2017年5月16日火曜日

判例裁決紹介(宇都宮地判平成28年12月21日、固定資産税評価における需給事情の反映)


さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、宇都宮地判平成28年12月21日で家屋(旅館)に対する固定資産税評価の不服を訴因とした事案であり、観光客需要や設備面の問題、地盤の問題等を固定資産税の価格評価において反映させるべきか否かが争われたものです。

具体的には、那須塩原で旅館として業務を営む原告が所有する家屋に対して水道等の設備の不備や観光需要の減少に伴い、処分行政庁がなした課税台帳価格を不服として固定資産評価審査委員会への不服申立て等を経て当該家屋評価に基づく課税処分の取消も求めたものである。納税者の主張としては、当該理由から約35%の減価評価を求めたものであるが、判示としては、一部主張を認め、15%の評価減価を適用している。

本件は、原告が所有する旅館として使用している家屋の固定資産税評価額が問題となったものであり、具体的には、下記のように固定資産税の評価基準における需給状況の反映を台帳価格に行うべきであるのか否かが争われたものである。従来、処分行政庁が主張するように、実務的には需給状況の反映は極めて限定的に運用されており、その例外として本件における需給状況の反映が行われた事案として、地裁判断とはいえ、一部適用、反映を認めている点で、本件は実務的にも法令解釈としても多様な問題を提起するものとして参考になるものと捉えられる。類型としては、価格の不服を申し出るものであって、近年訴訟が急増している固定資産税に関わる具体的な対象資産の評価減を図った訴訟であり、固定資産税の重要な課税要件である価格の巡っての争いであり、かつ納税者の主張を認めた案件として、実務的にも参考にすべきものが多数含まれているものといえる(固定資産税は賦課されるもので興味が無いかもしれないが)。

そもそも、考慮される要素がいかなるものであり、また、当該要素に基づく、減価がどの程度であって、その妥当性が認められるか否かという点は如何なる基準に基づき判断されるべきであるのかという点で、議論のあるところであり、法令解釈として固定資産税評価基準の解釈は、他の国税等にも影響を及ぼすものであって、重要な検討課題となるだろう。私見としては固定資産税が求める恣意性の排除や客観性の確保が重要な点であると考えているが、本件は、最終的に納税者の主張の一部適用を認め、15%の評価減価を行っているが、この具体的な算定が総合的判断によっており、必ずしも法的な、論理的な根拠が明示的ではない点など、他にも検討すべき項目も含んだ事例であるが、需給状況の反映を図った事例として有益な先行事例となるのではないだろうか。


第三百四十九条  基準年度に係る賦課期日に所在する土地又は家屋(以下「基準年度の土地又は家屋」という。)
に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋の基準年度に係る賦課期日における価格(以下「基準年度の価格」という。)で土地課税台帳若しくは土地補充課税台帳(以下「土地課税台帳等」という。)又は家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳(以下「家屋課税台帳等」という。)に登録されたものとする。


第三百八十八条  総務大臣は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下「固定資産評価基準」という。)を定め、これを告示しなければならない。この場合において、固定資産評価基準には、その細目に関する事項について道府県知事が定めなければならない旨を定めることができる。

本件では特に判断が行われていないが、固定資産税の課税客体は台帳価格であり、固定資産税の重要な課税要件である対象資産の価格の算定は上記のように、台帳に登録された価格であってこの登録価格は、時価によるものであると地方税法は定めている。本件における中心的な争点はこの登録価格が如何なる金額であるのかという点を争ったものであり、まずはその背景として固定資産税の評価方法につき、理解しておくべきである。
すなわち上記のように地方税法は、法によって固定資産税の台帳に登録する土地または家屋の価格として定めているが、この価格がいかなるものであるのかという点が解釈によってまずは明らかにされるべきであろう。この点が本件の前提となるべきであると考えられる。

当該価格は、資産の価格であり、客観的な交換価値であることは、法令解釈としてほぼ確立しているものと考えてよいだろう。他の租税法規においても時価は多数採用されているが、基本的に同一意義に解されており、客観性が確保された当該資産を交換する際に用いられるものを基準としていると考えることが租税法の基本的な要請に合致するものとして評価される。時価として捉えられる資産の価額は、基本的に活発な取引市場が成立している場合を除けば、その金額に関しては幅が存在することが容易に想定され、評価者や立場によってその評価金額は異なることになる。この点が、租税法において恣意の介入を招き、もって納税者間の公平性に問題を生じることから、単なる財の価値のみではなく客観性が確保されることが重要な要素となっているものと考えるべきである。また、固定資産税に関しては、上記のように地方税法388条において、総務省から公表される固定資産評価基準によることが法定されている。法によって委任され(この点で、もう一つの財産評価の事実上の基準となっている財産評価基本通達とは性格が異なる)、全国統一的にその評価基準を採用することで、処分行政庁による裁量の幅を縮小し、統一的な評価を行うことで、財の評価という時価の算定によって、納税者間において差異が発生しないことを企図している。この点が固定資産評価における重要な点であり、単に不動産鑑定評価等による価格・時価の評価の変動を個別的に反映させることが消極的になる要因でもある。法の要請として、固定資産評価を評価基準によることが法目的と手段として合理性を有していることが確定していものと解するべきであり、従って、基本的に単なる評価金額の減少のもって不服王したてを行っても、その減価を固定資産評価に反映させることは非常に困難であって、評価基準自身の合理性が失われているような明白な状況が想定されない限り、原則的には評価基準の合理性が推定されることになる。本件のように、個別の需給状況の反映は、基準にその根拠を有するものであり、その具体的な適用の局面が争われた事案であるが、個別の状況を反映させるものであって、評価基準における減価の具体的な手法としてその適用要件の解釈が重要となるものといえる。

具体的な家屋の評価は、以下の評価基準にあるように、
「家屋の評価は,木造家屋及び木造家屋以外の家屋(以下「非木造家屋」という。)の区分に従い,各個の家屋について評点数を付設し,当該評点数に評点一点あたりの価格を乗じて当該家屋の価格を求める方法による(評価基準第2章第1節一)。各個の家屋の評点数は,当該家屋の再建築費評点数を基礎とし,これに家屋の損耗の状況による減点を行って付設するものとする。この場合において,家屋の状況に応じ必要があるものについては,さらに家屋の需給事情による減点を行うものとする。」

再建築費の評価点数を基礎として構成される。この点において財産評価基本通達との相違が発生するが、基本的に固定資産税は固定資産の保有をその課税物件として捉えており、その具体的な課税標準として価格を採用しているのであって、交換価値として現状の再調達図る際の価格の算定を基本目的としているものと解される。この点は再建築費の算定が詳細であり、この点で材料等の状況の反映等多様な作業が発生することになるが、近年の建築費の上昇等、家屋の経年劣化を相殺する状況にあり、検討課題となっている。この評価点数に対して減点評価として家屋の個別的な状況を反映させることになる。具体的には、家屋の損耗が対象となるが、必要がある場合において、家屋の需給事情の反映による減点評価を行うこととされている。この必要性がいかなる意義を有するのかという点も含め、反映すべき需給事情の対象範囲が具体的にいかなるものと解されるのかという点が問題となる。

まず、この基準に定める需給事情の反映に関しては、その補正率の算出として評価基準において以下のように定められている。


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しかしながら、上記のみではいかなるものが需給事情として該当するのかという点は、定かではなく、旧式であることや所在地域の状況という文言からは具体的な補正の対象となるべき需給事情が明示的ではない。一般論として固定資産税がその資産の保有を課税対象として具体的な時価を課税標準とする以上、当該家屋等に対する需給状況が家屋の交換価値を減価する方向で補正すべき材料として判断されることは合理的なものであると考えられ、疑問はない。しかしながら、需給事情はその意義内容として、少なくとも家屋等の交換価値を減少するものとして考えられるものは多様であり、多義的な意義を有しているものと捉えられる。本件においても納税者の主張において、取り扱われている事情は、主たる利用意図である観光需要のの減少、水道等の設備事情、土砂災害等の危険指定区域等であって、多様である。このような多様な事情の中でいかなるものが固定資産評価において減価対象として反映されるべきものとして判断されるべきであるのか、判定する基準が法令解釈として、重要なテーマであろう。私見としては、この点につき、やはり時価の解釈によるべきであり、上記のような固定資産評価における法の要請として時価は客観的な交換価値であり、具体的には、客観性の確保による恣意性の排除がその具体的な補正の対象としての判断基準として理解されるべきではないかと考えられる。また、固定資産評価基準によって統一的な評価方法を定めていることの合理性もまた考慮されるべきであって、考慮されるべき事情は基準の例示に従い、裁量の余地は限定的に解するべきであろう。この点で立法論となるが、より明示的形式で評価に反映させるべき事情を列挙することが妥当であるように考えられる。

なお、処分行政庁は、この需給事情として既に廃止された固定資産評価基準における総務省の見解として以下のものを主張し、これが現行の評価においても適合的であるとして主張している。10年以上までに廃止されたものが現行の解釈として適合的であるのか否かはその根拠が定かではなく、論理的ではないが、実務上、下記が基準として今なお、機能しているのかもしれない。
(1)草葺屋根の木造家屋又は旧式のレンガ造の非木造家屋,その他間取,通風,彩光,設備の施工等の状況等からみて最近の建築様式又は生活様式に適応しない家屋で,その価額が減少するものと認められるもの
(2)不良住宅地域,低湿地域,環境不良地域その他当該地域の事情により当該地域に所在する家屋の価額が減少すると認められる地域に所在する家屋
(3)交通の便否,人口密度,宅地価格の状況等を総合的に考慮した場合において,当該地域に所在する家屋の価額が減少すると認められる地域に所在する家屋」

上記解釈による適用範囲の限定は、通達が廃止されていることもあり、妥当であるのかという点で議論の余地がある。以上のように、私見としては、固定資産評価基準による統一的な評価は、地方税法の目的、固定資産税の基本的な要請に合致するものとして合理的であり、租税法の基本的な要請としても妥当であるように理解される。従って、需給事情という多義的な用語において、その減価補正への反映に関しては一定の基準により限定的であるべきであり、裁量の余地は縮小的に解釈されるべきであると考えられるが、その具体的な制約として合理的な基準が、時価の基本的な解釈であり、客観性の確保による恣意性の排除に求められるべきものと考えられる。

「評価基準は,家屋の固定資産税の課税標準の算定方法において再建築価格法を採用し,そのうえで,家屋の状況に応じ必要があるものについては,さらに家屋の需給事情による減点を行うものとすることを定めている(評価基準第2章第1節二)。
 このように需給事情による減点補正を認めているのは,再建築価格方式には,評価の方式化も比較的容易であり個別的な事情による偏差が少ないという合理性があるものの,需要と供給の間に乖離があり,そのために再建築価格方式による家屋の評価が当該家屋の適正な時価とはいいがたい場合もあることから,そのような場合に,需給事情による減点補正をすべきことを定めたものと解される。
 したがって,このような趣旨からすると,需要と供給の間に乖離がある場合には,需給事情による減点補正をしなければならないのであるから,需給事情による減点補正率を適用するのは極めて限定的な場合に限られるとまではいえない。」

判示においても、上記のように、減額補正の趣旨を適正な時価を把握する目的なものとして理解しており、処分行政庁が主張するように、極めて例示にあるような場合に限定されることは、否定的である。しかしながら減価補正を行うべき需要と供給の間に乖離がある場合が、いかなる場合であり、その場合に適用すべき義務規定と解されるのか不明であり、裁量の余地が生じることからは、減価補正の適用には上記のように裁量の余地は限定的に捉えるべきであろう。なお、極めて限定的と表現することは逆に適正な時価の把握に困難を生じる場合が想定され、衡平を欠くものと考えられる。

加えて判示では、
「 したがって,需給事情による減点補正率においては,所有者の意図した利用目的やその時々における利用方法の巧拙といった主観的事情を離れ,客観性ないし一般性を有する事情である場合,すなわち,家屋が特定の土地に定着するものであることに起因する家屋の所在地域の状況による価格変動要因ないしは家屋の個別性が強く代替性に乏しいことに起因する家屋の利用価値による価格変動要因が肯定される場合には,個別的な要因についても需給事情による減点補正率を適用すべきであると解するのが相当である。」

とのべ、需給事情の反映においては、主観的な所有者の意図等を排除して、客観的な事情であることを求め、例示にある以上の個別的な要因も減額補正の対象となる需給事情として解する旨述べており、すなわち一定の制約をつけつつも、需給事情の用語の意義の解釈として、文理に基づく解釈を行っている。私見としては上記のように、固定資産評価を統一的に行うことをその趣旨として、一定の合理性を肯定していることからも、必ずしも個別の事情として幅広く捉えうるのかという点は統一的な評価による利益を失わせる要因となりうるという点で、否定的に捉えるべきともいえるが、かかる統一的な評価による利益と適正な時価の評価の観点を秤にかけ、客観性を求めていることは重要な要素であることは認識されるべきであろう。この客観性を求める点において合理的であるといえる。本質的には、より具体的な減価補正の対象となる需給事情の例示等を行うことが上記のように合理的であるといえようが、この点は立法に属する点である。


また、本件では、以下のように、不動産鑑定評価における評価の適用に関しても判断を下している。鑑定評価における需給状況の判断が適用可能であるのか否かに対して、法的判断を下している。

不動産鑑定評価基準及び評価基準は,いずれも家屋等の価値を求めるための基準であるが,その性格は異なる。そのため,被告主張のとおり,不動産鑑定評価において減価要因とされているものが,評価基準において,必ずしも減価要因となるとはいえない。
 もっとも,評価基準における評価にあたって,不動産鑑定基準による評価を参考にすることは許されると解するのが相当である。」

不動産の評価が訴因となる事案において、問題となることが多い、この不動産鑑定評価の活用であるが、上記と同様に私見としても、目的の相違から必ずしも反映されるべきものではないものと捉えるべきであり、従って参考情報として認識すべきものといえるが、すなわち全面的な活用は排除されるべきものとして限定的に捉えるべきと考えられる。しかしながら、不動産鑑定評価の租税法規における位置付けは上記であろうが、固定資産の評価の局面において、この場合における、参考となるか否か、あるいは参考とすることが妥当となりうるのがいかなる場合であるのかという点が、例外として租税法における課題と言えよう。この点に関しても、私見としても客観的な交換価値である時価の意義に従って、客観性の確保されることが活用における基準となるべきものと捉えている。専門家であり、第三者による不動産鑑定評価は、一定の客観性を有していることは、否定しようがないが、受給事情としてはその反映は必ずしも明示的な基準ではなく、このような経済状況の鑑定においては、一定の評価に対して見積もりが介在せざるを得ない。この点につき、固定資産評価基準に対して地方税法が、あるいは租税法規が求める要請とは整合的ではないと評価され、複数の鑑定に基づく、客観性や恣意性の排除など、法が要請する客観性の確保、恣意性の排除を充足していることを立証するプロセスが要求されると考えるべきであろう。そもそも、その評価において目的の相違を反映、認識することは、重要であることは留意されるべきである。
以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

2017年5月13日土曜日

判例裁決紹介(平成28年6月10日裁決、電話照会に関する更正の予知)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、
平成28年6月10日裁決で、課税庁による電話連絡を受けたことを契機に申告を見直した上で修正申告書を提出したことに対して、更正の予知による過少申告加算税の対象となりうるのかという点が争われた事例です。

具体的には、請求人が本則課税による消費税の確定申告書を平成27年に提出したところ、課税庁より、10年以上前に簡易課税選択届を提出しており、本則課税の適用はできないのではないかという、電話連絡を受けたことから、顧問税理士と相談し申告を見直し、簡易課税制度における申告であるべきと判断して、修正申告を行ったところ、課税庁が過少申告加算税の賦課決定処分を行ったため、当該電話連絡は行政指導であって国税通則法65条5項に定める調査による更正の予知があった場合に対する過少申告加算税の適用除外に該当するとして提起したものである。

本件は、請求人がなした当初申告に対して課税庁による電話連絡があり、適正な申告ではないと判断して更正のあることを想定し、修正申告書の提出が行われたところ、国税通則法65条5項に「調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」という要件に該当しないとして過少申告加算税を賦課決定を行ったものであり、基本的な争点は、当該電話連絡が調査に該当するか否か争われた事案である。従来この更正の予知があったことに対する過少申告加算税をの賦課決定の適用除外に該当するか否かは、その適用を巡って争いがあり、この解釈が問題になっている。本件は、当該電話連絡が予知の起点となる調査であったか否かが問題になった事例であり基本的には事実認定が問題になったものであるが、かかる点で具体的に予知があった否かが問題になったものとは、些か趣を異にするが、実務でも調査や調査通知等によって、申告を見直すことは想定されるところであり、(この点は実務家にも聞いてみたいところであるが、実際調査の連絡等で課税上微妙な事例を如何に調整しているのか興味深い、そもそも課税庁からの電話連絡、確認、照会等は充分に想定されるところであるが、この点も実務的にはどのように対応しているのであろうか)、実務上も参考になるものと考えられる。学説においてもその調査による予知がいかなるものであるのかという点は、見解が分かれるところであり、近年の調査手続の改正に伴い、事前通知の法定化等の影響を受けて如何なる点で更正の予知を判断していくのか、という点で、法令解釈の観点からも本件の背景にある状況を検討すべきものといえよう。一般に納税者が想定する調査とは、臨場での調査、すなわち実地の調査を考慮するものと考えられるが、おそらくは、このような認識に基づく調査の認識をもって、過少申告加算税の適用除外に該当するか否かを検討するものと容易に想定されるところであるが、この電話連絡等の調査の存在につき、実務的にも見解が別れるところではあるのではないだろうか。かかる点で本件は従来の過少申告加算税の適用除外に対して適用が争われた事案と同様の問題類型に該当するものであり、必ずしも法令解釈として新規性があるものとはいえないかもしれないが、実務的にはこの事実関係の認定とともに参考となる事案といえるのではないだろうか。

過少申告加算税)
第六五条 期限内申告書(還付請求申告書を含む。第三項において同じ。)が提出された場合(期限後申告書が提出された場合において、次条第一項ただし書又は第六項の規定の適用があるときを含む。)において、修正申告書の提出又は更正があつたときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に百分の十の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。

まずは、本件で問題となった適用除外要件の解釈を行うにあたり、過少申告加算税の趣旨及び当該適用除外規定が如何なるものであるのかという点は明らかにしておく必要があろう。判断では以下のように判断を行っている。

過少申告加算税の制度は、過少申告により納税義務に違反した者に加算税を課することによって、当初から適正に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。一方、通則法第65条第5項は、過少申告がされた場合であっても、その後修正申告書の提出があり、その提出が「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」は、過少申告加算税を賦課しない旨規定しているところ、これは課税庁において課税標準を調査する等の事務負担等を軽減することができることも勘案して、自発的に修正申告を決意し修正申告書を提出した者に対しては例外的に加算税を賦課しないこととし、もって納税者の自発的な修正申告を奨励することを目的とするものと解される。

このように過少申告加算税は、その趣旨として、適正な納税者間の公平性及び納税義務違反の防止をその基本的な趣旨としているとしている。この点は、従来の学説や最高裁判例でも一致しており、行政制裁として、あくまでも罰を付与することをその主たる目的としているものではなく、違反を抑止し、適正な納税義務の履行を求めることを基礎としているものと理解される。この点は私見としても賛同されるべきものと捉えられる。また、かかる過少申告加算税の基本的性格から、本件の主たる対象となる適用除外要件に関しても、調査による非自発的な修正申告等は、その対象から除外することで、執行の便宜と、申告納税制度の徹底の衡平を配慮した制度が構築されているものと考えられる。しかるにこの調査による更正すべきものがいかなる状況にあるべきであるのかという点は、納税者間の公平性を一定程度抑えつつ、適正な申告の実現を図るという目的の上で、重要な除外要件であると捉えるべきであり、その具体的な範囲を明示的にする必要があるものと考えられる。

 第一項の規定は、修正申告書の提出があつた場合において、その提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、適用しない。

具体的に、上記にて国税通則法は65条において過少申告加算税の賦課要件を法定している。本件の中心的な争点は、上記のように5項に定める調査による更正の予知がいかなる場合であるのかという点が問題になったものである。この適用除外のケースが如何なる要件であるのかという点が課題であり、従来も議論となってきた。特に裁決例にこの種の事案が多く、また実務的にも電話確認や照会等は想定されるところであり、特に従前と異なり事前通知が制度化された現況においては、この種の電話照会等は多数行われることが想定され、この予知が如何なる場合に、発生しているのかという点は法令解釈としても重要な課題であるように捉えられる。また本件では直接に争われていないが、基本的な論点として、如何なる程度で更正があるべきことを予知したことになるのか、基本的に内心に関わる点であり、客観的に認識がどの程度必要と解されるのかという点は、議論の余地があるだろう。

本件の請求人及び担当税理士は、電話確認、
照会があったことによりこれを契機として、申告内容を点検確認を行い、申告の是非を検討したことは特段争っておらず、まずはこの電話照会の段階で調査が行われていたか否かという、上記適用除外規定のまずは、調査が行われたか否かという点がまずは問題となる。すなわちこの制度に定める調査とはいかなるものであるのかという点が課題となる。

そもそも調査とは拙稿においても指摘したように、従来、その具体的な対象範囲、行為は非常に広範囲に及ぶものであり、本件でも下記のように、基本的に通達で示している判断を踏襲している(通達である以上、当然でもあるが)。この調査の概念は、判決等でも確認されており、従来は、この意義が、課税庁としても、学説としても支配的であるように考えられる。しかしながら、近年の調査手続の改正を踏まえた上で、その意義が変更になっているとの見解も取りうるが、その調査の目的として、基本的に適正な納税義務の把握を求めたものであり、この点で継続的であるため、私見として、この調査概念の広範囲に及ぶ性質は、変化がないものと考えるべきであろう。

通則法第65条第5項に規定する「調査」とは、課税庁が行う課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味、課税庁の証拠資料の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を含む税務調査全般を指すものと解され、租税官庁内部における調査をも含むものと解される。

上記のように、調査の概念は、国税通則法において、基本的に、非常に広範囲の作業、認定判断プロセスを含むものであり、一般に認識される、特に納税者が(租税の専門家であってもほぼ同様であろう)、質問検査権の行使すなわち、臨場での実地の調査を調査として認識されるようなものとは異なるものである。本件でも請求人の主張にあるように、当該電話照会が、単なる行政指導であり、調査であることが明示されなかったことをもって調査の該当性を否定している。最終的には、既に、この電話確認の段階では、過去資料の確認等が行われており、調査は行われているとして過少申告加算税の適用除外は認められないとしている。

確かに、国税通則法において、定める調査の概念は一般に上記のように非常に広範囲の判断プロセスであることは私見としても合理的であると考えるが、これは必ずしも、本件における、国税通則法65条の調査概念を指すものであるという結論は、妥当ではない可能性もある。事前通知が法定化され、納税者における自己の納税義務につき、適正な手続きに基づく、自己の権利保全の実現を図るという、趣旨から考えれば、本件において、他の調査概念を一律に適用することは妥当か否かという見解もありえよう。調査の一連のプロセスが広範囲に及ぶものである以上、基本的に納税者においてその進行は、把握不能であり、かかる点から調査概念を上記のように広範囲に捉えることでは、適用除外要件の法規定の実効性が確保できないものとの可能性は充分に考えられるのではないだろうか。しかしながら、租税法の基本的な要請からも、特段の規定がない限り同一の文言の解釈について別意に解することは予測可能性や法的安定性を損なうものであり、基本的に同一なものと理解するべきであろう。かかる点から考えれば立法による解決は検討課題となるかもしれない。

1 調査と行政指導の区分の明示
 納税義務者等に対し調査又は行政指導に当たる行為を行う際は、対面、電話、書面等の態様を問わず、いずれの事務として行うかを明示した上で、それぞれの行為を法令等に基づき適正に行う。
(注)
  • 1 調査とは、国税(法第74条の2から法第74条の6までに掲げる税目に限る。)に関する法律の規定に基づき、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的で当該職員が行う一連の行為(証拠資料の収集、要件事実の認定、法令の解釈適用など)をいうことに留意する(「手続通達」(平成24年9月12日付課総5-9ほか9課共同「国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達」(法令解釈通達)をいう。以下同じ。)1-1)。
  • 2 当該職員が行う行為であって、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的で行う行為に至らないものは、調査には該当しないことに留意する(手続通達1-2)。
また上記のように、本件請求人の主張にもあるが、行政指導と調査の区分の観点からも問題といえよう。納税者は調査である旨の明示がなかったとして、上記、国税通則法に係る事務運営指針に反するものとして、調査の無効も主張しているが、本件の不備により処分の無効が可能であるのかという点は、申告納税制度を前提とする限りにおいて、困難であると考えられるが、事務運営指針の位置付けも含め、また、その具体的な定義も、ここで明らかにされている国税の職員の側に如何なる目的での行為であるのかという点が集約されている段階であり、行政指導と調査の区分は実質的には非常に困難である。少なくとも法定の根拠として如何なる点で係る調査が行政指導に該当し、調査から除外されるという判断になるのかという点で疑問を覚える。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2017年5月6日土曜日

判例裁決紹介(平成27年11月12日裁決、事業所得の帰属)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。
今回は平成27年11月12日裁決で、風俗店のコンパニオンとして業務に従事する請求人に対する所得の帰属が争われた事例です。

裁決としても珍しい事例であるが、具体的には、風俗店のコンパニオンとして業務を行った請求人が、確定申告を行っていなかった事例において、課税庁の調査により、当該店舗との誓約書等の契約関係書類から、業務による所得の発生を認定し、当該所得が請求人に帰属するとして所得税および消費税の決定処分を行ったところ、業務による所得としての金員は、請求人が役務を受けていた占い師によって多額の債務を抱えていた(と占い師から請求人が認識させられていた)として、当該弁済にその所得の大部分を充当しており、請求人は、当該所得の帰属は請求人ではなく、当該占い師にあると主張して、所得税法12条による実質所得者課税の原則の適用により、請求人に当該所得の帰属が否定されるとして提起したものである。最終的な判断としては、店舗と請求人による契約関係書類の関係より、法的な権利関係の帰属者を請求人であると判断して、課税庁の処理を是認した事例である。

本件は、裁決としても非常に珍しい、特殊な業務に基づく所得の帰属が争われたものであり、かかる点で、実務的にも参考とすべき点は、少ないものと考えられる(請求人が主張する占い師による詐欺的行為自体が所得帰属を否定する理由としても非常に珍しく、このような事例が報告される事自体が希少であろう、当然、感情的に請求人が酷であると判断されることは当然であろうが)。しかしながら所得税法12条に定める実質所得者課税の原則の適用事例は、限定的であり、本件は、その否定事例として、如何なる点でその適用が否定されたのかという、適用要件の解釈論を基礎とした点で、従前の事例と同様に、当該制度の具体的な適用関係を判断する上で、参考となるべきものと考えられる。

すなわち、当該所得が下記、所得税法12条に定める実質所得者課税の原則がいかなる要件をもって適用されうるのかという点が争点であるが、より具体的には、問題となった所得の帰属がいかなる者に帰属しているのか、という事実認定が問題の起点となったものと考えられよう。実務的に、特に家族間、親族間等において所得の帰属関係がいかなるものであるのかという点は、問題となりうるところであり、課税要件として中心を構成するものの認定を巡る争いは想定されうるとして、かかる点で本件は参考となりうるものと捉えられる。

第一二条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。
(事業から生ずる収益を享受する者の判定)
12-2 事業から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その事業を経営していると認められる者(以下12-5までにおいて「事業主」という。)がだれであるかにより判定するものとする。
より一般的に実質所得者課税の原則は、上記のような規定となっており、その性格が従来議論されてきた。その中心的な法令解釈上の論点は、名義人以外の享受する者がいかなるものと解されるか否かである。通説としては、法律的帰属説が原則的な位置づけにあり、例外的に経済的な帰属者が適用されうるものとして理解されている。私見としても租税法が法律関係をベースとしてその課税要件を構成するものであり、法律上の名義人への課税と納税者間の公平性を根拠との衡平から本規定が創設されたものであり、かかる点を背景に、法律上の帰属関係を課税の基礎としつつもも、実質に従って判断する者が具体的な帰属者として認定されることを法定したものであり、課税庁にかかる権限を法規をもって与えるものであり、課税実務からの要請にもとづくものであろうと考えられる。かかる点で法律関係をベース、帰属等を、法的に権利を収受する者と考える点は、法規の適用として当然のことでもあるが、租税法律主義という、基本的な租税法の基本的な要請に配慮した規定であろう(この点で創設規定か確認規定かという点で性格に対して争いがありうるところである。)

本件でも、請求人と店舗との間で、雇用契約、若しくは業務提供の契約を結んでいることは、争いがないところであり、所得税法上の事業所得の帰属が請求人あるいは、請求人が主張する金員を取得した占い師(租税法のペーパーでこの単語を使うとは考えたこともなかったが)であるのかという点が問題とされている。請求人は借金があると誤認を起こさせられることで、取得した金員を、全て占い師に渡していたということで実質的な収益を享受していないという点で、法律的な帰属ではなく経済的な帰属者がその帰属者であるという主張をしたものとして理解されよう。

最終的には、12条の解釈論として、法律的帰属説を原則的な解釈であるとした上で本件は誓約書等の存在を根拠として、請求人が法律的な帰属者であり、また単なる名義人ではないという判断から、請求人に当該事業所得の帰属があるものと結論づけている。

私見としては、上記規定は、いかなる場合に、法的な帰属関係があるものであるのか、権利義務の発生を認識されるのかという点が明示的ではなく、その判断に課税庁の裁量の余地が発生しうる可能性は否定できないものと捉えられる。実質的な所得者、すなわち収益の享受する者という概念がいかなるものであるのかという点が単に法律的な帰属関係に基づくべきであるというのみではなく、より具体的にいかなる状況にある、権利義務の発生によって判断されうるのかという点が租税法の課題として議論されるべきものといえよう。法規においても享受・帰属という文言が使用されているが、金員の管理支配をベースに判断するのか、法的な権利関係をベースに判断するのかという点は、より享受とはいかなる意義を持ち、帰属とはいかなる状態にあることを指しているのかという点が現状においては明示的ではないという点が、議論の対象となるのではないだろうか。

通達においては、事業の所得に関しては、経営をしているものという解釈通達が示されているが、この点でも経営とは複合的な、多義的であり、何をもって具体的に経営をになっていると判断されるのかという点はより具体的な判断基準が必要である。租税法の基本的な要請から考えれば、上記のように、基本的には法律関係を基礎とすべきであり、経済的な所得者までもこの規定の対象であると解することは拡張的な解釈であり、基本的には避けるべきであろう。かかる点は、上記のように本規定が納税者間の租税負担の公平性と安定性や予測可能性への配慮との衡平から構築されたものであるものの租税法規の基本的な要請として、かかる適用要件はより明示的であるべきであり、その解釈を明らかにすることは重要な点であろう。帰属がいかなる状況にあることを指す概念であるのかという点が明らかではない状況においては、例えば、法的な権利関係にあることを意味するのか、管理支配をしていることを指すものであるのかという点でも、無制限な所得の帰属者を認定することになり、帰属がいかなる状態にあることを意味する概念であるのか、収益の享受とはいかなるものであるのかという点が、法的な権利関係というのみではなく、より具体的に検討すべきではないだろうか。特に享受、帰属という文言の利用は、明確な用語ではなく、経済的な利得の支配関係をも含んだ概念であるようにも解することは可能である。本質的には立法によるべき課題であると捉えるべきでもあろうが、執行面、課税負担の公平性にも配慮しつつもより明示的な概念によることも必要と判断されるべきではないだろうか。

いずれにしても、本件は、請求人が金員の支払いにより、当該収益を管理支配していないことは想定されるところであるが、誤認に基づくものであっても自発的に行った行為であり(洗脳と表現できるのかもしれないが)、かかる金員の移転は、当初の意図として、債務の弁済であって、これは請求人と占い師の間の民事的な問題であり、民事上の契約、弁済が問題として理解すべきであって、租税法規において救済や、帰属や享受の意義を拡張的に捉え、法的な権利関係を超えて、無制限に所得の帰属者を判定することは、基本的な租税法の適用としては非合理的であるものと考えられる。
本件自身は、請求人には同情すべき点もあろうが、この事案としては、その業務の特殊性や帰属関係に関する主張の理由付けも珍しい事案ではあるが、この種の事案が租税問題になる事自体が非常にレアなケースであり、この点で、興味深い点であるが、本件の他の争点においても調査段階における不備(誤認を招く説明等)があったこともその争点とされているが、現実の課税実務の状況を垣間見える事案ともいえる。

以上、毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが、参考までに。

2017年4月29日土曜日

判例裁決紹介(平成28年6月6日、同一事由による納税猶予の否定)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成28年6月6日裁決で、病気になったことを理由とした納税の猶予制度の再適用・再申請が否定された事案です。

具体的には、病気により、納税の猶予を認められていた請求人(二年間)が、当該病気の継続によって、納税が困難であるとして、再度、納税の猶予制度の適用(一年間)を所轄税務署長に対してなしたところ、同一の理由に基づく申請は、延長の期間制限があり、その期間制限に抵触するとして、本件猶予申請の適用を否認・不許可としたことを不服として提起されたものである。

本件は、すでに納税の猶予が認められていた、請求人が同一の理由に基づき、再度当該猶予を求めたものであり、前提事実として基本的に、病気を理由とする納税者の納税が困難となった事案であり、納税者にとって、感覚的には・主観的には同情すべき事案ではあるが、かかる点を、基本としてその救済を目的とする議論は、人権等をベースとした議論として傾聴に値するものとしては、考えられるが、単なるヒューマニズムに基づいた議論は冷静な判断を損なうものであり、まずは、現行法制度を前提として如何に法文が解され、制度適用があるべきであるのかという点が一義的に議論されるべきであると考えられる。すなわち猶予制度の基本的な制度趣旨、制度背景と法に定めのない再申請(言葉の問題であるのかもしれないが、延長も)に対して、いかなる対応がなされるべきであるのかという点が問題となったものである。法令解釈として猶予制度における下記のような要件が如何に解され、適用されるべきであるのかという点が中心的な争点であり、下記条文の解釈論、特に国税通則法46条7項の解釈が争われたものであるが、同時に猶予制度の基本的な背景をベースとした立法論が問題となったものであると捉えられる。実務的に、納税の猶予が問題となるべき事案は少ないものと考えられるが、近年はこの種の猶予制度の適用は増加しており、事案としては珍しく、法が定めた猶予制度の基本的な要件の解釈論を理解する上で有益な事例であるものと考えられる。

第四六条 税務署長(第四十三条第一項ただし書、第三項若しくは第四項又は第四十四条第一項(国税の徴収の所轄庁)の規定により税関長又は国税局長が国税の徴収を行う場合には、その税関長又は国税局長。以下この章において「税務署長等」という。)は、震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害により納税者がその財産につき相当な損失を受けた場合において、その者がその損失を受けた日以後一年以内に納付すべき国税で次に掲げるものがあるときは、政令で定めるところにより、その災害のやんだ日から二月以内にされたその者の申請に基づき、その納期限(納税の告知がされていない源泉徴収による国税については、その法定納期限)から一年以内の期間(第三号に掲げる国税については、政令で定める期間)を限り、その国税の全部又は一部の納税を猶予することができる。
一 次に掲げる国税の区分に応じ、それぞれ次に定める日以前に納税義務の成立した国税(消費税及び政令で定めるものを除く。)で、納期限(納税の告知がされていない源泉徴収等による国税については、その法定納期限)がその損失を受けた日以後に到来するもののうち、その申請の日以前に納付すべき税額の確定したもの
イ 源泉徴収による国税並びに申告納税方式による消費税等(保税地域からの引取りに係るものにあつては、石油石炭税法(昭和五十三年法律第二十五号)第十七条第三項(引取りに係る原油等についての石油石炭税の納付)の規定により納付すべき石油石炭税に限る。)、航空機燃料税、電源開発促進税及び印紙税 その災害のやんだ日の属する月の末日
ロ イに掲げる国税以外の国税 その災害のやんだ日
二 その災害のやんだ日以前に課税期間が経過した課税資産の譲渡等に係る消費税でその納期限がその損失を受けた日以後に到来するもののうちその申請の日以前に納付すべき税額の確定したもの
三 予定納税に係る所得税その他政令で定める国税でその納期限がその損失を受けた日以後に到来するもの

 税務署長等は、次の各号のいずれかに該当する事実がある場合(前項の規定の適用を受ける場合を除く。)において、その該当する事実に基づき、納税者がその国税を一時に納付することができないと認められるときは、その納付することができないと認められる金額を限度として、納税者の申請に基づき、一年以内の期間を限り、その納税を猶予することができる。前項の規定による納税の猶予をした場合において、同項の災害を受けたことにより、その猶予期間内に猶予をした金額を納付することができないと認めるときも、また同様とする。
一 納税者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難にかかつたこと。
二 納税者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと。
三 納税者がその事業を廃止し、又は休止したこと。
四 納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと。
五 前各号のいずれかに該当する事実に類する事実があつたこと。


 税務署長等は、第二項又は第三項の規定により納税の猶予をした場合において、その猶予をした期間内にその猶予をした金額を納付することができないやむを得ない理由があると認めるときは、納税者の申請に基づき、その期間を延長することができる。ただし、その期間は、既にその者につきこれらの規定により納税の猶予をした期間とあわせて二年を超えることができない。

本件の猶予制度の対象となった要件は、上記の国税通則法46条2項に定めのあるものが対象となった。1項に定める災害損失による納税が困難になった場合における納税の猶予制度とは異なり、一定の制限を設けた上で、税務署長等に対して一年以内に限り、その猶予を行うことを許可している。いわゆるできる規定であり、一定の事実関係のもとで、課税庁に対して一定の裁量を与え、その適用の是非を判断することを認めているものとなっていると解される。従って、一義的には、この課税庁における不許可の処分が妥当であるのか、裁量の範囲を逸脱したものであり、不当と評価されるべきものであるのかという点が問題となる。本件は上記のように、同一の理由に基づく、猶予の再申請であり、実質としてすでに許可された猶予制度の適用を延長することを目的としてなされた請求人の申請であるから、その適用は上記7項により、既にその者につき、これらの規定によりとして延長の期間制限が認められないと判断されたものである。基本的に条文を文言通りに解釈したものであり、その判断の是非は妥当と評価されるものである。

当該請求人は、本件の請求は再申請を行ったものであるとして、法令の定めとして、明文をもって再申請を禁止していない以上、その適用は、上記条文に基づき、一定の事実関係の存在を起点として、猶予制度の適用が判断されるべきであるとして主張しているが、かかるような請求人が求める再申請が7項に定める状況の対象外であるのかという点が問題となっている。私見としては、たしかに、法文は制度をもって明確にその再申請を禁止していないものの、延長や再申請という、文言の相違により、いわば言葉の問題であるように考えられるが、基本的に制度として納税の猶予は原則として、その適用期間を二年に制限しているということを考慮するならば、安易に拡張的・類推解釈を行って明文の禁止がないものとして、同一の理由に基づく再申請を許可すべきと解することは、法の定めた処理に反する処理を税務署長等に求めるものであり、租税法の基本的な要請、特に合法性の原則に反するものと理解するべきであろう。

2項は1項と異なり、適用において、該当する事実に基づくことが要請され(因果関係)、また、猶予金額も制限が付せられている。解釈論としてこの、法定の事実関係がいかなるものであるのか、という点がまず問題となる。本件で問題となった病気であるが、特に制限を付与しておらず、実際上、その適用の可否については、納付が困難であるとの事実関係との因果関係のみが問題となるものである。この因果関係をどの程度の関係性を求めるのかという点は、必ずしも定かではなく、この点は、検討すべき課題である。基本的には、1項の猶予制度とは異なり、災害損失の発生による損失を起因したものではなく、別制度として設けられていることからも他の納税者との衡平から考えて、事実関係と納税の困難であることとの間で、直接的な因果関係が認められべきものであるのではないだろうか。この点は、基本的に納税者の申請に基づく制度適用が図られていることからも肯定されるものと考えられる。

そもそも本件の判断と請求人の主張との相違は基本的な本件の猶予制度の基本的な理解、制度趣旨に対する認識の相違にあるものといえる。すなわち、納税者の基本的な権利、おそらくは憲法上の生存権の確保・財産権の保護に基づく要請であるとした理解と納税義務の発生と一定の事由の発生を背景とした例外的な救済的な制度であるのかという点で相違があるように考えられる。私見としては、本件猶予制度はあくまでも例外的な救済制度であり、納税義務の発生においては、その起因として一定の所得の発生が背景にあることからも、一定の事由に基づく、一時的な納税の困難を救済する制度であるとして理解するべきであり、通常の納税義務を果たした納税者との負担の公平性と一定の事実関係による救済との衡平がその背景にある制度であるとして理解するべきであり、基本的な権利としてその適用が、認められるべきと考えることは制度趣旨に反するものと理解するべきであろう。

(納税者の帰責性)
8-2 この条第2項各号に該当する事実は、納税者の責めに帰することができないやむを得ない理由により生じたものに限る。
また、本件とは直接の関連はないが、上記のように法令解釈通達が提示されている。この納税者に対する帰責性が如何にして解釈されるのかという点は、その根拠が必ずしも明確ではない。この点も猶予制度の実際の適用を判断するに当たって、上記の具体的な事実に対して当てはめる上で、重要な課題であり、実質的な適用対象範囲を律するものであろう。この点でおそらくは上記と同様に猶予制度の基本的な制度趣旨に基づくものと想定されるが、この点もより検討していくべきであろう。

加えて、7項の適用において、二年間の猶予の期限に関しては、「既にその者につきこれらの規定により」   という制約が設けられている。これにより、本件の対象となるべき同一理由に基づく猶予制度の延長が認められないものと考えられるが、この転移つき、具体的な猶予の条件として、これらの規定を如何に理解するのかという点が問題となるように考えられる。すなわち、上記猶予制度の各1,2項の規定が同一の者に対して適用された場合において期間制限の対象とするのか、各一定の事実関係に応じて、判断されることになるのかという点が明示的ではない。この点は今後の課題であるといえよう。

本件の事例のような病気の場合、病気にも、例えば慢性的なものなど、多様なものが想定され、必ずしも、一律に規制を法によって確定することは、困難である。制度上の想定において詳細に定めていないことが問題であり、基本的な権利として理解する立場からからは、法の不備であるという指摘もありえようが(特に慢性的な、あるいは長期間に渡るような病気等に関しては如何にこの制度において捉えていくのかという点)、上記のように当該猶予制度を捉えるならば、基本的には納税義務の発生において、一定の所得の発生が想定され、納税が困難であるような状況との因果関係が問題になるものであり、納税者からの申請と税務署長等による裁量に委ねる制度が一定の合理性を有していると捉えられる。制度的に、あるいは立法論として、特に慢性的な病気や治療に長期間を要するような状況において、より実効的な期間制限を行うことは立法論として課題であることは否定し得ないが、単に請求人の状況が酷であるとの判断に基づく主張において、単なる感覚的・主観的な議論ではなく、上記のような基本的な猶予制度に対する納税者間の公平性や救済の衡平において、捉えた議論が必要であり、納税者側の基本的な事情のみを主張して制度的な解決を図ることは合理的な根拠を有しているものではないと考えるべきであろう。


以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが、参考までに。

2017年4月20日木曜日

判例裁決紹介(平成28年6月6日裁決、独立当事者間基準と同族会社の行為計算否認)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は平成28年6月6日裁決で、請求人がなした、関連会社への外注費の金額が不当に高額であるとして、132条の同族会社の行為計算否認を適用し、当該費用の損金計上を否認した事例です。

具体的には、Web Serverのレンタル、保守管理を業務とする請求人が、繰越欠損金を有する関連会社に対して業務を発注し、かかる業務発注に関する外注費として計上した金額が、請求人が請け負った受注金額よりも高額であり、かかる支払いは税負担を回避する目的に行われるものであって、不当に高額であると認定し、法人税法132条に定める同族会社の行為計算否認を適用し、損金計上を否認して、更正処分を行ったものであり、かかる処分の取消を求めて提起されたものである。最終的な判断としては、当該支払は、独立当事者間取引における価額と比して、不当に高額であり、処分行政庁の判断を是認して損金計上を否認している事例である。

本件は、Web Serverのレンタル保守管理を営む請求人が関連会社に外注した場合において、当該費用が高額であり、繰欠を活用した租税回避(このような表現が妥当であるのかは別途問題)、不当な法人税の減少を伴う行為であるとして、法人税法132条の同族会社の行為計算規定の否認が適用されるか否かが争われたものであり、中心的な争点は、その適用要件たる、一種の不確定概念であると判断される不当に減少、特に不当にという点を以下に解するべきであるのかという点が問題となったものと考えられる。基本的には、本件の意義としては、この不確定概念といってよい、不当概念、要件を如何に解するのかという租税法における従来の論点に位置づけられる問題であり、従来の議論の延長に属する問題であって、新規性という点で、かかる点からは特に問題となるものではないものと考えられる。但し、不当性を判断、不当な行為を認定する上で、かかる範囲を確定する点で参考となるものであり、実務的には有益なものであるとも捉えられよう。

しかしながら、本件では、かかる不当性の具体的な認定において、特徴的な点が見受けられる。すなわち、外注費の金額の不当性を判断するに当たって、その具体的な不当の判断材料として、明示的に独立当事者間の取引、価額の概念が活用され、具体的な判断が導かれている点が興味深い。

従来より下記のように、同族会社の行為計算否認を巡っては、下記の条文における法令解釈が従前争われており、学説も含め、如何なるものが、要件として不当に減少したものであるのかという点が、近年のIBM事件を紹介するまでもなく、議論が存在する。この点に関して金子『租税法』の第22版では、表現が修正され、如何なる意義をもって、その不当性を認定するのかという点が、議論が行われており、従来、その意義の変遷は租税法の中でも、現在においても、重要な課題であると考えられる。

第一三二条 税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。

上記のようにこの不当性の概念に関しては、当該行為等が純粋経済人の行為として不合理不自然であることとと解されることは明らかであり、近年の判例においてもまた、下記のように本件判断でも踏襲されている。ここで問題となるのがその具体的な判断基準となる客観的合理的な基準が如何なるものであるのかという点が問題であり、本件ではその点について、下記のように独立当事者間での通常の取引という概念との比準が提示されており、この点によって、判断が行われている。

 「法人税法第132条第1項の規定は、同族会社が少数の株主又は社員によって支配されているため、当該会社の法人税の税負担を不当に減少させる行為や計算が行われやすいことに鑑み、税負担の公平を維持するため、当該会社の法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる行為又は計算が行われた場合に、これを正常な行為又は計算に引き直して当該会社に係る法人税の更正又は決定を行う権限を税務署長に認めたものである。このような上記規定の趣旨に照らせば、同族会社の行為又は計算が、法人税法第132条第1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」か否かは、専ら経済的、実質的見地において、当該行為又は計算が純粋経済人の行為として不合理、不自然なものと認められるか否かという客観的、合理的基準に従って判断すべきものと解される。そして、法人税法第132条第1項が同族会社と非同族会社の間の税負担の公平を維持する趣旨であることに鑑みれば、当該行為又は計算が、純粋経済人として不合理、不自然なもの、すなわち、経済的合理性を欠く場合には、独立かつ対等で相互に特殊関係のない当事者間で通常行われる取引(以下「独立当事者間の通常の取引」という。)と異なっている場合を含むものと解するのが相当である。」
 
この独立当事者間の通常の取引という概念自体が、我が国の移転価格税制における独立当事者間基準と同一のものを指すものと解されるのかどうかという点は必ずしも本件判断では明示されていないが、基本的な概念として同一のものであると理解されよう。この独立当事者間基準による不当性の判断が本件のように明示的に活用されている点は、本件の特徴的な点であろう。本件は同族会社が行う否認対象の取引のうち、支払った損金の金額の不当性・合理性が問題となった事例であり、かかる点で、独立当事者間基準の概念が参照されうることは、今後の参考として実務的にも意義のあるものであるのではないかと考えられる。その他一般的に、すなわち金額の不当性の立証以外の局面において、利用されうるのかという点は、まだ検討課題であろうが、少なくとも金額の合理性を評価する上で、かかる概念からの判断が行われうることは留意すべき点である。

私見としては、このような金額に対する不当性、合理性の判断が事例として今後も増加している傾向にあるならば(おそらく、近年の傾向においてはグループ法人税制の適用・適用外しも増加しており、傾向に変化はないものと考えられる)、同族会社の行為計算否認規定が、歴史的に、その対象範囲を狭めてきている、すなわち不当に高額な役員給与等の規定が整備されてきた、歴史的な背景を考慮すると、移転価格税制の適用範囲の拡大等、制度的な、立法によって適用要件を明示的にするべく、対応が必要な状況になってくるのではないだろうか。
もちろんその具体的な独立当事者間基準の立証は、執行コストの増加を招くものであり、現状の移転価格税制を取り巻く環境も考慮するならば、その具体的な立証は、非常に負担をとmなうものであることも念頭に置かれる必要はあるが。

本件では具体的な当てはめにおいて、不当性の認定において、この独立当事者間の取引、金額とは異なるという点を判断根拠として実際の不当性の認定を行っている。現行の移転価格税制において、データベースや、事前確認、資料の整備等の規定が整理されてきたが、この点で、独立当事者間基準の適用は、同族会社の行為計算においては、明文の規定が存在しないものであり、高度な専門家が多数関わり(高コストではあるが)、その対応策が取られている移転価格税制とは立証の程度が、比準対象取引の算定や、金額の合理性を検証、異常ん取引の排除等において、異なる状態にある。この点が検討課題ではある。移転価格税制と同様のレベルでの立証は執行技術やコスト、納税者の理解等の状況から困難であり、具体的な基準を放棄により整備することで、その立証と執行の衡平を考慮した制度構築が図られるべきである。現状は、この独立当事者間基準の活用は課税庁、納税者共に如何なる基準の充足を図るべきであるのかという点が明確ではなく、双方による負担が増加するのみではないだろうか。

今後、同族会社の行為計算の否認規定の具体的な適用に対して、独立当事者間基準が特に金額の不当性・合理性を検証する段階において用いられていく傾向が支配的なものとなるか否かは、まだ不明瞭であるが、少なくとも同族会社の行為計算として対象となる取引として金額の合理性が問われるべき事例は、存在していくことであろうし、今後、専門家責任として、また、リスクマネジメントとして、移転価格税制における独立当事者間基準に対する理解に基づく、立証、資料の整備が必要となるような状況が求められることも考えられ、先行事例として移転価格税制に対する理解を深める必要があるように考えられる。

以上です。
毎度のごとく、論文Stockとして作成しているものですので完成度は低いですが、参考までに。

2017年4月15日土曜日

判例裁決紹介(東京地判平成28年5月24日、納骨堂に対する固定資産税の非課税)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。
今回は東京地判平成28年5月24日で、一部業界でも話題になっている、外注業者を利用した納骨堂に対する固定資産税の非課税措置の適用の是非が争われた事例です。

具体的には、宗教法人たる原告がその業務として、土地及び建物を所有し、納骨堂を運営(電動式で、イメージ的には機械式駐車場)していたところ、これを処分行政庁が固定資産税の非課税措置の対象とはならないとして固定資産税の賦課処分を行ったことに対して、原告が宗教法人の業務に活用するものであるとして非課税措置の適用があるものとして、提起した事案である。問題となった土地建物等、法令上の納骨堂経営の許可を行政(保健所)から受けており、ビルとして建築され、納骨参拝施設のほか法要の施設、会食施設等が復号的に整備された施設である。原告は、訴外の株式会社(仏壇等仏事設備の販売大手)に対して、この納骨堂に対する遺骨収集・販売業務について業務委託契約を締結している。この点が最終的には以下の条文の解釈において、中心的に争点となり、事実関係の認定において重要な判断の基準となったものと考えられる。また、当該施設は、曹洞宗の所属者以外にも納骨が可能であり、加えて原告の所属する曹洞宗以外の宗派の法要等を営むことが可能であり、実際に施設利用料を徴収して、広く訴外会社を活用して利用者を求めている。

以上から最終的に判示としては、原告の主張を排斥し、被告行政庁の主張を認め、これを以下の固定資産税の非課税措置の対象とはならないものとして判断している。

固定資産税は、その名の通り、不動産等、固定資産を課税客体とする租税であり、地方税、特に市町村において基礎的な財源として重要な位置づけを占める税源となっている。この性格の位置づけに関しては、種々議論があるところではあるが、基本的に課税対象の客観的な時価に基づき、課税標準を決定している。この評価は、不動産取得税等、その他の評価にも準用されており、租税制度において、極めて重要な意義を有するものとも評価されている。また、本件で主たる対象となった非課税措置に関しては、地方税法において定められており、課税を行うべきものを、公益性等、複数の趣旨に基づき、その課税を行わないとして制度化されたものである。その具体的な運用は各地方自治体に委ねられていることになっているが、地方税法の基本的な性格に基づき、その非課税は恣意的な運用を行うことは、租税法の基本的な要請に合致せず、租税負担の公平性を害することになる。このため、地方税法に基づく、一定の統一が図られているが、上記のように実際の運用レベルでは各地方自治体の判断によっており、この具体的な非課税規定の運用、解釈上の問題点は、かかる点で、租税法規の解釈論としても重要な意義を有するものと考えられる。

地方税法348条2項
 宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第三条 に規定する境内建物及び境内地(旧宗教法人令の規定による宗教法人のこれに相当する建物、工作物及び土地を含む。)
 墓地

地方税法は以上のように固定資産税の非課税となる対象を具体的に定め、個別に列挙する制度形式を採用している。本件で問題となった規定は上記地方税法348条2項3号4号であるが、この法規の解釈が中心的な問題となるといえよう。

そもそも、一般的に非課税規定の解釈の指針がいかなるものであるべきかという問題がある。租税法の基本的な要請から考えて、租税負担の公平性に上記のように影響を及ぼすものがこの固定資産税の非課税規定であり、問題はこの解釈においても、その意義の解釈において厳格に、解するべきであるのかという課題があろう。租税負担の公平性を考慮するならば、みだりに非課税規定の範囲を拡張的に解釈すべきものとは考えられないが、しかしながら、かえって厳格に解釈するべきであるとの判断は、必ずしも合理的ではない。そもそも租税法律主義の要請から考えるに租税法の文言に忠実に文理解釈することが原則的であると判断するべきであり、非課税規定であるがゆえに特別に配慮すべき点はないものと捉えられるが、非課税規定はその運用によっては、特定の納税者において有利となる取扱となる懸念もあり、また、他の納税者との間での公平性を損なうおそれがあることから、みだりに拡張的にその意義を理解するべきではないというレベルで非課税規定であるがゆえに特段の解釈指針と理解するのではなく、留意的な存在として理解しておくべきと考えられる。かかる点で、個別具体的な解釈を如何にして理解するのかという点が固定資産税の非課税規定の解釈として重要な課題となるのであろう。

本件で問題となる宗教法人に関する非課税規定の解釈としては、当然のごとく、憲法概念としての信教の自由との関連性も検討対象であろうが、本件では中心的な争点となっておらず、また、租税法規における解釈として、特段、かかる点を考慮して解釈事実認定を行うことを要請しているのかという点は課題であるが、私見として制度論として、この限定的な列挙方式において非課税規定を定める形式を採用する以上、解釈としてその範囲が具体的に解されるのであれば、特段信教の自由という憲法上の要請に抵触するものではなく、立法上の問題としては議論になるものではあるが、解釈として租税法の基本的要請に忠実であることが一義であるべきであり、かかる点で影響を及ぼするものではないものと考えられる。

個別の解釈においていかに示す専らの利用を想定する等の解釈、事実認定において、信教の自由との抵触との判断、指摘があろうことも想定されるが、例示列挙されている構造から考えて、この合理的な範囲に関しては、立法の判断するところであり、立法の合理的な裁量の余地に属する問題ではないだろうか。特に基本的な解釈において、以下にあるように宗教法人法の概念の借用が中心となって具体的な適用が判断されることになる。かかる点で個別具体的な解釈においても基本的には宗教法人法の制度的な要請を反映するものであり、基本的にはかかる法規の概念、制度の問題であると捉えられる場合が中心となるものではないかと理解される。

私見として、かかる点から個別具体的な地方税法の解釈として問題となるのは上記規定のうち、「専ら」及び「その本来の用に供する」という文言を如何に解釈するのかという点に集約されるのではないかと考えられる。墓地や境内地等の概念は基本的に宗教法人法、墓地埋葬法の概念であり、問題となるのはその概念の借用が原則的な対応に合致しているのかという点で判断されるところが問題になるものであろうからである

上記問題視される文言は、地方税法において、宗教法人に対する制約として、非課税規定の具体的な範囲を確定する上で、重要な判断指針を提供するものであり、非課税規定と租税負担の公平性、憲法上の信教の自由との間でこのような制約を付すことが妥当であるのかという点での議論はあろうが、制度的な問題であり、基本的には立法の問題であろう。私見としては、宗教法人の活動が基本的に精神的な作用をその主たる目的である以上、外形的にその判断を行うことは困難であり、何らかの立法的な手続規定、特に継続的な申請等の手続が設けられるべきものではないかと考えられるが、下記のように、宗教法人がその法人としての主たる目的以外の業務を行い、もって資金調達等を行うことが制度上も可能であり、かかる点で現状の一定の利用制限を課した制限は立法目的として合理性を喪失しているものとは評価し難い。

「非課税とする範囲を「宗教法人が専らその本来の用に供する」ものに限定した趣旨は,上記の境内建物及び境内地は,宗教法人の主たる目的のために必要で,本来的に欠くことのできないものであるとはいえ(上記(2)参照),宗教法人は,主たる目的たる宗教的な活動を行うほか,公益事業を行うことができ,さらに,その目的に反しない限り,公益事業以外の事業を行うこともできることから(宗教法人法6条1項及び2項)、上記の境内建物及び境内地が,これらの事業の用に供されることがあり得ることを勘案したものと解される(なお,地方税法348条3項参照)。

 そうすると,同号にいう「宗教法人が専らその本来の用に供する」とは,当該宗教法人が,当該境内建物及び境内地を,専ら,その宗教の教義をひろめ,儀式行事を行い,及び信者を教化育成するという宗教団体としての主たる目的を実現するために使用している状態にあることをいい,上記の目的以外の目的による使用が例外的にではなく行われている場合には,上記要件を満たさないと解することが相当である。 

 そして,日本国憲法20条1項,同条3項及び89条に規定する国家の宗教的中立性の趣旨,宗教法人法84条が規定する宗教上の特性及び慣習の尊重の趣旨に鑑みれば,地方税法348条2項3号の要件該当性の判断は,当該建物及び土地の実際の使用状況について,賦課期日以前の状態を踏まえて認められる外形的,客観的事実関係に基づき,一般の社会通念に照らして,賦課期日において同号の要件が認められるか否かを判断すべきである。」

歴史的にも、我が国の宗教法人に対する非課税規定の導入は、信教の自由という憲法上の価値観に依拠していることは否定しようがないものであるが、これのみを理由に非課税としての取扱を正当化するものと捉えるのは必ずしも妥当ではない。いわば複合的な趣旨から導かれるものであり、この背景の理解が法規定の解釈においても必要であるように考えられる。すなわち多様な宗教活動に一律に規制を加えることは妥当ではなく、かえって、信教の自由にも懸念を発生させることから、いわば現在の不確定概念としても評価しうるような制限規定が導入されているものであり、また、歴史的に各地の宗教施設は、地域のコミニュティの拠点施設となっており、一部公共的な性格の活動をになってきたことも、その背景にあるものと捉えるべきであり、現在においても災害等の避難箇所として指定される等、一定の公共的役割を有していることが、本件で問題となった宗教法人に対する非課税規定の背景にあると評価されるべきであろう。地方税法において非課税規定が一定の政策目的の達成のもと、課税を犠牲にしていることを鑑みるに、制度背景は重要なテーマであり、法解釈においても検討すべき対象であろう。

そもそも、宗教的な活動は基本的に人の精神作用に関わるものであり、外形的な要素を見出し難いものであり、ここの活動を明確にすることは困難であろう。従って人の精神作用に基づく課税要件の設定は事実上困難であり、上記のようにフリーハンドで、宗教法人における非課税の適用は困難であり、この衡平から法規定のような制約を設けているものと解するべきであり、この点で上記規定の合理性は担保されているものと考えられる。

しかしながら、純然たる宗教行為のみにおいてその非課税規定の存在を理由付けると考えるならば、宗教法人の信者等、一定の宗派としての組織内部への受益という視点が発生することになる。これは公益法人に於いても同様であるが、一定のメンバーに対する受益の存在が設定されるようなケースにおいて、果たして非課税としての理由付けとして今後も立法を支えていくことが可能であるのかという点は、今後の課題として考えられる。

また、本件でも境内地・境内建物の概念が基本的に宗教法人法から借用を行っている。必ずしもその理由付けは本件でも明らかにされていないが、租税法の基本的な要請として、法的な安定性を重視する考えを鑑みるに、宗教法人法の概念を借用することは合理的であると評価すべきである。しかしながら、一定の隔離された空間をもって宗教活動に関わる施設として区画することは、宗教活動の多様性から現実的には困難であり、例えば、宗教施設に付随する駐車場などの施設を宗教活動に要するものであるのかあるいは、その他の賃借に用いているような事案も想定されるところであり、課税の現実的な執行の観点から、立証責任の転換を図り、もって宗教法人の活動の多様性に配慮した形で、必要性、現実的な利用の状況を立証することで、非課税規定の適用を図るような制度的対応が検討されることも可能性としてはありうる。もちろん宗教活動に対する介入とならないよう、一定の第三者的審査及び継続的な審査の実施が必要であるであろうが(現状の、公益認定に近い)。また、このような場合、上記のように非課税規定の趣旨目的をより精緻化して、何をもって非課税規定の適用対象とすべきであるのか明確とするべきであり、ここに租税法の基本的な使命があることになろう。

より個別的に検討するならば、「専ら」とは如何なる程度をもって判断すべきであるのかという点は、明示的ではない。本来の用に供するという部分もまた、如何にして認識すべきであるのかという点は本件から新たに提示される問題であろう。宗教活動の多様性に鑑みるならば、その精神的な作用を客観的に把握することは現実的には困難であり、総合的な判断によるべきほかないものと考えられるところであるが、例えば、現実の利用状況の他に、かかる法人の宗教活動において客観的な必要性をも含む概念であるのかという点も検討すべきである。専ら本来の用に供することが客観的な必要性を伴う概念であるのか、また、目的・活動との対比において不可欠な施設であることを要するものであるのか、それとも単なる現実の利用状況に依拠するものであるのかという点は、見解が別れよう。私見としては、上記の多様な精神活動に依拠する宗教活動を前提とするならば、総合的に判断するほかないのであり、フリーハンドで非課税規定の適用を認めることはまた、本規定の趣旨に反することからも、対象資産と宗教活動において一定の必要性・関連性を求めることが妥当であると判断すべきものと考える。

また、当該資産の排他性も考慮対象となるのであろう。本件でもその判断において、施設の宗派外への利用が問題視されていたが、当該資産の宗教活動との、あるいは宗教法人の目的において、一定程度の排他的な利用が想定されるべきことが要請されているもの解するべきである。さらに納骨堂ののように、形式的な名称等にとらわれるのではなく、実質的な利用状況を基礎に判定されるべきものと解される。また、継続的な活動を営むものが法人であり、いかなるタイミングでその、利用状況を把握すべきであるのかという点もより検討されるべきである。

いずれにしても、このように、非課税規定の適用において、制約として事実上機能する、宗教法人の活動、宗教法人のその本来の目的とは如何なるものと解するべきであるのかという点は、この種の法規の適用において明らかとするべきであろう。

また、具体的に、本件事業に関する募集や契約業務等を外注業務をいかに評価するべきであるのかという点も法令解釈として如何なる点と対峙するものであるのかという点は、検討が必要である。本件のように、当該訴外会社である外部委託者を葬儀の際に推薦するなどのような関係性が存在する場合において、この点から見ても事実認定として、非課税規定の適用を否認することは妥当であるように考えられるところであるが、この法的な根拠をいかに捉えるのかということは今後の課題である。

加えて、本件でも問題となっているが、宗派を問わず本件施設の利用を認めていることも、検討材料であろう。宗教法人として、如何なるものがその活動であり、目的であるのかという点は、差異があろうが一定の組織性を有する以上、団体の構成員に対する受益と他者への受益(そもそも宗教法人の活動による受益と示すこと自体が問題かも知れないが、広い精神的な作用も含め、受益と捉えている)は、区分されるべきものであり、かかる点で、上記非課税規定の文言の解釈としても正当であると評価される。もちろん宗教活動の目的を一定の対象に限定することは妥当ではないとの指摘もありえようが、一定の団体性をもつ法人としての性格を考慮するに、その制約はやむを得ないものといえ、かかる点で、非課税規定の制約として留意されるべきものといえよう。

以上、毎度のごとく論文Stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが、参考までに。

2017年4月5日水曜日

判例裁決紹介を(東京地判平成28年3月2日、架空取引による簿外資金の所得該当性・源泉徴収義務)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。
今回は東京地判平成28年3月2日で架空取引によって発生した簿外資金の源泉徴収義務が争われたものです。

具体的には、取引先と架空取引による簿外資金を発生させることで法人税法を逋脱し、法人税法違反(重加算税賦課)に問われた原告に対して、別途、当該簿外資金は、代表者に対する給与所得であり、もって源泉徴収義務を有し、かかる源泉徴収義務の履行が果たせされておらず、かかる金員に係る所得税額に対して仮装隠蔽行為が行われることで、不当に当該納税義務を免れたとして、賦課決定処分が行われたことに対して不服を申し立てたものである

前提として、上記のように、原告と取引先の間で、架空の取引を形成し、原告が金員を支払ったものとして、当該金員部分を不当に損金に算入した旨は、別件訴訟によって確定しており、この事実関係に基づき、さらに、当該不当金員は、簿外資金として原告の代表者が管理支配しているとのことで、簿外資金(数億円規模)が代表者に対する給与(賞与)であり、この支給に伴い源泉徴収義務が課せられるべきであるとして、この潜脱に対して、重加算税付加される結果となっている。いわば当該金員に対して二重に課税を行う結果となっている。

実務的には、このような法人の代表者に対する給与課税に関しては、至極当然のこととして理解されていることと考えられる。私見としても従前との整合性の観点からは、このような処理が基本的なものと捉えられるべきであろうかと考えられるが、実質的に租税法規、所得税法における給与等に対する意義の通常の文言よりも拡張的に捉えられ、実質的に固有概念とかしている点は、租税法の基本的要請から留意されるべきものとも言えよう。

本件は、基本的にこのような簿外資金が如何なる性格を有するものであり、これを租税法規、特に所得税法に於いて、下記の給与所得、源泉徴収義務の対象として捉えられるのかという点が中心的な争点である。かかる点で法解釈とは一線を画するものであるともいえるが、上記のように、実質的な給与概念の理解が前提となっていることが認識されるべきと考えられる。租税法務においては、至極当然の処理であるが、この理解は一般法務や実務家に取って必ずしも当然の処置でないことは、念頭においておくべきであろう。反対に考えれば、租税法規、特に所得税法は、このような一般用語としてより広範囲に給与概念を捉えることで、適正な課税を図っているものと認識される。更には、源泉徴収義務と法人税法違反と二重に課税対象とすることで、重加算税による大きな負荷をかけている点も、適正な課税を図る意図に基づくものといえよう。
この点が如何なる根拠に基づくものであるのかという点がさらに、課題と考えられるが下記のように、所得税法28条においてもこれらの性質を有する給与という文言により規定されており、その背景には所得税が採用する所得概念が背景にあるものと考えられる。従って、この拡張的な方向性を有する文言をいかにして解するのかという点がフリンジ・ベネフィット等の多様な給与に対して給与所得概念の網を適用するのかという重要な争点を発生させることになる。

給与所得)
第二十八条  給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。

本件もこの系譜につながるものとして捉えられるべきものであり、従前と同様に法人の代表者に対する給与概念に該当するとして理解している点で、新規性を有するものではないが、裁判例としてこのような違法所得を明示的に所得として捉え源泉徴収義務があるものと判断した事例としては珍しく、特に簿外資金に対する貸付けといういわばよくある主張を排して上記のような給与所得該当性を認め、源泉徴収義務を有するものと判断している点は、実質的に二重に処罰しており(実質的という点がキー、法務的に古典的であるが、二重処罰の問題も観念される)強い抑止をもつものとして実務的にも参考になるものといえるのではないだろうか。

但し、本件のような金員の発生は、同族会社のような法人における、如何に法人の代表者による行為であるとはいえ、法人と別個の存在である個人が行った行為であり、行為を法的に評価するならば、法人に対する損害を与えたものであり、横領等の行為に該当するものと捉えられる。法人における損金への違法行為に伴う支出の問題でもあるが、仮装行為としてこの損金性を否認し、さらに、当該金員を実質的に管理運営している代表者においては給与所得として捉えることは、所得税法と法人税法の連動という点からは、違和感がある、すなわち、損金性を否認していながら、一方で給与課税を行うことは、対応関係が図られていない。確かに所得税法と法人税法は別個の法体系であり、法規として連動が図られるべきものとして想定されていない。しかしながら源泉徴収義務として法人における問題として理解される点で、このような金員を如何に評価するのかという点は、整合性が図られるべきものではないだろうか。

また、従業員等の横領等に伴う損失は、法人税法上、損金として該当するものとして評価されている。この点もなぜ、役員や雇用者、被雇用者において、取扱が異なるのかという点は基本的に同一の犯罪行為に伴う金員の発生であり、バランスを欠いている。本件の中心的な争点はあくまでも所得税法、源泉徴収義務の存在の問題であり、法人の損金の問題ではないが、一定の行為によって発生した金員に対しては複数の論点が混在していることは認識されるべきであり、議論においては分類して議論されるべきものといえるのではないだろうか。

おそらくは、我が国の法人において過半を構成する中小企業、同族会社のような経営と所有が未分離な法人においては、代表者による行為である場合と被雇用者との行為においては損害の発生の有無等が異なるものとして認識されていることがその背景にあるものとの理解が、本件や上記のような損失に対する処理の相違につながっているものと考えられるが、旧所得としての該当性はあくまでも上記法文言の解釈によって判断を行うことが租税法の基本的な要請に合致し、また、損金としては、別段の定め、公正処理基準の問題であるが、それぞれ別の問題として問題点が整理される必要があるだろう。

第百八十六条  賞与(賞与の性質を有する給与を含む。以下この条において同じ。)について第百八十三条第一項(源泉徴収義務)の規定により徴収すべき所得税の額は、次項の規定の適用がある場合を除き、次の各号に掲げる賞与の区分に応じ当該各号に定める税額とする。
 給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者に対し、その提出の際に経由した給与等の支払者が支払う賞与 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める税額
 その賞与の支払者がその支払を受ける居住者に対し前月中に支払つた又は支払うべきその他の給与等(以下この条において「通常の給与等」という。)がある場合(その賞与の支払者が支払う通常の給与等の支給期が月の整数倍の期間ごとと定められている場合にあつては、前月中に通常の給与等の支払がされない場合を含む。次号イ及び次項において同じ。) 前月中に支払つた又は支払うべき通常の給与等の金額(その賞与の支払者が支払う通常の給与等の支給期が月の整数倍の期間ごとと定められている場合には、その賞与の支払の直前に支払つた又は支払うべきその通常の給与等の前条第一項第一号に規定する月割額。次号イ及び次項において同じ。)、給与所得者の扶養控除等申告書に記載された主たる給与等に係る控除対象配偶者及び控除対象扶養親族の有無及びその数に応じ別表第四の甲欄により求めた率をその賞与の金額に乗じて計算した金額に相当する税額
 イに掲げる場合以外の場合 その賞与の金額の六分の一(当該金額の計算の基礎となつた期間が六月を超える場合には、十二分の一。次号ロ及び次項において同じ。)に相当する金額並びに給与所得者の扶養控除等申告書に記載された主たる給与等に係る控除対象配偶者及び控除対象扶養親族の有無及びその数に応ずる別表第二の甲欄に掲げる税額に六(当該賞与の金額の計算の基礎となつた期間が六月を超える場合には、十二。次号ロ及び次項において同じ。)を乗じて計算した金額に相当する税額
 前号に掲げる賞与以外の賞与 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める税額
 その賞与の支払者がその支払を受ける居住者に対し前月中に支払つた又は支払うべき通常の給与等がある場合 前月中に支払つた又は支払うべき通常の給与等の金額に応じ別表第四の乙欄により求めた率をその賞与の金額に乗じて計算した金額に相当する税額
 イに掲げる場合以外の場合 その賞与の金額の六分の一に相当する金額に応ずる別表第二の乙欄に掲げる税額に六を乗じて計算した金額に相当する税額
 賞与の支払者がその支払を受ける居住者に対し前月中に支払つた又支払うべき通常の給与等がある場合において、その賞与の金額が前月中に支払つた又は支払うべき通常の給与等の金額の十倍に相当する金額を超えるときは、当該賞与について第百八十三条第一項の規定により徴収すべき所得税の額は、次の各号に掲げる賞与の区分に応じ当該各号に定める税額とする。
 給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者に対し、その提出の際に経由した給与等の支払者が支払う賞与 その賞与の金額の六分の一に相当する金額と当該通常の給与等の金額との合計額並びに給与所得者の扶養控除等申告書に記載された主たる給与等に係る控除対象配偶者及び控除対象扶養親族の有無及びその数に応ずる別表第二の甲欄に掲げる税額と当該通常の給与等の金額並びに当該申告書に記載された主たる給与等に係る控除対象配偶者及び控除対象扶養親族の有無及びその数に応ずる別表第二の甲欄に掲げる税額との差額に六を乗じて計算した金額に相当する税額
 前号に掲げる賞与以外の賞与 その賞与の金額の六分の一に相当する金額と当該通常の給与等の金額との合計額に応ずる別表第二の乙欄に掲げる税額と当該通常の給与等の金額に応ずる別表第二の乙欄に掲げる税額との差額に六を乗じて計算した金額に相当する税額
 給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者に対し、その年最後に支払う給与等が第百九十条(年末調整)の規定の適用を受ける通常の給与等であり、かつ、当該通常の給与等の支払をする日の属する月に賞与を支払う場合において、当該賞与を支払う日の現況によりその年中にその居住者に対し支払うべきことが確定する給与等(その居住者がその年において他の給与等の支払者を経由して他の給与所得者の扶養控除等申告書を提出したことがある場合には、当該他の給与等の支払者がその年中にその居住者に対し支払うべきことが確定した給与等で政令で定めるものを含む。)につき同条の規定を適用した場合に同条に規定する不足額が生ずると見込まれるときは、当該賞与について第百八十三条第一項の規定により徴収すべき所得税の額は、第一項第一号又は前項第一号の規定にかかわらず、これらの規定による税額と当該不足額に相当する税額との合計額とすることができる。

また、本件では問題とされていないが、源泉徴収義務においては、上記の条文が基礎となっている。種々の論点が有りうるものであるが、本件に関連するものとして支払うべき通常の給与等を如何にして捉えるべきであるのか、という点は法解釈において、上記、給与所得の範囲と整理され、源泉徴収義務の範囲を律するものとしてその意義が必ずしも明らかといえないものといえよう。この点も問題である。


さらに、本件では、事実認定における基本的な判断要素の一つとして、すなわち簿外資金に於ける経済的利益の性格を決定するものとして、使用意図・実際の使用状況による認定を行っている。具体的に本件では、当該金員が代表者の株式の購入・土地の購入などの行為に利用されており、その金員の利用意図が重要な判断要素となって、かかる簿外資金の金員としての経済的利益の存在、判断を決定すべきものとして議論されている。一般的に経済的利益の所得区分の性質決定において、このような利用意図・用途がメルクマールとして機能することが許容されるものであろうか。もちろん利用意図と実際の利用状況・用途は区分されるべきものであり、その性格も異なるものであるが、我が国の所得の事業所得や給与所得等は、法文の解釈上、、また、所得の区分の趣旨目的においても、所得の源泉の相違によって、租税の負担能力の相違があることに起因しており、具体的な基準としては、当該経済的な利益の利用意図や用途を一般的に活用しうるものではないものと考えられる。しかるに所得区分の判断、所得の性格の決定という段階においては、利用意図や実際の用途は一般的な判断基準・メルクマールとして機能するものと評価することは困難であろう。

我が国の所得税法が幅広い・包括的な所得概念をもって、幅広く課税所得を構成するものとしていることは周知の事実であるが、所得の区分を行う必要があり、その所得分類を決定する基準は重要である。この基準を明らかにすることが租税法解釈の重要なテーマであるが、このような納税者の主観的な意思に基づく、判断、事実認定を行うことは、必ずしも客観性を有するものとはいえず、上記のように所得の源泉に基づく、各所得の該当性判断を行う基準とは整合性が取れていないものともいえる。

本件では、当該金員の代表者による返済の意思があることをもって当該金員の貸付金としての性格の有無に対する主張として行われているが、このように、経済的利益・金員の利用意図、利用用途に基づく判断は主観性を帯びるものであり、事実認定として必ずしも当事者の意思を廃するものではないが、所得区分の問題ではなく、あくまでも所得としての該当性、、所得の帰属が如何なるものであるのかという判断過程において、経済的利益の利用意図や利用用途が考慮されるべきものであり、具体的な所得の区分・分類とは異なる議論であると理解されるべきであろう。

本件のような犯罪に基づく利得が受け手段階において所得を構成することは、法的な権利の確定等は存在しないものの、所得概念・収入すべき金額の解釈において所得税法の一般的な理解として否定されるものではないと考えられる。本件は法人において行われた行為によって発生した金員・経済的利益の費用区分が問題になったものではなく、当該金員が如何なる所得として理解されうるものであるのかという点が基本的な争点であり、給与等とその他の所得の区分が一義的には問題となる。従来より租税法務において、このような金員・経済的利益が代表者による利得として認定されていることは、本件の判断と整合的である。また、中心的な争点とは相違するが上記のように損金の該当性の問題は基本的に法人税法の別段の定め及び公正処理基準の問題であるが、本件のような事実関係においては、簿外の問題であり、そもそも公正処理基準の枠外として損金性が議論されるものではない。加えて公正処理基準はかかる適用を配する性格を有しているのかという点(特に違法経費に対して)も議論されるべき問題である。
本件の中心的な争点はあくまでも源泉徴収義務の有無という所得税法の議論であり、かかる点において複雑化しているものであるが、このような架空の取引による経済的利益の発生が、いかなる性格を有しているのかという点は租税法規における他の法規との重要な相違であることは留意されるべきであろう。また、所得・利得としての該当性と、所得の区分・分類は法理的には別個の問題であり、この点の整理も必要と考えられる(本件では貸付金と所得の区分として現れている)。

以上です。毎度のごとく論文Stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。