2017年3月6日月曜日

判例裁決紹介(平成27年9月3日裁決、弁護士費用の必要経費該当性)


さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成27年9月3日裁決で、課税訴訟を行った請求人が、当該訴訟に関して必要となった弁護士費用を必要経費として申告したところ、その算入が否認された事案です。

具体的には、事業を営む請求人が課税処分取消訴訟を提起したうえで、当該訴訟に勝訴し、課税処分の取消判決及び還付加算金を得た。かかる訴訟において請求人が支払った弁護士費用(約1,800万円)が、当該還付加算金を得るための必要経費であるとして申告したところ、当該費用は必要経費に該当しないとして否認されたため、その取消を求めたのが本件である。

本件は、上記のように、課税処分取消訴訟において勝訴した還付加算金を受け取った請求人が当該金員をいかなる所得として捉えるのか、それとも損害賠償の性格を有するものであり、非課税となるべきものと考えられるのか、という点がまずは問題であり、かかる所得への該当性が以下のように、肯定される場合に、この所得を得るための必要経費として訴訟における弁護士費用が含まれるのかという点が後発的な問題として中心となっている。課税訴訟における訴訟自体が珍しいものであり、当該訴訟に伴って還付加算金を得る機会は限定的であるため、その性格は必ずしも定かではないものと、法解釈上は考えられるところではあるが、さらに弁護士費用が事業所得の必要経費としてではなく、還付加算金という雑所得に関連付けられて議論されている点は興味深い。実務上は、本件のようなケースが非常に限定的であることであろうが、弁護士のような委任関係にある費用とその業務関連性、必要経費性を議論する上では参考となるものと考えられる。

第三十七条  その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

上記のように、必要経費は、そもそも原価等に該当しない場合、もちろんここで法が求める原価とはいかなるものであるのかという点は、必ずしも定かとはいい難いが、この原価等以外の費用に対して当該費用の必要経費該当性を判断するにあたっては、まずは直接性の要件が課せられるべきであるのかという点が議論されている。著名な弁護士会の費用が弁護士業務の必要経費としての該当性を有する場合があるとした判決以降も(当該判決では、最高裁に上告されているが却下されており、最高裁の判断はくだされていない)、種々の議論において、当該判決が一般性を持つのか否か、その射程範囲はという点が問題として議論されている。

このように、まずは直接性が一般的な必要経費において議論が遡上に挙げられるが、上記条文のように、私見としては当該費用が販売費その他所得を生ずべき業務について生じたものであるのかという点がまずは問題であり、当該費用と業務の関連性がまずは問題となるべきものと考えられる。すなわち、まずは、販売費等、所得を生ずべき業務とはいかなるものであるのか、という点が峻別されるべきものといえよう。つまりは、まずもって本件還付加算金が雑所得であるとした場合(本件でも争われているが、この所得が妥当であるのかという点も議論されている)、当該費用が販売費等、所得を生ずべき業務であるのか、換言すれば、原価等あるいは、販売費等のいずれに該当するのかという点が問題なのであって、まずは、その峻別が行われるべきであり、その以後において、一般的な経費において直接的な要件が課せられているのかという点が問題となるべきである。私見としては、一般的な経費においては直接的な関連性が問題となるものではなく、まずは所得を生ずべき業務がいかなるものであり、その業務との関連性が最終的には必要経費として肯定されるべきか否かという点を左右するものといえる。

業務という文言を文字通りに捉えると、継続的な意義を有する可能性はあるが、この点はまだまだ検討すべき点ではあろう。還付加算金がいかなる性格を持つのかという点はいかにおいて検討するが、当該弁護士費用は、課税処分の取消しにおいて必要な経費であり、還付加算金を直接的な目的とするものではない。本件は、弁護士費用が直接性を有していないとのことで、その必要経費性がないものとして判断しているが、私見としては、結果には賛意を示すものの、間接的な経費への該当性の観点からの判断を行う余地はなかったのであろうかとも覚える。

当該弁護士費用が直接的に発生したものは、あくまでも訴訟の目的(本件では、課税処分の取消)であり、還付加算金を得ることが目的ではない。この点が支出と結果の変動が対応している、すなわち、業務との直接的な関係性が否定されているが、この判断の枠組みが妥当であるのかという点が問題。私見としてはこのように、行為の目的と所得等の目的を検討することで主観的な納税者の意思を反映させ、必要経費性を判定することは租税法の基本的な要請に合致するのかという点は疑問を覚えるところではあるが、客観的に確認できるものであれば、一定の合理性は担保されるものともいえよう。訴訟という業務にかかった費用が当該弁護士費用であり、還付加算金を得る業務ではないものという判断が行いうるところではある。この場合、還付加算金をうる業務が何であるのかという点は検討されるべきではあるが、訴訟において主たる目的物ではないという点では、偶発性を帯びていることも留意されるべきである。このように行為や業務の目的が必要経費該当性を判断する上で重要な枠組みとなっている点は本件の特徴であり、興味深い点であろう。

また、本件でも主張されているが、還付加算金が損害賠償の性質を帯びているとの考えもありうる。課税処分に伴い発生した金員負担をカバーする負担であり、この損害賠償としての性格を持ち得ないと必ずしも否定することは一概には言えない。一律に否定することも困難であるが、まずもって所得税法が規定する非課税所得としての損害賠償金がいかなるものであるのか、いかにしてその金員が非課税となりうるのかという点が明確にされるべきものである。すなわち、還付加算金は利子としての性格や損害賠償など複合的な性格を有する可能性があり、実務上もその所得の性格が必ずしも明示的ではないものもありうる。このような場合、いかなる性格を有するものであるのか、いかにして判断するべきであるのかという点は法解釈論として重要な課題であろう。

損害賠償が非課税とされている趣旨も必ずしも定かではないが、この点からも損害賠償がいかなるものであるのか、という点は検討されるべきではないだろうか。

このように、問題となった金員ないかなるものであるのかという点は、本件の判断の起点となるべきものであり、単に利子であると捉えるものではなく、いかなる性格を主として帯びているのか所得の性格が議論されるべきである。

また、別件として、請求人の主張にも見られるように、法人税とのアンバランスが存在するという指摘がある。すなわち、法人税の損金計上においては、本件のような金員は性格上、損金を構成するものと考えられるが、所得税法では異なるというものである。この点につき、たしかに法人税法と所得税法は、その基本的性格として、一定期間の所得を課税対象とする点では共通しており、適正な所得を把握し、租税負担を求めることは、課税負担の公平性に合致する点は当然に考えれられる。しかしながら、所得税法は基本的に法人と異なり、自然人をその対象とした課税であり、法人とは異なるものである。特に家事費等が観念されうる自然人において、法人と衡平を図ることは必ずしも妥当ではない。立法論としては可能性はあるものともいえようが、課税処分の取消訴訟を取り上げて、特段の扱いをすべき理由を見出すことは困難であり、また、民事法の損害賠償の性格と課税の関係性に関しても広く検討する必要性が発生するものともいえる。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。裁決

2017年2月22日水曜日

判例裁決紹介(推計課税の合理性、消費税における推計、平成28年5月9日裁決)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介作成しました。今回は平
成28年5月9日裁決で、マッサージ店に対する推計課税の合理性及び消費税法の課税標準の推計が争われたものです。
最近は判例も少なく、実務的にも、推計課税は抑止的な規制としての役割が中心になっているものかと思われるところですが、最近の事例として興味深かったので、取り上げました。

具体的には、個人事業としてマッサージ店を営む請求人が、帳簿や計算書類を作成・保存していなかったところ、課税庁がフェイスペーパーの使用量を基準として所得税の推計課税及びこの認定に基づく、課税資産の譲渡等があったとして消費税を、更に、帳簿等の保存がなかったとして、仕入税額控除の適用を否認した事例である。判断としては、課税庁の主張を全面的に認めるもので、私見としても合理的な金額の推計方法等に関しては妥当なものと捉えている。

一つ一つは、特に目新たしい論点ではないのではないような印象ももっているところではあるが、本件は資料不備に基づく推計課税につき争われた事案である。古くから租税法の課題として、修士論文の題材としても注目され、その議論が行われている推計課税の規定であるが、特にその課税標準の推計金額の合理性が、問われてきた、本件もその系譜に連なる事例である。

実務的には本来推計課税などあってはならない状況ではあるだろうが、合理的な所得水準を検討する上でも、また、反証の方法なども参考になるものであるだろう。おそらく、このような経理実態の企業はまだまだ存在しているのではないだろうか(実務家の意見を聞きたいとこ)。

まず、判断では、中心的な争点としてかかる業態における金額推計方法の合理性が問題となっている。下記条文にあるように、推計課税の規定は、課税標準樽所得金額を推計し課税を行う非常に侵害性が強い規定であり、基本的に侵害規範としての租税法の性質から考えて、租税法律主義や、適正な手続を保証する憲法上の原則に抵触する可能性があるものという従来の考え方に則り、特に条文上の制限はないものの、その適用は、一定の必要性がある場合に限定される解釈が原則的な考え方であろう。本件も、帳簿等の保存がまったくないことをその適用事由として捉えている。

また、推計課税の根拠も上記のような性格から鑑みつつも下記のように納税者間の公平性の担保をその目的として理解しているものと判断される。この点は従来の議論より明らかであり、推計課税の趣旨は、見解としてその相違はないものと考えられる。多くの議論はこの適用関係にまずはその争点が焦点が当てられる。
本件もかかる判断を踏襲しており、適用に関しては、妥当なものであるとの判断を行っている。あくまでも推計課税は、納税者間の公平性の担保がその基本的な趣旨であることは、前提として理解されるべきであろう。租税負担の公平性ではないことも留意すべきである。

そこで問題となるのがこの出家によって導かれる金額の合理性である。いかなる程度の金額の推計であれば、その合理性が認められるのかという点が必ずしも明らかにはなっていない。実額反証の問題とも関連するが、基本的に課税庁ができる規定を適用していく関係性からこの推計の合理性を立証すべき責務を負うべきものである。しかしながら、この点はいかなる程度の合理性を提示すれば良いのかという点は条文上は必ずしも明らかではなく、問題といえる。

本件ではこの点につき、下記のように、経験則に照らして合理的であれば足りると解している。

「推計課税が実額による課税方法が採れない場合に納税者が不当に納税義務を免れることがないように認められる課税方法であること等に鑑みると、推計課税における推計方法は、経験則に照らして合理的なものであれば足りると解するのが相当である。
また、消費税法も、消費税の課税資産の譲渡等の対価の額を上記のような推計の方法により認定することを当然に許容していると解される。」

確かに、実額課税が不可能である場合において適用される制度が推計課税であり、我が国の所得税が申告納税制度を前提としている以上、実額による反証は可能であるとしても、金額の合理性は、相当程度の確度で保証されているべきものと解することはだろうではない。従って実額との対比はほぼ意味がないものであるとは考えられるが、この点は推計の合理性が不充分であることを補填するものではない。この点は従来の学説等と比較してもほぼ通説として捉えて良いと考えられる。

しかしながら本件では経験則という判断を基準として、その合理性を検討しているが、この経験則とはいかなるものであるのか、という点は定かではなく、個別具体的な合理性を検討する基準としては明確ではないものと考えられる。
この点で単に経験則に合致して合理的であれば足りるとする判断は疑問がある。

この推計を行う、一部経費の存在や比準対象、指標等の合理性は法解釈上の問題として捉えられるべきである。私見としては、類似の金額の推計を行う移転価格税制の金額算定が参考になるのではないかと考えられる。この制度の整合的な立証が最も従前から金額の合理性を算定する上で蓄積があり優れている。類似業種との比較等の手続的妥当性が重要なものとなりうるのではないだろうか。近年は、移転価格税制もベストメソッドを追求する基本的な姿勢を有しており、その適用にあたっては合理性の実証が不可欠である(この点で、負担が重く、忌避される傾向も指摘されるが)。この点は立法によるべきものであるのかもしれない、また、移転価格税制が想定する状況と推計課税の状況は必ずしも同一ではなく、また、所得税と法人税においても相違するところではあるが、両制度ともにいずれも課税負担の公平性、納税者間の公平性を基礎とする制度であり、立証方法の類似性は、図れるものとと考えられる。単に売上等を推計する手法の合理性が追求されるべきものと捉えることは、租税法の基本原則がから鑑みて、疑問を覚えるところではある。比較対象の選定等、より精緻な推計の合理性を検証する手法が法令の要請として理解されるのではないだろうか。いずれにしても経験則という不確かな基準によって推計を行うことは、公平性の実現・実効性の確保という点から妥当性を保証されるとしてもよりその手続的な妥当性の追求は検討されるべきものであるだろう。

本件でも一部経費の実在性を考慮するなど、その合理性を根拠付ける精緻さにかける点は否めない。他の推計方法との比較検証や比較方法、比準対象の選定プロセスの合理性がなくして、他の相当性の判断と同様に金額の合理性を、ベストな方法として主張されうるものではないだろうか。移転価格税制もベストメソッド方式に移行してから、その合理性をいかにして検証していくのかという点はまだまだ事例も少なく、途上である。合わせてこのような金額の合理性を如何にして検証していくのかより検討が必要と考えるべきであろう。

第一五六条 税務署長は、居住者に係る所得税につき更正又は決定をする場合には、その者の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその者の各年分の各種所得の金額又は損失の金額(その者の提出した青色申告書に係る年分の不動産所得の金額、事業所得の金額及び山林所得の金額並びにこれらの金額の計算上生じた損失の金額を除く。)を推計して、これをすることができる。

また、本件では、上記所得税における推計課税と合わせて、消費税においても課税標準たる課税資産の譲渡等につき、ほぼ上記と同様な認定方法において、推計を行った上で、さらに、帳簿等の保存がないことから、その仕入税額控除を否定している。
帳簿等の保存が欠如していることから、従前の判断に則り、仕入税額控除を否認することは、整合的であり、疑念の余地はないものと考えられるが、課税売上、すなわち消費税法における課税資産の譲渡等をこのような形で認定することは、妥当であるのだろうか。

推計課税の適用に関しては、消費税法において、所得税法や法人税法と異なり、その根拠規定が存在していないことは周知のとおりであり、課税標準という非常に重要な課税の事情を、法規の根拠なく、認定することは租税法の基本原則から考えて、許容されうるのであろうか。

上記判断では、特に根拠を示すことなく、おそらくあえて、表現すれば納税義務者間の公平性に根拠づけられるものと考えられるが、上記のように、当然に許容しているものと解されるという判断には疑問の余地がある。
所得税法の規定による、認定方法を、たしかに課税標準としては、所得と、課税資産の譲渡等は類似している可能性も高く、帳簿方式を採用して相当程度に連結していることは、否定のしようがないところではあるが、課税資産の譲渡等と総所得金額では、その概念として意味するものは異なっており、所得税法における推計規定の存在をもって、いかに推計課税が、納税者の責めに帰すべき事由から実額での課税が困難である場合に、納税義務者間の公平性を担保すべく設けられた制度であるといえど、かかる連結した推計措置は、如何にして租税法の基本原則から肯定されうるものであるのであろうか。

もし、推計課税を租税負担の公平性を担保する本質的な制度であり、所得税法や法人税法に於ける規定ぶりは単なる確認規定と考え、消費税法においてもその適用が可能であるとした制度と捉えることができるとした場合、このような連結した推計は行われうる可能性は否定し得ない。しかしながら、従前、このような推計課税に対する基本的性格は、その適用が限定的に捉えられてきた、適正手続の観点から、上記のような考え方に依拠するならば、創設的規定と解するべきであろう。もし確認的な規定であるとした場合、公平性の要請と租税法律主義の要請との衡平において、公平性に重きをおいた判断となる。

判断ではわずか二行でその適用が当然に許容されるべきものと言われているが、課税資産の譲渡等と所得の概念的相違や推計課税制度の機能等から考えても、いかなる根拠をもって当該消費税法における課税標準の推計に根拠付が可能であるのか議論のすべきものと捉えるべきであろう。

消費税は、今後我が国の租税体系において税率の上昇もあり、その重要性が高まることは避けがたく、単に税率や適格請求書等の構造のみがその焦点となるべきものではない。所得税法や法人税法が推計課税の制度を立法において明確に規定しており、滞納等の発生を防止し、より適正な納税環境の構築、徴収手続の実現に配慮している点を考慮すべきであり、より実効性のある、推計、調査等の手続規定を整備すべき段階にあるのではないかと考えられる。もちろん、私見としても海外での消費税における不正事例の発生もあり、消費税法においても推計課税の規定の存在を立法において規定する可能性も考慮しては良いのではないのかという考えであるが、もちろん、現行においてなぜ、所得税法や法人税法と異なり、推計課税をおいていないのかという点は、インボイスによる相互牽制性等も踏まえ、当該理由も検討すべきである。単に本件のように当然のような理解を行うことはリスクがあるのではないかといえる。

このように、消費税法においても推計課税を適用することは立法根拠という点では必ずしも明らかではなく、疑問の余地、リスクが有るものであるが、実務ではこのような措置は支配的な考えなのであろうか(この点は実務家の意見を聞いておきたいところ)。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。裁決

2017年2月7日火曜日

判例裁決紹介(平成28年4っ月25日裁決、相続税申告におけるお尋ね文書への不実記載と重加算税の賦課)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成28年4月25日裁決で、相続税の申告に関する重加算税の要件としての仮装隠蔽行為の発生につき、いわゆるお尋ね文書に不実の記載を行った事例です。
以下論文調で書きます。

具体的には、本件は請求人たる相続人が相続税申告を行わず、法定納期限等後に行われた課税庁からのお尋ね文書に対して相続の発生によって取得した財産のうち、一部預金口座に関して、記載せず、課税庁による調査の申告によって一部ずつ、その口座の存在を認めるような行為を行っていた事案が、問題となったものであり、課税庁が本件において、相続財産の把握につき、困難な状況を生じさせたとして重加算税の賦課決定処分を行ったところ、これを不服として提起されたものである。

判断は結局として課税庁の主張を認めることなく、本件の事実関係にもとづく、総合的な判断で、重加算税の発生要件のうち、当該時点での隠蔽行為に対する確信的な意図の存在を認めがたいとして、退けたものである。
私見としては事実関係にもとづけば、納税申告を行わず、さらに不実の記載によって仮装隠蔽の意図は明確であるようにも評価されうるものであると考えているところではあるが、本件は最近、特に平成22年度税制改正による、調査手続の改正後利用が急増している、税務署からのお尋ね文書の存在に関して、言及した珍しい事案であり、その法的な位置づけ、調査手続における意義について検討する上で有効な存在であるだろう。

まず、重加算税の要件への合致に関しては、法解釈仮装隠蔽の発生に関して、確定的な意図の存在を要するものと解している。これ自身も議論の余地があるところではあるが、本件は通説として、確信的な意図の存在を重要視する構成要件を求めている判断を前提として本件が形成されている。この点については、重加算税の要件をより吟味すべきものであるが、私見としては申告納税制度を前提とする以上、仮装隠蔽の行為が発生している事実関係が重要であり、法は意図の存在を確信的なレベルで求めているとは理解し難いところもあるとも考えられる。重加算税の位置付け自身が多分に懲罰的なものである以上、その要件はいかなるべきものであるのかという検討は重要な課題であるといえよう。

また、前述の通り、本件は最近とみにその利用が急増している、納税に関する税務署からのお尋ね文書の発送に関するものであり、かかる書類への記載の不実が問題となったものである。実務上この文書の存在をいかに捉えているのかという点は、課税庁、納税者、専門家の間でも大きな議論は見当たらないが、具体的にどのように処理して対応しているのかという点は、適正手続の観点からもさらに、近年の情報化に対応した調査手続の変化という点からも注目に値する。

そもそもこのような文書の存在は従前から存在してたものであるのであろうか。この点は特に文献等の記載がないため、実務家による意見を待ちたいところではあるが、そもそも、このようなお尋ね文書を発送することにつき、いかなる手続規定、法的根拠に基づいているのか定かではない。もちろん、法的な根拠が明確ではないから、このような文書による情報収集はすなわち違法性を有するというような短絡的な議論は行うつもりはないものの、かかる文書の法的な意義は、調査手続における位置付けはいかなるものであるのかという点は検討されるべきものであろう。法的な根拠が存在するものであれば、その性格が当然の如く議論されるべきものであるが、現状においては中途半端な位置づけにあるように捉えられる。かつての納税申告に関しての修正申告の慫慂が勧奨という形で、国税通則法に明記されたように、実務における位置付けや資料入手の重要性等、を考慮して更にその文書の発送行為の意義が検討されるべきと考えられる。

私見としては、まず、この文書の発送による資料の収集が質問検査権の行使との関係でいかなる相違を持つか否かが検討の素材となるべきものである。文書の受領側である納税者や専門家がいかに捉えているのかは定かではないが(おそらく、この相違は特に行われておらず、質問検査と同様に解答すべきものと捉えているのではないだろうか)、国税通則法において質問検査権を規定する第74条の2以降の規定において、定める質問検査権の行使と同視されるべき部分と、その相違点については、件t脳を行う必要がある。

質問検査権の要件たる調査における必要性やおそらく事実上受忍義務の発生等は考慮されていないものと捉えられ、従って、当該お尋ね文書の発送は、質問検査権と必ずしも同一の性格を有するものではないと捉えるべきであろう。もちろん場合によっては質問検査権の行使と同視される可能性も否定し得ないが、その場合は、納税者に対する実際の資料入手であり、実地の調査との相違が問題となることであろう。いずれにしても、このようなお尋ね文書の発送の目的や必要性との関連から概念的に整理されるべきものである。従って、お尋ね文書の性格は現時点では複合的な意味を有している可能性も否定し得ない。

また、法に定める「調査」について、その多様性から考えて、本件の資料入手が調査に該当することは肯定されうるものであるともいえる。

本件の起点は、重加算税の要件たる意図の存在を立証認定する際に、本件の調査過程で、当該お訪ね文書への不実記載(この不実記載がいかなる要因で発生したものであるのかが問題ではあるが)が、スタートとなっている。最終的に本件では、意図の存在を調査段階での他の行為等によって総合的に判断し、積極的に仮装隠蔽行為を行っているものとは評価し難いとして重加算税の発生を否定している。その意味で、事実関係に基づく判断であり、お尋ね文書以外の状況も加味し最終的な判断が導かれたものであり、衡平な判断であるとも評価できるだろう。上記のように、当該文書に対して不実の記載があった場合に、法的に調査手続においてどのような意義を与えら得るべき存在として考えられるのか、かかる意味で本件は興味深いものであろう。

お尋ね文書自身の意義・性格自体は、上記のように調査手続の一環を構成する可能性がある以上、場合によっては課税処分の前提として構成されるべきものであり、純粋な質問検査権や課税処分の目的以外の資料の入手のための調査とは一線を画するものであると捉えるべきであるが、まずは従来課税手続の中核たる質問検査権の行使との相違が、いかなる方法によって整理されうるものであるのか、検討される必要があろう。本件では、当該文書に不備があったことを直接的な仮装隠蔽の資料として主張しているが、法的根拠やその性格が曖昧な存在は課税処分の効力に疑義をもたらしうるものであり、間接的な資料とはなるであろうが、その性格がまずは分類整理される必要があるように思われる。

係る検討を通じて、まずは、このお尋ね文書における性格を議論し、立法論として検討すべき点であるだろう。

以上、毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。
裁決

2017年1月25日水曜日

判例裁決紹介(平成28年6月8日、登録免許税の価格算定と火災損失)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、
平成28年6月8日裁決で、登録免許税の課税標準となる価格算定が問題になった事案です。


具体的には本件は、請求人が訴外会社より取得した土地建物につき、その所有権移転登記を行い、登録免許税の納付を行ったところ、この取得した建物等の一部に、取得前(数年単位で)に発生した火災による損失が存在しており、しかも修繕等は行われておらず、この登録免許税の課税標準を構成する価格を固定資産税の課税台帳価格(平成26年基準価格)に基づいており、かかる台帳価格には当該火災損失は反映されておらず、従って、当該価格は過大であり、納付した金額の還付を求めたところ、請求人の申請を認めなかった課税庁の処分を不服として争われた事案となる。
なお、この問題となった当該建物等の固定資産課税台帳の価格は、平成27年度において変更修正されており、火災損失を反映させた価格となっている。すなわち事実関係として固定資産税の課税を決定する台帳価格において不備が見受けら本件は、登録免許税の課税標準が争われた珍しいケースではあるが、事実上以後の時点において課税台帳の価格が修正されており、通常の時価に関する争いとは異なり時価自信の評価額算定とは異なる争点をもっている。基本的には課税台帳の修正と登録免許税の課税のタイミングのズレが問題の原因とも考えられる。れたことが本件の起因であり、当該建物の実質的な価格は、この火災損失を反映させた価格であることが争いのない前提となる。
本件は、登録免許税の課税標準が争われた珍しいケースではあるが、事実上以後の時点において課税台帳の価格が修正されており、通常の時価に関する争いとは異なり時価自信の評価額算定とは異なる争点をもっている。すなわち基本的には課税台帳の修正と登録免許税の課税のタイミングのズレが問題の原因とも考えられる。この点において実務上も固定資産税評価における影響を考慮する際の参考となるだろう。

登録免許税の課税標準は下記のような法規定において律されている。

登録免許税法(不動産登記に係る不動産価額の特例)
第七条  新法別表第一の第一号に掲げる不動産の登記の場合における新法第十条第一項の課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該登記の申請の日の属する年の前年十二月三十一日現在又は当該申請の日の属する年の一月一日現在において地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第三百四十一条第九号(固定資産税に関する用語の意義)に掲げる固定資産課税台帳に登録された当該不動産の価格を基礎として政令で定める価額によることができる。

登録免許税法施行令
 法別表第一の第一号に掲げる登記で不動産の価額を課税標準とするものについて登録免許税を課税する場合において、登記官が当該登記の目的となる不動産について増築、改築、損壊、地目の変換その他これらに類する特別の事情があるため前項の規定により計算した金額に相当する価額を課税標準の額とすることを適当でないと認めるときは、同項の規定にかかわらず、法附則第七条に規定する政令で定める価額は、同項の規定により計算した金額を基礎とし当該事情を考慮して当該登記官が認定した価額とする。

第十条  別表第一第一号、第二号、第四号又は第四号の二に掲げる不動産、船舶、ダム使用権又は公共施設等運営権の登記又は登録の場合における課税標準たる不動産、船舶、ダム使用権又は公共施設等運営権(以下この項において「不動産等」という。)の価額は、当該登記又は登録の時における不動産等の価額による。この場合において、当該不動産等の上に所有権以外の権利その他処分の制限が存するときは、当該権利その他処分の制限がないものとした場合の価額による。

すなわち、客体たる登記時点における不動産等の価額がその課税標準であることを原則としながら、本則規定ではなく附則規定によって、固定資産税の課税台帳に登録された価格を基礎として算定することを認め、できる規定として記述し、特別な事情の有無をもってその台帳価格に基づく価格の修正を認める法規定になっている。

地方税である、固定資産税に対して国税である登録免許税において共通した課税標準を用いていることは、両税が共に不動産等の価額をその対象としており、実務上、課税の執行面を考えれば、固定資産税と共通した台帳価格を利用することは合理的であり現実的な判断であるだろう。加えて、登記官の裁量によって課税標準となる不動産等の価額が異なることは納税者によって不合理であり、かかる意味でも統一的な台帳価格をベースとした価額判定の枠組みは重要な意義を有するものと考えられる。

しかしながら、固定資産税と登録免許税が不動産取得税も含め、土地等をその客体とする租税であることは共通しているが、その課税根拠や趣旨目的、課税形式等は相違がある。特に流通税である登録免許税と財産税である固定資産税はその形式を異にするものであり、かかる法規、課税根拠の相違等を考慮せず、一律に固定資産税台帳価格に依拠することは問題であり、上記規定もそのようなタイミングのズレ等を考慮した結果であるだろう。このように考えれば、この例外的な評価を許容する理由とは如何なるものであるのかという点を、法解釈により明らかにすべきものであるといえよう。

従ってまずは、登録免許税の原則的な課税標準である不動産等の価額が如何なるものであるのかという点が問題となる。この基本的な理解があって初めて、例外的な許容されうるべき価額が求められるべきものと考えられる。法規によれば、不動産自身の価額と登記の時点というタイミングが問題となっており、その具体的な二要件の充足が過大。特に流通税として登録免許税が財産の移転登記の時点を事実として捉え、担税力を見出していることからも一定の時点に於ける価額の算定が問題となり、この点で固定資産税台帳価格とのズレを想起するべきものである。従って、法が記載するように、一定の財産評価上のマイナス項目を捉え、修正を行うべきものと解されるところである。このように考えると、当該マイナス項目が如何なるものであるのかという点ももちろんではあるが、その発生の時期がいかなる時点で発生しているのかという点も重要と考えるべきである。
本件では、過去の災害の損失がこの特別な事情に該当しないとしているものの、いかなる理由でその該当性を否定したのかが必ずしも定かではないものの、例示にある事例から特別な事情を質的量的な形状の変化がある場合であると解しており、この妥当性が問われるべきものである。登録免許税が大量に行われる不動産関係の登記関係の変動を捉え課税対象としている以上、早期の課税関係の安定のためにも、客観的な・かつ明白な形状の変更が価格修正の事由であると判断すべきであり、かかる点からは過去の災害の損失はその該当性が否定されうるべきものであるのであろうか。
また、前記のように、係る事由の発生がいかなるタイミングであるのかという点も問題となる。本件では、火災の損失は、登記が、若しくは所有権移転登記を行った時点や問題となる台帳価格が付せられた時点以後の事案ではない。特別な事情と捉えるべきものがいかなるタイミングで発生したのかということを問題とする場合において、本件のように台帳価格の付与と移転登記のタイミングの間で限定的に捉えるべきものであるのか、という点は、検討すべきであろう。私見としては、法文上、登記目的の対象となる不動産等に対する減額修正要因の発生が登記の時点で発生しているのか否かが問題であり、台帳価格の付与との間でタイミングを限定的に捉えるべきものではないと解される。修正を登記官の最量に委ねている以上、客観的な事実関係の発生と価格の因果関係が問題視すべきものであり、台帳価格の付与時点との間で発生した特別な事情を限定的に解釈することは、妥当ではないのではないだろうか。

但し、登録免許税の趣旨が必ずしも明らかであるとはいえず、他の税目と客体における二重課税、さらには担税力という概念自体が必ずしも明確ではなくという点も留意されるべきものといえる。

本件で問題となった評価においては、上記に定める特別の事情に過去に発生した災害の損失は該当しないとして判断しつつも、最終的には、請求人の主張を一部認め、そもそも災害の損失を反映していないということで、不動産等の価額に該当しない部分があるとしている。すなわち事実上、登録免許税の課税標準を台帳価格によるべきものと解したものの、施行令が定める法が求める台帳価格からの例外的な評価に該当しない場合があるものとして判断している。この点は法が要請する、例外的事情である特別な事情の枠外で判断しており、法的な根拠が問われるべきものではないだろうか。例外的規定の他にさらに他の裁量的な判断の余地を認める判断は予測可能性や法的安定性の観点から許容されるべきものと考えることは違和感が拭えないところではあるが、かかる判断が是認されうるとした場合においては、統一的な視点から台帳価格によるべき合理性を重視し、固定資産税における台帳価格の重要性が際立つものであるだろう。

この点は法が、原則として、不動産等の価額として登記時点の時価をその基礎としつつも、附則によって当分の間、できる規定として、台帳価格によることを認めている法令の基本的な関係が事実上、の評価の減速を修正しており、実務上、台帳価格を原則的な取扱としている点からも理解される。私見としては、課税標準たる重要な課税要件が、できる規定として不安定な状況に置かれている事自体が、(そもそも、当分の間とはいかなる意義だろう。)問題の原因なのではないだろうか。

以上、毎度のごとく論文Stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

2017年1月16日月曜日

判例裁決紹介(平成28年1月27日裁決、第三者換価による相続税の延納許可取消)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は平成28年1月27日裁決で、第三者換価による相続税の延納許可が取り消された事案です。

事案としては具体的には相続人たる請求人が相続税の申告につき相続税法上の延納許可申請を行っていたところ、かかる延納許可につき、提供していた担保物である土地に対して、かかる相続税申告に関して第三者である固定資産税等の地方税当局が財産の差押、強制換価手続を実施した事実関係において、下記相続税法40条2項に基づき課税庁が延納許可の取消処分を行ったところ、これを不服として提起された。

 税務署長は、延納の許可を受けた者が延納税額(当該延納税額に係る利子税又は延滞税に相当する額を含む。)の滞納その他延納の条件に違反したとき、その者が当該延納税額に係る担保につき国税通則法第五十一条第一項(担保の変更等)の規定による命令に応じなかったとき、当該延納税額に係る担保物につき国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)第二条第十二号(定義)に規定する強制換価手続が開始されたとき又は当該延納の許可を受けた者が死亡し、その相続人が限定承認をしたときは、その許可を取り消すことができる。この場合においては、当該強制換価手続が開始されたとき及び限定承認をしたときを除き、あらかじめその者の弁明を聴かなければならない。

本件で争点とされた法令解釈としてはまず、第三者である地方自治体の強制換価手続の実施が、上記規定に定める強制換価手続に該当するか否かが問題となったが、

十二 強制換価手続 滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)、強制執行、担保権の実行としての競売、企業担保権の実行手続及び破産手続をいう

上記のように国税徴収法が規定しており、誰が主体であるか必ずしも明確ではないと評価できるところではあるものの、本件取消の趣旨が延納制度による納税者の保護と、租税徴収の実効性の確保のバランスから設けられていることから鑑みれば、本件の判断のように課税庁以外の第三者による強制換価手続の実施であっても対象と解するべきであると考えられる。

また、上記規定ができる規定である以上、具体的な取消の実行に当たっては課税庁にその裁量があるものと解され、上記本取消制度の趣旨目的から行っても事実関係を考慮して延納税額とのバランスなどへの配慮がおこなわれているものと考えるべきである。但し合法性の原則や租税負担の公平性の観点からはいかなる場合において、その裁量を発揮されるべきであるのかという点は解釈による検討が必要な項目といえよう。

かかる点からは、本件のように当該取消に対する違法性の判断においては、当該取消において裁量権の逸脱があったことが、濫用と評価されるべき状態にあることが必要であると考えられ、本件の問題の中心的な部分を構成しているものと評価される。従っていかなる場合において、その裁量の濫用を判断すべきであるのかという点が問題であり、かかる判断基準をいかに考えるべきであるのかという点が検討対象といえよう。本件においては、単に延納税額の金額部分のみがその判断基準としていかなる程度の金額割合が残存しているのか、という点から判断を行い、結果としてかかる取消の合理性を判断しているが、かかる判断過程が妥当と言えるのか、私見としては本制度の、上記のように取消の制度趣旨や目的を基本的に評価した上でその濫用性を判断すべきものであり、かかる金額の判断のみでは必ずしも妥当と捉えるべきものといえないのではないかと捉えている。

さらに、この強制換価手続に対しては民事法における財産差し押さえの効果との関係も比較検討すべき可能性もありうる。

また、本件では直接の争点とはなっていないが、かかる処分の前提として上記規定は、弁明を聞くべきか否かという点も問題となる。立法論と捉えるべきかもしれないが、上記規定は、明確に強制換価手続の開始はその弁明の機会を設けることを要件とはしていない。あまり研究のある分野ではないが、租税法制度における弁明制度の意義とはいかなるものと捉えるべきであろうか。いかなる趣旨に基づくものであり、いかなる要件を満たすことが弁明の実を達成することになるのかという処分の前提となる制度的な性格、位置づけなど、検討すべき課題ともいえるだろう。他には法規にあるようにあらかじめとあるがいかなる時期等であるべきかなども解釈上の問題となるだろう。

いずれにしても本件は、延納許可の取り消しに関する事案であり、非常に珍しい事案。基本的に問題となった処分自身は法の規定の枠内であり私見として本件判断は妥当であり問題となるべきものであるとは捉えがたいが、一般的に納税者の救済・保護をその趣旨、背景とする延納制度であると考えるならば、納税者以外の第三者の財産差し押さえの効果が国税に影響するという本制度は、納税者の救済を求める法的な期待に合致するものではないとも評価しうるところではある。
しかしながら、延納制度が担保物の提供を明確にその要件としており、納税者の便宜や救済と徴税の実効性を高めることをバランスさせた制度が延納制度の趣旨であると捉えるならば、本件のように第三者による行為であっても、本件のように延納制度の取消処分の対象となるべきことは、徴税への配慮を考慮して一定の合理性を有しているものといえるのではないだろうか。かかる取消は、いずれにしても納税者の財産状態に非常に大きな影響を与えることは明らかであり、また、実効性を担保するためにも一定の裁量権を課税庁に付与していることからも、かかる取消の要件は明確にすべきものと考えるべきである。立法論としては、たとえ客観的な第三者による換価手続の開始であっても、弁明制度の対象して一定の機会を与えることも、適正な手続きを要請する観点からも制度的には合理性を有している可能性も否定できないのではないかとも考えられるところであるが、法令解釈としては明文の規定からも、弁明の機会の保障はないものと考えるべきものといえよう。

以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。
裁決

2017年1月7日土曜日

判例裁決紹介(後発的事由、平成28年1月12日)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成28年1月12日裁決で固定資産評価に伴う誤りを市区町村より通知された納税者が、これに基づく相続税評価額が過大となったとして課税庁に更正の請求を申し出たところ否認されたため、これを不服として行われた裁決事案です。

具体的には、請求人たる被相続人が相続により土地を取得した際に平成16年の固定資産評価額に基づき、相続税評価額を算出し、相続税確定申告をなしたところ、平成26年になってこの固定資産税評価額が過大であったことが判明し、これを理由として更正の請求をなしたところ、当然に通常の更正の請求を機嫌は超過しており、下記の、後発的事由に基づく、特に判決等が確定したことに基づき更正の請求をなしたところ、これが認められなかったため、提起された事案です。判断としても課税庁の判断を合理的と判断しています。
本件に関する本申告がなされたのは平成10年台であり、明らかに旧国税通則法のタイミングでの事案ではありますが、国税通則法の改正により、期限の延長は行われたとしても、基本的にこの後発的事由の解釈に関しては、準用されていると考えられるので、現時点でも意義も有するものであろうかと考えられます。特に今回は固定資産税の評価誤りが原因であり、相続後、その固定資産評価が誤っていることは3年に一回の評価替えのタイミングでしか基本的に認識され得ないものと考えられるので、今後の更正の請求における後発的事由の該当性においては、参考になるものであろうかと考えています。

国税通則法施行令23条
その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき その確定した日の翌日から起算して2月以内(第1号)

上記のように本件の解釈上の問題としては、判決及び判決と同一の効力を有する和解その他の行為、特に後者において固定資産評価誤りに対する通知が該当するのか否かが問題になったものである。
本件は改正前の事案に関するものですが、基本的に国税通則法において、この後発的事由に関しては、継続しているものと考えられるため(異論もありえます)、これを前提として考える。

そもそも、更正の請求において期限制限が求められていることと、この後発的事由に基づく請求の例外措置を認めている趣旨は、納税者の保護の観点から、一定の事実関係の変更に伴い、課税の基礎事実の変更に納税者の帰責性ないものとして、これらを保護する趣旨で、更正の請求に対する期間制限による課税関係の早期安定と執行の便宜のバランスで解釈されるべきものと考えられます。この点が特に更正の請求において期限の延長が認められた現状において、バランスの変化が認められうる可能性があるところではありますが、単に納税者の保護を求めているものではなく、一定の制限が図られていることに代わりはないものと考えられます。私見としては、申告納税制度を前提とする限りにおいて、このような期間制限とのバランスの観点から趣旨を理解することは合理的であると考えていますが、納税者に対して帰責性の有無まで求めるかどうかは法的な根拠がいかなるものであるのかという点からも議論の余地があるように考えられる。このような理解からは、まずはその文言の解釈において租税法の基本原則に則り拡張的な解釈は排除されるべきものと捉えられるかもしれません。この点では

具体的な解釈としては、判決という文言の意義に関しては、明らかであり、民事上の判決という司法判断、裁判所に基づく判決であることは、いうまでもないことであろうかと考えます。問題となるのは判決と同一の効力を有する和解その他の行為というmんごんです。かつて裁判例においても、この部分につき青色申告の取消処分等が対象となったこともあり、いかなる解釈が成り立つのかという点が問題です。判決の効力との同一性も問題である。

課税庁としては、課税要件に関する事実関係は非常に多様な性格を帯びており、この多様性から、単に事実関係の変更を考慮するのではなく、判決の文言を受けて司法判断、裁判所の介在を一つの要件として解釈して、本件の通知が判決等に含まれないものと判断して、更正の請求を退けているなぜ、裁判所の介在を要するべきかという点は、納税者の保護とのバランスから、あるいは合法性の原則から鑑みて妥当な判断とも言えますが、明示的に司法の関与、介在を本文から明らかということは困難とも評価できます。上記のように裁判例において緩やかにこれを介して、課税庁による処分もその対象に含んでいるような事案も存在し、この範囲が法解釈上問題と言える。

私見としてはその対象は、判決から考えて、その同一の効力を有するか否かという観点から判断されるべきであり、判決その他の効力をいかに捉え、その同一性を評価しているのかという点でこの判断は疑問を持ちます。また、法令においては、この判決等に対して課税標準等の基礎となった事実として一定の限界を付していることも着目されるべきでしょう。この基礎となる事実がいかなるものであるのかという点は、あまり問題とならないですが、必ずしもその範囲がいかなるものであるのかという点は定かではなく、議論されるべきものと考えるべき。

このように、法規の趣旨目的と規定ぶりから考えるに、判決等の意義は、その対象行為がいかなる性格を有するのか、その効力がいかなるものであるのかという点からから評価されるべきものであり、馴れ合い判決等の存在も考慮するならば、必ずしも裁判所の介入、介在のような形式的な判断過程ではなく、もちろん裁判所の介在が結果として法が求める効力の同一性を担保することになる可能性も高く、具体的な判断基準の一つとしては理解されうるが、まずはその対象がいかなる効力を有するのかという評価、行政法上の評価から判断されるべきものであるだろう。法令解釈によって判決との同一性をいかに求めるのかという基準が明らかにされるべきものといえよう。

この点が本件でも議論されるべきである。固定資産評価の見直しは、第三者である市町村長という一定の客観性が確保された行政機関による行為であり、国税に関する課税庁の判断ではないが、確定判決と同一の効力を有するものと評価することは必ずしも不合理であるとは言えない。立法論として対象としても問題は少ないのではないだろうか。少なくとも納税者にとって、国税地方税の区分、国と地方自治体の相違は大きな関心ではなく、納税者の予測可能性を考慮するならば、固定資産評価における訴訟レベルまで要求することは困難ではないか(少なくともこのような減額の通知が出た以上は訴訟において争うことは不可能である)。

現在のような更正の請求に関する期限の延長は図られた現在において、あえて、解釈上、従前よりも後発的事由を拡張して解釈する意義は乏しいとも考えられるが、相当期間の経過を伴うような立証は困難を伴うものであり、やむを得ない納税者に対する帰責性をもとに裁判所の介在や課税庁の判断に限定的に解するべきではなく、対象の効力を捉え、その判決との同一性を評価した上で、検討されるべきものであり、解釈の拡張性から問題が生じるのであれば、地方自治体の判断を限定的に列挙する立法措置があっても合理的ではないだろうか。

また、上記のように課税要件の基礎たる事実が多様なものである以上、限定的な列挙はかえって納税者の保護という趣旨を埋没する可能性も秘めている。この点からも解釈による範囲の確定が重要であり、私見としては、申告納税制度を前提とした納税者における帰責性の有無や担税力の減少に対する客観性の確保、対象判断の有する拘束性等の性格等から判断されるべきものだろう。


以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、参考までに。裁決

2017年1月5日木曜日

判例裁決紹介(小規模宅地の適用要件、東京地判平成28年7月22日)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京地判平成28年7月22日で、小規模宅地の特例に対する適用要件、書類添付の状況が不備であったとしてその適用が否認された事案です。
相続税法において最も適用が行われる特例の一つがこの小規模宅地等の特例に関する評価減の規定であり、その適用を巡る要件を議論することは法解釈上もまた、実務上も有益であるように考えられます。特に本件では、特例の適用に当たって、同意を確認する相続人の意思の確認が困難であるような状況であり、相続において争いがあった場合などにおいて留意すべき点を示唆しているように評価されます。

具体的には、医師である原告がその母親と同居して、その保有する土地において診療所を経営していた場合において、その母親の死亡により、財産を相続し、措置法69条に定める事業のように供された土地の小規模宅地の特例による評価減措置の適用をもって、相続税申告をなしたところ、下記要件に定める書類の添付が不備であるとして、否認されたことを不服として提起されたものです。

 69条の4第1項の適用を受けようとする者の当該相続又は遺贈に係る相続税法27条又は29条の規定による申告書(これらの申告書に係る国税通則法18条2項に規定する期限後申告書及びこれらの申告書に係る同法19条3項に規定する修正申告書を含む。)に69条の4第1項の規定の適用を受けようとする旨を記載し、同項の規定による計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。

相続税法は上記のように、法規によって小規模宅地の特例を適用を受けようとする場合には、上記書類の添付があることを明文をもって規定しています。この添付書類については、下記のように、書類の要件が定められており、本件はこの内、3号にある相続人すべてによる同意書の添付が行われず、原告の同意書のみが添付されていた形になります。

40条の2第3項
     措置法69条の4第1項に規定する個人が相続又は遺贈(贈与をした者の死亡
    により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により取得した特例対象宅地等の
    うち、同項の規定の適用を受けるものの選択は、次に掲げる書類の全てを同条6
    項に規定する相続税の申告書(以下、単に「相続税の申告書」という。)に添付
    してするものとする。ただし、当該相続若しくは遺贈又は贈与〔当該相続に係る
    被相続人からの贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。)で
    あって当該贈与により取得した財産につき相続税法21条の9第3項の規定の適
    用を受けるものに係る贈与に限る。〕により特例対象宅地等並びに措置法69条
    の5第2項4号に規定する特定計画山林のうち同号イに掲げるもの(以下「特例
    対象山林」という。)及び当該特定計画山林のうち同号ロに掲げるもの(以下「
    特例対象受贈山林」という。)の全てを取得した個人が1人である場合には、1
    号及び2号に掲げる書類とする。
    1号 当該特例対象宅地等を取得した個人がそれぞれ措置法69条の4第1項の
      規定の適用を受けるものとして選択をしようとする当該特例対象宅地等又は
      その一部について同項各号に掲げる小規模宅地等の区分その他の明細を記載
      した書類
    2号 当該特例対象宅地等を取得した全ての個人に係る前号の選択をしようとす
      る当該特例対象宅地等又はその一部の全てが措置法69条の4第2項各号に
      規定する限度面積要件のうちのいずれか一の要件を満たすものである旨を記
      載した書類
    3号 当該特例対象宅地等又は当該特例対象山林若しくは当該特例対象受贈山林
      を取得した全ての個人の1号の選択についての同意を証する書類(以下、同
      号に規定する書類を「選択同意書」という。)

具体的にはこの部分が争われたものであると考えられます。なお、本件土地は、原告が事業のように供していたことからも被相続人の遺言により、全て原告に相続させる旨が、記載されています。そして、本件では、その他の相続人との間で、未分割の土地等を有していました。課税庁は、この規定の解釈として添付書類として、相続人全ての当該制度の適用に関する同意書が必要であるとして、本件申告における、その欠如を理由として、相続税申告における、小規模宅地等の特例の適用を否認しました。判示もこの判断を是認しています。

なお、本件は相続訴訟ではありませんので、なぜ、この同意書が不備であったのかは定かではありませんが原告の主張を読む限り、相続に伴う、財産分割において紛争が存在し、遺言に定めのある財産の状況が未分割となったような状況にあるように捉えられます。本件では、特にこの未分割の他の財産においても貸付けの用に供してあり、小規模宅地等の特例制度の適用を行うことが可能であることが、更に問題となっているところです。

上記のように規定ぶりだけでは、同意書の添付は、適用対象となった財産を取得した個人のみで良いとする解釈も行うことは可能でありますが、私見としては相続税法が、一定のタイミングにおいて確定的に取得した財産をその対象としている以上、そして、相続人に連帯納税義務をもってその納税を担保していることからも、相続人間の同意をもって本件制度を適用すべきものと、すなわち起点としているものと解され、その実態的な確認、現れが本件で問題となった選択同意書であって、取得した財産や取得者においてその租税負担が異なることからも、生活の基盤への配慮を趣旨とするこの制度の対象として相続財産の一部を選択する場合には、関連する相続人全ての同意が必要であると解すべきであると考えられ、本件の判断は妥当なものであると評価しています。

また、現行法において、未分割の財産に対する規定をおいている(主として未分割の財産は、共有の状態にあるものと解されます)、この規定の性格やこれによる具体的な相続財産に対する法的な関係性をいかに捉えるのかは重要な課題ではありますが、他の相続税法の規定においても取得した財産に関しては、包括的に規定しており、本件で対象となった規定のみ別意に解するべき理由は当該制度の趣旨等からも肯定できるものではないでしょう。小規模宅地等の特例制度が、納税者間のバランスを考慮しつつも、残された相続人の生活の基盤の確保という趣旨から一定の評価減を定めており、かかる理解にたてば、要件としての同意書の存在を限定的に捉えるべき、もしくは他の規定と別意に解すべき理由は存在しないものと考えるべきです。本件のように他の相続財産が存在し、未分割の状態であり、更には、当該土地以外にも本件制度のの適用対象となりうるものである場合においては小規模宅地等の特例に於いて本件土地を対象とする相続人間の同意は重要な要件と言えるでしょう。

本件はすなわち事実上、相続人間の相続財産に対する紛争の存在を、その解決すべき義務を租税負担に帰着させようとするもので合理的な措置ではないものといえます。

本件のように、相続時における紛争の存在(あるいは可能性)をもって限定的に相続対象財産に対する解釈を変更することは、すなわち原告が主張するように、同意書の対象を限定的に捉えることは、立法論としてそのような措置をとり、相続財産の紛争の有無にかからず実質的な相続における租税負担の公平性を図ることは、ありうるものではあることは否定できませんが、解釈を限定的に捉えることは、租税法の基本原則たる法的な安定性を阻害するものであり、許容されるものと評価すうることはこんなんでしょう。立法に関しても、本質的に相続財産に関する紛争は、民事上の財産の帰属に関する問題であり、民事上処理すべき事案であって、租税負担において考慮すべきものであると捉えていませんが、この点は実務家としてはいかがでしょうか。

いずれにしても、正直なところ、実質的に相続財産に関する紛争の存在を租税負担に帰着させているだけであり、なぜ本件が訴訟となったのか理解に苦しむところもあるのですが、本件のように、結果として、紛争の存在によって特例の適用が困難な状況であれば、全体の相続税負担が増加することは、相続に関わるものであれば、常識に属する点であり、この点を納税者に周知する責任が専門家にはあることを留意すべきということを明らかにしている点では、実務上も有益な事案であるように考えられます。


以上、毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

また、本年も皆さんにはお世話になりました。特に本年はプライベートも多く変化し、大変な一年でしたが、また来年も公私共に大きな変化があるように予想されます。皆さんのご協力をよろしくお願い致します(特に論文作成予定の人は(笑))。
それでは仕事も忙しいとは思いますが、くれぐれも皆さん体調には留意の上で、良い年をお迎えください。判決