2019年4月15日月曜日

判例裁決紹介(平成30年3月29日裁決、相続税申告における更正の予知)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30329日裁決で、相続税申告における相続開始直前における預金引き出しとそれに伴う申告漏れが意図的であり、重加算税の適用対象となるのか否か、そして、調査官による事前通知、日程調整による電話確認によって修正申告が更正の予知があって行われたものであるのかという点が争点となっている事例です。

具体的には、複数の相続人(これらがすべて請求人)いる場合において、その一人が相続開始直税において、被相続人の預金口座から資金(約1000万)を引き出し自己名義等の口座に入金していた事例において、調査官による事前通知後、修正申告を行った場合、かかるような行為が、財産申告漏れに関する仮想隠蔽を図ったものであるとして、重加算税の賦課対象となるべきか否か、及び、事前通知の後に修正申告を行っているものであるが、事前通知後の日程調整の確認電話において、調査官が行った修正金額の確認によって当該修正申告が更正を予知した結果行われたものであるのか否かという点が主たる争点となっている事例である。他にも広大地評価の適用も問題となっている。

事実関係としては、実地調査に関する事前通知の前に、調査官においては内部調査を行い、口座による引き出し、財産申告漏れを把握していた状況であり、また、遺産分割協議では、特段かかる引き出し額は問題とされていなかったような状況であり、また申告を代理する税理士も、預金の残高証明のみを求め、預金の出納状況をチェックしていなかった(この点は重加算税における賦課決定の回避が図られた要因の一つと捉えられる)ような事実関係にある。最終的な判断としては、課税庁の主張を排斥し、いずれも納税者の主張を認め、過少申告加算税及び重加算税の賦課を排斥している点において、本件は珍しい事例であり、実務的にも参考となるべき事例であるように捉えられる。民法の改正により変更の可能性は高いが、被相続人の口座が相続開始によってクローズされることは従来から相続実務においては、特段珍しいものではなく、請求人の行為もおおいに想定される事例であろう。実務においては、口座等の資産の動きを把握することは当然の行為でもあろうが(おそらく)、かかる行為の不備により(本件では上記のように、税理士は確認していない)、申告漏れや重加算税の可能性が発生することは、留意されるべきものとして認識されるだろう。また、本件においては最終的に相続人のうち、一人の行為が問題とされたものである(結果としては問題が少ないものと評価されたものの)が、必ずしも相続人の一人が誠実であるとは限らず、背信的な意思を有している場合もあろう。このように複数の相続人が存在する単独の納税者の行為は、他の相続人にも影響を及ぼすものであり、相続人間の問題であるのかもしれないが、相続税の負担を巡っては、連帯納付も含め、相続人全てにおいて影響を及ぼすものであり、かかる点の認識も相続税実務においては認識されるべきものではないだろうか(必ずしも相続人の行為が相互に把握されているわけではないであろう)。

(過少申告加算税)
第六十五条 期限内申告書(還付請求申告書を含む。第三項において同じ。)が提出された場合(期限後申告書が提出された場合において、次条第一項ただし書又は第七項の規定の適用があるときを含む。)において、修正申告書の提出又は更正があつたときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に百分の十の割合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、百分の五の割合)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。
 (最新法令)本件のおける時点では平成28年改正前
5 第一項の規定は、修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合においてその申告に係る国税についての調査に係る第七十四条の九第一項第四号及び第五号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に掲げる事項その他政令で定める事項の通知(次条第六項において「調査通知」という。)がある前に行われたものであるときは、適用しない。

以上のように本件の中心的な争点は、申告漏れの発生した財産額に対して、事前通知の後行われた修正申告につき、更正が行われることが予知されるべきものであったか否かという点が問題となっている事例である。かかる予知の認定は、上記のように、過少申告加算税の賦課を回避する要件であり、その充足は如何なるものとして判断されるべきものであるのかという点は従来より課題とされている点であろう。本件もその類型に属するものであり、近年は国税通則法の改正により、実地の調査における前提として事前通知が義務化されたこともあり、かかる点における影響として予知における認定においてどのような変化が発生しているのかという点は検討課題となるのではないだろうか。

「過少申告加算税の制度は、過少申告により納税義務に違反した者に加算税を課することによって、当初から適正に申告した納税者との間の客観的不公平の 実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置 である。一方、通則法第65条第5項は、過少申告がされた場合であっても、その後修正申告書の提出があり、その提出が「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」は、過少申告加算税を賦課しない旨規定しているところ、これは 、課税庁において課税標準を調査する等の事務負担等を軽減することができることも勘案して、自発的に修正申告を決意し修正申告書を提出した者に対して は例外的に加算税を賦課しないこととし、もって納税者の自発的な修正申告を奨励することを目的とするものと解される。 上記の通則法第65条第5項の趣旨からすると、修正申告書の提出が、「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正が あるべきことを予知してされたものでないとき」に該当するか否かの判断に当 たっては、調査の内容及び進捗状況、それに関する納税者の認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性等の事情を総合考慮して判断するのが相当である。」

本件判断では、上記のように過少申告加算税の趣旨及び、予知の趣旨目的から、調査の内容等を総合判断して、予知の認定を行っている。かかる点は、従前と整合的なものであろうが、事前通知や日程調整などのため電話連絡を行っている際に出た修正申告の申し込みに対して修正額を調査官が問うた行為が予知を促すものであったのかという点が問題となっている。納税者側の事情というよりは課税庁の行為と納税者の内心に関するものの対応を検討するものであり、認定は困難が予想されるものである。ただでさえ、予知とは納税者の内心を起点とした概念であり、その判断を行うことは外形的な事情によることは安定性を確保することは困難なものであろう。予知をどの程度行っているべきであるのか、具体的な更正項目を予知している必要があるのか等、具体的な予知の判断枠組みは検討課題となるのではないだろうか。事実関係としても最終的には上記のように、課税庁の調査官の電話応答での質問は、金額の確認行為であり、具体的に更正を予知させるものではないとの認定を行っている点は、参考となるのではないかと捉えられる。

事前通知が法定化され、従前と異なる予知の解釈が整理されることもあり得ようが、本件のように旧法の状況においては、事前通知と予知の関係はどのように考えられるべきであるのか、例えば必要性が開示される事前通知(この程度も千差万別であるだろうが)であれば一定程度予知が成立する予知があるのではないかとも考えることもできよう。かかる点において立法において、現行法においては上記のように予知に加えて、事前通知の未了が要件とされることにより、予知と事前通知の関係に関しては、整理が行われている。このように考えるならば、今後は、幅のある予知の規定を活用して、一定のリスクある申告項目もとりあえず蓋をして、申告しておき、修正申告において予知がないということで過少申告加算税を回避するような行為は困難になるであろうし、事前通知以外において予知していない状況とはどのような状況であるのか、少なくとも従前と比して限定的な状況になるのではないだろうか。


重加算税)
第六十八条 第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。


「重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのも のが隠ぺい仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別 に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要するものである。」


また本件のもう一つの論点である仮想隠蔽の成立であるが、この点もその認定が覆っっている主たる要因は、申告代理人である税理士が預金の出納を確認していない点と、実際に係る金銭が病院費用や葬儀費用にほとんど費消されており、申告財産からの排除を意図していないとの認定である。上記のように、申告行為そのものとその背景にある行為の側面から背信的行為を行っているのかという点の認定を行い、仮想隠蔽の成立を否定している。判断枠組みは特段珍しいものではないが、課税庁の主張を覆すものであり、このような財産の申告漏れにおいて重加算税の賦課を判断する上で、参考となるのではないだろうか。

以上です。 毎度のごとくstockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

2019年4月5日金曜日

判例裁決紹介(平成29年11月14日裁決、役員の個人的費消と給与該当性)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成29年11月14日裁決で、法人の役員であった代表者の妻が使用した宝石や服飾品の購入(金額は二年で合計4億円、金額的には特殊な事例として捉えられるかもしれない)が法人の交際費や棚卸資産には該当せず、役員に対する給与の支給であるとして、源泉徴収、法人税法等の更正処分が行われた事例です。

具体的に本件は、請求人法人の代表者の妻であり、請求人の役員であった者が使用した経費支出に対して、当該支出が、二年合計で総額約4億円を超過し、服飾品(エルメスなどのブランド品)や宝石等を購入していた場合において、かかる支出は個人的な費消であり、法人の交際費や貸付けではなく、役員に対する経済的利益の供与であり、もってかかる認定の相違による源泉徴収や法人税の更正処分の是非が争われた事例である。通常は役員たる地位にある者が役員の地位を活用し、自らに帰属するような支出を行った場合は、職務に反するものであり、会社法上の問題であるようにも考えられるが、現実的には、我が国の同族会社が多数を占めるような状況ではかかる点は問題とされることは稀であろうが、本件は上記のように金額も多額であり、調査により指摘された当該支出を後の修正申告において、当該役員に対する貸付けとして処理するなどしている場合でもあり、かかるような支出が如何なるものとして処理されるべきであるのかという点が問題となっているものである。

実際のところ、本件のように、所有と経営の分離が図られていないような法人は、多数存在しており、企業の損金として妥当であるのか疑問であるような経費の支出は実務上は特段珍しいものではないのであろうが(近年は減少しているだろうか、実務家に聞いてみたいところ)、かかるような経費支出において如何なるものを損金として認容することになるのか、多額の経費支出であることが起点となっているものであろうが、このような境界上にある支出に対して如何なる対応を取るべきであるのか、どのような処理を行うことになるのか、消費税負担への影響も含め、実務に携わる者としてはティーチングケースとして参考とすべき事例ではないだろうか。


(給与所得)
第二十八条 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
交際費等の損金不算入)租税特別措置法
第六十一条の四 法人が平成二十六年四月一日から平成三十二年三月三十一日までの間に開始する各事業年度において支出する交際費等の額のうち接待飲食費の額の百分の五十に相当する金額を超える部分の金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

4 第一項に規定する交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下この項において「接待等」という。)のために支出するもの(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く。)をいい、第一項に規定する接待飲食費とは、同項の交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の法人税法第二条第十五号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。第二号において「飲食費」という。)であつて、その旨につき財務省令で定めるところにより明らかにされているものをいう。
一 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
二 飲食費であつて、その支出する金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額が政令で定める金額以下の費用
三 前二号に掲げる費用のほか政令で定める費用

以上のように本件は、法人の役員たる者がなした服飾品や宝石等の購入が、法人の交際費や棚卸商品(この点は、法人の業務とは異なるということで否定されている)としての購入、経費支出ではなく、個人的費消であり、もって役員に対する給与に該当するのかという点が問題となっている。基本的には係る支出の事実関係の認定、当てはめが問題となっている事例であり、特段法令解釈上、従前と整合的なものと考えられる。我が国の実務においては、かかるような法人の役員たる者が公私混同として経費を支出するような事例が多数見られ、租税法務においても、かかるような支出を如何にして租税負担に反映させるべきであるのかという点が争われた来たものであり、本件もかかる点において従来と同様の類型にあるものと評価される。本来ならば、租税法の適用の問題というよりも、ガバナンスの問題であり、上記のように、同族会社が多数を占めるような現況においては実質的には問題とされておらず、金額の大小は相違するもののかかるような費用支出は広範囲に存在しており、当該支出の損金計上を如何にして対応すべきであるのかという点が課題となるものであり、実際においては、下記のように、給与所得としての該当(まず所得税法の給与と法人の給与との整合的であるのかという点は言及されるべきであろうが、法人税法上は役員給与としての該当が問題になるのであろう)、をもって、経済的利益の供与という点をもって役員に対する給与という対応策が一般的であろう。判断においても以下のように、所得税法の給与概念から、役員に対する給与として認定する判断を前提としている。如何なる場合において給与から除外されるのか、かかるような推認の根拠は如何なるものであるのか、というような疑問は存在するものの、給与という認定を所与の前提としている。


所得税法第28条第1項に規定する給与所得は、自己の計算又は危険において独立して行われる業務等から生ずるものではなく、雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供した労務又は役務の対価として受ける給付をいい、その給付には金銭のみならず金銭以外の物や経済的利益も含まれると解される。

法人の役員は、役務提供の内容が極めて包括的かつ広範で法人の業務全般に及び、役員に就任していること自体(地位)によって法人に貢献することもその役務提供の一つに含まれ得るものであり、法人の役員が、実質的にの法人資産を自由に処分し得る地位及び権限を有している場合において、当該役員がその意思に基づき、経理上、給与等の外形によらず、法人から利益を得たようなときには、その利益は、当該役員の地位及び権限と無関係に取得したと見ることは相当ではなく、特段の事情がない限り、当該役員の地位及び権限に基づいて当該法人から当該役員に移転したものと推認することができ、給与等に該当すると解するのが相当である。
しかしながら、本件でも主張されているように、かかるような経費支出は、法人の交際費としての金額との対比が問題とされる。本件では、金額も多額であり、また、交際費として贈答に関する立証が不充分であり、もって交際費と給与との間で問題は少ないものと捉えられるが、この区分が課題となるものであろう。基礎なるべき法令解釈としては、単なる一般的な給与にとどまらず、類似の経済的利益の給付をも対象として給与と捉える給与概念と、交際費への立法趣旨にも依拠しているが、幅広くその適用を及ぼし、もって冗費等の抑制を図るべき交際費概念においても幅広い判断枠組みによる実質的な認定が許容されている点が、本件の基礎にあり、両者は目的も相違するものの、判断枠組みとしては、雇用や役員としての起点及び経済的利益の享受等を基礎とする給与概念と、支出の目的を判断の枠組みの中心とする交際費としては、両者は必ずしも明確に判断されるものではなく、両者が交錯する部分において如何にして分類を行うことになるのかその基準が問題となろう。特に役員は経営を委任されており、一般的な被雇用者とは異なり、職務内容において多様な行為が想定され(経営という行為を明確に規定できるものでないだろう)、行為やその背景にある目的が多様である以上、少なくとも役員に対する給与と交際費においては、明示的に職務内容と支出意図の観点からの分類は困難ではないだろうか。

本件判断でも、経済的利益の供与(受領)という点に焦点が当てられており、もちろん、贈答等の立証が請求人において不充分であることも影響しているのであろうが、租税法規においては、その処分においては法による根拠を必要とされることは、租税法規の基本的な要請であり、本件においても広範囲をカバーする給与概念への適用が図られている。いわば経済的利益の存在(享受)に対して焦点が当てられており、多様な状況が想定される支出の目的に依拠するのではなく、単なる個人的費消や実質的な費用性の欠如が問題とされているのではない。法人の行為や役員の多様な職務内容・目的との対比においては、私的な利用等を認定することは困難であって、判断に恣意が介在することは回避し難く、租税法規の基本的な要請として安定性に欠けるものと考えられる。かかる点において経済的利益の享受を基本的なメルクマールとしている点は本件の特徴として強調されてよいのではないだろうか。

また、本件では、請求人の主張として、役員としての給与の支給に関して、法人としての認容を要件とする主張も含まれているが、かかる点は、従前との解釈との対応において整合性が欠けるためであろうか、解釈として否定されている。

以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

2019年3月29日金曜日

判例裁決紹介(平成30年5月14日裁決、実質所得者課税の原則の適用)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成30年5月14日裁決で、所得税法における実質所得者課税の原則の適用が問題となった事例です。

具体的には本件は請求人が代表者となっている医療法人が、請求人の家族(妻及び息子)に対して支払った金員(給与や、業務委託、賃料等)につき、支払われた金員の受領先である口座の管理状況等から所得税法12条に定める実質所得者課税の原則の適用により、請求人の所得として課税されるべきものであるのか否かという点が課題となった事例です。起点となった事実関係として、請求人の離婚訴訟(和解も含む)において、かかる家族名義の支払につき、名義同様に、当該口座の管理等の状況を移転し、もって実質と名義を整合させるような状況が、各種金員の支払後に発生しており、かかるような事実関係の反映も含め請求人は実質的な所得としての課税関係は有していないものとして主張しているものである。

下記のように、所得税法は、法的な帰属・名義にかかわらず、実際の収益の享受の状況をもって課税対象として所得税法を適用することを明文をもって定めている。この実質所得者課税の原則(これが実質課税の原則として適用根拠とされていた時代もあるものであるが、法文において明確なようにあくまでもその適用対象は名義関係と実質的な収益の帰属関係との整合性を図るべき規定である)、その適用において、法律上の名義と実質的な収益の享受している者との整合性を図るべく、法的な名義を超えて、かかる所得税法の適用を図るものであり、所得者という所得税の基礎的な対象を確定する趣旨であり、所得税負担を大幅に、特に負担者を確定する規定であり、如何なる者がその適用対象となって当該租税負担を行うべきであるのかを決定するものとして、非常に影響が大きい規定として、評価されるべきであり、如何なる適用要件をもってその帰属関係を画するものであるのかという点は重要な点である。しかるにその適用枠組みを如何にして解するべきであるのかという点が従前課題とされてきているものである。

(実質所得者課税の原則)
第十二条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

以上のように、法は、所得者として所得者を決定するにおいて、収益の享受というという事実関係に基づいている。また、下記のように、資産から享受する者に対してもまずは資産の名義人を基礎として推定するとしている。各種の資産類型等もあり、如何なるものをその収益の享受とするものであるのか、という点は、多様な状況が想定されうるものであるが、また名義を否定し、実質的な状況を課税関係に反映させることがその基本的な目的である以上、当該規定の適用においては、個々の事実関係に左右されることも多く、その適用において高い予見可能性が確保されているとは評価しがたいものであろう。そもそも、収益の享受とはいかなる状況を意味するものであるのかという点も必ずしも定かではなく、個々の事実関係に左右されている現況にあるものであり、法令解釈上も、かかるような一般的な所得帰属関係を律する規定の適用が安定的であるとは評価しがたいものと考えられる。従って、本件のように、複数の財産(給与に限らず、賃料等が対象)がその適用対象となっており、従前のように圧倒的に給与等の支払における所得者課税の原則からより多様な対象を適用対象として争っており、また最終的な判断においても、給与支給の状況においては、その実質的な所得者としての位置づけを認める判断を下しながらも、賃料等の適用において課税庁の主張を排斥している点においても、家族間の所得の分散が図られている事例は、数多く存しているであろうし、その具体的な判断枠組みを検討する上で、本件は参考となる事例であるように捉えられる。

資産から生ずる収益を享受する者の判定)

12-1 法第12条の適用上、資産から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その収益の基因となる資産の真実の権利者がだれであるかにより判定すべきであるが、それが明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する。

以上のように、本件の中心的な争点は、本件における事実関係において、実質的な所得者課税の原則の適用により、請求人に対して家族名義で支払われた金員の帰属関係を法的な名義をこえ、課税対象として理解されることになるのかという点が問題となっている。まずは法令の解釈としては文言として、その収益の享受としており、実際に受け取った収益の消費や活用を含んでいるものとして理解することができるのか否かという点も課題となるだろう。上記通達においても、享受と言う文言から収益の起因となる権利者を基礎とした判断を行っており、依拠すべき対象を収益の受け取りに基礎をおいているように解されるべきであろう。

しかしながら、判断においては、事実関係を実質的に評価するにあたって、資金の管理状況を基礎としている。通帳の管理状況のみならず、出金状況を判定している。また、金員の支払の根拠となった、雇用契約の存在(役員としての契約も含む)、賃料支払や委託業務の存在しているのか否か、不存在を、判断の基礎においていることがその特徴として指摘されよう。いわば、法的な支払根拠の有無から判断して、かかる点が欠けるような場合において、資金の管理状況が問題として、請求人に対する所得であるのか否かを判断している。但し、判断では、当該金員の請求人に対する帰属をすべて認めているのではなく、名義が異なっており、その金員の起因となった不動産の賃料の支払い(家族名義不動産)に関しては、不動産の初有名義(登記等)を覆す状況にはなく、課税庁の主張が退けられている(同様に年金保険の契約支給も含む)。このように判断の基礎となる財産類型においてもその対応が分かれるものであり、その事実関係の評価が異なっていることは留意されるべきであろう。法的な名義を覆し、実質的な所得の帰属関係を確定させることは、実質的な所得者課税の原則として法文をもって明記されているとしても、相応の根拠が要求されるべきものであり、支払われた当該金員の管理状況のみの観点からのみでは、判断が困難であることもすなわち、資産の所有経緯等のその他資産類型に応じた状況もまた考慮されるべきものであるという点は参考とされるべきであろう。しかるに収益の享受という文言はの解釈として、収益の起点や管理なども考慮した総合的な判断を要求するべきものとして理解されるものと考えられる。

以上です。
毎度のごとく、論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2019年3月23日土曜日

判例裁決紹介(平成30年1月30日裁決、相続税申告における財産一覧表からの記載漏れと仮想隠蔽)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年1月30日裁決で、納税者が税理士に交付した財産一覧表に記載漏れがあり、かかる行為に基づく相続税申告において仮想隠蔽の成立による重加算税の賦課が課題となった事例です。

具体的には本件は相続人たる請求人が相続税の申告において、税理士に依頼して申告を行った(期限後申告であるが)ところ、その申告の基礎資料となった財産一覧表において(一部預金残高証明書との不整合があり、税理士において修正)、保険契約に伴う受領金の記載漏れがあり、係る資料に基づく、相続税申告において未申告があることが調査によって判明し、かかる納税者の行為が仮想隠蔽に該当するとして下記のように国税通則法に定めのある重加算税の賦課決定処分が行われたことを不服として、その取消を求めた事案である。すなわち請求人たる納税者の行為が重加算税の賦課決定要件を充足する仮想隠蔽に該当すると評価されうるのか否かという点が問題になっているものである。

相続税の申告においては、その起点として最も重要な相続財産の把握であるが、実務においても多様な工夫が取られているものであろう。不相続人と相続人において事前に調整されていることや意思疎通があること、財産内容の開示、保証や各種年金、保険等の契約に関する情報が網羅的に把握されていることは基本的に稀であるだろうし、専門知識を有していないことから財産の把握に支障が発生することは言うまでもないことであろう。この点は実務家のみなさんが租税の専門家として、依頼を受けるにあたり、どのように工夫されているのか、興味深い点である。最近は相続税専門の事務所も出てきているが(個人的には租税の専門家としては長期間に渡り、家族等に関与して信用を基礎として相続税や財産関係の整理に関与すべきものと考えており、スポット的に関与する節税思考が基礎に来るような取扱は困難であるような気もしますが)本件のような、財産の一覧表を作ってくるようなケースはどのように扱うことになるのであろうか。長期間に渡る関係性を基礎としているわけではないような状況下では、網羅的な財産の把握は困難であり、納税者において意図的であるのか否かを問わず、財産の漏れは発生しうるものであり(保険などは通常は民事法においては相続対象の資産ではないが)、かかる点に対してどのように対処するのか、あるいはその漏れにおいてどのような不利益が発生することになるのかという点を検討する上で本件は参考となるべき事例と評価されよう。最終的に本件は、課税庁が主張している仮想隠蔽の成立が認められず、納税者が行った財産一覧表における保険契約等の財産漏れが仮想隠蔽には該当しないという判断が行われており、いかなる点がかかる判断の基礎になっているのかという点を理解する上でも有益な事例であるように考えられる。

国税通則法68条2項
2 第六十六条第一項(無申告加算税)の規定に該当する場合(同項ただし書若しくは同条第七項の規定の適用がある場合又は納税申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の四十の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。

以上のように、本件の中心的な争点は上記国税通則法に定める重加算税の要件たる仮想隠蔽の成立につき、納税者たる請求人が行った行為、依頼した税理士に交付した財産一覧表における相続財産の漏れが、該当するのか否かという点であり、本件では最終的に納税者の主張を認め、課税庁が主張する仮想隠蔽の判断を否定しているものである。

通則法第68条第2項に規定する「隠ぺいし」とは、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について、これを隠匿しあるいは故意に脱漏することをいい、「仮装し」とは、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかもそれが真実であるかのように装う等、故意に事実をわい曲することをいうものと解される。

上記のように、判断では仮想隠蔽の法令解釈として、故意による課税標準等に対する行為であることを要するものとして理解している。本件ではかかる故意の成立の立証が行われるか否かという点が、中心的な立証の課題となっている。国税庁が公表する事務運営指針においては、より具体的に下記のように、納税者の行為が評価しうるものであるのかという点が基礎とされているが、本件ではかかる点はあまり強調されていない。財産の一覧表において、記載漏れがあったことは、納税者自身も認めており、作成段階におけるミス等によるものとして、故意によるものであることを事実上否定しており、下記のように、事務運営指針における事実関係の問題というよりは、上記のように行為の起点となるべき納税者の行為として内心に関する故意の成立が課題となっているものとして本件は判断の枠組みが形成されている点が本件の特徴と言えよう。


事務運営指針
1 相続税関係
(1) 相続人(受遺者を含む。)又は相続人から遺産(債務及び葬式費用を含む。)の調査、申告等を任せられた者(以下「相続人等」という。)が、帳簿、決算書類、契約書、請求書、領収書その他財産に関する書類(以下「帳簿書類」という。)について改ざん、偽造、変造、虚偽の表示、破棄又は隠匿をしていること。
(2) 相続人等が、課税財産を隠匿し、架空の債務をつくり、又は事実をねつ造して課税財産の価額を圧縮していること。
(3) 相続人等が、取引先その他の関係者と通謀してそれらの者の帳簿書類について改ざん、偽造、変造、虚偽の表示、破棄又は隠匿を行わせていること。
(4) 相続人等が、自ら虚偽の答弁を行い又は取引先その他の関係者をして虚偽の答弁を行わせていること及びその他の事実関係を総合的に判断して、相続人等が課税財産の存在を知りながらそれを申告していないことなどが合理的に推認し得ること。
(5) 相続人等が、その取得した課税財産について、例えば、被相続人の名義以外の名義、架空名義、無記名等であったこと若しくは遠隔地にあったこと又は架空の債務がつくられてあったこと等を認識し、その状態を利用して、これを課税財産として申告していないこと又は債務として申告していること。
具体的な財産の漏れは、保険契約に基づく受領金の漏れ(一部)であり、かかる保険契約は請求人自らが請求して請求人本人の日常的な口座に対して入金されているものであり、一部は計上してあったものの、一部保険契約に関する部分につき、漏れが存している状況であり、すべての保険契約が漏れているのではなく、一部の契約の漏れがどのように評価されるのかという点が本件の課題となっているものと考えられる。

判断の検討においては、まずは、当該保険契約による受領金が、日常的な口座への入金であり失念しやすい相続財産ではないとの評価を行っている。いささか感覚的な表現であり、如何なるものと比して失念しがたいものであるのかという点は定かとはいい難いが、このような失念しがたいものであルトの評価を起点とした上で、いかなる理由で、故意の成立を認めないものであるのかという理由付けが問題となろう。

次なる検討においては、この漏れに関する金員を受領した口座は上記のように納税者たる請求人の日常的に利用している口座であり、他の保険金の受領とともに、通常、相続税の調査において調査されることが明らかな口座であり、かかる点によって、調査によって容易にこの漏れが把握されうる状況にあることが評価されている。かかる点が本件における故意の成立として評価し難いとされて基礎的な部分であり、いわば、漏れることとなった財産の性質及び仮想隠蔽等による財産の漏れが仮に発生したとしても、調査対象として把握されうるものであるのか否かという点(把握の容易さ)が比較衡量されることにより、故意の成立が評価されている点が本件における枠組みとして特徴点であると指摘できよう。もちろん、調査が入った段階での納税者の協力的な態度が加味されている(調査において、持参した資料を特にためらうことなく提示するなど)ことは言うまでもないことであるかもしれないが(この協力的な態度が処分行政庁と審判所において評価が異なっている点は興味深い点であるが)、このような判断の対比が本件において、課税庁の主張を排し、納税者の主張を受け入れた理由となろう。故意の成立という点において、いささか定性的な判断であり、内心に対する判断、評価であるゆえに、当然であるかもしれないが、従ってかかる点において重加算税という非常に厳しいサンクションとしての機能を鑑みるに如何にしてその適用の判断枠組みにつき一般性をいかなる部分から導出することになるのかという点は課題であろう。

以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2019年3月11日月曜日

判例裁決紹介(平成29年10月11日裁決、住宅の個人売買と住宅借入金等特別控除における特定取得)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は確定申告の時期でもあり、住宅借入金等特別控除の事例です。平成29年10月11日裁決で、消費税負担のない住宅の個人間売買における住宅借入金等特別控除における特定取得の該当性が問題となった事例です。住宅借入金等特別控除における負担した消費税の項目はどのように理解しているのかという点が背景にある事例です。

具体的には、個人たる請求人が居住用財産を購入し、住宅を取得したとして、住宅借入金等特別控除を適用を行った確定申告を行い、係る申告にいて、当該取得を租税特別措置法41条における特定取得に該当するとして、申告したところ、課税庁が当該取得は特定取得に該当するものではないとして、住宅借入金等特別控除における借入金の適用上限金額を否認したことから、その取消を求めたものである。判断としては課税庁の主張を認容し、請求人の主張を退け特定取得該当性を否定している。

確定申告の時期でもあり、かかる作業の中心的な存在でもある、住宅借入金等特別控除であるが、意外とその適用をめぐり事例は少なく、法令解釈上の論点が少ない条文とされているものであるが(租税特別措置であり公平性等の問題はあろうが)、本件はその例外的な事例であり、特定取得ということで、耳慣れない表現であるかもしれないが、最近は殆どがこの特定取得に該当するものになっているはずであり、その具体的な意義を検討する上で参考となるものと言えよう。租税特別措置法における規定でもあり、一般性があるものとは言い難いとの評価もあろうが、当該制度は利用頻度が高いものであり、かかる点からも参考となるべき事例と考えられる。また、本件の起点となっている特定取得は、その制度趣旨(最終的な法令解釈もかかる点に依拠している)である、消費税の税率上昇を機とした景気への悪影響を除外することを意図した制度であることから、今後の増税においても同様の制度が予定されており、このような側面においても有益性があるものと評価される。あくまでも本件は所得税に関する租税特別措置法の解釈に関する事例であるが、その基礎には、消費税法改正の影響が鑑みられるものであり、横断的な判断が検討が必要な事例とも捉えられる。

(住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除)
第四十一条 
3 前項に規定する借入限度額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 居住年が平成十二年から平成十六年までの各年、平成二十一年又は平成二十二年である場合 五千万円
二 居住年が平成十七年、平成二十三年又は平成二十六年から平成三十三年までの各年である場合(居住年が平成二十六年から平成三十三年までの各年である場合には、その居住に係る住宅の取得等が特定取得に該当するものであるときに限る。) 四千万円
三 居住年が平成十八年又は平成二十四年である場合 三千万円
四 居住年が平成十九年である場合 二千五百万円
五 居住年が平成二十年又は平成二十五年から平成三十三年までの各年である場合(居住年が平成二十六年から平成三十三年までの各年である場合には、その居住に係る住宅の取得等が特定取得に該当するもの以外のものであるときに限る。) 二千万円

5 第三項に規定する特定取得とは、個人の住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額が、当該住宅の取得等に係る消費税法第二条第一項第九号に規定する課税資産の譲渡等(第四十一条の三の二第十八項、第四十一条の十九の二第二項第一号、第四十一条の十九の三第二項第一号及び第四項第一号イ並びに第四十一条の十九の四第二項第一号において「課税資産の譲渡等」という。)につき社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成二十四年法律第六十八号)第二条又は第三条の規定による改正後の消費税法(第四十一条の三の二第十八項、第四十一条の十九の二第二項第一号、第四十一条の十九の三第二項第一号及び第四項第一号イ並びに第四十一条の十九の四第二項第一号において「新消費税法」という。)第二十九条に規定する税率により課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額の合計額に相当する額である場合における当該住宅の取得等をいう。

以上のように、本件の中心的な争点は、請求人が個人の居住用財産として取得した住宅に関する住宅借入金等特別控除の適用を巡って、その要件たる特定取得に該当するのか否かが問題になっているものである。かかる取得の該当如何によっては、住宅借入金等特別控除の適用の対象となる借入金の限度額が異なる結果となり、税額控除の金額に直接的に影響を及ぼすものである。この特定取得は、そもそもとして、消費税法の改正に伴う、税率の上昇を契機として消費活動や景気への影響を除去すべく設けられた制度であり、控除対象の金額において、消費税法の改正による増税の影響を拝すべく、限度額が定められているものである。その定義としては、上記のように、租税特別措置法41条の5項において、 個人の住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額となるような取得を対象とすることを要件としている。ここで問題となったのが、その取引における消費税の計算である。本件では、当該住宅の取得取引は、個人間の売買であり、必然的に消費税の負担は発生しておらず、仲介手数料として不動産業者に支払った金額にのみ上記増税された消費税負担が発生しているものとなる点が問題を発生させることになる。

法は上記のように、その適用において、
対価の額又は費用
として、「又は」で結んで取得に関する要件を整理している。仲介手数料は住宅の対価ではなく、付随費用と捉えられるべきものであり、取得の対価に該当しないものと解されるが(この点につき、付随費用として取得の対価とする見解もあり得ようが)、又は以下における費用に該当するものに関しては、新消費税の適用を受けており、もって特定取得に該当するということが請求人の主張となる。文言においては、又は費用として付随費用部分を、対価と並列的に規定しているように理解することは特段、違和感がないものであろう。請求人の主張もかかる点を捉え、法の要請として、対価又は付随費用のいずれかにその新消費税の負担が発生していることで特定取得は足りるものとしている理解が基礎にあるものである。しかしながら判断の解釈は、

特定取得とは、①居住用家屋の新築若しくは既存住宅の取得に係る対価の額
又は
②増改築等に係る費用の額に含まれる消費税額等の合計額が、新消費税率により課され
るべき消費税額等の合計額に相当する額である場合における住宅の取得等であると解す
るのが相当

として、取得等の内容を分類し、純粋な取得と、住宅借入金等特別控除の対象たる増改築等に分けて捉えることで、その適用対象における、上記文言の費用部分を解している。これにより、取得における仲介手数料のような対価に含まれない部分における消費税負担では、特定取得には該当しない、すなわち、特定取得の判断のメルクマールはあくまでも対価の額であり、付随的な費用は関連を有しないものとしていることになる。かかる解釈は、通常の文言を見れば、容易に理解できるものとはいい難いものであろう(かかる点において納税者の主張は理解できよう)。当該解釈の根拠はこの特定取得の立法趣旨であり、制度趣旨として親消費税の影響を除去することにあることから、対価に含まれる消費税の負担が問題であり、対価に含まれないものまでもその適用対象とはしないものとする理解が導かれていることになる。上記のような趣旨に基づく解釈は、租税法規の基本的な要請と整合的であるのかという点では疑問が指摘される可能性はある。そもそも我が国の租税法規においては、原則から逸脱することは限定されるべきものであることが強く主張され、このように趣旨が考慮されることは比較的珍しいものと評価される。しかるに、租税法規における趣旨が必ずしも明確ではないこともまた多いものであるが、本件のように裁決であるが制度趣旨を明らかとし(本法ではなく、租税特別措置法における制度であることが趣旨の特定につながったものであろう)、適用要件を分類整理してその適用を明らかとしている事例として、参考となるべき事例と考えられる。所得税の確定申告においては、この住宅借入金等特別控除の申請において、記入欄に消費税の計算に関する項目欄(実務においてはその具体的な意義を考えているだろうか・・・多分そんな暇はないと言われそうだが)があるが、かかるような消費税と所得税の関連をその制度背景として有していることは理解されるべきであろうし、本件のような問題の発生は専門家としてより留意されるべきものと考えられる。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2019年3月4日月曜日

判例裁決紹介(平成29年6月9日裁決、仕入税額控除の適用要件としての帳簿の保存、調査段階で第三者の立会、説明の自発的拒否)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は平成29年6月9日裁決で、消費税法における仕入税額控除の適用を巡って帳簿等の保存の有無及び、調査段階での第三者立会、説明の拒否があった場合における課税処分の効力が争われた事例です。

具体的に本件は、営業外交業務を担う事業者たる請求人が、確定申告等を行っていなかったところ、調査により消費税法の仕入税額控除の適用がなく(推計により売上は存在し、消費税の納税義務者であることは確定している)、消費税額の納税を決定した処分の適否に対して、調査上の違法(第三者の立会、請求人に対する説明の未了)を主張してその適用の是非に関して争点とされている事例である。

本件の起点は、第三者の立会における調査が認められるうるものであるのか否かという点が起点となっているものであり、専門職であれば、これだけでその具体的な意義については想定されるものであろうが(ご苦労さまです、かかるような調査対応の存在は聞いていますが。)、かかる点において特殊な状況に基づくものと評価されるべきものと評価することもできようが、当該対応に起因して、自発的な納税者による説明の拒否が行われている(事実上)状況を如何に評価すべきであるのかという点が、問題になるものである。

もう一つの争点は、消費税法の仕入税額控除の適用として、その適用たる帳簿等の保存に関する手続的な問題である。この点は、従前と基本的に変わるものではなく、保存の具体的な解釈が問題になっているものである。周知のように最判において、かかる文言の解釈としては、単に文字通りの保存のみではなく、調査等において提示を求められた場合において具体的な提示ができるような状況にあることをその具体的な意義としていることは本件でも踏襲されている。しかるに法令解釈として特段特徴的なものではないものと考えられるが、手続法の改正後、その調査手続の意義が具体的に問われているものとして、本件は参考となるものと言えよう(私見としては、国税通則法の改正から一定期間経過し、学会でのメインテーマになったような状況であろうが、租税負担の公平性あるいは、近年のICT等の発展に伴った手続のあり方を立法論として検討すべき段階にあるように考えている)。

この保存の意義においては、下記のように、消費税法30条において、保存の意義を拡張的に解釈している。ほぼ目立つ条文ではないが、かかる点において、その具体的な記載事項等も明記されており、その不備も含め消費税法の非常に重要な条文であるが、その解釈として保存の意義は、上記のように最判を踏襲しており(当たり前であるが)、重要な判断であろう。しかしながら如何なるものを充足すれば、提示したことになるのか、本件でも問題にあったが、一部資料(この資料自体が帳簿等には該当しないとして最終的には、その提示を否定しているが)のみをみせ、コピー等を拒否し、複写を求めるなど事実上資料の確認ができない、十分に確保できないような状況等を如何に捉えるべきであるのかという点は今後の課題となるべきではないだろうか。帳簿等の意義も含め(今後は適格請求書の保存も問題になるが、おそらく、帳簿等にのみ依拠する段階からよりその記載事項の適格性が問題になるものと想定される)、かかる点を保存においてどのように位置づけ、適格な仕入税額控除の適用要件として評価するのかという点は、すなわち、何をもってその適格な提示として理解されるべきであるのかという点は今後の検討課題となるべきものと評価されよう。

第三十条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、国内において行う課税仕入れ(特定課税仕入れに該当するものを除く。以下この条及び第三十二条から第三十六条までにおいて同じ。)若しくは特定課税仕入れ又は保税地域から引き取る課税貨物については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課税期間の第四十五条第一項第二号に掲げる課税標準額に対する消費税額(以下この章において「課税標準額に対する消費税額」という。)から、当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る支払対価の額に百八分の六・三を乗じて算出した金額をいう。以下この章において同じ。)、当該課税期間中に国内において行つた特定課税仕入れに係る消費税額(当該特定課税仕入れに係る支払対価の額に百分の六・三を乗じて算出した金額をいう。以下この章において同じ。)及び当該課税期間における保税地域からの引取りに係る課税貨物(他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この章において同じ。)につき課された又は課されるべき消費税額(附帯税の額に相当する額を除く。次項において同じ。)の合計額を控除する。
一 国内において課税仕入れを行つた場合 当該課税仕入れを行つた日
二 国内において特定課税仕入れを行つた場合 当該特定課税仕入れを行つた日
三 保税地域から引き取る課税貨物につき第四十七条第一項の規定による申告書(同条第三項の場合を除く。)又は同条第二項の規定による申告書を提出した場合 当該申告に係る課税貨物(第六項において「一般申告課税貨物」という。)を引き取つた日
四 保税地域から引き取る課税貨物につき特例申告書を提出した場合(当該特例申告書に記載すべき第四十七条第一項第一号又は第二号に掲げる金額につき決定(国税通則法第二十五条(決定)の規定による決定をいう。以下この号において同じ。)があつた場合を含む。以下同じ。) 当該特例申告書を提出した日又は当該申告に係る決定(以下「特例申告に関する決定」という。)の通知を受けた日

7 第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(同項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が少額である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。
8 前項に規定する帳簿とは、次に掲げる帳簿をいう。
一 課税仕入れ等の税額が課税仕入れに係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの
イ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ロ 課税仕入れを行つた年月日
ハ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
ニ 第一項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額
二 課税仕入れ等の税額が特定課税仕入れに係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの
イ 特定課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ロ 特定課税仕入れを行つた年月日
ハ 特定課税仕入れの内容
ニ 第一項に規定する特定課税仕入れに係る支払対価の額
ホ 特定課税仕入れに係るものである旨
三 課税仕入れ等の税額が第一項に規定する保税地域からの引取りに係る課税貨物に係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの
イ 課税貨物を保税地域から引き取つた年月日(課税貨物につき特例申告書を提出した場合には、保税地域から引き取つた年月日及び特例申告書を提出した日又は特例申告に関する決定の通知を受けた日)
ロ 課税貨物の内容
ハ 課税貨物の引取りに係る消費税額及び地方消費税額(これらの税額に係る附帯税の額に相当する額を除く。次項第三号において同じ。)又はその合計額
9 第七項に規定する請求書等とは、次に掲げる書類をいう。
一 事業者に対し課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この号において同じ。)を行う他の事業者(当該課税資産の譲渡等が卸売市場においてせり売又は入札の方法により行われるものその他の媒介又は取次ぎに係る業務を行う者を介して行われるものである場合には、当該媒介又は取次ぎに係る業務を行う者)が、当該課税資産の譲渡等につき当該事業者に交付する請求書、納品書その他これらに類する書類で次に掲げる事項(当該課税資産の譲渡等が小売業その他の政令で定める事業に係るものである場合には、イからニまでに掲げる事項)が記載されているもの
イ 書類の作成者の氏名又は名称
ロ 課税資産の譲渡等を行つた年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行つた課税資産の譲渡等につきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
ハ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
ニ 課税資産の譲渡等の対価の額(当該課税資産の譲渡等に係る消費税額及び地方消費税額に相当する額がある場合には、当該相当する額を含む。)
ホ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称
二 事業者がその行つた課税仕入れにつき作成する仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類で次に掲げる事項が記載されているもの(当該書類に記載されている事項につき、当該課税仕入れの相手方の確認を受けたものに限る。)
イ 書類の作成者の氏名又は名称
ロ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ハ 課税仕入れを行つた年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行つた課税仕入れにつきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
ニ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
ホ 第一項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額
三 課税貨物を保税地域から引き取る事業者が税関長から交付を受ける当該課税貨物の輸入の許可(関税法第六十七条(輸出又は輸入の許可)に規定する輸入の許可をいう。)があつたことを証する書類その他の政令で定める書類で次に掲げる事項が記載されているもの
イ 納税地を所轄する税関長
ロ 課税貨物を保税地域から引き取ることができることとなつた年月日(課税貨物につき特例申告書を提出した場合には、保税地域から引き取ることができることとなつた年月日及び特例申告書を提出した日又は特例申告に関する決定の通知を受けた日)
ハ 課税貨物の内容
ニ 課税貨物に係る消費税の課税標準である金額並びに引取りに係る消費税額及び地方消費税額
ホ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
10 第七項に規定する帳簿の記載事項の特例、当該帳簿及び同項に規定する請求書等の保存に関する事項その他前各項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

また、以上のように、本件ではその中心的な争点は、上記のように仕入税額控除の適用要件としての保存等が問題になっているのみならず、かかる点の状況を調査する段階で、質問検査の実施、あるいは実地調査の段階において、税理士等の有資格者ではない、第三者の立会を認めるか否か、そして、調査の終了の際の手続として説明を行うこととされているが、この説明が適格に実施されていないような状況が課税処分の効力に影響を及ぼすレベルにあるのか否かという点が中心的な争点となっている。

調査段階における手続上の不備は、一般論として下記のように本件判断においても示されているように、刑罰法規への抵触などを除き、必ずしも処分の違法性、取消事由として該当するものではないものとして理解されている。但し、かかる判断の基礎は、平成23年の国税通則法の改正以前の判示によるものであり、必ずしも現行法においては特に判断が示されているものではない。私見としては、調査自身の基礎となるべき趣旨の共通性は維持されており、しかるにその効果の否定においても特段、従前と異なるものではないものと考えてられる(一般論としては打倒しているもの)が、より事例の集積を必要とするべきものであろう。刑罰法規に限定するような違法性の評価と適正な課税負担との衡平において妥当と評価されうるのか、個々の調査手続は一様ではなく、より個別具体的にその手続の趣旨も含め、検討されるべきものと考える。旧法における身分証の提示等一部しか認められていなかった手続法の状況とは現状は全く異なるものであり、かかる手続の目的等も異なる可能性がある。

「通則法第25条は、同条の規定による決定は、その調査により行う旨規定しているところ、税務調査の手続は、租税の公平かつ確実な賦課徴収のために課税庁が課税要件の内容を構成する具体的事実の存否を調査する手段として認められた手続であって、その調査により課税標準の存在が認められる限り、課税庁としては課税処分をしなければならないのであり、また、決定処分の取消しを求める審査請求や訴訟においては客観的な課税標準の有無が争われ、これについて実体的な審査がされるのであるから、税務調査の手続の瑕疵は、原則として決定処分の効力に影響を及ぼすものではなく、例外的に、税務調査の手続が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたる等重大な違法を帯び、何らの調査なしに決定処分をしたに等しいものとの評価を受ける場合に限り、決定処分の取消事由となるものと解するのが相当である。」

第三者の立会に関しては、守秘義務の観点から、有資格者ではない第三者の立会を認めるべきではないことは、判例においても、従前と整合しており、ほぼ確定しているものといえよう。しかしながら実務的には会計事務所の職員など実務担当者を如何なる論理において正当性を填補することになるのかという点は興味深い。

また、下記のように本件における調査終了の手続としての説明の拒否は如何に評価されるものであろうか。法は下記のように、その手調査終了の手続として明確に説明を行うことを義務付けている。しかしながら、説明という概念は、法的には特段の定義がなされているものではなく、如何なる意義を有するものであるのか、拙稿において指摘したが、その具体的な意義は、応答を含むものであるのか、どの程度の説明を要するものであるのか等、その具体的な意義は必ずしも明らかとなっているものではない。実務的には、メモ、書類のの交付等の実施をもって処理しているようであるが、非常に煩雑な状況にあるものとも捉えられる。もちろんかかる状況は納税者の権利保護の観点からは理由附記と相まって、抑制的な効果をもたらすものとして肯定的に評価する見解もあり得よう。しかし本件もかかる処分の前提としての説明を充足していないものの、その経緯として納税者の拒否(事実上の)に起因しているような場合において、適格な手続を充足しているものと評価されるものであるのかという点は、明文の根拠がなく、如何なる位置づけにあるものとして処理されるべきか課題となるべきものであろう。判断では、この制度の趣旨を特段検討することなく(単に重大な違法がないと判断しているだけであり、裁決とはいえ、詳細な検討に欠けているとの評価も受けうるだろう)、下記のように、納税者の事実上の拒否による、すなわち納税者の帰責によるべきものとして、その充足の不備による処分の取消事由としての該当を否定している。私見としてもかかる判断は、納税者の事実上の拒否は、自身の権利の放棄であり、処分の前提として法的な効果が説明されているならば、妥当性を有するものであるとの評価されるものと考えるが、かかる説明の趣旨目的からより検討される必要があると考える。一般にいわゆる税務調査(質問検査の実施、実地の調査)は任意調査とされていることから、かかるような本件における理解が正当性を有しているのかという基礎的な疑問は、検討の余地があるものである。任意調査という位置づけと実効的な調査手続のあり方は、より、検討されるべき課題ではないだろうか。

調査の終了の際の手続)
第七十四条の十一 税務署長等は、国税に関する実地の調査を行つた結果、更正決定等(第三十六条第一項(納税の告知)に規定する納税の告知(同項第二号に係るものに限る。)を含む。以下この条において同じ。)をすべきと認められない場合には、納税義務者(第七十四条の九第三項第一号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に掲げる納税義務者をいう。以下この条において同じ。)であつて当該調査において質問検査等の相手方となつた者に対し、その時点において更正決定等をすべきと認められない旨を書面により通知するものとする。
2 国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする。

「本件調査担当職員は、調査結果の内容の説明を行う日を調整するために請求人の携帯電話に架電したり、調査結果の内容の説明を行う日時場所、都合が悪い場合 には連絡してもらいたい旨、連絡も来署もない場合には調査結果を更正決定等通知書により知らせることになる旨などを記載した書面を請求人あてに郵送したりしたが、それにもかかわらず、請求人は何ら応答しなかったというのであり、これらの事実によれば、本件各決定処分等に当たり、請求人に対して調査結果の内容が説明されなかったのは、請求人が説明を受けようとしなかったためであると認められる」

以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが、参考までに。

2019年2月25日月曜日

判例裁決紹介(静岡地判平成29年3月9日、保険の解約払戻金による一時所得と負担者が異なる保険料の控除可否)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、静岡地判平成29年3月9日で、保険の解約払戻金に対する控除対象の保険料を負担者が異なる部分まで含むのか否かという点が争いになった事例です。

具体的には本件は、法人の代表取締役であり、法人が契約した逓増保険(年間900万ほどの保険料、総額1億4000万の保険契約)を法人から原告たる代表取締役に対して譲渡(譲渡時においては、その時点での解約した場合に受領できる解約払戻金相当額約400万を支払っている)し、一定の時期経過後、もって原告が当該保険料を解約し、解約払戻金(約2600万)を受領した事例において、当該解約払戻金が一時所得を構成するものであるのか否かという点が争点とされているものである。より具体的には、一時所得の計算上、当該所得を得るために支出した金額に対して、原告以外の法人が負担した損金(福利厚生費として処理済み)として処理した保険料金額が該当するのか否かという点が問題となっているものである。本件で問題となった事例は平成22年度所得に関するものであり、下記のように平成24年の税制改正において、所得税法施行令183条4項が追加され、基本的に対象となる控除可能額は、個人が負担したものに限定される旨が明確化されたものであるが、その以前においては、一部資料において、個人が負担したもの以外の総額を対象とする旨の記載があったものもあり、その適用が問題となっていたものである。判時としては、本件でも引用されているが、先行する最判(平成24年最判)において、当該改正による以前においてもその対象となる経費は、個人が負担したものに限定する旨が示されているものであるが、本件は、かかる判示を否定するものであり、一時所得の文言や、総額としていたことから、あるいは、本件改正によって遡及的に適用され、あるいは事後法において課税対象とされたことを問題視しているものである。判示としては、原告の主張を排斥しているものであるが、最判を引用し、経費控除を個人負担に限定するもののみならず、信義則の成立も否定しているものである。法人の節税策として、保険を活用した措置は、広く行われているものであり、本件もその中の事例の一つであるように捉えられるが、解約払戻金を途中解約においては、低く抑え、保険料と調整し、原告へ負担保険料総額よりも低額で移転させ、もって総額負担として、一時所得の発生も減少させるような本件のスキームは、珍しいものではなかったものと考えられるが、最判によって否定され、法文においても明確に否定されているものであるが、最判を踏襲して一時所得の控除対象を否定し、更に、信義則等の成立を否定した本件は実務上も参考とされるべきものであろう。保険を活用したスキームは、非常にアグレッシブなものから、多様な存在が確認されるものであるが(多くの事例において、非常に否定的な、租税負担の回避を否認する処理が形成される予定であろうが)、経費控除において大幅な制約が付与されており、保険に関する法規の解釈は常にアップデートする必要性を示唆してくれる事例であるように考えられる。対比として、租税法の基本的な要請として租税法律主義により、明示的に主体が同一であることを要求していない(原告の主張でも)点を鑑みるに、また明文をもっって平成24年改正によって対応している点からも現行法の解釈における負担の主体の一致を要求することに対してその論理的な根拠としては、適格なものであるのかという点は議論の余地があるものと考える。いずれにしても、平成24年改正による法文の追加が明確化を図る、確認規定であるのか否か、という点も考慮対象として行くことも必要であろう。現行法の解釈においてはかかる点は確認として、一般的に、一時所得の趣旨からあるいは所得類型に分類している趣旨からその判断は、導かれるものと理解している事になっているものと捉えれよう。

(一時所得)
第三十四条 一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。
2 一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする。
3 前項に規定する一時所得の特別控除額は、五十万円(同項に規定する残額が五十万円に満たない場合には、当該残額)とする。

以上のように、本件の中心的な争点は、上記一時所得の算定において控除対象となる金額の範囲を以下に解するのかという点が問題となっている。収入を得るために支出した金額がどのように解されるのか、という点は、勝馬投票券の事例でも問題となっているが本件のような保険においても重要な要因となっている。

本件のように保険契約の譲渡を伴うような事例は本来は一時所得に想定の対象であるのかという点も疑問を覚える点であるが(給与所得として課税対象とすべき場合もあるように評価されよう)、基礎的な条文の解釈、一般論としての一時所得の対象をどのように捉えるのか、という点が、本件のような特殊な事例ではあるが、問題とされている。保険契約の譲渡や、経費負担を本人以外が行うような事例は他に想定されるのかという点は実務家に聞いてみたい点である。

本件の事例としては下記のように現行法において、保険の控除対象を限定する形で明文をもって限定が付与されており、現在において直接的には問題となるような状況ではないのかもしれないが、本件も最判も一般的な所得税法における条文の解釈を通じて、個人負担を行ったものに限定される旨は一時所得においては重要な判定材料になっているものと理解されるべきであろう。すなわち、一時所得から控除されるものとして、所得に対して個人が負担したものに限定されると解しており、一般的な理解であろう。判示では、その判断は、担税力を起点としてその判断を行っており、担税力を減少させるものをその対象としている。個人の所得負担において担税力を減少させるものは、個人が負担したものに限定されるとの判断であろう。原告のように所得者と負担者が一致しないようなケースは従前は想定されていなかったものであるが、保険契約に限らず、金融取引の操作性から鑑みるに、このような負担者の相違に関しては、法はどのように捉えているのかという点を理解する必要性があろう。本件のような主体の統一を要求する解釈は法文というよりは、租税負担の類型、所得類型の性格に、一時所得の性格に着目した判断であり、法文上の根拠という点では劣位とも評価されうる。特に担税力という概念を基礎としているが、かかる概念は法文上は存在しない概念であり、もって必ずしもその具体的な意義内容が確定しているものではない。かかる点を基礎としている判断は検討の余地があるのではないか。私見としては結論は賛成を示すものであるが、控除対象において直接との文言を付与されている点から、個人負担に限定する解釈が導けるのではないかと考えている。

所得税法施行令183条
2 生命保険契約等に基づく一時金(法第三十一条各号(退職 
二 当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金(第八十二条の三第一項第二号イからリまでに掲げる資産及び確定拠出年金法第五十四条第一項(他の制度の資産の移換)、第五十四条の二第一項(脱退一時金相当額等の移換)又は第七十四条の二第一項(脱退一時金相当額等の移換)の規定により移換された同法第二条第十二項(定義)に規定する個人別管理資産に充てる資産を含む。第四項において同じ。)の総額は、その年分の一時所得の金額の計算上、支出した金額に算入する。ただし、次に掲げる掛金、金額、企業型年金加入者掛金又は個人型年金加入者掛金の総額については、当該支出した金額に算入しない。
イ 旧厚生年金保険法第九章(厚生年金基金及び企業年金連合会)の規定に基づく一時金(第七十二条第二項(退職手当等とみなす一時金)に規定するものを除く。)に係る同項に規定する加入員の負担した掛金
ロ 確定給付企業年金法第三条第一項(確定給付企業年金の実施)に規定する確定給付企業年金に係る規約に基づいて支給を受ける一時金(法第三十一条第三号に掲げるものを除く。)の額に第八十二条の三第一項第二号イからリまでに掲げる資産に係る部分に相当する金額が含まれている場合における当該金額に係る法第三十一条第三号に規定する加入者が負担した金額
ハ 第七十二条第三項第五号イからハまでに掲げる規定に基づいて支給を受ける一時金(同号に掲げるものを除く。)の額に第八十二条の三第一項第二号イからリまでに掲げる資産に係る部分に相当する金額が含まれている場合における当該金額に係る第七十二条第三項第五号に規定する加入者が負担した金額
ニ 小規模企業共済法第十二条第一項(解約手当金)に規定する解約手当金(第七十二条第三項第三号ロ及びハに掲げるものを除く。)に係る同号イに規定する小規模企業共済契約に基づく掛金
ホ 確定拠出年金法附則第二条の二第二項及び第三条第二項(脱退一時金)に規定する脱退一時金に係る同法第三条第三項第七号の二(規約の承認)に規定する企業型年金加入者掛金及び同法第五十五条第二項第四号(規約の承認)に規定する個人型年金加入者掛金


4 第一項及び第二項に規定する保険料又は掛金の総額は、当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金の総額から次に掲げる金額を控除して計算するものとする。

三 事業を営む個人又は法人が当該個人のその事業に係る使用人又は当該法人の使用人(役員を含む。次条第三項第一号において同じ。)のために支出した当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金で当該個人のその事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額若しくは山林所得の金額又は当該法人の各事業年度の所得の金額の計算上必要経費又は損金の額に算入されるもののうち、これらの使用人の給与所得に係る収入金額に含まれないものの額(前二号に掲げるものを除く。)

以上毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。