さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は大阪高判令和2年10月16日で、以前書いたオートレースなどの複数の公営ギャンブルによる所得が一時所得であるのか否かという点が争点となっているものです。
具体的には、控訴人が、オートレースなどの複数の公営ギャンブルに関して行った大量の購入による所得が一時所得であるのか否か、特に地判では最終的な損益がマイナスになっている期もあり、営利性に欠けるとして一時所得からの離脱を認めていなかった事例である。本件判示でも地判が維持され、納税者の主張を棄却している。
本件は、基本的にソフトウェアの利用がなく、購入履歴が半分確認されることがない段階であったことが影響しているものであるが、購入に関する行為の状況が確認できず、一般的な購入方法との相違がノウハウや陳述に基づくものであって、明確に確定できないことから地裁では、損益の結果に着目し、一時所得からの離脱要件である営利性を有しているのな否かという点が主たる争点とされていた。
高裁では、かかるように鋭利性を中心的なものとする判断枠組みを批判する納税者の主張に対して、下記のように捉え、但し、上記と同様に購入の状況が不明であり、かかる点から客観的な資料として損益の状況を捉えているとして地判を肯定している。
「営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当であると解されるところ、これらの考慮要素は、総合して考慮されるのであって、その間に優劣はないというべきである。
車券等の払戻金は、本来的には、偶然性に左右される性質の所得であり、車券等の購入行為が大量に反復継続されたからといって、直ちに営利を目的とする継続的行為
になるわけではない。それが営利を目的とする継続的行為と評価されるためには、一連の行為の態様その他の状況等を総合考慮して、偶然性の要素が減殺され、客観的にみて利益が上がると期待し得る行為と認めることができなければならない」
になるわけではない。それが営利を目的とする継続的行為と評価されるためには、一連の行為の態様その他の状況等を総合考慮して、偶然性の要素が減殺され、客観的にみて利益が上がると期待し得る行為と認めることができなければならない」
網羅的な購入など、偶然性を減少させるための行為の態様が確定できないことから本件のように損益の状況に着目されることとなったものであるが、営利性の着地点として偶然性の要素が減殺されることが重要な判断の枠組みとなっていることが注目される。一時所得の基本的な理解から判断されて、偶発的な所得を対象とするものであるとの考えから導かれたものであろうが、営利性の判断の趣旨目的を偶然性の減殺に求め網羅的な購入等による統計的な理解が基軸になっているようにも考えられる(純粋に考えると最初から政府納入金が差し引かれているので偶然性の減殺があったとしても営利性が肯定されることにつながらないようにも考えられるのだが)。営利性イコール実際の損益のplusであるという理解がなされているものではないところは注目されるべきである。営利を目的とするという文言からもかかる点は肯定されよう。
今後は、このような営利性の判断の枠組みが、ギャンブルの行為に伴う所得以外の一時所得や所得税法における営利性の判断に関しても適用可能であるのかという点が重要であるように思われる。私見としては本件判断はギャンブルという偶然性が基底となった行為に最適化された判断であり、偶然性を減少させるような行為、営利性から裏付けられるものであるのかという判断が、一般的な理解となりうるものであるのか否定的であるが(一連の判断の射程は限定されるものではないか)、かかる点から考えれば、判例等で用いられている、事業所得における営利性とは些か方向性を異にするものであるのではないだろうかという認識であるが、より今後も所得税法における営利性の判断は如何になされるべきものであるのか注目していきたい。一時所得における偶発性偶然性をどのように捉えるべきであるのかという点もさらに検討したい。
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