとした主張をしたものであるが、かかるような趣旨解釈は否定されている。私見としては本件は、このような趣旨解釈の適用の可能性を主張するのではなく、あくまでも法文の同額支給という文言に着目した論理展開であるほうが正当性があったように思料される(報酬規定に基づくものであり恣意性の介在する余地はないことも補足されるが)が、実務上は実際にこのような支給要因に着目した判断が行われているのかという点は更に検討したいところである。

法人税法における役員給与規制は法人税法の重要な特徴として、積み重ねられてきたものであるが、近年の業務の多様化などを背景に定期同額などの規定は(特に業績連動を中心に)、制度疲労を起こしているとの主張もあり得ようが(租税法規としては中立性に反しているとの主張はたしからしい)、これは立法に属する問題であり、今後の課題ではないだろうか。本件のような事例からも柔軟性にかける制度であり、職務執行の対価としての報酬の支払いまで制度趣旨を超えて否定しているような現況は問題であるように考えられよう。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。



2021年4月14日水曜日

判例裁決紹介(福岡高判令和元年11月6日、架空仕入と立証責任)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は福岡高判令和元年11月6日で、浜買いのような市場外での現金仕入を装った架空仕入とその立証の責任が争われた事例です。

具体的には水産物の加工会社である控訴人(原告、法人)が本社や営業所支店の所在各地で浜買いのような市場外での現金仕入を行ったとした確定申告につき、かかる仕入(4300回に及ぶと記録)が架空であるとして売上原価としての損金計上を否認されたことと不服として提起された事例である。水産物の市場外取引(浜買い)による慣例的な存在が明確に領収書も交付されないままで行われている現況を反映した(このような取引に対する適格請求書の存在がどの程度影響することになるのかという点は私見としては気になるところ、おそらく消滅することはないだろうが)、あるいはこれを利用したような取引が、帳簿上において記載されたことが契機となっている事例である。慣習的な取引の存在は実務家の皆さんのほうが了知であろうが、このような取引の存在が、繰り返される現況においては、本件のような帳簿の信憑性が問われる事になりかねない事例であることは留意されるべきであることを教えてくれる事例である。本件では法人税法の損金計上の是非飲みが問題とされており、消費税法上の保存等が争われたものではないが(おそらく、帳簿記載の信憑性や保存の問題で当該費用の肯定は困難であったであろうが)実務上、消費税の保存と損金計上は帳簿を通じて結びついており、本件で問題となった立証責任のアプローチが消費税においても適用されるものであるのかという点は興味深い。また、本件では取引の信憑性に関する主張が詳細に事実認定されており、実務に携わるものとしてトレーニング事例としても重要であろう。

本件では法人において架空のアルバイトによる人件費の計上を行う(この点は争いになっていない)、現金仕入と廃棄が併存しているなど不自然な取引が行われており、取引の信憑性、法人の帳簿記録に関する信憑性評価は極めて厳しいものとならざるを得ないが、本件控訴審では、大量の架空取引とされた更正処分の前提の現金仕入(4300回を超過する)、個々に関する取引の架空であることの立証が課税庁において不十分であるとして(概ね18%の取引に対する立証にとどまっており、この部分は課税庁の主張が認められているが)、更正処分の一部取り消しを行っているものである。18%の立証で全体を否定する課税庁の手法が否定された(確かに飛躍的ではある)ものである。

「そもそも、本件現金仕入れは、売上原価に関するものであるから、その
存否に係る主張立証責任は、被控訴人が負うものと解すべきで
ある。被控
訴人は、本件現金仕入れが全て架空であることを具体的に主張立証しなけ
ればならない。
しかし、被控訴人が本件現金仕入れに係る取引の不自然性、不合理性を
具体的に主張立証するのは、本件現金仕入れのうち約18.99%の取引
にとどまり、その余の約81.01%については、具体的な主張立証をし
ていない(原審における控訴人らの原告第1準備書面及び被控訴人の第3
準備書面等参照)。そうすると、この約81.01%の取引については、
いわゆる事実上の推定が適用される前提を欠くものといえる。
被控訴人は、本件物品出納帳の記載の全体としての信用性について、こ
れが低いものである旨縷々主張する。しかし、この主張は、控訴人らがし
た反証の証明力が低いということをいうにとどまるものであって、被控訴
人側の具体的な主張立証に替わるものではない。そして、本件現金仕入れ
のうちその不自然性、不合理性について具体的な指摘をしない約81.
01%の取引については、その取引のために支払われた控訴人らからの出
金やその取引に基づく売上げについても具体的に争っていない。」

本件では、上記のように売上原価に関するものであり、被控訴人が立証責任を負うものとしている。この点がまずは基礎となっている。如何なる程度の取引を立証すれば全体を裏付けるもの、推定を果たすものであるのかという点は裁判官に委ねられるべきものであるが、本件では、このような部分的な立証は必ずしも取引をベースとした損金計上の局面では妥当ではないものとされているものであろう。基礎となった立証責任が課税庁にある理由付けを本件では明確にしていないが、従前、質問検査などを背景に租税訴訟における立証責任は原則として課税庁にあるとした考えが基礎にあるものと言えよう。近年では、特に費用面において納税者にその立証責任を転換するケースが増加しているもの(私見としては帳簿記帳の促進、理由附記等の整備によって、一律に立証責任は課税庁にあるべきであるとした考え方は修正されるべきもので司法による適正な分配がなされるべきであると考えているが)であるが、かかる中で、明確に立証責任を高裁が課税庁に認めた本件の意義は今後の参考となるべきものであろう。

また、上記のように本件では法人税法の損金計上の是非が争われているが、一部の立証による帳簿全体の否定を、本件判示は否定的に捉えているようである。このような判断の枠組みが他の租税法規において肯定されるとした場合、特に消費税法においては如何に影響を及ぼすものであろうか。本件では必ずしも個々の取引の取引の是非存否を立証することを求めているものではないものと捉えられるが、膨大な取引を記録する帳簿において、租税法の適用を図る上では、個々の取引を立証することは現実的な措置なのであろうかという疑問が発生する。本件の判断が広く適用されるものであるとするならば帳簿の記録を否定することは(個々の取引を否定することの積み重ねとはいえ)負荷が高く、適正な課税の確保とのバランスにおいて均衡が課題となるのではないだろうか。特に消費税法においては、課税物件を個々の課税資産の譲渡等を対象としているものであり、適格請求書等の導入により、その保存が重要な判断の要素となってくる。立証の観点からも今後は適正な適格請求書の「保存」がますます重要性を帯びてくるものと考えられる。

以上です。毎度の如く備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。



2021年4月7日水曜日

判例裁決紹介(令和元年6月27日裁決、山林の貸付所得の人格なき社団への帰属)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は令和元年6月27日裁決で、山林の貸付による所得が山林所有者か、人格なき社団として森林管理組合にあるのかが争われた事例です。

山林に関する所得は、所得税法における所得の一つであるが、おそらく殆ど実務においてみる機会はないのが現状であろうが、本件は山林の貸付による所得がいかなる者に帰属するものであるのかという部分が課題となっているものである。山林所得の特殊性においても議論されるように、山林に関する所得は比較的長期間の時間軸をベースに構築される。このような中で関係者、特に本件のような地縁や周辺との関係によって構築された団体において、いかなる者に対して所得が帰属することになるのかという点で本件は興味深い事例であろう。おそらく時代の変化により、求められる管理なども変化しているのであり、当事者の関係、収益環境なども変化する中で、どのように所得の帰属を判断するべきであるのかという点は、法人税、所得税のように一種のフィクションとして年度を区切って納税を把握する環境とは相性が悪いものではないだろうか。本件は基本的な人格なき社団であることは特段議論が行われるものではなく、所有主と管理組合のいづれかにおいて所得が帰属するのかという部分が争いになっているものであるが、単年度ベースで所得の帰属関係が判断されているようにもみえ、より中心的にはこのような単年度ベースでの課税の構築が実態を反映できるものであるのかということが問われる点に特徴があるように捉えています(所得が実質的な帰属者を課税対象とすることから生じるものでもあるでしょうか。)。


第四章 所得の帰属に関する通則
(実質所得者課税の原則)
第十一条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

以上のように本件の中心的な争点は、人格なき社団としての森林管理組合と山林の所有者のいずれかが山林の貸付による所得を享受しているものであるのかという点である。基本的には事実認定の問題であるが、所得税法人税ともに実質的な所得の帰属者を課税対象としていることから、その判断において見解の相違が発生しているものである。人格なき社団が関与する場合は、このような所得の帰属をいかに判断されるべきであるのかという帰属をめぐる点も課題となることが多いが、本件はその典型的なケースであるように考えられる。

判断は、課税庁の主張を肯定し、人格なき社団において所得が帰属するという判断を導いているが、その判断の基礎は、事実関係において、資金や収益の管理状況をその基礎としておいている。法的な根拠を示さず、実質的な所得の帰属者を判断されているが、基本的には、上記の法人税法11条の実質所得者課税の原則をそのベースにおいているものであろう。判断や各主張にも表現されていないが。収益を享受するという側面をベースに法規程が整備されているが、本件判断も資金の管理をもとに帰属を判断しており、実質的な所得の帰属者においてはこの資金管理状況が一つのキーとなっていることは、他の帰属関係を争う事例と同様に、法的な権利者から実質的な所得者の認定(帰属)の判断において重要な点であろう。ただこの点において、山林を取り巻く環境や特性は殆ど考慮されていないことは指摘される。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。