2021年8月24日火曜日

判例裁決紹介(名古屋地判令和2年6月18日、売上除外に対するほだつの意図)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は名古屋地判令和2年6月18日で、売上除外に関するほ脱の意図が課題となっている事例(法人税、消費税)です。

具体的には、太陽光発電(最近はこの事業に関する事例を目にすることが多くなってきました、今までは裁決レベルのものが多かったのですが、今回はほ脱の案件です、一般的な太陽光発電のイメージとは異なり、何らかの特殊性がある業界であるのか、山を削って、設備をおくことが基本で対価を行政資金の依存する業界である中で、このような傾向が継続しているのは何らかの要因があるように想定されるところ。)関するコンサル等を営む被告人が太陽光発電に関する業務において受け取った権利譲渡の対価等の売上除外に伴うほ脱の意図、成立が課題となっている事案である。売上の除外や売上の長期前受への転換(本件では20年)等、典型的なほ脱事案であるものであり、基本的には刑事関係の事実関係が問題となるものであると捉えられるところであるが、税理士が関与する中で行われた非常に高額な事案でもあり、このETCの履歴やGoogle Calendarの状況を加味した事実関係の認定など、経営者の意図という主観的な要因に対して如何にしてアプローチしているのかという点(各種証言の信憑性を否定する)は、租税専門家として実務上参考になるものと考えられる。

事案としては、太陽光発電に関する権利譲渡契約の譲渡と、長期間の役務提供を含む契約として長期前受の契約であるとした処理方法の相違が起点となっている。特別弁護人の主張にもあるように営業権の譲渡という無形物の譲渡契約における引き渡しの判定が一般的には、認定が困難であること、契約内容が複合的であることが収益の認識と、租税法規における判断がズレというか、必ずも明確ではないことは事実であるところで、この点をもって納税者のほ脱の意図を否定するような主張がなされているところである。譲渡契約と役務提供の契約の複合は、ソフトウェア等に代表されるように、収益認識の論点であり、租税法規の取り扱いも幅が広いところであることが原因でもあるが、この契約の評価、或いは納税者の認識が本件でも意図的に活用されている。

現在は、法人税法でも収益認識会計基準の変更を受けて、益金計上の基本的なルールを明確化したところであるが、引渡や役務提供が基準となっている点は変わらないところであり、依然として、恣意性や操作性の介在する要因があることがあることは留意されるべきであろう。契約の複合や口頭による契約等の主観的な要因が、実態として更に判断の際に課題となることは法人税、消費税法において双方において問題であろう(インボイスや証憑に近年は依存していくことになるだろうが、この点は否定する方法論も重要となるだろう)。

会計基準上の保守主義の観点から、解約のリスクが残存していることを持って、益金計上を後ろ倒しする主張もありうるところでもあるが、法人税法上、公正処理基準において一定の法的根拠を持ちうるものともいえようが(消費税法上は存在しておらず、この基準の適用可能性はないものと考えられるが)、そもそも会計基準としての保守主義がいかなるものであるのか、単に保守的であることという用語の意味内容がイメージとして先行しているように捉えられる。法的な基準として活用可能であるのかという判断がまず行われるべきであろう。公正処理基準による公平負担の要請に依拠した恣意性の排除と、保守的な会計処理は必ずしも両立しない局面が想定されるべきである。この点はより検討されるべきものであろうが、私見としては保守的な判断の容認は操作性を排除することが求められることが租税法規の適用上は重要なものとなるのではないだろうか。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。


判例裁決紹介(東京地判令和2年9月15日、収益帰属、地域対策費の必要経費該当性)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京地判令和2年9月15日で、収益帰属や、地域対策費の必要経費該当性が主たる争点となった事例です。

具体的には、本件は、風俗業を営む原告が、事業所得を申告せず、共同事業としての利益の分配が行われているものであり、また、計上した地域対策費(みかじめ料等)が必要経費として該当するのかという部分が課題となった事例である。

この種の業種が租税法規の適用上、ほ脱に近い状況であるようなケースは特段珍しいものではなく、ランキングの上位を常に締めているが、本件もその類型であろう。ただし、訴訟段階まで、この取扱が課題となった事例は珍しい。特に収益の帰属と、地域対策費という存在が必要経費として認められるのかという部分が課題となっている点は、興味深いものである。本件は基本的に事実関係の問題であり、いかなる者がどのような程度の収益の帰属を受けるものであるのか、実質的な所得の帰属者の認定において、このような共同事業における認定は、約定に欠け、先例的なものも少ないので、実務家として参考とすべき点が含まれているように考えられる。もちろんアンダーグラウンドな性格を帯びた業種であることは疑いのないものであり、特殊事案としての特徴は割り引いて考えるべきであるが。

また、上記のように本件の主たる争点は収益の帰属の判定であり、判決の大部分を締めている。しかしながら、必要経費に着目する視点からは、計上されている地域対策費の必要経費としての認定が興味深い争点である。違法な経費支出の存在は、法人税、所得税問わず、更には今後はインボイス中心となる消費税でも、課題となるものであろうが、一律その計上を否定するものであるのか、という点では従前課題となっている。本件のように、毎月定期的な支払いや、多様な内容を混在する経費(みかじめ料など)の存在を詳細に議論することなく、相手方の存在や領収書の不存在(調査後に作られた信用に欠、お粗末な準備ではあろう)等の視点から、相手方・目的等の検証ができないことが、必要経費計上の主たる要因として判断されていることは、当然といえば当然であるが、このような違法性を帯びた経費支出への基本的なアプローチとなっている点は、実務の基本的な方法論として、理解されるべきであろう。いわば最初に支出側に基本的なハードルを課した上で、その上で、必要性などの観点から、議論される2段階のアプローチが取られることになるものとも言えよう。

以上です。毎回のごとく、備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが、参考までに。