さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は名古屋地判令和2年6月18日で、売上除外に関するほ脱の意図が課題となっている事例(法人税、消費税)です。
具体的には、太陽光発電(最近はこの事業に関する事例を目にすることが多くなってきました、今までは裁決レベルのものが多かったのですが、今回はほ脱の案件です、一般的な太陽光発電のイメージとは異なり、何らかの特殊性がある業界であるのか、山を削って、設備をおくことが基本で対価を行政資金の依存する業界である中で、このような傾向が継続しているのは何らかの要因があるように想定されるところ。)関するコンサル等を営む被告人が太陽光発電に関する業務において受け取った権利譲渡の対価等の売上除外に伴うほ脱の意図、成立が課題となっている事案である。売上の除外や売上の長期前受への転換(本件では20年)等、典型的なほ脱事案であるものであり、基本的には刑事関係の事実関係が問題となるものであると捉えられるところであるが、税理士が関与する中で行われた非常に高額な事案でもあり、このETCの履歴やGoogle
Calendarの状況を加味した事実関係の認定など、経営者の意図という主観的な要因に対して如何にしてアプローチしているのかという点(各種証言の信憑性を否定する)は、租税専門家として実務上参考になるものと考えられる。
事案としては、太陽光発電に関する権利譲渡契約の譲渡と、長期間の役務提供を含む契約として長期前受の契約であるとした処理方法の相違が起点となっている。特別弁護人の主張にもあるように営業権の譲渡という無形物の譲渡契約における引き渡しの判定が一般的には、認定が困難であること、契約内容が複合的であることが収益の認識と、租税法規における判断がズレというか、必ずも明確ではないことは事実であるところで、この点をもって納税者のほ脱の意図を否定するような主張がなされているところである。譲渡契約と役務提供の契約の複合は、ソフトウェア等に代表されるように、収益認識の論点であり、租税法規の取り扱いも幅が広いところであることが原因でもあるが、この契約の評価、或いは納税者の認識が本件でも意図的に活用されている。
現在は、法人税法でも収益認識会計基準の変更を受けて、益金計上の基本的なルールを明確化したところであるが、引渡や役務提供が基準となっている点は変わらないところであり、依然として、恣意性や操作性の介在する要因があることがあることは留意されるべきであろう。契約の複合や口頭による契約等の主観的な要因が、実態として更に判断の際に課題となることは法人税、消費税法において双方において問題であろう(インボイスや証憑に近年は依存していくことになるだろうが、この点は否定する方法論も重要となるだろう)。
会計基準上の保守主義の観点から、解約のリスクが残存していることを持って、益金計上を後ろ倒しする主張もありうるところでもあるが、法人税法上、公正処理基準において一定の法的根拠を持ちうるものともいえようが(消費税法上は存在しておらず、この基準の適用可能性はないものと考えられるが)、そもそも会計基準としての保守主義がいかなるものであるのか、単に保守的であることという用語の意味内容がイメージとして先行しているように捉えられる。法的な基準として活用可能であるのかという判断がまず行われるべきであろう。公正処理基準による公平負担の要請に依拠した恣意性の排除と、保守的な会計処理は必ずしも両立しない局面が想定されるべきである。この点はより検討されるべきものであろうが、私見としては保守的な判断の容認は操作性を排除することが求められることが租税法規の適用上は重要なものとなるのではないだろうか。
以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。