2016年9月28日水曜日

東京地判平成26年11月20日

また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。
今回は、東京地判平成26年11月20日で不動産取得税に関する土地の軽減税率の適用を巡って、土地の 上に建設した建物判定が問題になったものです。従って、マニアックな地方税に関する事案ではありますが、いかなる建物を捉えて特別措置等をて供するかが問 題となっていますので、租税における建物に対する条文の適用に当たって一般的に参考になると思います。

具体的には、不動産デベロッパーで ある原告が土地を取得し、当該土地に建物を建設にする取引事例において、課税庁が課した不動産取得税、特に不動産取得税の軽減措置の適用対象になるとして 原告が主張した事案です。不動産取得税には軽減措置があって、取得後一定期間内に、その上に住宅等を建設した場合は、大幅な軽減措置の適用を受けられるの ですが、大規模なマンションの場合は、建設まで時間が近隣との調整など、大きな時間を有することからこの軽減措置の適用に当たっては、一定の猶予期間が定 められています。
この一定規模の判定単位が問題となったのが本件であり、本件では当該土地に複数の棟からなる建物を建設し、不動産取得税の課税庁 でもある市町村から団地の認定をうけ、建築確認を受けています。この団地における共同住宅の規模が一つ一つの棟は80件程度で、法が求める要件である 100件以上という要件には達していませんでした。但し団地としては、一つの土地において、約400件を超える共同住宅が存在しています。これによって不 動産取得税の納税額が数千万単位で相違することになります。従って、この要件の適用となる土地の上に建設した建物の判定単位が一つの棟をベースに判定する のか、取得した土地一般においての建物であるのかが問題となりました。

判示では、課税庁の主張を認め、執行の便宜や文言の解釈【共同住宅】の解釈から、住宅の単位として、基本的な単位である一戸若しくは一棟が住宅の単位であると判断しています。

不 動産の登記上は、一つの建物として登記する場合、効用上一体として利用される状態にある場合は、一つの建物として登記が可能です。現行法においても如何な るものが家屋であるのかという点については、不動産登記法上の意義を租税法において借用していることは法文上も明らかではありますが、如何なるものを一つ の単位として家屋、特に共同住宅として捉えているのか、という点については定かではありません。

私見としては、家屋の意義について不動産 登記法の意義を借用している以上、その判定単位についても同一の意義に解するべきであり、通常の日本語の文言に言うところの家屋の一つの単位にこだわるべ きとする判断は、租税法が予測可能性を重視している現状から鑑みて不整合であるように考えています。ましてや建築確認に於いて課税庁において一体として団 地認定を行っている事実関係に鑑みれば、このような判断単位に基づいて特例の適用を判断することは妥当ではないように考えられます。具体的な特例を定めた条文 である地方税法73条の24においても居住の用に供する目的で独立的に区画された部分を有する共同住宅等という文言の解釈においても明示的に一体として機 能する建物を一つの単位として捉えることは禁止していませんし、文理からみても明らかに通常の日本語の用法を活用した判断は疑問です。

確 かに、具体的な利用状況や利用意図に於いて建物の区分を行うことは、納税者の主観的な意図によって租税が左右される可能性をうみ、恣意的な課税になりうる とことではあります。また、執行の便宜という点からも、具体的に一つの建物として認定、客観的に確定させる基準を作成することは困難であり、法的な安定を 欠く懸念は存在します。法の趣旨から言っても適用範囲を拡大するような解釈は困難な可能性も考えられます。立法論としては、限定的に解釈するような文言を 挿入すべきとも考えられますが、不動産登記法の意義を準用しながら、一方でその準用を否定するような解釈は、租税法規の原則に照らして妥当なものと評価す ることは困難であると考えます。一般論としては租税法規において家屋の判定単位を通常の用法から離れている場合も許容するとする解釈は上記の点からも困難 であろうかと考えていますが、個別具体性から例外的には考慮する余地もしくは立法論として検討の価値はあるのかもしれません。

不動産取得 税が土地のに着目して、その上に存する建物の状況を加味して軽減措置の適用を認めている以上、土地の存在を一つの前提として、本来ならば法の要件を単に共 同住宅等とせずに土地の上に存する共同住宅等で判断すべきであることは、合理的であると考えられるのですが、立法論としてはいかがでしょうか。

以上です。

毎度のごとく論文Stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが、参考までに。

 https://sites.google.com/site/hamadaensyu/home/shen-hu-zu-shui-fa-wu-yan-jiu-qing-bao-jiao-huan-hui

2016年9月20日火曜日

平成27年7月28日裁決

興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。

今回は、平成27年7月28日裁決で、
損害賠償請求に基づき裁判所命令で、保有する株式を発行会社に譲渡した請求人が当該所得の所得区分を巡って争ったものです。
事案として少しレアなケースに基づく判断ではありますが、所得区分を判断するタイミングをどの時点で行うのかという点では一般性を持つ判断であると考えていますので参考となると思います。

複数の損害賠償請求を訴訟にて争っている請求人がそのうち一つの訴訟において賠償を認められ、その弁済として保有する株式を発行会社に譲渡することで発生した所得、通常ですと、自社株の取得に伴うものであるので、譲渡所得ではなく、みなし配当の対象として配当所得課税の対象となるのですが、今回も課税庁は当該所得区分として更正処分を行いました(約4億円)。しかしながら、請求人は、当該所得は、強制的な譲渡によるもので所得税法9条に基づき、強制的な債務弁済のための資産の譲渡に該当し、資産の譲渡原因が譲渡者の資産状況、経済状況が悪化したことに伴い債務弁済が著しく困難である場合に該当するとして非課税所得として主張したものです。

確かに、当該譲渡命令以後、請求人は、抱えていた同様の損害賠償請求において債務弁済を命じられ、実質的に債務弁済が非常に困難な状況に至りました。従って、非課税所得の該当性を判断するタイミングがいつの時点であるのかこの点が主たるテーマとして争われました。

裁決としては、課税庁の主張を認め、資力の判断は譲渡時によるものとして、請求人が主張するように、処分時の状況において判断すべきとする主張は退けています。

私見としても、当該裁決の判断は妥当と考えています。
そもそも、9条の規定の趣旨は、包括的所得概念の基本的な理解から、複数の理由から、包括的所得概念の志向する公平性を犠牲にしてもなお、所得課税の実現を図ることが妥当ではない類型を立法化することで非課税所得に該当することを制度的に保証したものです。従ってその非課税の趣旨から鑑みて、適用範囲やタイミングを決定すべきことになるのですが、今回のケースでは、資力の実質的な喪失が理由となっているものです、この点がいかなる理由によっているか否かは、見解が分かれるところではありますが、大きく分けて徴収上の便宜や債務者弁済の実を図るものととらえられるものと考えています。

このように解すれば、実質的な妥当性を図る観点からみて一定の将来の時点での状況を考慮して、債務弁済に関する状況を判断することが可能となる見解も一定の妥当性を有するものとも考えられますが、今回の判断のように納税義務が発生する譲渡時をその判断起点とすることが、解釈論としては妥当でしょう。
確かに連続した今回のようなケースでは損害賠償請求による債務弁済、経済状況の判断は比較的容易であり、想定の範囲内であります。しかしながら、このようなレアケースをもとに、判断のタイミングを拡張することが法的な安定性を図るべきとする租税法律主義の要請に合致するとする判断はなく、もう一つの租税負担の公平性の観点からも当該制度がその犠牲を図ってもなお、非課税とする趣旨であることから考えるに、拡張的な解釈の妥当性は極めて限定的にとらえるべきでしょう。

もちろん、より詳細に本規定の非課税趣旨を議論すべきでもありますが、訴訟段階にある他の状況を鑑みて、経済状況を把握すべきとするような拡張的な解釈をすべき理由は、当該他の債務が未確定である以上、実質的にみても個別的な妥当性を追求して解釈を広げるべき理由とはなりえないものと評価しています。

以上、毎度のごとく論文ストックとして作成しているものですので完成度は低いですが気にせず。

2016年9月16日金曜日

本ブログは租税法を専攻する現役大学院生や大学院修了生と共有している判例裁決の備忘録として活用していく予定です。

論文などのStockとして作成しているものですので、完成度は低いです。

神戸租税法務研究・情報交換会の報告原案でもあります。