さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年3月8日裁決で、青色専従事業者の行為が納税者の行為と同視され、重加算税の対象となりえるのかという点が争点となった事例です。
具体的には、本件は、焼肉店を飲食店として営む請求人(個人事業主)に対して、調査があり、青色事業専従者(妻及び長男)が売上伝票の破棄等を行い所得金額を隠蔽等していたとして重加算税の賦課決定処分を受けたことに対して、当該行為は委ねていた専従者が勝手に行ったものであるとして、指示したものではないとして納税者の行為と同視して重加算税の賦課に対して不服を申し出た事例である。通常、青色事業専従者における実施者が納税主体と同視できるのかという点は、従業員等を対象にして、その範囲が問題となるケースが多いが、本件は、青色事業専従者がその対象となっている。実際には青色事業専従者は納税者の親族であり、圧倒的に、このような納税事実に関する仮想隠蔽行為を行う主体として取り上げられることが実務上多いものと考えられるが、裁決段階の判断としては、特徴的であろう(ほとんどこのような理由で不服が申し立てられることがないとも祖考えられるが)。このような場合において、どのような判断枠組みにおいて、納税者の行為と同視されるのかという点が採用されるのか、興味深い事例であろう。雇用者などとは異なり、配偶者等の親族はその行為を納税者と同列に扱うことにさほど抵抗がないものと通常は想定されるものであるが(あるいはそのように考えることが一般社会の通年によるものであろうが)、重加算税は制裁的な要因が強いものであるものの、刑事罰ではないので、納税者本人以外の行為もその対象となることは解釈上明らかであるが、如何に適用されるのかという点は重要な判断要素であって、本件もかかる点から参考となる事例であるだろう。納税者が知っていたか否かという点は従前同様問題とされていない。
重加算税)
第六十八条 第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
以上のように本件は重加算税の賦課決定処分における仮想隠蔽行為を納税者本人ではなく、青色事業専従者が行った場合には対象となりうるのかという点が課題となっている。以下のように本件の判断は、趣旨目的から刑事罰との相違を指摘して、趣旨目的からその対象範囲を納税者以外にも拡張的に解釈している。重加算税のの負担が他の附帯税に比して重いことは明らかであり、このような判断を行うことは事実上の制裁として、機能している重加算税の性格からは過度に賦課を課すものであるとして指摘する見解もあり得ようが(納税者本人が知らなかった、任せていたなどのように主張して)納税者の責任を限定されるような判断を導くことも可能であろうが、現行法の解釈としては対象を納税者本人に限定されるものではないことは改めて認識されるべきであろう。ここの事実関係によっては、納税者の責めに帰すものであるのかという点が否定される事例は存在するものと理論的には考えられるが、現実的には制限があるものであるだろう。
「通則法第68条第1項は、過少申告をした納税者が、その国税の課税標
準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又
は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出し
ていたときは、その納税者に対して、重加算税を課する旨規定していると
ころ、この重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて、隠蔽、
仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い負担
を課することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告
納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとする行政上の措置であ
り、納税義務者本人の刑事責任を追及するものではないことからすれば、
その合理的解釈としては、隠蔽、仮装の行為者が納税義務者本人ではな
く、その代理人、補助者等の立場にある者で、いわば納税義務者本人の身
代わりとして同人の課税標準の発生原因たる事実に関与し、同課税標準の
計算に変動を生じさせた者である場合を含むものであり、かつ、納税義務
者が納税申告書を提出するに当たり、その隠蔽、仮装行為を知っていたか
否かに左右されないものと解すべきである」
準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又
は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出し
ていたときは、その納税者に対して、重加算税を課する旨規定していると
ころ、この重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて、隠蔽、
仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い負担
を課することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告
納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとする行政上の措置であ
り、納税義務者本人の刑事責任を追及するものではないことからすれば、
その合理的解釈としては、隠蔽、仮装の行為者が納税義務者本人ではな
く、その代理人、補助者等の立場にある者で、いわば納税義務者本人の身
代わりとして同人の課税標準の発生原因たる事実に関与し、同課税標準の
計算に変動を生じさせた者である場合を含むものであり、かつ、納税義務
者が納税申告書を提出するに当たり、その隠蔽、仮装行為を知っていたか
否かに左右されないものと解すべきである」
本件判断も、上記のように対象範囲に関して従前の判断と整合的であるが、重加算税の性格からおもすぎるとの意見もありえよう。実質的には納税者の責任を回避するすべはないものと判断されるものであろうか。本件からは離れるが、実質的に納税者行為として、あるいは責任がないようなケースもあり得ることは否定できない。最終的に本件では、申告納税において、仮想隠蔽による利益を享受していることを判断要素の一つとして、納税者の行為と同視しうるものとの判断を導いているが、如何に親族にとはいえ、このような判断は、些か乱雑だという指摘もあり得よう。