各位
濱田です。
今週は、ちょっと落ち着きつつ、書き物をしています。世間は新型肺炎の話題も
あるようですが自動的に人込みを避けているような日々です。明日は一般向けの
生涯学習講座で相続税に関してしゃべるので、少し緊張しているのですが、一般
の人は相続に関心があるのだろうか・・・。税理士と弁護士の相続における一般
的なかかわり方のようなものを性質の相違から話してみるつもりです。まあ、忍
耐と寛容を持って耐えてもらおう。
さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年4月
4日裁決で、非居住者としての判断が問題になったものです。
具体的には、不動産取引の対価の支払先が非居住者であったとして請求人が土地
取引に関する代金支払いを行った取引において(支払先はオーストラリアに居住、
売買にかかる領収書の一部には国内の住所を記載するなどの行為を行っているが、
基本的に本件において実際に国外に居住していることについて争いはない)、す
なわち非居住者に対して支払った国内不動産の譲渡対価に該当するとして、もっ
て源泉徴収義務があったとして、納税告知処分の対象となったことを不服として
提起された事例である。源泉徴収は、国内における給与所得等の一部所得(配当、
報酬など)を対象とした事例が中心として当該義務が発生しているのか否か(取
引、所得の発生等)が課題となるケースが多いが、本件のように、国際的な取引
においても課税を確実に実行するため、徴収を担保するためにも重要な手法とな
っており、国内取引と国際取引では若干判断の枠組みが異なる可能性もある。本
件は、このような国際取引における取引、支払いにおける源泉徴収義務が対象と
なった事例であり、特に近年、この種の取引(取引の当事者が国外に居住してい
るような取引)が課題となる事例が増加している(判例も)。その原因は国外へ
の移住等国外への居住がまれなものとして評価される時代から、選択肢の一つと
して成立するような社会的な背景が存在しているものと考えられる。従前と比し
て国外居住の判定が行われることが増加していることと認識されるべきであろう。
本件ではオーストラリアがその居住地となっているが、この国は相続税がない国
として移住先として著名になりつつあるものであるが、一見して国内に居住して
いるのかという点から対応することは的確ではなく、また、国外に居住している
者や国外との取引を頻繁に行っているような業種ではない、不動産業、特に不動
産業は基本的に属地的なものであり、多くの場合において国内での取引を前提と
しているように捉えられるが、このような業種であっても国外に居住している取
引の当事者を対象としうるような状況になりつつあるのが現代の社会情勢なので
あろう。本件は国内不動産の取引が課題となっているが、逆に国外に不動産を取
引対象とするような事例も増加しており、不動産取引においても国外との取引、
国際的な取引への配慮が源泉徴収義務に限らず必要となりつつあるのではないだ
ろうか。
本件もこのような文脈におけるものとしてとらえられるべきものであり、今後の
参考として留意されるべきであろう。以前取り上げた判例事例においても近年は
このような契約の相手方が非居住者であることを判定することが困難であった
(一見日本国籍を有している)事例もあり、通常の非居住者としての該当性や対
象となる取引が成立しているのかという判断の枠組みよりも取引の当事者とある
納税者においても合理的に相手が非居住者であることを判断しえたか否かという
事前段階の状況をいかに源泉徴収義務に反映させることができるのか否か、源泉
徴収義務の中核的な性格からの対比、検討が、問題の俎上にあがってきているよ
うにも考えらえる。
(源泉徴収義務)
第二百十二条 非居住者に対し国内において第百六十一条第一項第四号から第十
六号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得(政令で定めるものを除く。)
の支払をする者又は外国法人に対し国内において同項第四号から第十一号まで若
しくは第十三号から第十六号までに掲げる国内源泉所得(第百八十条第一項(恒
久的施設を有する外国法人の受ける国内源泉所得に係る課税の特例)又は第百八
十条の二第一項若しくは第二項(信託財産に係る利子等の課税の特例)の規定に
該当するもの及び政令で定めるものを除く。)の支払をする者は、その支払の際、
これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月
十日までに、これを国に納付しなければならない
(国内源泉所得)
第百六十一条 この編において「国内源泉所得」とは、次に掲げるものをいう。
五 国内にある土地若しくは土地の上に存する権利又は建物及びその附属設備若
しくは構築物の譲渡による対価(政令で定めるものを除く
以上のように、本件は、源泉徴収義務の成立自身を問うものというよりは、主と
して請求人が合理的な配慮の下で国外居住者であることを認識しえたかどうかが
課題となっている。本来ならばこのような回避しえない合理的な予測が困難な状
況を加味してもなお、源泉徴収義務を有しているのかどうかという点は、源泉徴
収義務の法的な性格から判断されるべきものであるが、法は宥恕規定を置いてお
らず、現行法の解釈上かかるような状況を加味すべきかどうかは定かではなく、
立法によるべき救済の議論であるのかもしれない(憲法上の過度な義務であるの
かという点などは憲法論として争いになるのかもしれないが)。このような点か
らは本件は争点がずれているようにも考えられるが、国内における不動産取引に
おいてこのような相手方の判断が困難であることは現代の社会的な環境の変化が
認められよう。
本件の事実関係では、非居住者が領収書などの書類に国内の住所を記載していた
ことと覚書などには、国外の居住を示す国外の住所を記載しているなど、いささ
か予測が困難な状況をいかに評価するのかという点が起点となっている。判断と
しては最終的に覚書のような中心的な書類において国外の住所を記載しているこ
とを重く評価して、一般的に高額な取引となる不動産取引において一般にこのよ
うな相手方の居住の有無も確認されるべきとして、納税者の責任を判断している。
中心となるべき相手側に非居住者としての判断が困難であるのかという点は判断
が行われておらず、法令上はこのような問題に対して合理的な配慮が尽くされて
いるのかどうか、というような点は、争点としては現実的には困難となっている
とも考えられる。
以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いで
すが参考までに。
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