2020年6月2日火曜日

判例裁決紹介【平成30年11月28日裁決、現金仕入の計上漏れと立証)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年11月28日裁決で、現金売上の計上漏れとパラレルで計上していなかった(と主張する)現金仕入が必要経費として(仕入税額控除の対象としても)、認められるのかという点が争点となった事例です。

具体的には、本件はリサイクル業を個人で事業として営む請求人が、調査により指摘された現金売上の計上もれに対して修正申告を行い、もって当該売上とパラレル(プラスマイナスゼロで計上の必要がないものと認識していたと主張して)、現金での仕入や固定資産の取得(減価償却費の計上)を当該事業における必要経費として、また仕入税額控除の対象として認めるべきであるとして、不服申立てを行ったものである。中心的な争点はこのような現金仕入、による経費支出を必要経費として認めるのか否かという点が課題となっているものであり、如何にしてその必要経費が認められるのかという点が基礎となっている。かかる論点は従前から存在するものであり、特段珍しいものではないことは言うまでもなく、実務的には、おそらく日々において日常的に行っている判断であるように思われるところであるが、通帳等の一定の客観的な記録が存在する(証憑等も含め)ものではない、当事者以外に何ら証明手段が存在しない、経費支出を必要経費として認めうるものであるのかという点は古典的な論点ともいえよう(従って当然のように厳しくチェックされるものであろうが)。本件もこの類型に属するものであり、特段、珍しい事例ではないのかもしれない。リサイクル業という比較的課税上、問題が多い業務形態であるが、中心的な課題としては、このような個人の事業として行っている中で必要経費として認識されるようなものが、存在しているのか、そしてそれを立証していくことが可能であるのかという点が、いわば事実関係の評価が中心となっているものと認識される。個別具体的な事実関係が中心となるものであることは疑いようがないものであるが、各種費用ごとに詳細な事実認定、主張の対比(このように考えるならば、ある意味親切に作成されている、請求人と課税庁の主張の対比部分が重要性を有するのであろう)、立証の適否が整理されており、実務的には、ティーチングケースとして参考となるべきものであろう。納税者の主張はほぼ全面的に排斥されているが(記録を読むと至極当然のようにも思えるが)、その多くの主張は主張段階での請求人としてに立証の不充分に起因するものとなっており、立証責任が納税者にあることをまずはベースに置いて判断がされていることは留意されるべきであろう(最近の傾向にあるものであるが)。

「更正の請求は、申告内容の過誤から生じる納税
者の不利益を救済するため、租税行政の法的安定性の要請を、一定の要件
の下に制限する趣旨のものと考えられ、このことやその規定の文言等に照
らすと、自ら計算した所得金額等を記載した申告内容の更正を請求する納
税者側において、その申告内容が真実に反するものであることの主張及び
立証をすべきであると解するのが相当である。

したがって、税務署長は、更正の請求の調査手続において、上記のよう
な点について、納税者から具体的な主張及び立証がない限り、その納税者
の提出した申告書に記載された所得金額等をそのまま正当なものとして、
納付すべき税額をその申告どおり確定すれば足りるというべきである。
ロ 所得税法第37条第1項に規定する「販売費、一般管理費その他これら
の所得を生ずべき業務について生じた費用」とは、当該業務の遂行上生じ
た費用、すなわち業務と関連のある費用をいうが、単に業務と関連がある
というだけでなく、客観的にみてその費用が業務と直接の関係を持ち、か
つ、業務の遂行上必要なものに限られると解するのが相当である。」

以上のように、本件ではここの費用項目において如何なる主張がなされているのか、そして反証が、あるいは立証の不足、信頼性の程度の課題が明確にされているものであり、裁決本文を参照されるべきものであろう。但し、本件において、この請求人の主張において、その立証が不充分であることが上記判断の基本的な基礎となっている。納税者である請求人も仕入相手側にある領収等の事実の証明は、納税者段階では、その活用が困難であり、自身の主張をもって経費が必要経費として認められるべきであるものと主張しているが、ほぼ全面的に排斥されている。その判断の根拠は上記のように、更正の請求における立証責任を事実上納税者に転換していることにある。従来は納税者の主張にあるように、課税庁が質問検査の行使などを通じてその立証を行うことが、必要とされることが基本的な理解であったように思われるところであるが、本件は裁決段階であるが、このような必要経費の認定のようなケースにおいて上記のように立証責任を納税者に移す考え方が主流となりつつあるように、考えられる。税理士を中心とした民間ベースでは、ほぼ計算記録の整理に軸足が置かれつつあり、その立証や、要件の充足の判断は、通達に依拠することで、ほぼ放棄してきたのが全般的な流れであるように認識されるが、このような判断はほぼ裁決レベルでは確定しつつあり(近年は裁決も法的な判断をベースにすることが確立されつつある)、訴訟段階でも同様の傾向がみられるようになりつつある。その法的な根拠は更正の請求における国税通則法の書類添付義務に位置づけられているが、この点は、より広範囲に租税法規の適用における立証責任の分配について、解釈するものとして理解することは従来の財産権保護や、質問検査の位置づけから構築された判断とはバッティングするものであり、より今後の研究課題とすべきものであるように思われるが、私見としては、少なくとも更正の請求段階において、一定の手続きが調査段階において整備されていることからも(理由附記、説明等)、かかるような立証の責は納税者においても保持されるべきものであるように考える。この場合は、どの程度の詳細な事項を記載すべきであるのか、説明、理由附記等の実効性の確保が重要な課題となるのであろう。租税の専門家としては、会計業務における計算記録の整理・調査としての機能、当該機能への習熟に加えて、租税判断における法的な判断をベースとした課税要件の理解(租税法規の基本的な解釈と事実関係の理解)は、求められることになるのであろう(ある意味、租税法規の専門としてまっとうな方向であるが、帳簿記録のみならずより取引内容に踏み込んで把握し理解していくべきであろうし、各種サポート、相談等の他の業務においてもこの点が起点となって行くのであろう)。

国税通則法23条
3 更正の請求をしようとする者は、その請求に係る更正前の課税標準等又は税額等、当該更正後の課税標準等又は税額等、その更正の請求をする理由、当該請求をするに至つた事情の詳細その他参考となるべき事項を記載した更正請求書を税務署長に提出しなければならない。


いずれにしても本件では、納税者の主張は、主張するすべての現金仕入の金額をサポートする領収書等のサポートではなく(一部をこの主張のため相手先から集めてきたものであり、信頼性に欠けるものとして評価されている)、固定資産、消耗品の実在、給与等の相手先の氏名が異なるなど(本来のところは、立証云々より、よく更正の請求出してきたなというレベルであるのかもしれない、適正な帳簿記録等がほぼ存在しないレベルであるのだろうが)、立証の責を充足していないとして、ここの費用ごとに反証されているものである。この点は逆に立証すべき点、準備すべき資料を勘案する上では、参考となるものであり、納税者課税庁側双方においても重要なトレーニングとなるべき事例であるように捉えられる。

以上です。毎度のごとく、備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2020年5月20日水曜日

判例裁決紹介(平成30年11月27日裁決、国外扶養親族に関する税制改正と納税者の不知)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年11月27日裁決で、国外扶養親族に関する納税者の不知による不服が申立てられたものです。

具体的に本件は、請求人が確定申告で記載した扶養控除の適用対象として、国外に居住する、非居住者である親族を加えていた事に対して、当該控除の適用上、必要とされる書類の添付、提示がなかったとして、適用を否認した更正処分を行ったことに対して不服を申立てるものである。事案としてはシンプルな、書類の添付漏れという事案であるが(おそらくこの件に限らず実務的には大変多い事態であるように思われるが)、かかる処理に対して、制度適用がなかったことを自らの制度理解が不十分であるというわけではなく、課税庁の説明がなかったことによるものとして不服を申し立てている。

結論としては、ある意味当然であるのかもしれないが(租税制度の複雑さは、とりあえず横においておくとして)、請求は認められていない。法の不知に対して、かなり冷淡なという表現が妥当であるのかわからないが、反応は、租税に限ったものではないが、本件も、下記のように判断をして結論を導いている。

「課税庁は、国税庁ホームページなどにおいて、法令の改
正に関する事項を広く一般に周知しているところ、申告納税制度の下にお
ける所得税等の確定申告は、納税者自身の判断と責任においてなされるべ
きこと、また、原処分庁所属の職員が納税者に対して法令の改正について
説明をしなければならない旨を定めた法令の規定はないことから、原処分
庁が、請求人に対し、事前に法令の改正について説明をせずに本件更正処
分を行ったことに違法な点はない。」

申告納税制度という点が、国税の大半において現行法の基本にあることは言うまでもないが、やはりこの点が判断の基礎となっている(もう一点は法令上の責任として説明が行われていることが定められているのかという点)。現行法の基本的な立場からは、この申告納税制度として、納税者自身がその状況をつまびらかとして、制度を理解して申告を行うことが背景にあることは揺るがない。制度の複雑さや、専門技術としての高さからは、批判も存在し得ようが、昔よりもHPなどによる広報は広がっており、内容も充実している。制度改正に関しても周知される環境にあって改善していることは確かであろう。かかる点で、本件のような不知による申告を修正することは認められない(旧法の状況が適用されるなどの状況は認められることはないだろう、錯誤によるものは別途検討課題となるだろうが)という判断は妥当であろうし、他の同様の事例においても変わらないだろう。


二 第一項の規定による申告書に、第八十五条第二項又は第三項(扶養親族等の判定の時期等)の規定による判定をする時の現況において非居住者である親族に係る障害者控除、配偶者控除、配偶者特別控除又は扶養控除に関する事項の記載をする居住者 これらの控除に係る非居住者である親族が当該居住者の親族に該当する旨を証する書類及び当該非居住者である親族が当該居住者と生計を一にすることを明らかにする書類

しかしながら、本件の問題の基礎にある国外扶養親族が課題となる事例は近年のトピックである。確定申告の喧騒に紛れ(今年は一月延長されましたが、コレはこのまま定着しないのだろうか)、あまり焦点が当たるものではないのかもしれないが、実務においても扶養対象がいかなる者であるのかという点は重要なテーマであろう。特に本件のような国外の扶養親族の存在は、近年増加傾向にあり、実務でも見かける機会が増えつつあるのではないだろうか。本件でもこの書類の添付が対象となっているものであり、改正が数多くの問題事例からも強化されているものであり、定期的なチェックが必要であろう。

法は上記のように生計を一にすることを明らかにする書類ということで、実務上は、送金の事実を明らかにする書類が基礎となっている。送金イコール生計を一にするという理解はいささか解釈としては、限定し過ぎではないかと言う印象であるが、実務は送金によって扶養が判断されている。この生計を一にするという文言自身が如何に解釈されるものであるのかという点は、よくある論点であるが、送金額なども本来は考慮されるべきであろうし、多様な判断が本来ありうるものではないだろうか(ではどのようなものが対象となるのかというのは具体性にかけるが)


以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2020年5月9日土曜日

判例裁決紹介(大阪高判令和元年10月10日、取引相場のない株式の評価方法に関する変更と相続税申告の減額更正処分)


さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は大阪高判令和元年10月10日で、取引相場のない株式の評価方法に関する通達変更に伴う相続税申告の減額更正処分を行うべきこと、あるいは不当利得返還請求、錯誤無効等を主張している事案の控訴審である。一審では原告納税者の主張が棄却されたが、本件も同様の主張(公定力等に関する主張を追加して)が基本的な争点とされている事案である(結果は納税者の主張を棄却)。


具体的には、本件は、相続人たる納税者がその相続税の確定申告において、なした取引相場のない株式の評価が判決により修正(平成24年3月2日判決、相続界隈では著名な取引相場のない株式の評価に関する評価方法において従前の通達の処理を否定した判決、最終的には、この判決判断が確定し、財産評価基本通達の評価方法が修正されたもの)された金額で本来は申告を行うことが可能であったとして、当初相続税申告における評価額と、当該修正後の評価額との差額の返金を求めるものであり、並行的に不当利得返還請求、錯誤無効、国家賠償等の主張が行われているものである。相続税申告における財産評価基本通達の位置づけ、重要性は、基本的な時価として推定を受ける点においても非常に重大なものであることは言うまでもないことであるが、かかる通達記載の評価方法に従っていた評価に基づく相続税申告が別件判決により、その評価の基礎となる評価方法が合理性が否定される余地がある(財産評価は多様な時価があることがある意味前提であり、この点を皆、忘れているだけではあるのでしょうが)などもことが明らかになり、もって当該通達が修正された事により、もって過去の自己の申告も修正された方法による金額へ減額を求めた事案である(平成18年の死亡による相続税深刻であり、更正の請求による救済の期限は超過している。)。相続税は金額が多額になり、本件でも総額で1億円以上の金額が納税額において異なるものであるが、財産評価の指針となる(この表現が違和感がある人もいるのかもしれない)通達による評価の合理性を問う事案は非常に多数に及ぶものの、本件のような通達に変更による影響を反映させること、救済を求めるものは事案としてはは本件地裁とともに珍しい事例であろう。相続税の専門家であれば、あるほど、その申告における財産評価基本通達の位置づけは理解しており(多数の判例によって支えられている)、本件のような修正を適用して返還すべきとの意見に賛同するものではあるだろうが、そして納税者としても大きな相違となる(特にこのような同族会社のような株式の相続は、相続財産の大半を占めるものとして重要である以上)、評価方法の変更は、それをもって返還を図るべき義務があるとの主張を行うことは素朴な主張として宜なるものであるのかもしれない。正直気持ちはよく分かるものであるが、全面的にその主張が排斥されているものであり、その基本的な部分は財産評価の基礎を構成する時価の意義、捉え方にあるのであって、かかる点は、租税法規の実務に携わる人間としては留意すべき事例ではないだろうか。

判決では、以下のように、本件の主張の基礎となる不当利得における返還対象として租税法規に基づく申告が対象となりうるのか肯定した判断に関して、事例判決として、一般的な成立を非常に厳格に判断している。この点は、旧判決における状況は救済措置が限定されている状況において、認められたものであり、本件のような状況とは異なるものであろう。かかる点は一般に申告納税制度を基礎とする以上、不当利得の成立する余地は限定的に解されるべきものであると判断されよう。著しく不当かつ明白な事情の存在に関しては、特に主張立証がなされていない(おそらく租税の専門界隈の判断としては財産評価基本通達の重要性から不当であることは余談の余地もないものとして認識しているのかもしれない)。しかしながら本件ではこの主張が不備が地裁に引き続き不当利得の成立を否定している。

昭和49年最高裁判決は、確定申告時には金銭債権の貸倒れが生じて
おらず、確定申告書の収益に関する記載に何らの過誤もなかったが、後発
的に生じた貸倒れによって先の課税処分に基づく租税の収納を甘受しなけ
ればならないとすることが適当でなくなっており、しかも、後発的事象を
織り込んで算出した納税額が課税庁による格別の認定判断を待つまでもな
く客観的に明白で、課税庁にその判断権を留保させる合理的必要性が認め
られない事案について、上記の後発的事象を踏まえた救済を可能にする規
定が存在せず、不当利得の返還を命じなければ著しく不当で正義公平の原
則にもとる結果となる
ことを踏まえて、不当利得の返還を命ずるという
例判断を示した
ものである。

また、国家賠償としては本件のような通達に関する行為(通達が内部の文書であることから形式的に不当利得の成立を否定するものではなく)、下記のように、一律に対象とならないものとして判断されるものではなく、余地はあるものとしている点は重要な点であろうが(この点は、通達の税務行政での影響力を鑑みれば重要な点であろう)。どのような点が対象となりうるのかという点はいささか読み難い。

もっとも、通達は、その内容によっては、これに従うべき職務上の
義務を負う下級行政機関の公務員による職務執行を通じて国民を事実上
拘束する結果となる場合があり得るから、羈束裁量行為につき法律によ
って羈束されている裁量を逸脱し又は自由裁量行為につき行政機関に与
えられた裁量を著しく逸脱する内容の通達を制定し、もって国民を法的
根拠に基づかずに事実上拘束するような結果を生じさせるなどした場合
は、通達制定行為が国家賠償法1条1項にいう違法なものと評価される
ことがあり得るというべきである。」

しかしながら本件の通達の修正(評価方法の)に関しては、以下のように高判として国家賠償の成立を否定している。
財産の評価、時価の成立においては、特に株式の評価においては、多様な時価が想定されるものであり、必ずしも一義的に評価が定まることは否定される。従って財産評価基本通達が事実上の指針となっているのであるが、この点は、財産評価の基本的な成立において、自明なことであるのかもしれないが、いわば財産評価基本通達による評価独り歩きして、事実上の基準となっているのが現状である。この点が本件では基本に立ち返って、課税庁に一定の裁量を認めているものであり、本来ならば時価としていかなる金額が合理的であるのかという点が争われるべきものとしてこの点の主張がなされていないとして主張を排斥している。いわば盲目的に通達を基礎としているが、法令解釈においては時価の意義がいかなるものであるのかという点が中心であり、通達による評価そのものの意義を問うことは二次的な意義しか有していないということが導かれている。法令、特に時価という基礎にたちかえった論理であり、相続税法の基本的な判断として理解されるべきものであろう。いささか時価や評価方法に関して、非常に割り切ったものとして理解している点は、租税法規の基本的な要請として安定性の観点から否定的にみられるべきものであろうが。

「また、取引相場のない株式については市場価格が形成されていな
いから、その時価を容易に把握することは困難であり、だからといっ
て、公認会計士等による評価を義務付けることとすれば、国民に過度の
負担をかけることなく法定の期限内に納税申告をさせ、税額を確定すべ
き要請に副わない事態が生じ得る。そうすると、課税庁としては、専門
家の意見に基づく客観的な評価額を確定させた上で課税をするのではな
く、しかるべき専門家の意見を得ることなしに上記のような株式の評価
額を確定するという割り切った運用を容認せざるを得ないものであっ
て、旧通達及び改正通達は、こうした発想に基づいて策定されたものに
すぎず、それぞれの定める方式に従って得られた評価額が中立公平な立
場の専門家の意見によって把握できる客観的な評価額と一致することを
前提としたものではない
と解するのが相当である(別件東京高裁判決
は、相続税法22条所定の時価につき相続開始時における当該財産の客
観的交換価値と解釈した上、市場価格が形成されていない取引相場のな
い株式については、その時価を容易に把握することが困難であるから、
合理的と考えられる評価方式によって時価を評価するほかなく、それに
よって得られた金額をもって「時価」と評価すべきことになる旨を判示
しており、上記説示と同様の考え方を前提としているものと解され
る。)。そして、相続税法が複数の評価方法があり得るような相続財産
の評価の方法について特段の定めを置いていないのは、課税庁に対して
徴税の技術性と複雑性を踏まえた合理的な裁量(認定判断権)を与える
趣旨に出たものであり、国税庁において上記のような発想に基づいて通
達を策定し、各税務署長が上記のような発想に基づいて通達に従った対
応をすることを許容しているものと解するのが相当である。」

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

東京高判平成30年9月26日、税務代理権限証書の意義)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京高判平成30年9月26日で、納税者が実質的な税務代理権限を与えていたと推定される税理士に対して課税庁が納税者の相続税申告に関する違法行為(課税に関する書類を送付)したことにより、別件訴訟で敗訴しもって、財産上の損害を受けたことから国家賠償を求める事例です。

いささか、事実関係が不明な点も多いものの、本件は具体的には、納税者が別件訴訟で敗訴した責任を、課税庁における送付文書の送付(税理士への)行ったことが違法であるのか否かという点が、すなわち、当該税理士は税務代理権限証書を提出されていなかったものであるが、かかる状況にある税理士に対して相続税の更正処分の書類を送付したこと、あるいは税務代理権限証書の提出を求めなかったことが違法と評価されるのかという点が中心的な課題となっている事例である。別件訴訟での敗訴原因の追求など、より検討すべきものも多いものであろうが、本件は、課税庁職員の行為と税理士の関係が現れており、特に権限証書の意義が俎上に乗った珍しい事例であろう。かかる点が訴訟として課題となることは珍しく、税務代理権限証書の位置づけを理解する上で参考となる事例である。あまり実務では重要視される書類ではないのでないかと推定されるが、このような課税庁職員の行為に関して違法性に及びうるものであることは興味深いものであろう。


(税務代理の権限の明示)
第三十条 税理士は、税務代理をする場合においては、財務省令で定めるところにより、その権限を有することを証する書面を税務官公署に提出しなければならない。

以上のように、本件は、税理士法30条に規定する税務代理権限証書の意義が以下のように判示されている。

税理士法30条は、税務官署において、代理権の存否の判断を容易にさせることをその趣旨としているにとどまるものと解されるから、■■■■■が代理権限を付与されていた以上、本件相続税の税務代理に当たって税務代理権限証書の提出が必要不可欠であったとはいえず

として、権限証書の背景にある税理士において実質的に代理権限が付与されているか否かという点が重要であり、税務代理権限証書自身には、その意義として、代理権の存否に関する判断を容易にさせることが趣旨にとどまるとして、違法性の評価において当該証書を提出を求めなかった行為につき違法性を否定している。税務代理権限証書の意義を限定的に理解している上記判示であるが、必ずしもその解釈上の根拠が示されていない点は、議論の対象となるのではないだろうか。実務における位置づけもこの程度にとどまるものとして理解されるものであるのだろうか。かかる点はより検討が必要であるように思う。かかる点からは当該証書の関係する手続法違反は、多くの場合において、手続き上の不備として課税処分において、効力を発揮するものとは評価されないものといえよう。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。


2020年4月20日月曜日

判例裁決紹介(東京高判令和元年11月27日、点々と移動して職務執行する者の住所地、居住者)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京高判令和元年11月27日で、点々と移動して職務を行う者(会社経営)が日本国内に住所地を有しているのか否かという点が争われた事です。

具体的には、本件は、内国法人及び海外子会社(シンガポールを本店にハブとして東南アジア各地に拠点を形成して)を経営している会社代表者(代表取締役、同族企業)が点々と拠点を移動したりしていることから所得税法に定める居住者に該当しないとして所得税の確定申告等を行っていなかったところ、調査により、当該代表者は日本国内に居住している者(居住者)に該当するとして、期限後申告の勧奨を受けたためそれに従い修正申告を行った原告が改めて日本国内に居所及び住所を有していないとしてその居住者性を否定した事である。地裁判決に続いて、裁判決も同様に原告納税者の主張を認め、課税庁の主張を排斥し、日本国内に居住していない、居住者としての該当性を否定した事である。裁決ではこのような点々と拠点を移動しているような状況にあって、如何にしてその判断を行うべきであるのかという点が課税庁の主張を認めていた、特に従来の住所判定の基礎となるような拠点移転の事実、滞在日数によるシンプルな判断をもってしていたところに対して、裁判所は否定的な判断を下した状況である。国際租税の基礎というべき納税義務の判断を行う基準となる居住者という概念自身は、従前議論が行われており、近年は社会環境の変化からその住所の概念も変容を余儀なくされているのではないかという問題意識は共有されているところであろうが、多くの居住者の概念が、その基礎となる住所の概念を如何にして解するのかという点を課題としていたように捉えられる。本件もその類型に該当するものであり住所イコール生活の本拠という法令解釈は揺るがないものであろう。そこで問題となるのが如何にして本拠と判断するのかという点が中心的な課題となっているのがこのような居住者における判断の基底にあるものである。近年は、必ずしも我が国のとどまった形での業務提供に限るものではなく、グローバルな展開の中で個人もその拠点を有するような状況は容易に想定されるべきものであり、このような状況を現行法において反映させるのかという点が課題となっている事であろう。そもそも生活の本拠という判断枠組み自体が今日の状況において適当であるのか、国際租税における属性、納税義務を判断する上で、ネットを活用した役務提供も容易になりつつありサプライチェーンが国内に限定されないような状況であれば(これが今年のようなコロナ禍の拡大を招いているのかもしれないが)判断枠組みとして妥当であるのかという疑問は起こり得ようが、生活という概念自身が必ずしも一義的ではなく(本件でも職務を中心に判断を行っているが、家族が国内に存在していることを重視する見解もありえよう)、本拠という存在をどのように判断するのか、主観的な要因が介在する余地が大きいことを租税法規の基本原則に照らして如何に考えるのかという点はより課題となろう。

このような中で本件は、点々と会社経営のため拠点を移動する、特にハブとなったシンガポールでの拠点での生活の拠点としての状況を認めるべきであるのかという点が中心的な課題となっているものである。かかる点では本件のような状況を前提とした判決であり、法令解釈上特段特徴的なものではないものとも捉えられ、的な価値は低いとも評価されるものであるのかもしれない。しかしながら本件は従前の判断枠組み(滞在日数や移動時のイベント)による課税庁の判断を覆した事であり、下記のように、資産状況や拠点移動のイベント(住民票や引っ越しなど)を重視しない判断は、今後の判断においても参考となるべきものであろう。



三 居住者 国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人をいう。
四 非永住者 居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去十年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が五年以下である個人をいう。
五 非居住者 居住者以外の個人をいう。

以上のように、本件は、住所の判断において、生活の本拠の判断において、下記のように課税庁の主張を排斥している。生活の本拠の判断を勤務者をベースにした引っ越しのような判断を避けて、職務の状況をベースにおいて判断している。予測可能性という点では劣位にならざるを得ないが(あるいは客観的かというと限界があるが)、職務などの性格を反映させ、あるい経緯を判断要素としている点は特徴的と言えよう。検討手法として時代遅れとしてかなり強く否定している点は、強調されよう。


第1審原告■■は、経営する会社の活動を日本から海外に広げ、日本と
海外に複数の居所を有し、海外滞在日数が徐々に増加していったのである
から、通常の引越しのように、特定の日又は期間に目に見える形で生活の
本拠が日本から海外に移転するというイベント的なものが存在しないのは
当たり前のことである。このような者に対して、過去に日本にあった生活
の本拠たる実体が時系列的にみて日本から海外に移転したかどうかを精緻
に時系列的に検討することは、検討手法として時代遅れ
である。第1審被
告の主張を採用するには無理がある。

以上です。
毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

判例裁決紹介(大阪地判平成31年1月17日、民事再生による資産の同一性非継続と譲渡所得)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は大阪地判平成31年1月17日で、ゴルフ会員権の譲渡に伴う損失計上を認める対象として、民事再生による資産の同一性が継続しているのか否かが課題となった事例です。

具体的には、原告が保有していたゴルフ会員権の譲渡による損失を譲渡損失として申告したところ(申告年度以後は損益通算が制限されるため)、かかる譲渡損失の金額の起点となったゴルフ会員権は、民事再生の対象となり、新たに発行されたものであって、当初のゴルフ会員権(旧会員権)と譲渡会員権(新会員権)は同一性が認められるものではなく、もって、譲渡損失の計算上、旧会員権の取得費は対象とならないとした課税庁の処分を不服として提起された事例である。ゴルフ会員権の譲渡に関する租税法規の取り扱いはかつてより多様な事例を伴ってきたものであるが(多様な争点があったものであるが)、譲渡損失の損益通算が制限されたことで、今後はその対象となる状況も減少しているものとも考えられる(実務上も大きな課題であったであろうが現在はどのような形だろうか)。従って本件はゴルフ会員権という資産類型、民事再生の経緯等、些か特殊な事実関係に伴う事例とも評価することも出来よう。しかしながら、本件は譲渡所得における資産の概念が起点となっているものであり、単に資産の認定に関するものと理解するのではなく、同一性を資産概念においてどのように評価するのか、長期保有における資産の状況を所得に反映させる現行法の立場からは、資産の意義は重要なものとも考えられ、実務上も参考となるものであろう。特に本件のような会員権のような財産的価値の実態の裏付けが希薄な資産に対する声質の変化を租税法規においてどのように反映させるべきかという点は課題となるのではないだろうか。



所得税法33条3項が、譲渡所得の総収入金額から当該所得の「因となった資産」の取得費を控除することができる旨定めていることから、譲渡した資産との同一性が認められない資産の取得に要した金額を当該譲渡所得の取得費として控除することはできないと解される。

以上のように、本件は、譲渡した資産と同一性を認められる資産であるのか否か遠い雨天が譲渡損失の計算上の取得費を算入する事ができるのかという点が、争点となっている。本件の事実関係では、当該ゴルフ場での使用権、利用券を巡って、ゴルフ会員権に対する発行会社の民事再生等を経ている事実関係を基礎として同一性が認められないとして判断を行っている。実物資産とは異なる資産であるゴルフ会員権であり、その同一性に関しては契約内容を具体的に評価して、旧と新を比較検討している。契約内容の評価は決定的な評価が困難であるともいえようが、同一性において、どのような契約部分を中心的に評価を行うべきであるのかという点は、今後の実務においても重要な課題となるのではないだろうか。この評価が本件のように資産の取得費に関わるものであり、通常資産とは、同一性が維持されていることが常であり、このような取得費において異なる資産であるという判断を行うことは少ないものともいえようが、譲渡所得は長期の保有を反映させる制度もあり、期間の経過に伴う内容の変更等の影響を加味する可能性があることは、単純に資産だから、取得費を計上できるというものではないという点は留意されるべきでしょう。

(譲渡所得)
第三十三条 譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定そのいs人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。
2 次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。
一 たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得
二 前号に該当するもののほか、山林の伐採又は譲渡による所得
3 譲渡所得の金額は、次の各号に掲げる所得につき、それぞれその年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額(当該各号のうちいずれかの号に掲げる所得に係る総収入金額が当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額に満たない場合には、その不足額に相当する金額を他の号に掲げる所得に係る残額から控除した金額。以下この条において「譲渡益」という。)から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。
一 資産の譲渡(前項の規定に該当するものを除く。次号において同じ。)でその資産の取得の日以後五年以内にされたものによる所得(政令で定めるものを除く。)
二 資産の譲渡による所得で前号に掲げる所得以外のもの
4 前項に規定する譲渡所得の特別控除額は、五十万円(譲渡益が五十万円に満たない場合には、当該譲渡益)とする。
5 第三項の規定により譲渡益から同項に規定する譲渡所得の特別控除額を控除する場合には、まず、当該譲渡益のうち同項第一号に掲げる所得に係る部分の金額から控除するものとする。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

判例裁決紹介(東京地判平成31年2月5日、農地等に関する相続税の納税猶予と農業経営の廃止)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京地判平成31年2月5日で、相続税の納税猶予特例における停止条件の農業経営の廃止があったのか否かという点が課題となった事例です。

具体的には相続人たる原告が被相続人より相続した農地につき、農地等における納税猶予の特例の適用を申請して、約2億円相当の納税の猶予を受けていた場合において、利用状況調査を行っていたところ、農業経営を廃止したものとして課税庁より納税猶予の停止を受けたことをもって実質的には納税猶予の対象となる農業経営は継続している(農業法人に承継している)としてかかる適用の継続を求めたものである。農地に関する納税猶予の規定は、意外と歴史がある(昭和50年代から)ものであるが、近年は、その20年の猶予期間が経過して、納税が実質的に免除された事例も多発しているものの、あわせて、このような農業の継続が実質的に行われているのか否かという点が課題となった事例が増加しつつある。本件はかかるような農業経営に関する廃止しているか否かという点について具体的に判断した、特に農業経営法人を設立して、そこに農業を継承させているような状況に対して詳細な事実認定を行い、農業経営の廃止を判断している事例であり、実務的にも今後の参考となるべき事例であろう。特に近年は、このような事後管理を含む制度を含む納税猶予制度が事業承継など多様な局面に対して(そもそも事業承継が重要な課題として認識されたのは、つい最近だが、近年の状況からは、特に我が国の少子高齢社会を前提とするならば、今後もより重要性が増すのみだろう、実際個人事業にも適用されつつある)、事業等の廃止は最大の猶予の停止条件であり、かかる点の管理、サポートは租税専門家においても重要な課題であろう。本件はかかる点を再認識する点で、より重要なものであろう。農地に関わらず、事業の廃止を判断する際にも実質的な継続が認められるものであるのか(法人格の利用など)という点を検討する点でも重要な事例であろう。


農地等についての相続税の納税猶予及び免除等)
第七十条の六 農業を営んでいた個人として政令で定める者(以下この条において「被相続人」という。)の相続人で政令で定めるもの(以下この条において「農業相続人」という。)が、当該被相続人からの相続又は遺贈によりその農業の用に供されていた農地(特定市街化区域農地等に該当するもの及び利用意向調査(農地法第三十二条第一項又は第三十三条第一項の規定による同法三十二条第一項に規定する利用意向調査をいう。第一号において同じ。)に係るもののうち政令で定めるものを除く。次項第一号を除き、以下この条において同じ。)及び採草放牧地(特定市街化区域農地等に該当するものを除く。同号を除き、以下この条において同じ。)の取得(前条の規定により相続又は遺贈により取得したとみなされる場合の取得を含む。第十九項から第二十一項までを除き、以下この条において同じ。)をした場合(当該被相続人からの相続又は遺贈により当該農地及び採草放牧地とともに農業振興地域の整備に関する法律第八条第二項第一号に規定する農用地区域として定められている区域内にある土地で農地又は採草放牧地に準ずるものとして政令で定めるもの(以下この条において「準農地」という。)の取得をした場合を含む。)には、当該相続に係る相続税法第二十七条第一項の規定による期限内申告書(以下この条において「相続税の申告書」という。)の提出により納付すべき相続税の額のうち、当該農地及び採草放牧地並びに準農地(政令で定めるものを除く。で当該相続税の申告書にこの項の規定の適用を受けようとする旨の記載があるもの(当該農地及び採草放牧地については当該農業相続人がその農業の用に供するもの(第九項の規定に該当する農業相続人にあつては、その推定相続人の農業の用に供するものを含む。)に限るものとし、準農地については当該農地又は採草放牧地とともにこの項の規定の適用を受けようとするものに限る。以下この条において「特例農地等」という。)に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、当該相続税の申告書の提出期限までに当該納税猶予分の相続税額に相当する担保を提供した場合に限り、同法第三十三条の規定にかかわらず、納税猶予期限(当該納税猶予期限前に、その有する当該特例農地等の全部につき第七十条の四の規定の適用に係る贈与があつた場合には、当該贈与があつた日とし、当該特例農地等の一部につき当該贈与があつた場合には、当該特例農地等のうち当該贈与があつたものに係る第三十九項第三号に定める相続税については当該贈与があつた日とし、当該特例農地等のうち当該贈与がなかつたものに係る第四十項第五号に規定する政令で定めるところにより計算した金額に相当する相続税については当該贈与があつた日から二月を経過する日(同日以前に当該農業相続人が死亡した場合には、当該農業相続人の相続人(包括受遺者を含む。以下この条において同じ。)が当該農業相続人の死亡による相続の開始があつたことを知つた日の翌日から六月を経過する日。以下この項において同じ。)とする。)まで、その納税を猶予する。ただし、当該農業相続人が、その納税猶予期限又は当該贈与があつた日のいずれか早い日(以下この条において「死亡等の日」という。)前において次の各号のいずれかに掲げる場合に該当することとなつた場合には、当該各号に定める日から二月を経過する日まで、当該納税を猶予する。
一 当該相続又は遺贈により取得をしたこの項本文の規定の適用を受ける特例農地等の譲渡、贈与(第七十条の四の規定の適用に係る贈与を除く。)若しくは転用(採草放牧地の農地への転用及び準農地の採草放牧地又は農地への転用その他政令で定める転用を除く。)をし、当該特例農地等につき地上権、永小作権、使用貸借による権利若しくは賃借権の設定(当該特例農地等につき民法第二百六十九条の二第一項の地上権の設定があつた場合において当該農業相続人が当該特例農地等を耕作(農地法第四十三条第一項の規定により耕作に該当するものとみなされる農作物の栽培を含む。以下この条において同じ。)又は養畜の用に供しているときにおける当該設定を除く。)をし、若しくは当該特例農地等につき耕作の放棄(農地について農地法三十六条第一項の規定による勧告(当該農地が農地中間管理事業の推進に関する法律第二条第三項に規定する農地中間管理事業の事業実施地域外に所在する場合には、農業委員会その他の政令で定める者が、政令で定めるところにより、当該農地の所在地の所轄税務署長に対し、当該農地が利用意向調査に係るものであつて農地法第三十六条第一各号に該当する旨の通知をするときにおける当該通知。第十二項第二号において同じ。)があつたことをいう。同号及び第十二項第三号において同じ。)をし、又は当該取得に係るこの項本文の規定の適用を受けるこれらの権利の消滅(これらの権利に係る農地又は採草放牧地の所有権の取得に伴う消滅を除く。)があつた場合(第三十三条の四第一項に規定する収用交換等による譲渡その他政令で定める譲渡又は設定があつた場合を除く。)において、当該譲渡、贈与、転用、設定若しくは耕作の放棄又は消滅(以下この条において「譲渡等」という。)があつた当該特例農地等に係る土地の面積(当該譲渡等の時前にこの項本文の規定の適用を受ける特例農地等につき譲渡等(第三十三条の四第一項に規定する収用交換等による譲渡その他政令で定める譲渡又は設定を除く。)があつた場合には、当該譲渡等に係る土地の面積を加算した面積)が、当該農業相続人のその時の直前におけるこの項本文の規定の適用を受ける特例農地等に係る耕作又は養畜の用に供する土地(当該農業相続人が当該相続又は遺贈により取得した特例農地等のうち準農地で農地又は採草放牧地への転用がされたもの以外のものに係る土地を含む。)の面積(その時前にこの項本文の規定の適用を受ける特例農地等のうち農地又は採草放牧地につき譲渡等があつた場合には、当該譲渡等に係る土地の面積を加算した面積)の百分の二十を超えるとき その事実が生じた日
二 当該相続又は遺贈により取得をした特例農地等に係る農業経営を廃した場合 その廃止の日

以上のように本件は上記の農地等にかかる納税猶予の特例が課題となった比較的珍しい事例である。上記のように法文は、納税の猶予、最終的には納税が免除されるような非常に有利な租税特別措置である以上致し方ないものであろうが、詳細な要件が付与されているものであり、そもそも読解に苦しむ法文であるものであるが、本件で課題となるのは、対象となる農業相続人(本件では原告)が、従来農業を継続していたところ、農業法人を設立(役員は原告)し、当該農地を含む農業に関わる事業資産をすべて譲渡(出資も含む)して、もって法人が主体となって農業を継続していた(この農業が継続している点については争いはない、近年の事例では、桜の木を植えていたなどそもそも農業であるのかという点が課題となるものも存在しているが本件ではこの点は課題となっていない)当該法人には従業員等はおらず、役員たる原告が農業を実施している状況にあって、農業法人が農業収益も帰属させており(一部農地等を売却賃貸したのは錯誤があるとの主張もあるが、数年間法人の収入として申告しており、地代を受け取って個人の所得として申告している点で錯誤は認めがたいだろう)、農業相続人たる原告が農業を継続しているとは認めがたいという点が問題の中心となっている。原告が税理士事務所にかkるような農業法人が関与することが認められるのか問い合わせをしている点があるがこの点は専門家責任として課題となるのであろうが(このような長期間に渡る事後管理の必要性が近年の制度においては重要な点になっていることは認識されるべき)、本件ではこの点は課題となっていない。

農業を営む個人等)

70の4-6 措置法第70条の4第1項に規定する「農業を営む個人」とは、耕作又は養畜の行為を反復、かつ、継続的に行う個人をいう。したがって、個人が耕作若しくは養畜による生産物を自家消費に充てている場合又は会社、官庁等に勤務するなど他に職を有し若しくは他に主たる事業を有している場合であっても、その耕作又は養畜の行為を反復、かつ、継続的に行っている限り、その者は農業を営む個人に該当する。
現行法の解釈としては通達は、上記のように、農業を耕作等を反復継続している個人として理解している。農業経営という用語と農業を営む個人という用語を同意義に解しているものとして理解されるが、耕作等の実施が中心になった判断が示されているようにも理解される。法が個人と明確にしている以上、同族会社であるとはいえ、法人格をベースとした農業法人を個人として理解して実質的な継続を認めることは、民事法の解釈ならともかく、厳格な文理解釈が要求される租税法規の解釈において採用しうるのか疑問ではある。蓋し、少なくとも個人という表現をいわば拡張的に理解する本件は、このような判断は農業相続人の行為、耕作等に着目した判断をベースとするものであるだろう。しかしながら、法文が農業経営としている点を鑑みるならば、単に耕作の状況に依拠するのではなく、所得・収益の帰属もより重視されるべきではあろう。かかる点で本件では制度趣旨を反映させ(租特である以上当然であろうが)、幅広い点を考慮した判断を提示している点は合理的であろう。特に多様な状況が想定される事業などにおいては、単に農業を継続しているとした耕作等の行為に着目して判断を行うことはかえって、租税負担の回避など、課題を生むことになろう。農業や事業を継続することが中心となっている制度であるが、単なる趣味的な状況であっても制度適用がなされることは、法が結果として納税の免除を伴うようなものである以上、趣旨に反するものであり、収益の帰属など、農業を経営すること、反復継続している状況が前提となるべきであり、営利性を含むものとして理解するべきではないだろうか。


当該農地を利用して永続的に農業を継続していこうとする農業者による相続税の納付を困難とするものであり、実際に、上記原則を貫くことにより、農業を継続する意思を持ちながらも、相続税の納付のために農地を手放さざるを得ない事態も生じるようになった。農地等納税猶予制度は、このような状況を踏まえ、昭和50年1月1日以降の相続又は遺贈によって取得する農地等に対する相続税について適用 することとされた特例であって、①相続人が、相続税の申告書の提出期限 までに農業経営を開始し、その後も引き続き当該農業経営を行うと認められる者であることを要件として、その農業の用に恒久的に使用される農地等に対する相続税額のうち、その農地等の恒久的な農地等としての価格(農業投資価格)を超える部分(いわば宅地期待益部分ともいうべき価額部分)に対する相続税の納税を猶予するとともに、②当該農地等につき、次の相続若しくは農業後継者に対する生前一括贈与又は相続税の申告書の提出期限から20年間の経過があって、それまでの間、農地等納税猶予の適用を受けていた場合は、その猶予されていた相続税の納税を免除する
の農地等納税猶予制度の趣旨や、同号の規定の「農業経営」という文言に照らせば、農業相続人が農業経営を廃止したか否かは、農地の使用状況、耕作作業の管理・態様、生産物の販売状況、生産物の売上げの帰属状況等を総合的に考慮して、農業相続人の事業としての農業経営を廃止したと評価することができるか否かによって判断すべき」

なお、本件のような同族会社を活用した、いわば法人成りのような行為は、特段珍しいものではないが、これを活用した租税回避が従来問題とされながらも、同族会社の行為計算否認のような特別な規定を要求している現状は法が法人格を有する法人と自然人を明確に分けていることの証左であり、よくこのような法人の濫用的な活用は避難されるが、本件はいわば逆に、法人格を活用しながらも実質的に個人としての継続を求める(実質的には個人)主張であるが、いずれにしても法人と個人は厳格に峻別されることになることは留意されるべきであろう。すなわち、詳細な事実認定と総合的な判断を行っているが現実的に法人の役員従業員としての耕作等の継続を個人の継続として判断することは困難であろうと判断すべきである。

以上、毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。